22年間昆虫を食べ続ける26歳オーナーが営む昆虫食レストランのコースメニューが想像以上にガチだった

昆虫に精通したオーナーと、調理、食材、発酵、酒などのスペシャリストたちが集結した昆虫食専門のレストラン「ANTCICADA(アントシカダ)」。ゲテモノ料理と捉えられがちな昆虫食をフレンチさながらのコースで提供する同店に、昆虫食初心者のおじさんライターが訪問。昆虫食のイメージを覆す、美しく芳醇な料理の数々を食レポします。

エリア浅草橋(東京)

f:id:exw_mesi:20200927215606j:plain

将来起こり得る食糧危機の解決策とされ、未来のタンパク源として期待されている昆虫食。

一方で、まだまだゲテモノ扱いされている昆虫たち。

そんな昆虫食のマイナスイメージを覆す、昆虫食専門のレストラン「ANTCICADA(アントシカダ)」が東京の日本橋に誕生しました。

オープンは2020年6月4日。「虫の日」にちなんでいます。

タイ料理店で、揚げたイナゴくらいしか昆虫を食べたことがない当方、ぜひいろんな昆虫を味わってみたいと、このたび予約を入れました。

 

お店のオーナーは1994年4月11日生まれの篠原祐太さん。

f:id:exw_mesi:20200927220805j:plain

幼少時からあらゆる野生の恵みを味わってきた果てに、このお店を開業。

スタッフはみんな20代という若さで、昆虫に精通した篠原さん以下、調理、食材、発酵、酒などのスペシャリストたち6名が集結しました。

 

f:id:exw_mesi:20200927220833j:plain

ANTCICADAは、日曜日は「コオロギラーメン」(1,100円)、完全予約制の金曜日と土曜日は「地球を味わうコース料理」(7,040円)と2つの営業形態で、昆虫を中心とした食材の魅力を味わえます。

 

f:id:exw_mesi:20200927213521j:plain

お店はコの字型のカウンターで、席は13人分。この日は土曜日で、僕とカメラマンの2人を含め、予約客で満席となりました。

1人および2人連れの男性、ご夫婦、大学生のカップルといった面々。皆さん、口コミで興味を持って集まってきた昆虫食初心者のようです。

 

この日のコースメニューは全9品。

 

わくわく高揚を覚える単語が並んでいます。

アルコールペアリング(3,960円)と、ノンアルコールペアリング(3,960円)を選べるので、酒好きの当方、お酒付きを迷わず選択。

料理が運ばれてくるたびに、篠原さん以下スタッフが、素材や調理法を解説してくれました。

 

1品目「ようこそ〜 スナック」

スタートはコオロギ尽くし。

 

f:id:exw_mesi:20200927214057j:plain

おつまみは、出汁をとった後のコオロギを揚げたコオロギチップス。これ自体は、えびせんにも似た淡白な味わい。写真では分かりにくいですが、燻製にした唐辛子、発酵させたマッシュルーム、コリアンダーのパウダーが上にかかっていて、華やかな香りをもたらします。

コオロギチップスに混じっている黒いツブツブは、「たかきび」という黍(きび)の一種。ポリポリした食感もいいアクセントになっています。

コオロギってこんなに香ばしいんだ、と納得&感動。

コオロギのエキスが入ったコオロギビールは、味も焦げたような香りも、見た目どおり黒ビールに近いです。もっちりした泡までおいしい。

 

f:id:exw_mesi:20200927231318j:plain篠原:焙煎したコオロギをベースに、埼玉県にある醸造会社「所沢ビール」と共同開発したものです。

 

f:id:exw_mesi:20200927221615j:plain

▲「コオロギビール」(880円)は店内販売もしている

 

2品目「夕涼み〜 穴子、ざざむし、ズッキーニ」

まず出てきたのは、千葉県勝浦市にある酒蔵で作られている、よく冷えた日本酒。微炭酸を含んでいて、マスカットのような香りが心地よいです。

 

f:id:exw_mesi:20200927214139j:plain

日本酒を半分ほど飲んだ段階で、添えられた小瓶の液体を混ぜて飲むように告げられました。小瓶の中身はミントの入ったブランデーが原料のお酒。

 

f:id:exw_mesi:20200927214216j:plain

日本酒と一緒に食すのは、2時間蒸した穴子にズッキーニを添え、ミントの葉をのせたもの。

ドロリとしたソースは、川にいる「ざざむし」とバターを合わせたものです。

ざざむしは、トビケラ、カワゲラ、ヘビトンボなどの幼虫で、昆虫食好きにはよく知られた存在です。

 

f:id:exw_mesi:20200927214720j:plain

ざざむしのソースによって、どれだけ野趣に富んだ味わいになるのかと口に運んだところ、なんとなんと、とてつもなく濃厚かつまろやか。周囲のお客さんも「うまい」「おいしい」とざわついています。

 

f:id:exw_mesi:20200927231318j:plain篠原:ざざむしは非常に味がいい昆虫で、昔から佃煮にされているのを見て、「もったいないな」と思っていたんです。タラコみたいな風味で、海の幸のような磯っぽい香りもあるので、たっぷりのざざむしを使ってソースを作りました。

 

途中でミントの小瓶を日本酒に注いで啜ると、濃厚なソースを中和するような爽快感で、口の中がさらなる多幸感に満たされました。

 

3品目「夏〜 ツルレイシ、鮎」

昆虫はひと休みです。またも味の想像がつかないものが登場。

 

f:id:exw_mesi:20200927214908j:plain

メニューにあるツルレイシは初めて耳にしましたが、ゴーヤのことでした。

外側をピクルスにしたゴーヤで、中に包まれている食材はオイルに漬けて煮る調理法「コンフィ」にした鮎。これに、キヌアという雑穀の揚げたものをまぶしています。

「手でゴーヤの部分をつまんで食べて下さい」と言われたとおり、パクッ。川魚の風味が残る柔らかい鮎の身と、プチプチしたキヌアの食感、そこに苦みと酸っぱさのあるゴーヤ。これらが一体となると、ギュッとうまみが凝縮。

初めて体験する味ですけど、いくらでも食べられます。

 

f:id:exw_mesi:20200927214945j:plain

合わせるお酒は、主にタガメのシロップが入ったジントニックこと「タガメトニック」。グラスの中の野菜は薄く切ったキュウリ。

いただく前にお店のスタッフが、ベースとなるジンやシロップの詳しい成分や製法を解説してくれます。

飲んでみるとキュウリとは違う青臭い香りがします。

この青臭さの正体こそタガメでした。

 

f:id:exw_mesi:20200927215019j:plain

ANTCICADAでは、オスのタガメだけを使用。

えっ、オスのタガメってこんな爽やかな香りだったの!?

 

f:id:exw_mesi:20200927231318j:plain篠原:嫌みのないフルーティーな香りでしょう?

 

見た目はいかついタガメですが、爽やかハーブの香りというギャップに驚きました。大いなる感動です。

 

4品目「お蚕さん〜 カイコ、ハーブたち」

もちろん初めての蚕(カイコ)体験です。まったく味の想像がつきません。

 

f:id:exw_mesi:20200927215123j:plain

素揚げにした蚕のサナギとハーブを混ぜたもの。かかっているのは、蚕のサナギを発酵させた「蚕のしょうゆ」です。

 

f:id:exw_mesi:20200927215149j:plain

全体的にハーブのサラダとして何の抵抗もなく食べられますが、苦みの混じった昆虫らしい味も感じました。昆虫食の醍醐味を味わえて満足です。

 

f:id:exw_mesi:20200927215229j:plain

▲使用している蚕を見せてくれました

 

f:id:exw_mesi:20200927231318j:plain篠原:ANTCICADAでは状態のいい蚕を使っています。蚕は通常、糸をとるために育てられている昆虫で、繭の中に入っているのが、皆さんが食べているサナギなんです。鍋で繭をゆでて糸をとるんですけど、サナギって基本的にゆでられた状態のものしか手に入らないんです。でも今回はゆでる前に繭をカットして、サナギを1匹1匹取り出して送ってもらったので、鮮度の高い蚕なんです。

 

お酒は、今年になって発売されたという純米大吟醸。醸造されたのが2017年という3年物の日本酒です。かなり酸味が効いた癖の強い味わい。苦みのある蚕のサナギとの相性も抜群です。

 

5品目「セミの気持ち」

中盤で樹木を模した食器が出てきました。

 

f:id:exw_mesi:20200927215313j:plain

木の幹にはいくつか穴が開いていて、ストローを差すと「樹液=ジュース」を飲める穴が2カ所あり、それぞれ違う樹液が味わえるということで、セミになった気分で飲んでみました。

 

f:id:exw_mesi:20200927225918j:plain

飲める穴を当てて、2種類をクリア。樹液は香りしか嗅いだことがないですけど、たしかに樹液っぽい気もして、フルーティーでおいしいです。

 

f:id:exw_mesi:20200927231318j:plain篠原:それぞれのオリジナルドリンクの中身を当ててみてください。

 

何かの味に似ている、セロリっぽいな……リンゴっぽくもある……と、考えているうちに正解を告げられ、なるほどと納得。今までに当てたお客さんは少ないらしいですが、これから行くお客さんのためにもネタバレは回避しましょう。使われているのは植物性の素材です。

続いて登場したのは、えっ、鉢植? 葉の裏側に何かくっついています。

 

f:id:exw_mesi:20200927215539j:plain

f:id:exw_mesi:20200927231318j:plain篠原:セミの幼虫です。

 

なんとセミの幼虫を燻製にして、キャラメルでコーティングしたものでした。

 

f:id:exw_mesi:20200927215606j:plain

姿そのままを、パクッ。

なんともミルキーな味わいで香ばしいです。キャラメルでコーティングしたポップコーンがあるじゃないですか。あれを乾燥させる前の生状態でいただいたような感じ。ビールが欲しくなるやつです。

 

6品目「ANTCICADAタコス」

お酒は静岡県で作られている琥珀色の日本酒。アルコール度数は6度と低く、酸味と甘みが効いています。

 

f:id:exw_mesi:20201013092154j:plain

そして、お店オリジナルのタコス。

 

f:id:exw_mesi:20200927215657j:plain

敷いてあるのは、コオロギを練り込んだANTCICADA名物「コオロギラーメン」の麺の生地を伸ばしたもの。のっかっているのは、キウイフルーツ、セロリ、魚のカツオ。

もう、味の冒険と呼ぶしかない不可思議な組み合わせ。生地を手で折り畳み、パクッ。

うん、うまいッ。

 

f:id:exw_mesi:20200927231318j:plain篠原:いろんな魚で試してみて、カツオに行きつきました。カツオにまぶしているのは、コオロギの練り込み麺を発酵させた、甜麺醤(テンメンジャン)という調味料です。

 

中華甘味噌とも呼ばれる甜麺醤と、味の強いカツオが合わさってガツンとした味が口内に広がりますが、セロリとキウイが優しく仲裁に入り、とてもまろやか。そして、全面的にうまみをアップさせているのがコオロギという、病みつきになるおつまみですな、これは。

低アルコールでクイクイと飲める日本酒に合わないわけがないです。

 

7品目「野性〜 鹿、イナゴ醤、タンポポ、モミの新芽/夜の森」

「夜の森」という料理名は、「夜の森でキャンプしている気分を味わってもらおう」というコンセプトによるもの。

 

f:id:exw_mesi:20200927215733j:plain

骨付きの肉を模したこちらは、木の枝+鹿の肉。しなやかな子鹿の背中の肉です。添えてあるのは、タンポポとモミの新芽。

肉にかかっているのは、イナゴ醤。

 

f:id:exw_mesi:20200927231318j:plain篠原:イナゴ醤とは、イナゴを発酵させて作った自家製の昆虫発酵調味料です。

 

まさしく、キャンプ気分。枝を握って一口で食らったところ、柔らかい鹿の肉とジューシーなイナゴ醤の味が驚くほどマッチ。トロリとした食感をもたらすのはイナゴのおかげでしょうか。

そして、鹿肉の写真の奥に写っているちっちゃなお猪口で供されるお酒。これもまた実に野趣に富んだ味わい。ちょっと薬用酒を彷彿とさせるこの味の正体は、「干したゴボウを漬け込んだウオッカ」をベースにして、野草のエキスを混ぜたカクテルでした。

ゴボウと野草が「野性」を存分に感じさせてくれます。

タンポポとモミの新芽は意外にえぐみがなくて、優しい味がしました。

 

f:id:exw_mesi:20200927215801j:plain

イナゴ醤の瓶詰を見せてもらいました。

これ、ごはんにそのままつけて食べたいですね。瓶のラベルに、イナゴ、米麹、食塩、水の配合バランスが記されています。

 

8品目「これまでとこれから〜 コオロギ」

この日、訪れたお客さんは僕も含めてラッキーでした。

なんと、本来は日曜しか食べられないANTCICADA名物「コオロギラーメン」を、特別に小さな器で出してくれたからです。

 

f:id:exw_mesi:20200927215831j:plain

▲「コオロギラーメン」は篠原さんが新宿の「ラーメン凪」と共同開発

 

トッピングのコオロギは、味の強い黒色のフタホシコオロギと、繊細な味わいの白色のヨーロッパイエコオロギの2種類から選べます。一緒にオクラも添えられています。

「コオロギ醤油」を使ったスープは、さっきの蚕同様、昆虫の風味が強烈。煮干し系でも鶏ガラ系でもない、コオロギ系醤油ラーメンと言うしかないパンチの効いたうまさです。

 

f:id:exw_mesi:20200927231318j:plain篠原:日曜に提供しているコオロギラーメンはほかの出汁もミックスしていますが、今日は100パーセント、コオロギ出汁です。一杯につきコオロギ約70匹を使って作りました。

 

麺は、先ほどのタコスの生地にも使われたもので、繰り返しますが、香ばしいコオロギ味です。このコオロギラーメンは、昆虫をつかっているもののクセが少なく万人に好まれるであろうおいしさで、いずれインスタントの袋麺になってほしいと思います。

 

f:id:exw_mesi:20200927215904j:plain

トッピングは白いコオロギをチョイス。わぁ、まろやかぁ。ダイレクトにコオロギの味を知ることができました。

一緒にいただいたお酒は、福島県で作られているにごり酒。さらりとした飲み口が、ラーメンの味を邪魔しないどころか、ピッタリ合うじゃないですか。

 

9品目「かき氷〜 タガメ、枝豆、ミント」

デザートはかき氷です。

 

f:id:exw_mesi:20200927215929j:plain

f:id:exw_mesi:20200927231318j:plain篠原:タガメとミントを溶かして、さらに砂糖を混ぜて氷にしたものです。

 

氷にシロップをかけたものではなく、氷自体が完成品なのでした。

先ほども味わった、タガメの青リンゴにも似たフルーティーなフェロモンの香りがさわやかすぎて極上。

ミントも混じっているので、何も聞かされずに食べたら、ハーブ類を使ったシロップのかき氷にしか思えないでしょう。

 

f:id:exw_mesi:20200927215956j:plain

中に入っている枝豆は、この味わいのかき氷にピッタリの脇役でした。さらに、ヨーグルトのムースも入っているので、味変も楽しめました。

一緒にいただいた静岡産の緑茶が、想像以上にこのかき氷と合い、これしかないだろうというチョイスに唸りました。

 

f:id:exw_mesi:20200927220107j:plain

今回、いろんなお酒まで楽しめたうえに、まさかの「締めのラーメン」にまでありつけて大満足。

スタッフのテキパキした動きとチームワークのよさにも感心しました。

 

19歳まで昆虫食はいけないことだと思っていた

大いに昆虫食コースを堪能した後、篠原さんにお話を伺いました。

 

──篠原さんが昆虫食と出会ったきっかけは?

 

f:id:exw_mesi:20200927231318j:plain篠原:物心ついたときから、昆虫にしても野草にしても、見るのも採るのも食べるのも好きだったんです。

 

──最初に食べた昆虫は何だったんですか?

 

f:id:exw_mesi:20200927231318j:plain篠原:記憶は定かではないんですけど、原っぱにいるバッタが最初だったのかなと思います。

 

──どのような調理方法で虫を食べていたんですか?

 

f:id:exw_mesi:20200927231318j:plain篠原:幼稚園の頃だったので、調理なんてことを考えずそのまま食べてました。昆虫は草食、雑食、いろいろいて、それぞれに味が違うので、普通においしかったり、驚いたり、いろんな発見を楽しんでいました。

 

f:id:exw_mesi:20200927220145j:plain

──ANTCICADAを開業することになった経緯をお聞かせください。

 

f:id:exw_mesi:20200927231318j:plain篠原:小学校の頃は、先生から「昆虫は汚いから持ってくるんじゃありません」と言われたり、テレビをつけたらバラエティ番組の罰ゲームに昆虫が使われていたり、なんでそんなに嫌われる存在なんだろうというモヤモヤ感があったんです。
その一方で、昆虫を食べるのはよくないことじゃないかとも思っていて、大学に入ってからも19歳の終わりくらいまでは誰にも話せませんでした。知られちゃいけないことだと思って、こっそり昆虫を食べていたんです。

 

──19歳の終わりに何か転機があったんですか?

 

f:id:exw_mesi:20200927231318j:plain篠原:はい。FAO(国連食糧農業機関)が昆虫食のレポートを発表したんですが、栄養価の高さや環境負荷の低さなどに驚いたんです。昆虫食の未来の可能性を感じて、僕もやっと周囲にカミングアウトができました。そしたら興味を持ってくれる人もいて、一緒に山に行って、採った昆虫を食べて、「こんなに昆虫っておいしいんだ」と喜んでもらえたんです。

 

──さすがに大学時代は生で食べていたわけじゃないですよね?

 

f:id:exw_mesi:20200927231318j:plain篠原:そうですね。焚き火で焼いて食べたり、ちっちゃいコンロを持っていって素揚げにして食べたり、シンプルな方法で食べていました。そのうち、「もっと昆虫を食べてみたい」と何人かの人から求められるようになって、さらにおいしいものを作りたいと思うようになったんです。
その後、SNSなどで出会った人と昆虫食イベントをやることになって、昆虫を使った中華・イタリアン・フレンチ・和食などを作るようになりました。その過程でコオロギラーメンが誕生したんです。だからANTCICADAを開店したのは自然の流れですね。

 

ラーメン1杯の出汁に使用するコオロギは約110匹

──店名の「ANTCICADA」の由来は?

 

f:id:exw_mesi:20200927231318j:plain篠原:直訳すると、アリ(ANT)とセミ(CICADA)です。好きな昆虫を並べたら綺麗な語感だったので決めたんですけど、後から調べたらイソップ寓話の「アリとキリギリス」も、もともとは「アリとセミ」だったんです。
ただ、僕は「アリとキリギリス」の話があんまり好きじゃなかったんです。アリはアリ、キリギリスはキリギリスで、それぞれ人生を生きているのに、何でどっちかが良い悪いと比較するんだろうって。どちらの美しさも認め合う。そんなフラットな目線で、食材やお客様に向き合っていきたいという想いも込めてANTCICADAに決めました。

 

f:id:exw_mesi:20200927220233j:plain

──名物であるコオロギラーメンですが、どのような過程でコオロギに行きついたんですか。

 

f:id:exw_mesi:20200927231318j:plain篠原:シンプルに、いろんな昆虫で出汁を取ってみて、コオロギが比較的いい出汁が取れたというのが最初のきっかけです。先ほど提供したコオロギラーメンは少量なので一杯につき約70匹でしたが、普段はラーメン1杯にコオロギを約110匹使っています。そうすると野生のものは現実的に調達が無理で、養殖ものを使わないといけないんです。コオロギは安定供給をしやすいし、味もいい。苦手な人があまりいない万人受けする味ということで、コオロギラーメンに行きつきました。

 

──コクのある正統派の醤油ラーメンですよね。

 

f:id:exw_mesi:20200927231318j:plain篠原:これさえ食べてもらえれば、昆虫ってちゃんとした食材じゃないかと思ってもらえるなと自信を持って出せる一品です。

 

──コオロギはどちらから仕入れているんですか?

 

f:id:exw_mesi:20200927231318j:plain篠原:養殖場と提携していて、共同研究のような形でやっているんですけど、徳島大学発ベンチャー「株式会社グリラス」さんの徳島県にあるファームと「太陽グリーンエナジー株式会社」さんの福島県にあるファームの2つが主な仕入れ先です。

 

──金曜土曜がコース料理、日曜がコオロギラーメンという業態ですが、なぜ週3日間の営業なんですか?

 

f:id:exw_mesi:20200927231318j:plain篠原:様子見ということで始めたのもあるんですけど、僕らはこのレストラン以外に、昆虫の佃煮やドレッシングなどの商品を作ってオンラインショップで販売もしているんです。
なので定休日は、その商品の研究開発と、食材の調達をするために昆虫を採りに出かけたり、生産者さんのところに行ったりもします。あと、コロナ禍の影響でできてないんですけど、本来はイベントやワークショップもやる予定だったので、週3日の営業となりました。

 

f:id:exw_mesi:20200927224610j:plain

▲オリジナル商品の「昆虫の佃煮(左からカイコ、コオロギ、イナゴ)」(各880円)も店内で購入可能

 

──ビジネスとしてはうまくやれているのでしょうか。

 

f:id:exw_mesi:20200927231318j:plain篠原:最低限、何とかなっているというところですね。この先、さらに商品を開発して、お店の営業日も増やして、利益を出さなければと思っています。

 

奇をてらわずに食材そのものの魅力を伝えたい

──客層はどのぐらいの世代が多いんですか?

 

f:id:exw_mesi:20200927231318j:plain篠原:20代30代の若い層が多いですね。お1人で来る方、カップル、家族連れと様々で、13席全部を貸し切りで予約して利用されるお客様もいらっしゃいます。共通して言えるのは、食べたことのないものへの好奇心が強いお客様が多いです。

 

f:id:exw_mesi:20200927220404j:plain

──今日コース料理を食べさせていただいて、昆虫だけにスポットを当てるのではなく、いろいろな食材を使用しているのが印象的でした。

 

f:id:exw_mesi:20200927231318j:plain篠原:大枠で言うと、地球上の生き物って、それぞれがいないと成り立たないじゃないですか。でも、昆虫や野草や外来生物などは、誤解されることが多い存在ですよね。たとえば海のマグロは大事にされて、多くの人から愛されていますよね。

 

──マグロを食べて奇異な目を向けられることはないですからね。

 

f:id:exw_mesi:20200927231318j:plain篠原:でも、どの生き物も美しい生き方をしているし、大事な存在なんです。動物も植物も魚も昆虫も、全部がいて地球が成り立っているし、それぞれによさがあるよね、というメッセージを料理として届けていきたいんです。

 

──マグロもコオロギも価値は同じだということですね。

 

f:id:exw_mesi:20200927231318j:plain篠原:そうです。昆虫はまだまだ世の中ではゲテモノだと思われています。でもANTCICADAのコース料理は、昆虫を中心に扱いながらも、奇をてらっためずらしい料理を提供するわけじゃないんです。
食べてみたいと感じるシンプルな見た目で、食材そのものの魅力が伝わる味わいにして届けることをベースにしています。なので季節ごとの旬な食材を取り入れますし、新しいメニューをスタッフ全員で考えて、試食して意見を交換して完成させています。

 

ANTCICADAの昆虫を使った料理を食べたくなったら

f:id:exw_mesi:20200927220508j:plain

今も、昆虫採集に出かけるのが一番楽しいという「篠原少年」が発信するANTCICADAの料理は遊び心にあふれています。

昆虫は肉や魚に引けを取らないおいしさで、調理法によってその滋味深さは、無限の可能性があると実感しました。

昆虫食の未来は明るいに違いないと確信した一夜でした。

昆虫食の概念を変えるANTCICADAの料理に興味を持った方は、気軽に足を運んでみてください。

 

※生の昆虫食は個人の見解です。中には毒性を持つものもありますので、厳重に注意しましょう。

 

撮影:松沢雅彦

 

店舗情報

ANTCICADA

住所:東京都中央区日本橋馬喰町2-4-6
営業時間:コオロギラーメン 日曜日(11:00~21:00)、コース料理 金曜日、土曜日(19:00~予約制)
定休日:月曜日~木曜日

www.hotpepper.jp

antcicada.com

書いた人:沢木毅彦

沢木毅彦

インタビュー、映像作品レビュー、企業取材、配信サイトの番組紹介などをやっているライター。居酒屋でスマホいじりながらの一人飲みが最大の贅沢。食事は自炊派で、作るのが簡単な麺類を愛好。米のごはんは週1回程度でOK。その際は納豆か卵は必須。外食ならラーメンは天下一品のこってり、カレーはcoco壱番屋の10辛。激辛好き。巨人ファン。

過去記事も読む

トップに戻る