情報発信×地域で食うには?世界一周経験者が「いたばしTIMES」を立ち上げて地元で愛されるまで

f:id:Meshi2_IB:20190729225414j:plain

東京23区の中で行ったことがない区ランキング」1位は、板橋区───。

かつて、このような統計結果が発表された。

news.nifty.com

 

そんな多くの人が踏み入れたことのない、板橋区の情報などを発信しているブログがある。それが「いたばしTIMES」だ。

itabashi-times.com

板橋に関わりない人には何が何やらな内容だが、2015年秋にスタートした当ブログは、飲食店情報などを主に掲載し、今では月間70万PVを誇り、スポンサーも付くほど。個人が運営するサイトとしてはかなりの成功例だ。

 

ブログで収入を得るなんて羨ましい……。

 

そこでローカルメディア「いたばしTIMES」運営者のちゅうぞうさんに、ブログの成り立ちとその半生について聞いてみた。

 

本日のガイド:ちゅうぞうさん

f:id:Meshi2_IB:20190825112431j:plain

1976年生まれ。いたばしTIMES編集長。IT関連の会社を経て、現在は介護系の会社経営。知る人ぞ知る、板橋区内の有名人で、一緒に板橋区を散策していたら、すれ違う人から声を掛けられるほど。

 

開設半年で月間10万PV

 ───なぜ、板橋区の情報を発信するブログを始めたのでしょうか?

f:id:Meshi2_IB:20190730204123p:plainちゅうぞうさん(以下敬称略):実は本業の仕事柄、板橋区内を歩き回っていることが多く、いつも出先でお昼ご飯を食べているんですよ。そしたら、だんだんと板橋区内の飲食店に詳しくなり、「もしかして、この情報に価値があるんじゃないか?」と、ふと思ったんです。それで「いたばしTIMES」という、大層な名前をつけてブログを始めてみました。

 

───ブログで食ってやるぞ、的な?

 

f:id:Meshi2_IB:20190730204123p:plainちゅうぞう:いえいえ、全然。最初から「ブログで収入を得よう!」と気合入れて始めたわけではないんです。はじめは誰も読んでいなかったので、勝手にお店をレポートしていたのですが、開始から半年経った2016年春頃、ブログで紹介したお店に行列ができてしまって……。

 

───テレビ番組ならまだしも「ブログで行列」はすごい!

 

f:id:Meshi2_IB:20190730204123p:plainちゅうぞう:その後、手応えや反響のある記事がいくつか生まれたんです(下記リンク参照)。で、気が付いたら自分の想像を超えるほどの読者さんがいて半年で月間PVも10万、1年後には月間20万PVを超えるくらいになっていました。このままではお店に迷惑がかかると思い、それから編集長と名乗り、店舗側には許可を取って掲載するようになりました。

itabashi-times.com

 

itabashi-times.com

 

───1年で月間20万PV超えはすごいですね。記事はどれくらいアップしていたのでしょうか?

 

f:id:Meshi2_IB:20190730204123p:plainちゅうぞう:今は1日2記事更新していますが、当時は1日1記事でした。毎日更新するほどネタがあることに驚かれるのですが、元々、両親が板橋区内で飲食店をやっていたこともあって、飲食店に関するアンテナが高いのは自覚しています。そんなに意識して探さなくても、自然と毎日書くことがあるというか。飲食だけじゃなく、珍スポ系も取り上げてたりして、それはそれでめちゃくちゃ反響ありました(下記リンク参照)。

itabashi-times.com

 

ポジティブなことしか書かない

───掲載するお店の選定基準とかあるのでしょうか?

 

f:id:Meshi2_IB:20190730204123p:plainちゅうぞう:ポリシーはいくつかありますけど、まず大切なのは「食べたついでに記事にすること」です。記事にしなくてはという義務感が強すぎると、負担になってしまうんですよね。だから自分が食べたいお店に行き、仮に掲載NGだったとしても、普通に食べて帰る。だって食べたいから。この順番を大事にしています。飲食店に限らず、イベントルポなどでもそうです。行きたいイベントに行ったついでに記事にしています。 

f:id:Meshi2_IB:20190729225409j:plain

▲この日も宮下さんが行きたいお店「大山園」(東武東上線大山駅から徒歩約1分)にてインタビューを実施

 

───フットワークの軽さってやっぱり大事なんですね。

 

f:id:Meshi2_IB:20190730204123p:plainちゅうぞう:もう1つ重要なポリシーは、「ポジティブなことしか書かないこと」ですね。ネガティブなことを書かないので、それがある意味、信用につながっていると思っています。だから「載せていいですか?」と聞いたときに、お店の方が「いたばしTIMES」を知っていたら「どうぞ、載せてください」となるんです。

 

───なるほど。

 

f:id:Meshi2_IB:20190730204123p:plainちゅうぞう:ブロガーなら炎上しないと一人前じゃないみたいな風潮がある気もしますが、今のところ炎上することもないし、商業サイトみたいな「バズらなきゃ」というプレッシャーもゼロですね。 

f:id:Meshi2_IB:20190729225400j:plain

▲「大山園」はお茶屋さんだが、かき氷のメニューもある。「宇治金時」(650円)

 

ショボイ内容でもアップし続けるのが大事

───いたばしTIMESにはスポンサーが掲載されていますね。いつ頃からスポンサーがついたのでしょうか?

f:id:Meshi2_IB:20190730204123p:plainちゅうぞう:始めて1年が経った頃に、ブログを仕事としても成立できないかなと考えたんですよ。それで試しに3社だけスポンサーを募集してみたんです。「記事広告を作ります、でも超素人なので期待しないでください」って感じで。そしたら募集をかけた途端に埋まったんですよ。今まで勝手にレポートしていたけど、お店の人と一緒に記事を作るのが楽しくって。

 

───だんだんビジネスっぽくなってきましたね。

 

f:id:Meshi2_IB:20190730204123p:plainちゅうぞう:その後、追加で15枠分のスポンサーを募集したら、それもすぐに埋まりました。やっていくうちにコツも掴んで、どのくらいの手間と時間がかかるかもわかったので、今はバナーを20枠限定で募集し、16枠ほど埋まっています(2019年8月現在)。あと、記事広告(下リンク参照)もたまにやってますね。

itabashi-times.com

itabashi-times.com

 

───スポンサーからの収入があるなんてなんと魅力的な! でもブログって始めるのは誰でもできると思うんですけど、コツコツと続けるのが一番大変ですよね。続ける秘訣ってありますか?

 

f:id:Meshi2_IB:20190730204123p:plainちゅうぞう:それは、内容がしょぼくても思い切ってアップすることですね! 言葉が見つからなかったり、オチがなかったりして、あんまりおもしろくない記事だなと思う時も正直あるんですが、時間をかけてしまうのが実はいちばん良くない。だから1記事にかける時間は1時間以内と決めています。質を求めるのではなく、スピード重視。ある意味、書き溜めた量が質になりますから。写真もスマホで撮影しています。新店ルポ(下記リンク参照)なんかも早いと30分くらいで書いちゃいますよ。

itabashi-times.com

 

───書くのが遅い私にとっては耳の痛い話で……。そもそも発注があって、〆切があって、お金が入ることが確実にわかっていないと私は書き続けられないですね(苦笑)。コツコツ続けた先に、月間70万PVやスポンサーが付くという、目先の利益よりも大きな価値があるのはわかるのですが、でもやっぱり最初の段階でくじけてしまいそうです……。

 

f:id:Meshi2_IB:20190730204123p:plainちゅうぞう:そういう意味では、僕は「いたばしTIMES」を始める前に、ブログでの成功体験があるんです。

 

原体験は世界中から発信した「旅ブログ」

実はちゅうぞうさんは2004年頃、1年半かけて世界一周の旅に出た経験を持つ。

今では旅行記をブログに書くのはよくあることだが、当時はノートパソコンを持って旅に出る人は少なく、旅行記ブログを書いている人も少なかったという。

f:id:Meshi2_IB:20190729225404j:plain

 

f:id:Meshi2_IB:20190730204123p:plainちゅうぞう:世界中を旅をしながらブログを書いていたら、読者から「現地で会えませんか?」と連絡が来るようになったんです。それでエジプトやインドで読者の方とお会いし、男性の方だったらそのまま一緒に旅行したり。あるとき、徳光和夫さんの番組への出演依頼があって。それから、小さなことでも何らかを発信すれば見てくれる人がいるんだと実感しましたね。

 

人にルーツあり。ちゅうぞうさんの原体験は、自身の旅ブログだった。お気楽に運営しているように見える「いたばしTIMES」も、一朝一夕で生まれたわけではないのだ。

それでも「何にも縛られず、好きなことで食っていきたい」というブロガーたちにとっては羨望の的であることに変わりはない。

 

f:id:Meshi2_IB:20190730204123p:plainちゅうぞう:最近では、いろんな方から「情報発信をどのように始めればいいか」と聞かれます。中には遠方から会いに来られる方もいますね。試しに一度「いたばしTIMESの作り方」というセミナーを開いてみたのですが、それもすぐに埋まりました。ブログ運営しながら自由に生きたいという方が、最近は本当に多いですよね。

 

会社に「住んでいた」ITベンチャー時代

世界一周の旅を経て、現在はブログの収入を得ているちゅうぞうさんは、たしかに自由に生きているような感じがする。

しかしそんな彼も、かつては激務に追われるサラリーマンだった。

 

f:id:Meshi2_IB:20190730204123p:plainちゅうぞう:僕が新卒の頃にいわゆるIT革命が起こり、「これからITの時代だ」と言われていたんです。それで文系出身なのにITベンチャーに、技術職のSEとして就職して。連日徹夜は当たり前で、もう会社に住んでる状態(笑)。ただ、イケイケのベンチャーで先輩や同僚を見て、「なんて仕事が速い人たちなんだろう」と衝撃を受けました。処理速度がとんでもないスピードなんですよ。自分が「いたばしTIMES」に質よりスピードを求めているのは、ITベンチャー時代の影響かもしれませんね。

f:id:Meshi2_IB:20190729225352j:plain

その後、同じ業界の大手IT企業に転職するも、時代が時代ということもあり、激務は変わらず……。

そして退職して、世界一周の旅に出ることに。帰国後はコンピューターではなく、人と向き合う仕事がしたいと考えるようになり、介護系の会社を起業。現在、ちゅうぞうさんは、社長として会社経営を行っている。

 

f:id:Meshi2_IB:20190730204123p:plainちゅうぞう:好きなものを食べて、好きなイベントに行って紹介する。わずかながら収入を得てはいるけど、遊びなんだか、仕事なんだからわからないみたいな。今まで窮屈さを感じながら働いていたので、窮屈さがない世界を作ろうとしたら、こういうスタイルに行き着いたという感じですかね。

 

目標を持たずにワイワイ楽しくやりたい

最近では、「いたばしTIMESを手伝うサロン」も運営。熱心なメンバーが、情報を集めてレポートしてくれるそうだ。

itabashi-times.com

 

また「いたばし部」という部活動もある。過去には、板橋区発祥の人気飲食店「やきとんひなた」の社長に、やきとんの作り方を教わるイベントを実施したり、

itabashi-times.com

 

創業120年を超える老舗鶏肉屋「鳥新」で、やきとりを焼くイベントを開催したりと、

itabashi-times.com

 

ブログ記事を更新するだけでなく、幅広く板橋に関する活動を展開している。

 

f:id:Meshi2_IB:20190730155637j:plain
▲創業120年を超える鶏肉屋「鳥新」は区内でも屈指の老舗。「ここで一度イベントをやるのが夢だった」とちゅうぞうさん

 

───癒やしを求めて始めたブログで収入を得る。そして読者向けのイベントを開催して、仲間ができる。それって、すごくいい循環ですよね。

 

f:id:Meshi2_IB:20190730204123p:plainちゅうぞう:そうですね。よく「いたばしTIMESの目標は?」と聞かれるのですが、何か大きい目標があり、逆算して行動に落とし込むみたいな仕事的な発想はしたくないんですよ。それをやってしまったら仕事と一緒で窮屈になりますよね。だから目標なんていらないわけですよ。まずは自分が楽しむことが第一。あと仲間とワイワイ楽しくやれればそれでいいんです。

 

【驚愕】実は板橋区民じゃなかった!

───「楽しめればいい」とはいえ、ここまで続けてこられたのも板橋愛あってこそなんでしょうか。

 

f:id:Meshi2_IB:20190730204123p:plainちゅうぞう:うーん、よく「板橋愛に溢れていますね」「板橋を盛り上げてくれてありがとう」とも言われたり、感謝されたりするんですけど、別に板橋区を盛り上げるためにやっているわけでも、板橋区の魅力を外の人に知ってほしいわけでもないんですよね。なんなら僕、北区民だし。

 

───ええええーー、板橋区民じゃないんですか?


f:id:Meshi2_IB:20190730204123p:plainちゅうぞう:はい。1日のほとんどを板橋区で過ごしますが、自宅はギリ北区です。板橋愛がモチベーションってよりは、板橋の情報を発信することが好きなだけです。

───もう「趣味が板橋」なんですね。

 

f:id:Meshi2_IB:20190730204123p:plainちゅうぞう:そうなんですよ! 趣味ですよ、趣味(笑)。他の人が釣りやアウトドアに行ったりするような感覚で、板橋の情報を発信している。それが、おもしろいから。

 

 「ブログで食う」というと、なにかビジネスとの抱き合わせだったり、いわゆる「意識高い」系の匂いをずっと感じていたが、ちゅうぞうさんに会ってそのイメージが一転してしまった。

目標も愛もいらない。

何かに夢中になった者は強い。

  

店舗情報

大山園

住所:東京都板橋区大山町6-8
電話:03-3956-0471
営業時間:10:00〜20:00(喫茶10:30〜20:00)、火曜11:00〜19:00
定休日:毎月第3火曜日、または第4火曜日

www.ohyamaen.jp

 

書いた人:名久井梨香

名久井梨香

フリーライター。東京都出身。新卒で大手広告会社に就職するも、会社員は向いていないと挫折。1年で退職し、その後フリーライターの道へ。趣味は、Jリーグとカレー。週1回、新宿ゴールデン街でバーテンダーもやっています。

過去記事も読む

トップに戻る