韓国のプロ野球を観戦して驚いた、日本とはまるで異なる10の特徴【スタジアムグルメ in コリア】

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「プロ野球が盛り上がっている国はアメリカと日本と、あと韓国かな」
以前、友人とたわいもない話をしていた時のこと。友人が、このような発言をしたのだった。

……え!? 韓国で野球が盛り上がっているの?

数カ月前から、月1回のペースで球場観戦をしている筆者。だが、世界の野球事情は把握していなかった。さすがにアメリカで話題のスポーツであることは知っていたが、韓国でも盛り上がっているとは。

日本のプロ野球は、スタジアムグルメなどが充実しているが、韓国のプロ野球はどうだろう?

 

韓国で野球が盛り上がった理由とは

そこで長年、韓国プロ野球を取材しているストライク・ゾーンの代表・室井昌也さんにお話を聞いてみることにした。室井さんは『韓国プロ野球観戦ガイド&選手名鑑』を毎年発刊したり、韓国プロ野球観戦ツアーを企画したりするなど、“韓国プロ野球の伝え手”と活動している。

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▲韓国プロ野球に詳しい室井昌也さん。子どもの頃に西武ライオンズをきっかけに野球好きに

 

── 韓国野球について全然わからないので、今日はいろいろと教えてください! まずは、韓国でプロ野球が盛り上がっていると聞いたのですが、それは本当なのでしょうか?

 

f:id:Meshi2_IB:20180801183501p:plain室井さん:はい、本当ですよ! 観客動員数は右肩上がりで、「今度の休日は映画を見に行く? それとも野球観戦にする?」というくらい、娯楽のひとつになっているんです。

 

── へぇ! なぜ右肩上がりになったのでしょうか?

 

f:id:Meshi2_IB:20180801183501p:plain室井さん:理由はいくつか考えられます。まずひとつは、人気だけど長年低迷していた釜山(プサン)の球団「ロッテジャイアンツ」が2007年に活躍を遂げ、複数年に渡って連続でポストシーズンに進出したこと。これにより、潜在的な野球ファンが球場に戻ってきたんです。もうひとつは、2008年に行われた北京オリンピックで、若手メンバー中心の韓国代表チームが9試合全勝し、金メダルを獲得したこと。ちょうど夏休み期間ということもあって、視聴率もよかったんです。そして、その熱気が冷めやらぬまま翌年2009年にはWBC(ワールドベースボールクラシック)が開催され、準優勝という好成績を残したのも大きかったですね。

 

── 球団がブームを仕掛けたというより、自然発生的に盛り上がったのですね。

 

f:id:Meshi2_IB:20180801183501p:plain室井さん:そうなんです。それから韓国の家庭では、ケーブルテレビの加入率も高いんです。だからチャンネル数も多いので、野球の試合中継や再放送、さらにアメリカのメジャーリーグなどもたくさん放映しています。これにより、野球文化が定着したと考えられますね。

 

── なるほど、韓国のライフスタイルも追い風になったのですね。それにしても「ロッテジャイアンツ」って、おもしろいネーミングですよね。ロッテなのにジャイアンツ? どっち!? ってなりますよね。

 

f:id:Meshi2_IB:20180801183501p:plain室井さん:最初はそう思いますよね。この球団の親会社はロッテになるので、日本のパ・リーグにある「千葉ロッテマリーンズ」の親戚チームにあたります。

 

── 日本と韓国の両方に球団を持っているんですか! すごいですね。

 

f:id:Meshi2_IB:20180801183501p:plain室井さん:今度、私がプランニングした「ロッテジャイアンツ」の観戦ツアーがあるのですが、よかったら参加されませんか? このチームは、応援がすごいんです。実際に韓国の球場に行ってみれば、ファンの熱気を感じられると思いますよ。

 

── え、行ってみたいです!!

 

【特徴1】韓国プロ野球は1リーグ制

ということで、韓国の釜山まで野球観戦しに行くことに!

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▲機内から見える釜山の景色

 

釜山は、成田空港から飛行機で2時間弱、福岡空港からは1時間程度。
他にも、高速船やフェリーなどの海路でも日本と結ばれているため、“日本から最も近い外国”と称されているのだとか。また韓国最大の港町で、海産物が名物だそう。

 

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▲港町である釜山の街並み

 

事前情報として、韓国プロ野球は1リーグ制で10球団があること(ただし、2軍のリーグは南北で分かれ2リーグ制になる)。
そして年間試合数は144試合で、日本のプロ野球とほぼ同じであること。またパ・リーグと同じ、指名打者制度もあることを室井さんから教えてもらった。

 

【特徴2】横浜スタジアムを模して造られた球場

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▲プサンサジク球場の外観正面

 

ロッテジャイアンツの本拠地球場「プサンサジク球場」のある最寄り駅サジク駅までは、金海(キメ)国際空港から電車で約45分。サジク駅からは、徒歩約7分にある。

 

球場は、日本の横浜スタジアムを模して造られたとのこと。

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▲球場の輪郭が横浜スタジアムっぽい!

 

座席は外野席がライトユーザー層、内野席が熱狂的なファンが座る。そのほか「キャンピングゾーン」と言う、簡易テントやテーブルなどを使用できる席もある。
今回の対戦相手は、大田(テジョン)を本拠地とする「ハンファイーグルス」。

 

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▲ゆっくり観戦できる「キャンピングゾーン」

 

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▲急勾配のため2階席は迫力がある!

 

【特徴3】球場内にコンビニがあって、めちゃ便利!

試合開始前は、球場内を散策してみることに。まず驚いたのは、球場内の至るところに「セブンイレブン」があること。
これは、めちゃくちゃ便利ではないか……!

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球場内のコンビニとはいえ、内装などは一般的なコンビニと変わらない。

 

しかし、仕入れている商品は大瓶のビールばかり!

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▲大量に売られているビール

 

しかし、よく見るとビールの容器はペットボトルだった!
ビールと一緒に、プラスチックコップも大量に売られており、みんなでシェアして飲めるようになっている。韓国では、1人で遊びに行ったり食事をしたりする習慣が少ないそうで、野球観戦もグループ観戦が一般的とのこと。それなら、より一層このビールは重宝するだろう。

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▲カウンター式のセブンイレブンもある

 

【特徴4】コインロッカーもある

コンビニの他に、球場内にコインロッカーも設置してある。これなら仕事終わりに野球観戦をしたとしても、荷物が邪魔にならなくて済むだろう。
日本にもコインロッカーを設置している球場もあるが、プサンサジク球場はコンビニといい、ロッカーといい、より利便性が考えられた球場だと感じた。

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▲さまざまなサイズのコインロッカー

 

【特徴5】野球観戦の定番グルメはチキンとビール

さて、食いしん坊の筆者にとって、野球観戦の楽しみのひとつはスタジアムグルメ(以下、スタグル)である。

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▲ロッテが親会社なだけに「ロッテリア」もある

 

まず目についたのはフライドチキンのお店。

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室井さんによれば、野球観戦の定番スタグルはチキンとビールなのだとか。
というのも韓国では、豚肉料理は焼酎、フライドチキンは生ビールでいただくのが一般的だそう。そして残念なことに焼酎は、球場に持ち込めないらしい。

 

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▲チキン1箱18,000ウォン(日本円で約1,800円)、ビール4,000ウォン(日本円で約400円) ※1ウォン=約0.1円

 

ということで、さっそくチキン(フライドチキン)とビールをいただく。
韓国では、この2つのことを合わせて「チメク」と呼ぶ。これは、「チキン」と韓国語でビールを表す「メクチュ」の頭文字を取った造語である。

 

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▲辛味のあるフライドチキンもある。パッケージに印刷されているのは、人気俳優のハ・ジョンウさん

 

フライドチキンは、プレーンタイプとスパイシーなタイプの2種類があるとのこと。
プレーンは骨ナシで、スパイシーは骨付きになっている。2種類購入し、ツアー参加者たちと分け合って食べてみたが、さすがは韓国、スパイシーフライドチキンはチリのような鋭い辛味が……! 思わず、ビールが進んでしまう。

 

【特徴6】プラスチックコップに入ったビールを売っている

辛味のあるチキンのおかげで、ビールがあっという間になくなってしまったので、おかわりをすることに。今度はコンビニではなく、売り子さんから買ってみることにした。日本同様、韓国プロ野球でも売り子さんはいる。

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▲黄色の洋服に、黄色のリボンカチューシャが目印の売り子さん

 

ただ日本と異なる点がひとつ。それは、プラスチックコップにビールを入れて販売していることだ!

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▲プラスチックコップのビールは4,000ウォン(日本円で約400円)

 

飲み慣れないプラスチックコップでも、ビールの味自体は問題なし。
生ビールのサーバーを担いだ売り子さんもいるのだが、これは男性スタッフの役割のよう。韓国人男性は女性に優しいと言われているが、これも女性に重いビールサーバーを担がせないためだろうか?

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▲男性の売り子さん。生ビールは6,000ウォン(日本円で約600円)

 

【特徴7】球場内で干物を焼いている!

韓国の野球観戦の定番グルメである“チメク”を充分に味わったが、せっかく韓国まで来たし、他にもいろいろと食べてみたい。
ということで、再び散策しに行くことに。驚いたのは、球場内で干物を焼いていたこと。これは日本では絶対に見られない光景だ!

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▲売店で干物やイカを焼いている様子。野球場で干物……斬新すぎる

 

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▲海が近いだけに、海産物がたくさん

さすが韓国最大の港町・釜山。
海産物が有名であると聞いていたが、まさか干物を焼いているとは。干物以外にも練り物なども売っていた。これらもビールのつまみに合うこと間違いなし。

 

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▲悩みに悩んで、購入したのはイカ焼きと練り物

 

その他にも、トッポギ(甘辛く煮た餅)やポッサム(ゆでた豚肉)など、韓国料理がたくさん売られていた。

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▲売店で売られているトッポギ(3,000ウォン、日本円で約300円)。お餅のもちもちっとした歯ごたえがGOOD!

 

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▲ポッサム(25,000ウォン、日本円で約2,500円)。ゆでた豚肉をキムチや薬味などと一緒にサンチュに挟んで食べる

 

デザートには、日本でもブームになった韓国のかき氷「パッピンス」を。ふわふわの氷の上に、小豆や小さいお餅、フルーツなどがたっぷりのっている。

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▲パッピンス(5,000ウォン、日本円で約500円)。ビビンバのように混ぜてから食べるのが一般的だとか!?

 

まさか球場で、日本でも知られているメジャーな韓国料理が食べられるとは思っていなかった。日本でも寿司や天ぷらを球場で食べられたら、面白いのではないだろうか?

そして、これらのつまみと一緒にビールを飲み過ぎたため、酔っ払ってきた筆者……。そこでビールを止め、カルピスのようなジュースが入ったフルーツポンチにチェンジ。これならゴクゴク飲んでも酔わないし、爽やか。

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▲ジュースのように飲めるフルーツポンチ(4,000ウォン、日本円で約400円)

 

【特徴8】プロの応援団がいる

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▲チームマスコットのヌリくん

 

スタグルは想像以上に大満足だった。しかし、このままでは韓国まで来て、ただ酔っ払っただけになってしまう。ということで、スタジアムとファンの雰囲気もレポートしたい。

 

まず驚いたのが、韓国では“プロ”応援団がいること。日本でも2018年シーズンから東北楽天イーグルスが球団主導で応援をプロデュースしているが、韓国のプロ野球ではプロ応援団がいるのが一般的なのだ。
プロ応援団とは、その名の通り給料をもらい、仕事として球場を盛り上げる団体のことである。

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▲1塁側の座席前方に設けられた応援団用のステージ

 

プサンサジク球場の場合、プロ応援団の専用ステージが1塁側の座席前方に設けられ、そこで応援団長やチアリーダーたちがパフォーマンスを繰り広げる。ビジターチームも3塁側の座席前方にステージが設けられ、応援団たちが盛り上げている。

 

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▲チアリーダーたち。この日は戦争で亡くなった人を追悼する「ミリタリーシリーズ」ということで選手、応援団長、チアリーダーも迷彩柄のウェアを着用

 

プロ応援団のパフォーマンスは多岐にわたる。スタジアムMC的な役割も担えば、歌ったり、踊ったり。しかも衣装替えもある。
それは試合前やイニングの時だけではない。試合中ずーっとパフォーマンスをしているのだ。このパフォーマンスを目当てに来ている観客もいるのではないだろうか? というのも、チアリーダーをやっている人の中には、モデルやタレントとしても活動する超売れっ子さんもいるからだ。

 

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▲駅で見かけたポスター。女性はチアリーダーのパク・キリャンさん

 

ちなみに、プロの応援団というだけあって、野球のオフシーズンは他の競技の応援をしているとのこと。なんとも、おもしろい職業である。

 

【特徴9】ビデオ判定時のBGMが『名探偵コナン』

観戦中に面白かったのが、ビデオ判定時のBGMが名探偵コナンのメインテーマ曲であったこと。あの真相に差し迫るメロディーが、より一層球場を盛り上げてくれるのだ。

しかもビデオ判定は、さまざまな角度から撮影された映像が、何度も何度も大型ビジョンに映し出される。こっちの角度から見るとアウトのようだが、反対の角度からみるとセーフのような、そんなきわどいシーンが何度も映し出され、そのたびに両チームの観客たちは盛り上がる。

ビデオ判定さえもエンタメ化していると感じた。

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▲余談だが、日本のアニメ「ぼのぼの」が球団とコラボレーションしていた。ぼのぼのがデザインされたユニフォームも販売されている

 

【特徴10】赤色のビニール袋を頭にのせる!

試合終盤に差し掛かる頃、球場のスタッフから観客に赤色のビニール袋が配られた。
室井さんによれば、本来は観戦中に発生したゴミを入れるために配られていたが、ある時からそのビニール袋を被って応援する風習が生まれたのだとか。日本のプロ野球にたとえていうなら、ラッキーセブンで風船を飛ばすようなものだ。これにより、さらに応援が盛り上がる。

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▲赤いビニール袋に空気を入れて縛り、持ち手部分を耳にかける。ほどよいサイズを作るのは意外と難しい

 

しかも1点を争う1-2で迎えた8回裏、前日の死球の影響でスタメンを外れていたロッテジャイアンツのイ・デホ選手が代打で登場。

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室井さんによれば、チームのキャプテンである彼は韓国球界を代表する選手。かつては日本の「オリックス・バファローズ」「福岡ソフトバンクホークス」に所属し、日本で活躍した有名選手でもある。その後、メジャーリーグの「シアトル・マリナーズ」でプレーし、2017年に古巣ロッテジャイアンツに復帰。

 

そんなイ・デホ選手が、タイムリーヒットを放って同点にすると、球場はヒートアップ!

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また相手投手が牽制球を投げると、観客たちは「マ!」と叫ぶ。
「マ」とは韓国語で禁止の意味をあらわす。ブーイングともとれるこの「マ!」の叫び声が球場内で響き渡る姿は圧巻である。これを叫びたくて、観戦に来ている人もいるとか!?

 

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▲「マ!」を叫ぶ熱狂的ファンたち。この熱気が伝わるだろうか

 

しかしロッテジャイアンツの応援もむなしく、対戦相手のハンファイーグルスが9回表に勝ち越しに成功。結果は3-2でロッテジャイアンツが敗れてしまった。
これでロッテジャイアンツは5連敗とのこと。とはいえ、球場の雰囲気が悪くなることもなく、ファンたちはチームの健闘を称えているように見えた。

 

【結論】韓国プロ野球が盛り上がっているのは本当だった

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▲満員御礼を知らせるアナウンス。この日の入場者数は2万5千人

 

ということで、実際に韓国まで足を運んでわかったことは、韓国のプロ野球が盛り上がっているのは本当だということ。そして韓国でも観客を楽しませようと、プロ応援団やスタグルなど、あれこれ工夫をしているということ。

韓国プロ野球事情をまったく知らなかった筆者だが、充分に楽しめたし、その国の文化を垣間見れたのも面白かった。それに観光地にありがちな客引きも球場にはいないので快適だった。やっぱりスポーツ観戦の面白さは万国共通なのだ。

 

海外でスポーツ観戦、ハマってしまいそうです。

 

取材協力:釜山広域市 釜山観光公社 エアプサン

 

書いた人:名久井梨香

名久井梨香

フリーライター。東京都出身。新卒で大手広告会社に就職するも、会社員は向いていないと挫折。1年で退職し、その後フリーライターの道へ。趣味は、Jリーグとカレー。週1回、新宿ゴールデン街でバーテンダーもやっています。

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