京都で創業し、全国にチェーン展開しているラーメン店「天下一品」。
ここの「こってり」ラーメンがとてつもなく好きです。
トータルでおいしいラーメンはいくつもあるけれど、個人的にスープだけでも飲みたいと思うのは天下一品の「こってり」スープだけなんですよね。
今の天下一品には「あっさり」スープもあるけれど、創業してから長らくメニューは「こってり」だけでした。「こってり」こそが天下一品のラーメンだったのです。
▲くせになるトロットロで濃厚な「こってり」(写真提供/天下一品)
筆者が初めて天下一品のラーメンを食べたのは、京都で高校時代を過ごした40年以上前にさかのぼります。店舗は最初に誕生した「総本店」。
▲天下一品は創業者である木村勉さんが1971年に屋台で始めた。1975年、記念すべき初店舗として京都市左京区に誕生したのが、こちらの総本店 (写真提供/天下一品)
あまりのうまさに衝撃を受け、今日まで、僕のプロフィール欄にもあるように、最も好きなラーメンとして君臨し続けています。
全国初となる「こってり」スープのみのテイクアウト
2020年11月、現在僕が住んでいる東京都中野区に天下一品が出店。ついに徒歩圏内に天下一品ができました。
▲中野店の外観(※2021年3月6日撮影)
その中野店オリジナルメニューで、「こってり」スープを紙コップでテイクアウトできる「コップdeこってり」がSNSで話題になりました。
それもそのはず、「こってり」スープのみのテイクアウトは全国初。
天下一品の「こってり」スープだけを手軽に飲める日がやってきたのですよ!
▲「コップdeこってり」(150円)は現在期間限定(※販売期間未定)で店内にて販売中
▲「コップdeこってり」。ネギとチャーシューのかけらが入っているのもうれしいです
今回は、中野店の開店に至った経緯と、オリジナルメニューを始めた経緯を知りたくなり、天下一品営業部スーパーバイザーの松本秀慶さんにお話を伺いました。
▲天下一品営業部スーパーバイザーの松本秀慶さん(写真提供/天下一品)
「こってり」スープを手軽に味わってほしかった
──中野区民として待望の天下一品の出店、ありがとうございます。なぜ、あの場所に天下一品が誕生したのでしょうか。
松本さん(以下敬称略):天下一品としては何十年も前から、中野に出店するのが夢だったんです。たまたま物件が空いたので、すぐに行動に出ました。
──中野がラーメン激戦区だから勝負したかったということでしょうか?
松本:それもありますが、中野は商店街もあり、住宅街もあり、飲み屋も多い。そういう賑わっている街に店を開きたかったんです。隣町の高円寺には早くから天下一品を出店していましたからね。
──さっそく本題に入りますが、中野店限定で、「こってり」スープだけの販売を持ち帰り専用で始めたのは、どういう経緯があったんですか。
松本:コロナ禍によって、店内でのイートインのお客様が遠のいたなかで、「こってり」スープを手軽に召し上がっていただきたいというところからの発想です。コロナ禍の今だからこそ、何かできないかと考えていた時に、紙コップに入った「こってり」スープを手軽に飲めると喜んでもらえるのではないかと。
始めたのは2021年1月だったのですが、寒い季節に「コップdeこってり」で体を温めて、元気になっていただきたいという思いもありました。
▲家まで持ち帰りたいときは10円でフタを購入できます
──カップのポタージュスープと同じような手軽さで、熱々でトロトロの「こってり」スープを飲めるのは本当に幸せです。
松本:ありがとうございます。おにぎりをコンビニで買ってきて、その場で「コップdeこってり」と一緒に食べるお客様もおられます。
──おにぎりとの組み合わせはイケるに決まってますよね。「コップdeこってり」を買っていく客層はどんな感じですか。
松本:ファミリーも、サラリーマンの方も、お年寄りの方も、お酒を飲んだ帰りの方もいらっしゃいますし、幅広いですね。
▲紙コップのデザインもいいですね(写真提供/天下一品)
度肝を抜かれた斬新な「こってり」スープのオーダーとは?
──「コップdeこってり」のアレンジメニューでおすすめはありますか?
松本:その場で冷えた体を温めていただくというのが一番のコンセプトだったんですけど、自宅が近い方は持ち帰っていただき、ごはんと共にスープ雑炊みたいにするのもいいのではないでしょうか。
──店舗でライスを頼んで、「こってり」スープに投入して食べるのが好きな人も多いですし、それはうまいに決まってますね。
松本:そうですそうです。
──一方で、スープとライスを別々に食べる派もいますよね。どっち派が多いんでしょう?
松本:僕が現場に入って見てるなかでは半々くらいですかね。
──長く勤めている松本さんでも驚いた、オリジナルな「こってり」のオーダーってありましたか?
松本:ちょうど昨日、中野店で「こってり」ラーメンの「麺なし」を注文されたお客様がいらっしゃいました。
──え!?
松本:麺抜きで、トッピングで豚トロチャーシュー2倍盛りと煮卵。しかもスープ多め。さらに中野店限定の「追いスープ」を追加されました。
──す、すごいっ。やはり、「こってり」スープはそれだけでも飲みたくなる逸品だということが、このお話でも証明されました!
松本:やっぱり天下一品は、「あっさり」よりも「こってり」が病みつきになるお客様が圧倒的に多いですね。
▲中野店限定の「追いスープ」(250円)(写真提供/天下一品)
スープの成分を知っているのは会社でも数名のみ
──おいしいラーメン店はいくつもありますけど、スープだけを買って飲みたいと思うラーメンは天下一品の「こってり」だけなんですよ。これほどくせになる理由は、どこにあると思われますか?
松本:やはり、どこにも真似のできない唯一無二のスープだからではないでしょうか。
──単刀直入にお聞きしますが、「こってり」スープには何が使われているんですか?
松本:実は、天下一品のスープの成分は創業者・木村勉会長のほかは、弊社でも数名しか知らないんです。
──やはり……。人気チェーン店の秘伝の味ってそういうものですよね。
松本:なので僕が答えられるのは、鶏がらと十数種類の野菜などをじっくり煮込んだスープ、というところまでです。
▲「こってり」スープを完成させ、天下一品を立ち上げた木村勉氏。現在は天下一品グループの代表取締役会長。85歳になった今(※2021年3月現在)も、「こってり」スープが元気の源とのこと (写真提供/天下一品)
鶏がらがベースなので意外にヘルシー
──初めて「こってり」を食べた人は、見た目はトロットロのスープでありながら、それほど脂っこくなくサラッとしていることに驚くと思うんです。僕も最初はそうでした。
松本:そうですよね。鶏がらがベースなので、意外にヘルシーですし。僕は過去に総本店で働いていたんですが、そのときに80歳くらいのお客様が「こってり」を毎日食べに来てました。
──すごい。やはり老若男女関係なく病みつきになってしまうんですねぇ。
ここでインタビューの途中ですが、実際に中野店で「コップdeこってり」2杯をテイクアウト。1杯目は松本さんにすすめられたとおり、熱々のごはんにぶっかけて、「こってり雑炊」にしました。
茶碗1杯分(※米0.5合)のごはんに「コップdeこってり」1杯分がジャストフィット。僕のオリジナルで、キムチ、紅生姜、卵黄をトッピングしました。
ごはんに「こってり」スープがしみ込んで、簡単なのにうますぎです。
2杯目はそうめん(※1束)を茹でて、「コップdeこってり」をつけ汁にしました。
さらに薬味として小ネギと唐辛子をプラス。
唐辛子と「コップdeこってり」の相性も抜群。
そうめんに「こってり」スープが、いい具合に絡んで濃厚な味わいを堪能できます。
まかないで食べた「こってり」に感動
──松本さん自身、「こってり」は週に何回食べているんですか?
松本:ほぼ毎日ですね。
──毎日ですか!
松本:その日の味見もしなきゃいけないので、クオリティチェックも兼ねて毎日いただいてますよ。
──さすがです。松本さん自身のお話も伺いたいんですが、現在どういう業務に就いておられるんですか。
松本:直営店舗とFC(フランチャイズ)店舗を数店舗、管轄しています。時には現場に入って指導したり、こういう取材の対応もさせてもらっています。
──天下一品でのキャリアはどれくらいなんですか。
松本:アルバイトから始めて18年(※2021年3月現在)です。最初に京都の九条店で2年間働き、総本店に移って12年間働いていました。
──天下一品でアルバイトを始めた理由は、やはり「こってり」が好きで好きでたまらなかったからですか?
松本:それが違うんです。普通に友人の紹介で入って、まかないで初めて「こってり」を食べたんですよ。当時18歳だったんですが、それがおいしくておいしくて。
──お客さんとして1回も食べたことがない店にバイトで入ったとは意外です。
松本:時給がよかったんですよ(笑)。しかも、まかないも付いてると。初めて食べて以来、まかないの「こってり」が楽しみでした。
──そんな「こってり」スープは、僕が初めて食べた40年前から味が変わっていないように思うんですけど、材料などの変化はあるんですか?
松本:いえ、創業時の味をずっと守り続けています。
──どの店舗も同じ味わいをキープするのは、チェーン店といえども難しいという話も聞きますが。
松本:どこの店舗も同じスープなんですが、味わいにブレが生じないようにわれわれが巡回、指導を強化しています。
──京都もラーメン激戦区ですが、京都発でこれだけ多くの都道府県に全国展開しているのは天下一品チェーンだけですよね。この要因はどこにあると見てますか。
松本:やはり「こってり」の完成度でしょうね。豚骨スープのチェーン店はいっぱいありますけど、鶏がらスープで240店舗近く(※2021年3月現在)あるのは天下一品だけだと思うんですよね。
──たしかに。関東では店舗が少ない県もありますが、今後も積極的に未踏の地への進出を考えているのでしょうか。
松本:はい。いい物件が見つかれば、どんどん出店していきたいということで日々取り組んでいます。
──「こってり」は全国民がハマるはずだと踏んでおられるんですね?
松本:もちろんでございます。それは海外であっても同じです。
──海外にも進出してるんですか?
松本:現在、ハワイのホノルルに1店舗ございます(※2021年3月現在)。もっと海外にも出店していきたいですね。
限定メニューを求めて店舗を回るコアなファンも多い
──ラーメン以外にも、から揚げなどのサイドメニューが豊富なのも天下一品の魅力です。サイドメニューが充実したのは、どういう背景があったのでしょう。
松本:「こってり」に合うサイドメニューをどんどん開発していこうというのが、そもそもの始まりです。お客様に飽きがこないように、そして、より喜んでもらえるようにというのが一番の目的ですね。
──生ビールなどのお酒も提供されるようになったので、豊富なサイドメニューをアテに飲んで、締めにラーメンという風に、居酒屋好きの人も利用できるようになりましたよね。
松本:そういうお客様もすごく多いです。
──1店舗にしかない限定メニューは、どういう経緯で生まれるんですか?
松本:それぞれの店舗の店主や従業員が、「これをやってみたい」と提案し、天下一品の本部を通してゴーサインが出たら販売となります。中野店の「コップdeこってり」がSNSでバズッたときに、「ウチもやりたい」と手を挙げてくれた店舗もありました。なので、この先、一部の限定メニューを拡大させていくのもいいのではないかと考えているところです。
──1店舗にしかない限定メニューというのもまた魅力的な存在と言えますよね。
松本:そうなんですよね。限定メニューを食べるためにいろんな店舗を巡るというのも楽しいと思いますし、実際にそういうコアなファンの方もたくさんおられます。
──遠くまで足を運ぶ価値がありますもんね。中野店で言えば、「ニラにんにくラーメン」も限定メニューの一つです。
松本:ニラにんにくは関西ですごく人気のトッピングだったんです。関西でも限られた店舗にしかなかったんですけど、それを東京で売りたいなと以前から考えていました。
それで2020年、中野店を出店する念願が叶いまして、天下一品を知らないお客様にもっともっと来ていただけるきっかけになってほしいと、関西で評判のニラにんにくをトッピングだけではなく「ニラにんにくラーメン」として、中野店オープンのタイミングで販売したんです。なので現在、メニューに「ニラにんにくラーメン」があるのは中野店だけです。
──全国の天下一品で、ここでしか食べられないという限定メニューで、松本さんのおすすめを3つ教えていただけますでしょうか。
松本:どうしても地元の京都に偏ってしまうのですが、総本店の「牛すじラーメン」は絶品です。
▲総本店限定メニューの「牛すじラーメン」(写真提供/天下一品)
松本:同じく総本店の限定メニューに「豚重」があるんです。店舗の責任者が考えたメニューで、これもおいしいんですよ。
▲総本店限定メニューの「豚重定食」(写真提供/天下一品)
松本:もう1つは、京都の1号線下鳥羽店に「もも焼き」というのがございまして、鶏のもも肉をオリジナルのタレに漬け込んでロースターで焼いているんですが、ボリュームもあって本当においしいですね。「こってり」スープをすすって、もも焼きをかじって、みたいな。
▲1号線下鳥羽店限定メニューの「もも焼き」(写真提供/天下一品)
──今回、松本さんのお話を聞き、天下一品の「こってり」は、どこにも真似のできない唯一無二のスープだと再確認しました。
松本:いろんな食材を炊き込んだ濃度の高いスープなんですけど、後味がスッキリしていて、なぜだかわからないけど、明日も食べたくなるんですよね。それくらいくせになるスープなので、丼鉢にも「明日もお待ちしてます。」と書いてあるんです。
▲天下一品のラーメンが好きな人にはおなじみの丼鉢(写真提供/天下一品)
40年以上食べているのに、全く飽きのこない天下一品の「こってり」。
中野店ができたことで、ますます「こってり」スープに、病みつきになった次第です!
店舗情報
天下一品 中野店
住所:東京都中野区新井1-9-3 グレースヒルTMY101
電話:03-5942-6368
営業時間:11:00~翌3:00(OS閉店15分前)※現在、営業時間は11:00~20:00、酒類の提供は19時まで、20:00~21:00はテイクアウトのみ販売します(店内飲食不可)。営業時間は変更することがあります。ホームページをご確認ください。
定休日:なし
書いた人:沢木毅彦
インタビュー、映像作品レビュー、企業取材、配信サイトの番組紹介などをやっているライター。居酒屋でスマホいじりながらの一人飲みが最大の贅沢。食事は自炊派で、作るのが簡単な麺類を愛好。米のごはんは週1回程度でOK。その際は納豆か卵は必須。外食ならラーメンは天下一品のこってり、カレーはcoco壱番屋の10辛。激辛好き。巨人ファン。