こんにちは。塩見なゆです。
居酒屋、中華料理店、自宅などビールを飲むシーンはさまざまですが、ビール好きにとって特別な場所といえば「ビヤホール」ではないでしょうか。
日本で初めてビヤホールが開業したのは1899年(明治32年)で恵比壽ビヤホールになります。
※恵比壽ビヤホールは銀座ライオンの起源であり、銀座ライオンが日本初のビヤホールとなっています。
銀座に何軒かある銀座ライオンですが、今回訪ねたのは1934年(昭和9年)竣工の、現存する最古のビヤホールである「ビヤホールライオン 銀座七丁目店」。2022年には、営業中の飲食店ながら、国指定の登録有形文化財(建造物)に登録されました。
ホールは高い天井の全面タイル貼り。奥にはビールの原料を収穫する風景を描いたモザイク画が壁一面にあります。まるで教会のような荘厳な佇まいですね。
銀座ライオンの魅力といえば、なんといってもビールの美味しさです。職人によって丁寧に注がれたビールは、雑味がなくのどごし爽快。お店の雰囲気も相まって、より美味しく感じます。
▲メニューは11月14日時点、ビヤホールライオン 銀座七丁目店の内容となります
そしてもうひとつ。そんなビールを引き立ててきた料理もまた、銀座ライオンが愛される理由でしょう。銀座ライオンは歴史あるお店ですから、幅広い年代のお客さんそれぞれに「銀座ライオンといえばコレ」という定番があります。
そんな豊富なメニューの中から、今回ご紹介するのはポークチャップです。
肉厚でしっかり火が通っているのに、びっくりするほどジューシーで肉汁たっぷり。絡んだソースも格別です。自宅でもこんなに美味しいポークチャップが作れたら……と思っていたところ、なんとポークチャップの作り方を取材させていただけることになりました!
作り方を教えてくれたのは、ビヤホールライオン 銀座七丁目店 総料理長の藁谷隆朗さん。自宅でもコツを守れば、ジューシーで美味しいポークチャップができるそうなので、早速作り方を教えていただきました。
ビヤホールライオン 銀座七丁目店のポークチャップができるまで
塩見なゆ(以下、塩見):本日はよろしくお願いします。
藁谷隆朗さん(以下:藁谷シェフ):こちらこそよろしくお願いします。みなさんが美味しいポークチャップを作れるように、頑張ってお伝えしていこうと思います。何でも聞いてください。
塩見:ありがとうございます! 心強いです。
藁谷シェフ:では早速ポークチャップを作っていきます。出だしから下処理をしたお肉が登場して恐縮なんですが、白ワインとオリーブオイルを合わせた液に30分ほど漬けておいたスジ切りをした豚ロースを使用します。
塩見:家庭でポークチャップを作るには、豚ロースを選ぶのがいいですか? ちなみに美味しい豚ロースの選び方などはありますか?
藁谷シェフ:そうですね。豚ロースがいいと思います。選び方ですが、赤身と脂身のバランスに注意するといいですよ。写真下は脂身が少ないので、写真上のような脂身がしっかり入っているものを選ぶと、ジューシーさが出やすいと思います。
塩見:そうなんですか!
藁谷シェフ:キッチンペーパーで軽く水気を取ったら、両面に塩、片面にブラックペッパーをふりかけます。
塩見:ブラックペッパーは片面だけなんですね。
藁谷シェフ:はい、最初に焼き上げる面のみにふりかけています。ブラックペッパーは焼き上げると香ばしさが出るので、香りを全体にほどよくつけるために片面のみにふっています。
藁谷シェフ:フライパンに油を引いて強火で熱したら、豚ロースを入れます。片面を強火できつね色になるまでしっかり焼き色をつけます。
塩見:厚切りの豚ロースでも強火で焼いていくんですね。
藁谷シェフ:片面を強火でしっかり焼き上げることで、肉汁が出ていくのを防ぐ狙いがあります。豚ロースは、焼きすぎるとパサッとした食感になるので、火入れは非常に重要です。
藁谷シェフ:きつね色になったら裏返して、残りの面に軽く焼き色をつけていきます。全面を焼き固めて肉汁が出ていくのを防ぐためなので、最初の片面ほど火にかける必要はありませんよ。
塩見:この状態で焼き上がりでしょうか?
藁谷シェフ:いえ、ここからはオーブンでじっくり火を通していきます。全体に焼き色をつけたところでフライパンからおろし、200度に熱したオーブンで4分ほど加熱します。フライパンだけではなく、ゆっくり加熱できるオーブンを使うところがポイントです。
塩見:自宅にオーブンがない場合はどうすればいいでしょうか?
藁谷シェフ:ご自宅で作る場合は、オーブンレンジや魚焼きグリルでも代用できます。
魚焼きグリルを使用する場合は、網を一番低い位置にセットするのがポイントです。できる限り遠火にした状態で、弱火で4分ほどゆっくり火入れをすることで、オーブンで焼き上げたようなジューシーな仕上がりになりますよ。
塩見:魚焼きグリルがオーブンの代わりになるんですね!? 魚焼きグリルにこんな使い方があったなんて……。
藁谷シェフ:フライパンのみで加熱してしまうと、火が入りすぎてしまうことがあると思います。各面に焼き色をつけてから、オーブンや魚焼きグリルでゆっくり火を通すと、ジューシーに仕上がりますし、生焼けや失敗が起こりづらいのでおすすめです。
続いて、オーブンからお肉を取り出したらアルミホイルでお肉を包みます。余熱でお肉の中までじっくり火入れをしていきます。肉汁を落ち着かせる効果もあります。
藁谷シェフ:お肉を軽く押してみて中がグニャッとしていたり、竹串を刺して中心の温度を確かめたりしてみてください。中心まで火が入りきっていないようであれば、アルミホイルで包んだまま、オーブンでさらに1〜2分ほど加熱してみてください。
塩見:アルミホイルに包んだまま、加熱してもいいんですね。
藁谷シェフ:問題ありません。お肉が直接露出していないので、よりゆっくりと火が入ります。火入れの最終調整がしやすくなると思いますよ。
藁谷シェフ:オーブンとアルミホイルでの加熱が終わったら、弱火で熱したフライパンにお肉を戻します。包んでいたアルミホイルに多少肉汁が出ていると思いますので、それも合わせて投入してください。
藁谷シェフ:ここで当店特製ソースをお玉一杯分(約90cc)投入します。すでに火入れはできているので、お肉と特製ソースを絡める程度で大丈夫です。
塩見:この特製ソースが美味しいんですよね。自宅で近い味を再現するには、どうすればいいでしょうか?
藁谷シェフ:市販の中濃ソースにケチャップ、からしを合わせると近い味は出せるんじゃないかと思います。当店では隠し味にハバネロソースを少々使用していますが、ご家庭ではホットソースを使用すると味が締まるはずです。
藁谷シェフ:お肉と特製ソースがよく絡まったら、一口サイズにカットしておきましょう。続いて付け合わせを作っていきます。
藁谷シェフ:ビヤホールライオン 銀座七丁目店ではポテトフライとオニオンソテーを付け合わせにしています。
ポテトフライは5分ほど、輪切りにした玉ねぎは1分ほど180度の油で揚げていきます。
藁谷シェフ:玉ねぎは油をよく切り、フライパンで弱火にかけながら先ほどの特製ソースをかけて軽く和えます。
藁谷シェフ:全体がよく絡んだらオニオンソテーは完成です。
藁谷シェフ:ポテトフライは油をよく切ったらボウルに入れて、塩をふりかけておきます。
藁谷シェフ:オニオンソテーとポテトフライを熱した鉄板に盛り付けておきます。もちろんご自宅で作る場合は、普通のお皿に盛っていただければ大丈夫ですよ。
藁谷シェフ:そこにカットしたお肉をのせて……
藁谷シェフ:フライパンに残ったソースを温めて、上から豪快にかけます。
藁谷シェフ:最後にクレソンをのせれば、ビヤホールライオン 銀座七丁目店特製のポークチャップの完成です! 別添で提供している生クリームをかければ、よりコクが出ますよ。
塩見:お肉の火入れと特製ソースが味の決め手になりそうですね。本日はご丁寧に作り方を教えていただき、ありがとうございました!
藁谷シェフ:こちらこそありがとうございました。ポークチャップは火入れ次第で美味しく食べられる料理なので、ぜひご自宅で作ってみてください。
厚切りのお肉がびっくりするほどジューシーに
さて、できたてのポークチャップをいただきましょう。
ビヤホールらしいボリュームたっぷりの一品です。特製ソースが鉄板で焦げた匂いだけでビールが飲めてしまいそうです。
生クリームを全体にかけたら、コントラストも美しく非常に美味しそうです。
ビヤホールライオン 銀座七丁目店ではナイフとフォークも用意されていますが、基本的にほとんどの料理が箸で食べられるようになっています。つまみやすいのもビール好きにはうれしいですね。
断面を見ていただければお分かりかと思いますが、非常にしっとりジューシーに焼き上がっています。濃厚なソースのうま味と表面の香ばしさを感じた後に、豚ロースのジューシーな肉汁がやってきます。
丁寧に火入れされた豚ロース肉はこんなにしっとりしているのか……と感激してしまうほどの仕上がりです。
上品な豚ロースの脂をこだわりのビールと合わせれば、もう間違いありません。付け合わせのオニオンソテーや、ソースを吸ったポテトフライも最高で、ビールが止まらなくなる一品でした。
まとめ
今回はビヤホールライオン 銀座七丁目店のポークチャップの作り方を丁寧に教えていただきました。
豚ロース肉はスーパーなどでも手に入りやすい食材ですが、調理次第ではパサパサとしてしまうこともありますよね。
今回教えていただいた火入れ方法や、魚焼きグリルの使い方、下処理の方法を参考に、美味しいポークチャップを自宅でも作ってみてください。また、お近くに来られた際には、職人の技を味わえる銀座ライオンにぜひ足を運んでみてくださいね。
お店情報
ビヤホールライオン 銀座七丁目店
住所:東京都中央区銀座7-9-20 銀座ライオンビル1F
電話番号:03-3571-2590
営業時間:月~木、日、祝日:11:30~22:00(料理/ドリンクL.O. 21:30)
金、土、祝前日:11:30~22:30 (料理L.O. 22:00 ドリンクL.O. 22:00)
定休日:なし
書いた人:塩見なゆ
酒場案内人(飲食・酒類専門ライター)。東京都杉並区・荻窪生まれ。 得意分野は街と酒。 新宿ゴールデン街に通ったお酒好きの両親を持つ。両親が飲んでいた瓶ビールに憧れて成長する。趣味からはじまった酒場めぐりは、次第に仕事になっていく。