タイ出身シェフに学ぶ手近な食材で作る本格「鶏肉ハーブサラダ」の極意

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タイ王国の東北部・イサーン地方の定番料理

暑くなるほどに辛いものを欲する人に勧めたくなるのがタイ料理。そこで、筆者が行きつけのイサーン料理店「トンホム」にやってきました。

 

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イサーン料理とはタイ王国の東北部・イサーン地方で食べられている料理。

 

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イサーン出身の店主・ドームさんが2004年に新井薬師前にオープンした「トンホム」は、本格派エスニックが味わえるとじわじわ評判を呼び、グルメ雑誌などでも取り上げられました。

お店は2014年に現在の中野駅南口に移転。以前の店舗より3倍以上も広くなりました。

本日はイサーンの代表的な料理であり、トンホムの定番メニュー「あら挽き鶏肉のハーブサラダ(以下、鶏肉ハーブサラダ)」(918円)の作り方を教えてもらうことにしました。

タイでの正式名称は「ラープガイ」で、“ラープ”とは肉などを使ったサラダのことで、“ガイ”とは鶏肉のこと。

ひき肉なら何でもよく、豚肉で作るものは「ラープムー」、牛肉だと「ラープヌア」と言います。タイも日本同様、鶏肉が最も安価で、非常に多く食べられているので「ラープ」と言えば「ラープガイ」なのです。

ハーブの風味と唐辛子の辛さ、レモンの酸味が合わさった逸品なので、ぜひ正体を知りたいと前々から思っていました。

今回、ドームさん鶏肉ハーブサラダのレシピを聞いたところ、食材は日本のスーパーでも代用品が容易に入手でき、しかも驚くほど簡単に作れてしまうシンプルな料理だということが判明したのです!

 

鶏ひき肉以外は炒めない手軽な調理法

材料(1人前)

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  • 鶏ひき肉(むね肉3:もも肉7の割合) 100g
  • タイのレモンを搾った汁 大さじ1(日本のレモンでも可)
  • ナンプラー 大さじ2
  • 赤玉ねぎ 30g(玉ねぎなら何でも可)
  • 万能ねぎ 1本
  • タイの粉唐辛子 小さじ1(日本の粉唐辛子でも可)
  • タイのもち米を岩塩と共に炒り、砕いたもの 大さじ1(日本米でも可)
  • ハーブ類(詳細は後述)
  • 鶏ガラスープ 大さじ2(粉末スープの素を水で溶いたものでも可)
 

f:id:exw_mesi:20190703111705j:plainドームさん(以下敬称略):鶏ひき肉の配合は僕のこだわりですが、少ない脂分が好きな人はむね肉の割合を多くしてください。

 

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普通の玉ねぎよりも甘い赤玉ねぎが適しているそうです。

本場タイのイサーンでは、ホムデンと呼ばれる赤い小さなエシャロットの一種が使われます。

 

f:id:exw_mesi:20190703111705j:plainドーム:日本産なら、新玉ねぎが柔らかくて甘いので、おいしく作れます

 

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3ミリくらいの薄さで切っていきます。

 

f:id:exw_mesi:20190703111705j:plainドーム:玉ねぎが古い場合は、水にさらして辛みを抑えるといいです。

 

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万能ねぎの根っこを切り落として、

 

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8ミリ程度の長さで刻みます。

 

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緑の部分も白い部分も使います。

 

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使用するハーブ類は季節によって変わりますが今回は5種類。

向かって右からパクチー、パクチーファラン、バイパオ、ペパーミント、スイートバジル。

 

f:id:exw_mesi:20190703111705j:plainドーム:家庭ではパクチー、ペパーミント、スイートバジルの3つがあれば十分です。ハーブが苦手だったり、入手が困難な場合は春菊、三つ葉、クレソン、セロリの葉などでも代用できます。

 

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パクチーよりも香りが強いパクチーファラン。通販のクール便などで入手可能です。

 

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バイパオはタイの北部でしか穫れないハーブで入手困難。トンホムではハーブの仕入れは、輸入会社や日本の農家などのルートを利用していますが、ドームさんは自宅でも栽培しているそう。

 

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パクチーなどのハーブ類は手でちぎります。

これが大きなポイントで、包丁を使うよりも香りが出ます。

ここでは撮影上、事前にちぎってますが、放置するほどに香りが失せていくので、鶏ひき肉を炒め終わった後にちぎって添えてください。

 

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タイのもち米を炒って砕いたもの。岩塩を少量混ぜて炒る理由は焦げ防止のため。日本米でも代用できます。

 

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いよいよ調理開始。

トンホムでは日本の雪平鍋を使用。まず、鶏ひき肉を強火にかけます。鶏もも肉に脂があるので、油は使いません。

 

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軽く火が通ったところで、肉が焦げないように鶏ガラスープ(濃さはお好みで)を大さじ2杯ほど投入。

 

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家庭用のコンロでは強火のままで炒めます。弱火だと肉が硬くなってしまいます。

 

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スープの水分がほぼ飛ぶまで炒めます。

 

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火を止めて玉ねぎを投入。

 

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すぐさま万能ねぎも投入。

 

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たて続けに炒ったもち米&岩塩も投入。

 

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粉唐辛子も投入。日本の粉唐辛子でも代用できますが、風味が大きく異なるので、本格的な辛さを求めるなら通販でも買えるタイ産の粉唐辛子を調達したいところ。

 

f:id:exw_mesi:20190703111705j:plainドーム:産地によって粉唐辛子の辛さは違うので、お好みで調整してください。

 

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休む間もなくナンプラー追加。

 

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レモン汁を投入。火を止めてから投入した食材(ハーブ類は除く)や調味料は、どんな順番で入れてもよいそうです。

 

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まんべんなく混ぜます。

 

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最後にハーブ類を入れてひと混ぜ。

つまり、鶏ひき肉以外は炒めません!

 

f:id:exw_mesi:20190703111705j:plainドーム:タイは暑い国なので、肉に臭みが出やすいんです。その臭みを取るために玉ねぎやハーブを最後に混ぜるんです。

 

 付け合わせ

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  • キャベツ 2枚
  • キュウリ 4分の1本
  • ハーブ類

付け合わせですが、キャベツは必須。あとは鍋にも入れた季節のハーブ類を散りばめれば彩りも抜群。お好みでタイ料理によく添えられる斜め切りしたキュウリ2枚も。

 

f:id:exw_mesi:20190703111705j:plainドーム:キャベツはタイのものより日本のキャベツのほうがおいしいです。キュウリはタイ産のほうがみずみずしいですね。

 

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付け合わせの横に、豪快に盛り付けます。

 

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ついに完成です。右はシンハービールとラオスビール。鶏肉ハーブサラダのうまさと辛さはビールの最良の友ですよ!

 

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もちろん、ごはんにも合います。日本米でOKですが、トンホムではジャスミンライス(タイの香り米)、もしくは蒸したもち米から選べます。

 

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イサーンの屋台では、タイのもち米を蒸した「カオニャオ」と呼ばれるタイ式おこわでいただくのがポピュラー。ドームさんに食べ方を教えてもらいます。

 

f:id:exw_mesi:20190703111705j:plainドーム:ゴルフボール大のカオニャオを手で握り、親指、人指し指、中指の3本でつまみます。

 

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f:id:exw_mesi:20190703111705j:plainドーム:握ったカオニャオを鶏肉ハーブサラダにグッと強く押し当てて食べます。

 

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汁を吸ったカオニャオに、親指で鶏肉を押さえつつ、口に放り込む。

アローイ!(おいしい!)

鶏肉の脂、ナンプラー、レモン汁、ハーブの香りに恍惚となり、唐辛子の辛さも心地よく、カオニャオが止まらなくなること必至。

 

f:id:exw_mesi:20190703111705j:plainドーム:シンプルに鶏肉ハーブサラダをキャベツに乗せて食べてもおいしいですよ!

 

──熱いままでもよし、冷めてもよしですね。

 

f:id:exw_mesi:20190703111705j:plainドーム:個人的には生ぬるいくらいが一番おいしいと思います。

 

──同意です! 炊きたての日本米に乗っけてレンゲで食べる「鶏肉ハーブサラダ丼」もおいしそう……。それにしても、あまりにも辛くてビールが進みました。トンホムでは辛いのが苦手と伝えれば、唐辛子の量を控えてくれるんですよね?

 

f:id:exw_mesi:20190703111705j:plainドーム:もちろんです。タイでは子供もラープを食べます。子供には辛い物は食べさせないので唐辛子を抜いて作ります。 

 

タイの若い世代はパクチーが苦手?

──ラープは昔からある料理なんですか?

 

f:id:exw_mesi:20190703111705j:plainドーム:いつからあるかは分かりませんが、僕は子供の頃から食べてます。昔は肉がなかなか手に入らなかったので、ラープはお祝いの席で食べる料理だったんです。イサーンはタイの東北地方で、バンコクなど都市圏に出稼ぎする人が多くて、1年に1回帰る時などに、鶏や豚、牛を殺して食材にするんです。

 

──トンホムでは鶏肉ハーブサラダの値段は918円ですが、タイでの相場は幾らぐらいですか?

 

f:id:exw_mesi:20190703111705j:plainドーム:60~80バーツ(200円〜300円)ぐらいですね。

 

──それはタイまで飛んで食べる価値が大いにありですね。首都バンコクでもラープは当たり前のようにありました。ただ味の違いが今ひとつ分からなかったのですが、本場イサーンと作り方に違いはあるんですか?

 

f:id:exw_mesi:20190703111705j:plainドーム:手に入るハーブ類がイサーンのほうが豊かなので、味の違いはそこにあると思います。あと、イサーン料理は砂糖を入れないけど、それ以外の地方のタイ料理では砂糖を使うことが多いです。イサーン料理は砂糖を使わず玉ねぎで甘さを出すんです。

 

──トンホムではハーブを何種類くらい使ってるんですか?

 

f:id:exw_mesi:20190703111705j:plainドーム:常時4種類、多い時は7種類ぐらい使います。

 

──パクチーは、実はタイの人はそんなに好んで食べないとの話も聞きますが。

 

f:id:exw_mesi:20190703111705j:plainドーム:そうですね。タイ人でも今の世代の人はハーブをあまり食べなくなってます。パクチーを含めて、香りの強いハーブが苦手になってるんです。

 

──原因は何なんでしょうか?

 

f:id:exw_mesi:20190703111705j:plainドーム:外国の料理が普通に食べられる環境になったからだと思います。食事の選択肢が増えて、子供の頃から外国の料理を好きになってしまったらハーブは食べなくなるし、辛い料理も苦手になってしまいます。

 

──日本人でも梅干しやたくあんがダメという人がいますからね。近年、日本人のほうがタイ人よりもパクチー好きが多いと言われてますもんね。

 

f:id:exw_mesi:20190703111705j:plainドーム:そう思います。トンホムでは、ハーブは苦手だけど鶏肉ハーブサラダを食べたいというお客さんがいたら、ハーブを少なくして作ります。

 

──トンホムの人気メニューベスト3を教えてください。

 

f:id:exw_mesi:20190703111705j:plainドーム:鶏肉ハーブサラダが一番人気で、次に生春巻き、パッタイ(ライスヌードルを用いた焼きそば)ですね。

 

──生春巻きはベトナム料理ですよね。

 

f:id:exw_mesi:20190703111705j:plainドーム:そうです。僕はタイのイサーンで生まれたんですけど、ベトナムとラオスのハーフなんですよ。

 

──そうだったんですか。

 

f:id:exw_mesi:20190703111705j:plainドーム:イサーンの屋台には昔からベトナム料理もラオス料理もあって、ラープも元はラオス料理で、それがタイの東北部に伝わったんです。

 

──イサーンとラオスは国境を接してますからね。

 

f:id:exw_mesi:20190703111705j:plainドーム:僕は生春巻きを食べて育ったので、トンホムのメニューにも入れたんです。

 

───タイ料理が苦手という方にアドバイスはありますか。

 

f:id:exw_mesi:20190703111705j:plainドーム:タイ料理は辛いと思われているけど、辛さだけではないので、一度ぜひ食べてみてほしいですね。「パクチーは好きだけどミントがダメ」などの要望にはその都度応えて料理を作ります。初心者の方におすすめのコースなどもありますし、お客さんと会話しておいしい料理を提供したいと思っています。

 

中野の路地裏で味わえるイサーン料理

中野駅南口すぐのレンガ坂を上りきった所にあるトンホム。

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昼のランチによし、夜の飲み会によし、1人でも気軽に入れるお店です。絶品のイサーン料理が盛りだくさん。ビール、サワー類などお酒の種類も豊富。

ドームさんを始め、気さくなタイ人スタッフが笑顔で接してくれます。

中野の路地裏で「微笑みの国」と呼ばれるタイへの小旅行感を、どうぞ堪能してください。

 

お店情報

居酒屋トンホム中野南口店

住所:東京都中野区中野3-35-6
電話番号:03-3383-3595
営業時間:ランチ/月曜日〜日曜日11:00~15:00(14:30 LO)ディナー/月曜日~木曜日、日曜日・祝日17:00~翌1:00(24:00 LO)、金曜日・土曜日17:00〜翌2:00(25:00 LO)
定休日:無休

thonhom.web.fc2.com

 

書いた人:沢木毅彦

沢木毅彦

インタビュー、映像作品レビュー、企業取材、配信サイトの番組紹介などをやっているライター。居酒屋でスマホいじりながらの一人飲みが最大の贅沢。食事は自炊派で、作るのが簡単な麺類を愛好。米のごはんは週1回程度でOK。その際は納豆か卵は必須。外食ならラーメンは天下一品のこってり、カレーはcoco壱番屋の10辛。激辛好き。巨人ファン。

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