【パリッコ】「良心的な店 あさひ」はどこまで良心的なのか?【東京・淡路町】

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こんにちは、パリッコです。今回も調査という名の飲み歩き活動にいそしんでいきたいと思います。

 

先日、神田淡路町のあたりをぶらぶらと歩いていたら、そこだけが街並みから浮かび上がっているような、異様なオーラを発しているお店を発見しました。看板には「良心的な店 あさひ」とあり、どうやら居酒屋さんのよう。

 

良心的ってつまり、普通より安かったり、大盛りだったり、酒が濃かったりして、行けば大満足できるようなお店ということですよね? しかし外観を見るに、どこかそんな一般常識では測れないような、一抹の不安も感じます。

 

その日はすでに夕食後だったので、存在を記憶にとどめひとまず帰宅したんですが、見つけてしまった以上いつまでも確かめに行かないでいるわけにはいかない。後日、万が一とんでもない目に合ってしまった場合の道づれに、『メシ通』編集担当のM氏を誘い、実際に潜入調査に行ってきました。

 

果たして「良心的な店 あさひ」は本当に良心的だったのか!?

 

縦書きの看板にミョーなこだわりが

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ここなんです。

 

白地に赤文字で書かれた、

 

 あ

さ 心

  飲

ひ る

 店

 

という看板に、なんだか心がザワザワとします。

 

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▲団体で来ても大丈夫なよう

 

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▲とにかく良心的であることを主張

 

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▲1,500〜2,000円で満足に自信ありという頼もしい宣言

 

右側の「ハイ」の文字の横に野球ボールのイラストは、しばし考えたのち「ハイボールでは?」と推測。

だとしても「ハイボールのあさひ150円」という文章は、若干破綻してます……。

 

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▲縦書きを駆使した言葉遊びが好きみたい

 

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▲とにかく「安さこそ至上」という主義であることが伝わりました

 

ふと入り口の扉の上に目をやると…… 

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ギャー!!!

 

じ、じ……あ、ただの自転車か。

 

この逆さに吊られた自転車にどんなメッセージが込められているのか?

 

わかりません。

 

我々がそんな茶番を繰り広げている間にも、近隣のサラリーマンとおぼしき方々が次々と縄のれんの中へ吸い込まれていきます。

 

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▲ちゃんと常連さんがいるお店なんだな

 

メニューは良心的すぎる価格設定だった

では、そろそろ僕たちも入店しましょう。

おじゃましま〜す! 

お、店内は明るく、清潔感もあって居心地が良さそうですよ。

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まずは生ビールから、

 

グビグビッ!

 

うん、文句なしにうまいです。

そんでもって、300円という嬉しい安さ。

な〜んだ、良心的な店あさひ、まずは普通に良心的じゃないですか!

 

「良かった良かった」と一息ついたところで、ふと目線を上げると、

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!!!

 

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!!!!!?

 

一般的に居酒屋とあまり縁のなさそうなアイテムである「プラモ」がずらっとディスプレイされていました。しかも「ベイダー」「イエロマン」「ハルク」「なでしこ」「ゴットマン」「ビックマン」「ビッグバンの帝王」などなど、イメージだけで好き勝手に付けたであろうオリジナルのネーミングがところどころに貼られています。

 

どうやら、人が見上げたところに何か仕掛けておくのが好きなようですね。

 

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▲ハイボールはどうしてもボールの絵で表現したいよう

 

が、縫い目の線が消えかかって「ハイ◯」としか読めなくなってきてます。

 

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ついにボールの中に文字書いちゃった!

 

っていうか、全体的に安っ!

 

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▲メニュー全図

 

100円から400円まで50円刻みのゾーンに分けられ、表にあったハイボールの他、梅酒、日本酒、芋焼酎が1杯150円! 料理もポテトサラダや冷奴、ソーセージなどの軽いものが200円から、一番高くてもホルモン焼、豚生姜焼の400円。

 

加えて、TV番組『モヤモヤさまぁ〜ず2』のロケが来たことがあるらしく、「さまぁずセット」なるものが500円で出されています。焼きそばとポテトサラダのセットだそうで、きっと番組内で頼まれたものなんでしょう。焼きそばは350円、ポテサラは200円なので、両方頼みたいならばこちらが50円お得ですね。

 

ちなみに気になるのは「生ビル」「レモンサワ」「ウロンハイ」「チャハン」「水ギョザ」など独特の表記。かと思えば「チューハイ」や「梅サワー」のように普通に書かれているものもあり、規則性が読めません。

 

謎の「チーズF」は、「ポテトF」がポテトフライだと想像すると、チーズフライでしょうか?このあたり、ツッコミ始めるときりがなさそうなので、あとで大将に聞いてみましょう。

 

謎のメニュー「あさづき」の驚くべき正体とは

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▲ポテトサラダ(200円)

 

この値段にしてドカ盛りのポテサラがやってきて、思わず比較用に味の素を配置してしまいました。

これは……良心的だ!

 

マヨが効き、ジャガイモの風味もしっかり。
つまみに最高ですね。

 

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▲煮込玉子(200円)

 

モツ煮込みに煮玉子が入ったようなものを想像していたら、煮込んだ玉子そのものでした。黄身までかっちり固めで、よく醤油味がしみ込み、口の中が若干パサパサっとしたところにビールを流し込むのが快感です。

 

それから、メニューの中に「あさづき」という見慣れない名前を発見。

M氏と「もうこのお店のこと読めてきましたよ。どうせ『浅漬け』とかでしょう!」「あ、絶対それだ。いいすね、頼みましょう!」なんて調子に乗り、店員さんに「すみません、「あさづき」くださ〜い!」と注文。

 

するとやってきたのは……

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▲あさづき(200円)

 

な、何これ?

 

皮付きの生ニンニクのようなものがやってきました。ひとつ皮を剥き、味噌を付けておそるおそるかじってみると……うわ、かっらい! 涙が出そうなほどピリリと辛く、ニンニク的な香りも強烈です。

 

お店の大将に聞いてみると、あさづきとは漢字で「浅葱」と書くユリ科の多年草。

好きな人は生で味噌を付けてバリバリ食べちゃうそうですが、「辛くて食べられないでしょう?」と笑っておられますよ。……はい、すみません。

 

と恐縮しつつ、このあさづきはビニール袋を頂いて持ち帰りに。刻んでそうめんの具なんかにしても良いそうなので、家でそんな風に頂くことにします。

 

さっき来たばかりでもう「あさひ」のことをわかった気になり、「どうせ浅漬けでしょう」なんて頼んでしまい申し訳ありません。まさかここはひねりなしのド直球で、そういう食べ物だったとは!

 

ボリューム感満点で良心的! な“茶色系”料理たち

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▲レモンサワー(200円)

 

引き続き、良心的~!

 

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▲メンチカツ(300円)

 

袋カラシ直乗せスタイルが斬新です。

そして多い!

 

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▲鳥唐揚げ(300円)

 

これまたたっぷり!

 

何を頼んでもそのサービス過剰っぷりに驚かされますね。

またどの料理も、わかりやすくお酒の進む味付けなのが良いです。

それにしても一皿のボリュームがすごいので、テーブルの上が真っ茶色。

 

そういうことならと、

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▲ウロンハイ(200円)

 

でさらに拍車をかけます。

もう、今日はそういう日だ!

 

値段を気にせず、バクバク、グビグビと豪快に飲み食いする喜びを堪能していたら、どんどん楽しくなってきました。

 

もっと! もっと我々に茶色いものを! と加速が付き、

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▲豚生姜焼(400円)

 

も追加。

 

う〜ん、良い。

 

ガツンとパンチある味付けの豚肉とキャベツをバリバリと食べ進み、最後にそれを迎え撃つは、入店前からしつこいくらい主張されていた、

 

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▲ハイボール(150円)

 

爽快なシュワシュワ感が、大量に摂取した脂を洗い流してくれるようで(実際はそんなことない)、身も心も大満足。

 

あ〜美味しくて楽しいお店だったな~!

 

「大将、ごちそうさまでした!」

 

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▲優しそうな大将

 

お会計時に少しお話を聞かせてもらうと、ここ「あさひ」がオープンしたのは今から17年前の平成10年。

色々な仕事を転々とされてきた大将が「自分の店を持って一旗あげたい」と思い、始められたそうなんですが、当時料理に関しては素人で、その恥ずかしさから、現在のような変わった装飾を増やされていったそうです。

 

プラモ、照れ隠しだったんだ!

 

肝心の「なぜ居酒屋を始めたか?」の質問に関しては「なんとなくですよ!」と笑っておられましたが、そんな大らかな人柄がお店の魅力となり、常連さんに愛されるお店として長く営業を続けてこられたのでしょう。

 

「メニュー名の表記が変わってますが?」と聞くと、

「あれねぇ、ちゃんとした業者に頼むと1文字いくらっていう設定なんですよ。文字が増えると金額が上がるから、わかるところは省略してるの!」

とのこと。

「ならば全部自分で書いてしまったら良かったのでは……」とも思いましたが、そこに大将のこだわり、美学があるのだろうし、結果そのメニューもお店の「味」になっているのだから、それが正解だったんですよね、絶対。

 

いやぁ「良心的な店 あさひ」、こんな良心的なお店はそうそうない! ってくらい、本当に良心的だったし、エンターテイメント性と温かさが同居する素敵なお店でした。

 

ほろ酔いの心地良い頭で「だって、普通じゃおもしろくないでしょ? プラモはまだまだ家にあるからね!」と語る笑顔を見て、大将の大ファンになったところで、今日はそろそろ失礼しましょう。

 

また来ます~!

 

お店情報

良心的な店 あさひ

住所:東京都千代田区神田須田町1-12-6
電話番号:03-3251-7388
営業時間:17:00~24:00
定休日:日曜、祝日、年末年始

※本記事は2016年1月の情報です。こちらのお店は取材後の2016年2月に建て替えのため閉店し、2016年7月25日にリニューアルオープンしています。

 

書いた人:パリッコ

パリッコ

DJ/トラックメイカー/漫画家/居酒屋ライター/他。FUNKY DANCE MUSIC LABEL「LBT」代表。酒好きが高じ、雑誌、Webなどの媒体で居酒屋に関する記事を多数執筆中。

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