こんにちは! 料理家の美窪たえです。
今回は、サバ缶と納豆を使った山形県の郷土料理「ひっぱりうどん」をご紹介します。
ひっぱりうどんとは、山形県の郷土料理で、ゆでたうどんを鍋から直接ひっぱり出して、具材がたっぷり入ったタレにつけて食べる料理です。
雪の多い冬場に食べられてきた温かいうどんなのですが、暑い時期の冷やしひっぱりうどんも最高においしいんです! ということで夏にぴったりな冷やしバージョンのレシピをお届けしていきます。
そしてひっぱりうどんは、サバ缶と納豆と卵を使った栄養たっぷりのつけダレでいただくことも特徴です。個性強めのつけダレは、食べ応えがある上に、タンパク質も取れるので栄養面でも大変うれしい料理です。
材料さえそろえれば、うどんをゆでてたちまち完成というお手軽な料理ですが、その代わりに欠かすことのできない特徴的な材料が三つありますので、最初にそれらの食材をご紹介していきます。
「ひっぱりうどん」に欠かせない三つの材料
一つ目の材料はサバ水煮缶です。
常温で長期保存が可能な缶詰は、冬が厳しい山形県のような山間地では特に重宝される保存食。その中でもサバ缶は、ひっぱりうどんの味わいにも欠かすことのできない食材となっています。
ひっぱりうどんではサバの身だけを使いますので、缶に残った汁はおみそ汁に入れるなど、おいしく食べ切ってください。
二つ目の材料は納豆です。
一説によると、ひっぱりうどんの名前の由来は、納豆が糸を引く(ひっぱる)からともいわれています。サバとの相性もいいので、こちらも欠かすことはできませんね。
三つ目の材料はうどん(乾麺)です。
冬の間に家にあった保存食を活かして考えられたメニューであるというひっぱりうどんは、保存が利く乾麺を使うことが一般的です。
サバ缶と納豆を使う独特なつけダレは、つゆというより具の存在感が強いので、やや細めのうどんの方が断然絡みやすく、味わいの面からも最適で欠かせない材料です。
これらの材料がそろえば、あとは簡単に山形の郷土料理を味わうことができます。今回は夏仕様の冷たいひっぱりうどんの作り方を紹介しますが、本来の温かいひっぱりうどんも作り方は非常に似ていますので、ぜひ参考にしてみてください。
それでは早速作り方を紹介していきます。
材料 1人前
- うどん(乾麺)……1束(80〜100g)
- サバ水煮缶……1/2〜1缶(身のみ使用)
- 納豆……1パック(タレつき)
- 卵……1個
- 青ネギ……1/2本
〈めんつゆ〉
- しょうゆ……大さじ2
- みりん(煮切ってアルコールを飛ばしたもの)……大さじ1と1/2
- だし……150cc ※市販のめんつゆで代用も可
「冷たいひっぱりうどん」の作り方
1.めんつゆを準備します。しょうゆ、みりん、だしを合わせて冷蔵庫で冷やしておきます。
※市販のめんつゆを表記通りに調整したもので代用可能です。
2.青ネギを小口切りにしていきます。
ネギの種類はお好みですが、緑黄色野菜でもある青ネギを使うのが個人的にはオススメです。辛みが少ないので具材の一つとしてたっぷり食べられて、彩り的にもパワーアップできます。
これであっという間に材料の準備ができましたので、うどんをゆでて完成させていきます。
3.鍋に1リットル程度(分量外)の水を中火にかけて沸かし、うどんを入れます。
うどんをお湯に沈めたら、麺同士がくっつかないように軽く混ぜて10秒ほど泳がせてから、ふたをして、火を止め、そのまま放置します。放置時間は、パッケージに記載されているゆで時間から2分を引いた時間が目安です。(7分ゆでのうどんなら、5分放置)
火を止めて放置しているだけなので、吹きこぼれの心配がなく、目を離しても問題なし。火にかけ続けるのと変わらない時間でほどよい硬さになりますよ。
※火加減や鍋の種類によって、うどんを放置する時間にばらつきが出る可能性があります。うどんの状態を確認しながらお好みの硬さになるように調整してください。
4.うどんを放置している間、おわんにサバ缶の身の部分、タレをあわせた納豆、青ネギ、卵をバランスよく盛りつけておきます。納豆にタレがついていなければ、食べるときにめんつゆ(分量外)で味を調整してください。
事前に作っておいためんつゆを入れれば、つけダレはできあがりです。
5.うどんの放置時間が経過したら麺の硬さを確認し、柔らかくなっていればザルで湯切りして、流水でよく洗います。
6.深さのある器にうどんを盛りつけて、冷水と氷(共に分量外)を入れ、つけダレと一緒に卓上に並べれば、冷たいひっぱりうどんの完成です!
うどんの上に氷を浮かべると、見た目にも涼しげで、ずっと冷たい状態で食べられますよ。
冷たいひっぱりうどんの楽しみ方
具材がたっぷりのつけダレですが、サバの身をどのタイミングでどの程度崩すかは完全にお好みです。細かくほぐさずに具として食べたり、最初から崩してしっかり納豆に混ぜ込んだりして一体化させるのもありです。
うどんは、器の縁で水気を切りながらつけダレのおわんにひっぱってくるのが、食べ方のコツです。
冷水を張っておくとうどん同士がくっつかないのでツルツルと食べやすく、その水を器の縁で切りながら食べ進めればつけダレの味が薄くなりにくくて、冷たいままおいしく楽しめます。
納豆の粘りを存分に活かして、うどんにつけダレをしっかりと絡めて食べると、具材のうま味がたっぷりと口の中に運ばれてきます。やはりうどんの細さがポイントで、絶妙なバランスです。
食べているうちにタレに流動性がなくなったり、味が薄くなったりしたら、めんつゆを足して調整してくださいね。
まとめ
つけダレは、サバ缶の代わりにツナ缶を使ったり、大根おろしやかつお節、キムチや天かす、マヨネーズを加えたりして味変も行われているようです。冬は釜揚げスタイルで鍋からひっぱる形式もアツアツでおいしいですよ。
基本的に家にあるもので楽しむ自由な料理なので、ぜひお好みの味わいを見つけてみてください。それでは。
書いた人:美窪たえ
料理する人、食べる人。J.S.A.認定ソムリエ、SAKE DIPLOMA。OLからバーテンダー⇒日本料理人⇒フレンチコック⇒アメリカンデリという、異色の経歴を持つ料理家。料理のおいしさと酒への思いを発信するユニット[おとな料理制作室]としても活動。著書『おとな料理制作室へようこそ』(ワニブックス)が好評発売中。