【メシのはてな】コーヒーの専門家に聞く、誰が最初にコーヒーを飲もうと思ったの?

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三大欲求のひとつである「食欲」。栄養を補給するため、おいしいものを食べるため、空腹を満たすため。食事をする理由は人によってさまざまですが、朝昼晩と口にしている食べものに、疑問を持ったことはありませんか?

本連載「メシのはてな」は、普段当たり前のように食べている“飯”に隠された文化や歴史、よりおいしく楽しむための作法を識者に教えてもらう企画。

 

今回は多くの日本人に愛されている「コーヒー」に関する疑問を解決します。

 

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フリー素材モデルの大川竜弥です。

 

「趣味はトレーニング」と公言している私が、プロテインの次に摂取量の多い飲み物。それは、「コーヒー」です。

 

まずは、起床後に目覚めの一杯。そして、集中力アップと脂肪燃焼効果を狙い、トレーニングの30分前に一杯。その他、作業中やちょっとしたブレイクタイムに一杯と、気がつけばいっぱい飲んでいる始末。

 

カフェインの取りすぎは体に良くないとわかっていながらも、ついついコーヒーを飲んでしまいます。

 

今や日常に欠かせないコーヒーですが、初めにコーヒーを飲んだときは独特の苦味やクセがあり、おいしいと思えるまでは時間がかかったものです。

そんな独特な苦味があるコーヒーは、一体誰が最初に飲んだのでしょうか? うーん、ふと疑問に思うと気になって仕方がありません。

誰か、詳しい人に聞いてみたい……。

 

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その疑問、私が解決しましょう!

 

あ、あなたは……?

 

東京スカイツリーのお膝元、墨田区業平で直火焙煎珈琲店「しげの珈琲工房」を営む峯岸繁和(みねぎししげかず)です。

 

完璧な自己紹介ありがとうございます。失礼ですが、峯岸さんのコーヒー歴は?

 

自分のお店は、以前江戸川区で14年ほど。こちらは移転して4年半ですから、あわせて19年弱です。お店をはじめる前もコーヒーに関する仕事をしていましたし、トータル35年ぐらいでしょうか。

 

35年といったら、僕が生まれたころからコーヒーに関わっているんですね。頼りになります!

 

峯岸繁和(みねぎししげかず)

墨田区業平に「しげの珈琲工房」構え、テレビや雑誌等への掲載多数。35年というキャリアをいかし、初心者向けの珈琲教室を主催している。墨田区のコーヒー店が加盟する「すみだ自家焙煎珈琲店連絡会」会長。

 

「カルディ」は羊飼いの名前が由来だった!

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日本人が日常的にコーヒーを飲むようになったのはここ数十年だと思うのですが、世界的にはいつごろから飲まれているのでしょうか?

 

コーヒーはもともと、薬として発展した飲み物なんです。エチオピアの山の中に羊飼いのカルディくんという男の子がいまして、羊が赤い木の実を食べたら、興奮していることに気づいたそうです。そこで自分も食べてみたら、疲れが取れ、元気になったそうなんです。

 

あの輸入食品店「カルディ」の店名は、羊飼いの男の子の名前なんですね。

 

当時は焙煎するのではなく、赤い木の実、コーヒーの実を鍋で煮て、煮汁を飲んでいたそうです。だいぶ幅はありますが、それが6世紀から9世紀の間。

 

現在のように焙煎をするようになったのは?

 

13世紀から14世紀と言われています。山火事でコーヒーの実が焼けたらいい香りがした、たき火に種を捨てたらいい香りがしたなど諸説ありますが、結局のところ誰が焙煎をしたのかは、記録が残っていません。

 

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そうなんですね。コーヒーが日本に入ってきたのは、いつごろでしょうか?

 

最初は長崎県の出島です。ポルトガル人が持ち込んだのですが、当時はまだ出島だけの飲み物でした。その後、本格的に日本に上陸したのは現代から100年少々前と言われています。

 

日本で初めてコーヒーが入ってきたのは、長崎なんですね。それにしても、味も色もそれまでの日本にはない飲み物ですし、当時の人がコーヒーを飲んでどんな反応をしたのか気になります。

 

文献には「味わうに堪え難し」と表記されています。現代風にすると「こんな苦いもの全然おいしくない」といった感じでしょうか(笑)。

 

お茶とは全く違う飲み物ですもんね。

 

でも、苦いということはある程度焙煎していて、現在と近いスタイルの飲み方だったことがわかります。

 

日常的に飲むようになったのは、最近ですか?

 

明治時代に日本初の喫茶店が誕生しましたが、残念ながら1年ほどで閉店してしまいました。ですが、そこからしばらくしてコーヒーショップや、ミルクホールと呼ばれる飲食店が徐々に増えていったようです。

 

日本初の喫茶店がすぐ閉店してしまったのは、なぜでしょう? 日本人の舌にコーヒーがなじんでいなかったから……?

 

それもあると思いますが、単純にお店の人がコーヒーの扱い方をわかっていなかったのかなと。その後普及した理由は、コーヒーに限らずさまざまな西洋文化が入ってきて、日本人に受け入れられる土壌ができたことが大きいですね。

 

「セカンドウェーブ」と「サードウェーブ」の違いは?

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 恥ずかしい話ですが、コーヒー好きなのにここ数年メディアでよく使われている「セカンドウェーブコーヒー」「サードウェーブコーヒー」の違いがよくわかっていないので、ちゃんと教えていただきたいです。

 

「セカンドウェーブコーヒー」は、スターバックスコーヒーをはじめとするアメリカ西海岸・シアトル発のものを指します。アメリカでコーヒーが飲まれるようになったのは19世紀末ですが、当時は品質の良くない豆を浅く焼いた、薄いコーヒーが出回っていたようです。

そんなとき、スターバックスコーヒーがエリアや農園を指定し、アメリカにはなかった高品質の豆を取り入れ始めました。品質の良い豆をしっかり焙煎した、ダークローストの状態で提供したということ、カプチーノやエスプレッソなどのヨーロッパスタイルを取り入れたこと、この2つが合わさって、爆発的にヒットしました。これが1970年代に起きたセカンドウェーブと言われています。

 

それまでアメリカでは薄いコーヒーが好まれていたということですか? たしかに「アメリカンコーヒー」といえば、「薄いコーヒー」という印象がありますが……。

 

必ずしもそうとは言えません。焙煎の火加減で「シティロースト」というものがあるのですが、このシティはニューヨークシティの略なんです。ニューヨークシティローストはちょっと苦目の焼き方で、アメリカ東海岸から南部ではヨーロッパからの影響が強く残り昔から割りと濃い目のコーヒーが好まれています。

 

へぇ、知りませんでした!

 

同じアメリカでも、ロッキー山脈を越えると薄くなるんですよ。

 

なにか理由があるんですか?

 

考えられる理由としては、同じ豆の量でもたくさん飲めること、水質が合わなかったことの2つです。ロッキー山脈を越えると水のアルカリ質が強くなるので、濃い目のローストには合わないんです。価格を安く抑える、もしくは水質に合わせることで薄いアメリカンコーヒーになったのかもしれません。

 

なるほど、理にかなっているんですね。

 

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「サードウェーブコーヒー」が生まれたのは、1990年代。「セカンドウェーブコーヒー」よりさらに農園を指定して、「この村のこの畑で収穫されるこの品種の豆」と限定しました。浅く焼くことで苦味を抑え、コーヒー本来の甘みを表現しているところが一番の売りです。ダークローストとは正反対の味の表現をしているんですね。

 

味に関しては、「セカンドウェーブコーヒー」と真逆の発想なんですね。

 

ただ浅く焼けばいいというわけではなく、ここ数十年コーヒーの品質が高くなったことも、「サードウェーブコーヒー」が流行った理由のひとつかもしれません。

 

どういうことですか?

 

高品質なコーヒー豆が手に入るようになったので、浅いローストのコーヒーもおいしく飲めるようになったんです。コーヒーの味わいを「苦味」「酸味」と表現しますが、焙煎して数カ月経ったコーヒーは傷んで酸味が強くなります。コーヒーの酸味が苦手という方は、あまり品質の良くないコーヒーを飲んでしまった可能性もあります。

 

現在はちゃんとテクニックがあった上で浅く焼いているんですね。

 

全くの別物ですよ。今はコーヒーもDNA解析をして、科学的な農業をしています。昔コーヒーを飲んで苦手になってしまった方は、これを機に飲んでいただきたいです。甘味が全然違いますから!

 

峯岸さん直伝! インスタントコーヒーをよりおいしく飲む方法

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ちなみに、インスタントコーヒーもコーヒーと呼んでいいのでしょうか?

 

もちろんです! 原料はちゃんとコーヒー豆ですから。インスタントコーヒーは大きく分けると2種類あるんですが、大川さんはご存知ですか?

 

2種類ですか。いつも飲んでいるのに、全然わからないですね。

 

実は粒子の大きさが違います。インスタントコーヒーにはスプレードライという製法で作られた粉末状のものと、フリーズドライで作られた顆粒状のものがあるんですよ。

 

言われて見れば確かに、サラサラしたものと顆粒状のものがあったような気がします。それぞれ何か違いがあるんですか?

 

スプレードライは、抽出したコーヒーを20メートルぐらいある塔の中で霧状に噴霧し、下からドライヤーをあて、水分を飛ばす方式です。粉末状で、溶けやすく使いやすいというメリットがあります。

 

なるほど。じゃあアイスコーヒーを作るときは粒の細かいものを選んだ方がいいんですね。

 

まさにその通りです! フリーズドライは、インスタントの味噌汁などでもおなじみですが、一瞬で凍らせて水分を抜く製法です。スプレードライのように熱を加えない分、風味が残せるというメリットがあります。

 

コーヒーの香りを楽しみたいというときはフリーズドライのものがいいんですね。

 

そうですね。こうしたインスタントコーヒーですが、最初に発明したのは、日本人なんですよ。

 

えっ!? そうなんですか?

 

化学者の加藤サルトリ博士が1899年に発明し、アメリカの博覧会に出品したのですが、特許を取っていなかったそうで……。結局アメリカ人が特許を取り、製品化していきました。

 

なんだか惜しい話ですね……。でも普段飲んでいるインスタントコーヒーの誕生に日本人が関わっているなんて、意外でした。

 

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最後に、インスタントコーヒーをよりおいしく飲むための技を教えましょう。

 

おおおおお! 助かります!!!

 

やり方はすごく簡単で、最初にインスタントコーヒーをお水で溶いてペーストにし、お湯を入れると、あら不思議、おいしくなるんです!

 

えっ、それだけですか? なぜお水で溶くとおいしくなるんでしょうか。

 

一番は風味ですね。お水で溶くことで、風味が立つんです。またインスタントコーヒーの成分は、いきなりお湯にさらすとダマになりやすいので、固まらないためにもまず低温で溶かしてあげましょう。

その他にもドリップコーヒーのように蒸らすイメージで、お皿を乗せてフタをする方法もあります。

 

工夫次第でよりおいしく楽しめるんですね。これからコーヒーを入れるときにやってみたいと思います!

 

「インスタントコーヒーはあまりおいしくない」というイメージの方がいるかもしれませんが、技術が進歩し、年々本格的な味に近づいているそう。また、「アイスコーヒーにはスプレードライ」のように、目的に適した製法を選んだり、入れ方を工夫したりすることで、さらにおいしく楽しめるようになるはずです!

 

「コーヒーのはてな」を知るともっとおいしくなる!

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 ▲峯岸さんが10年間育てているコーヒーの木。気候の問題で実がつくところまで育てるのは難しいらしい

 

今日は勉強になりました。毎日何気なく飲んでいたコーヒーに、こんなにも豊富な知識と歴史があったなんて。

 

こちらこそ、ありがとうございます。さあ、先程のコーヒーをもう一度飲んでみてください。

 

は、はい……。話に夢中で冷えてしまいましたが……。

 

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ズズッ! ウ、ウ、ウマい!!!

 

コーヒーの疑問を解決したことでよりおいしくなっていることは間違いないのですが、それを差し引いても冷えているのにウマい!

 

良いコーヒーは、冷めてもおいしいんです。冷めたぐらいで味が変わったらダメ。品質の良い豆をちゃんと入れれば、冷めたほうがおいしく感じるぐらいなんですよ。

 

今日は本当に素晴らしい体験をさせていただきました。

 

コーヒーの専門家・峯岸繁和さんのおかげで、コーヒーの疑問を解決することができました。

 

コーヒーの歴史、「セカンドウェーブコーヒー」と「サードウェーブコーヒー」の違い、インスタントコーヒーの種類と作り方。そして、本当に良いコーヒーの条件など、これまで知らなかったことばかり。

 

普段当たり前のように飲んでいるコーヒーに隠された、奥深い世界。

 

みなさんも今回紹介した知識を踏まえ、よりおいしいコーヒーライフを堪能してください!

 

「メシのはてな」を知ると、食はもっとおいしくなっていきますよ。

 

お店情報

しげの珈琲工房

住所:東京都墨田区業平2-11-4
電話:03-6658-8420
営業時間:10:00~19:00(LO 18:40)
定休日:水曜

 

書いた人:大川竜弥

大川竜弥

1982年生まれ。アパレル販売員、Web開発会社、ライブハウス店長、ザ・グレート・サスケ氏のマネージャーなどさまざまな職を経て、現在は"自称・日本一インターネットで顔写真が使われているフリー素材モデル"として活動している。

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