【メシのはてな】うどん専門家に聞く、どうして関東と関西は出汁の味が違うの?

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三大欲求のひとつである、「食欲」。栄養を補給するため、おいしいものを食べるため、空腹を満たすため――。食事をする理由は人によってさまざまですが、朝昼晩と口にしている食べものに、疑問を持ったことはありませんか?

本連載「メシのはてな」は、ふだん当たり前のように食べている“メシ”の疑問を解き明かし、そこに隠された文化や歴史、よりおいしく楽しむための作法を識者に教えてもらう企画。

 

今回は日本を代表するファストフード、「うどん」に関する疑問を解決します。

 

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フリー素材モデルの大川竜弥です。

 

「おなかが空いたけれど、ゆっくり定食を食べる時間はない……」

 

そんなとき、あなたなら何を食べますか?

 

私は時間がないときでもサクッと食べられる「うどん」を選びます。安い・早い・おいしいうどん。それだけではなく、消化にもいい。三拍子どころか四拍子そろった、日本を代表するファストフードといっても過言ではありません。

 

ただ、うどん1玉(230g)に含まれる炭水化物は、約50g。なかなかの量です。年齢のせいかスタイルの維持が難しくなったこともあり気になるのですが、やはり「うどん」は太りやすいのでしょうか……? 

あれ、ふと立ち止まって考えてみると、次々に疑問が浮かんできます。

そもそも関西と関東で出汁の味が違うのはなぜ? なぜ香川県が有名なの? コシって一体何?

 

誰か詳しい人に聞いてみたい……。

 

その疑問、私が解決します!

 

あなたは……?

 

食べ方・食べる順番を工夫する

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 うどんライターの井上こんです!

 

井上こん(いのうえこん)

フリーライター。雑誌やWEBメディアで執筆。年400~500杯食べるうどん偏愛家の顔も持ち、『誰だって波瀾爆笑』『ワケありレッドゾーン』等のテレビ番組ではうどんのユニークな世界を紹介する。

 

うどんライターですか! こんさんは年間どれくらいの「うどん」を食べているのでしょうか?

 

1年で400食は食べていますね。

 

400食! それはすごい! 1日1杯以上は「うどん」を食べているということになりますよね。でも、「うどん」って炭水化物の含有量が高く、太りやすい食べ物だと思うですが、こんさんはどうやってスタイルを維持しているのでしょうか。

 

スタイルの維持というほど立派なものではありませんが、食べ方を工夫していますよ。

 

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食べ方ですか……? どのように工夫しているのでしょうか?

 

「うどん」の前に、副菜を食べるようにしています。例えばですが、福岡県の筑後地方には、無料のお総菜を置いているうどん屋さんが多いんですね。ひじきや漬物など、うどんを待っている間に副菜を食べれば、最初に「うどん」を食べるよりは血糖値の上昇を抑えることができるんです。

 

定食を食べるときも、いきなりご飯を食べるのではなく、副菜から食べたほうが太りにくいって言いますもんね。

 

あとは、出汁を飲んでから麺を食べることで、血糖値の上昇をゆるやかにすることができますよ。

 

食べ方、食べる順番を工夫しているんですね。

 

香川県といえばうどん”のイメージが定着した理由

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もっと質問してもいいですか?

 

どうぞ!

 

ここ数年、インターネット上で「讃岐うどん」「うどん県」といった言葉をよく見かけるようになったのですが、なぜ“香川県といえばうどん”のイメージが定着したのでしょうか?

 

香川県のプロモーションがうまいということと、おいしい「うどん」を作るために必要なものがそろっているということ、この2つがあると思います。

 

おいしい「うどん」を作るために必要なもの、ですか?

 

はい。香川には“小麦、塩、イリコ、醤油”と、うどん作りに適した4つの要素があります。平地が多く雨が少ない環境は小麦栽培に最適ですし、もともと塩作りも盛んな土地です。また、上質なイリコがとれる伊吹島や醤油で有名な小豆島もあります。香川には、おいしい「うどん」を作るための要素がすべてそろっているんですよね。

 

なるほど!

 

群馬埼玉福岡も小麦栽培が盛んです。でも、4つの要素がそろうという意味では、香川県が「うどん県」と呼ばれるようになるのはごく自然なことかと。

 

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香川県は、いつごろから「讃岐うどん」のプロモーションをはじめたのでしょうか?

 

さまざまな見解がありますが、第一次ブームは、1970年に開催された大阪万博で、その後の瀬戸大橋開通も影響しているといわれています。爆発的なブームとなったのは、20年ほど前。地元タウン誌の連載をきっかけに、レジャーとしてうどんツアーを楽しむ人が急増したようです。

 

「讃岐うどん」のブームは最近の出来事だと思っていましたが、意外と長い歴史があるんですね……。

 

香川県の人は、ことあるごとに「うどん」を食べるんですよ。お祝いごとだけではなく、法事のときも食べます。

 

それだけ生活に密着した食べ物なんですね。

 

福岡埼玉群馬も「うどん県」

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香川県以外に、「うどん」が有名な地域はどこですか?

 

私がうどんライターとして活動しているなかで、意外と知られていないなと思うのは福岡県ですね。

 

たしかに、最近インターネットのグルメ情報で福岡の「うどん」を見かける機会が増えました。

 

あとは、埼玉県。埼玉は小麦王国なんですよ。収穫量も消費量もすごい! 埼玉県民が1人あたりあと月2杯食べれば、香川県のうどん消費量を超すそうです。

 

へぇ! 埼玉県は意外でした!

 

群馬県も小麦の収穫量が多く、水沢うどんやひもかわうどんなどが有名ですね。

 

関東、関西の出汁の違い

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香川県と福岡県の「うどん」、どういう特徴があるのでしょうか?

 

まず、小麦が違います。現在、香川県にあるうどん屋さんはオーストラリア産小麦をベースに使っているところも多く、角が立ち、絶妙なコシを持つ「うどん」になります。もちろん、一口に「讃岐うどん」と言っても柔らかいものから硬いものまでいろいろあります。一方、福岡県の、特に博多だとゆで置きに耐えられるよう、耐久性の高い福岡県産の小麦を使うケースが多いですね。県南部の筑後地方では粘りが出るよう30分ほどゆでる地域もあります。

 

30分も! 出汁も地域によって全然違いますよね?

 

そうですね! 地域差が出るようになった理由の一つに、もともと関東と関西で水に違いがあったことが挙げられます。例えば、関東の水はミネラル分が多く、昆布の出汁を取ろうとするとアクがでてしまうため、それを打ち消すためにかつお節や雑節を使うようになったようです。反対に、関西の水は柔らかく出汁がきれいに出るので、昆布本来の風味を生かすようになったといわれています。

 

だから関東の出汁は濃くなるのか……!

 

出汁が濃い理由として、醤油の違いも大きいですね。面白い説だと、徳川家康が江戸の町をつくる際、全国から建設作業員を集めたそうなんですけど、そういった肉体労働者に濃い味つけが好まれたことから関東でだんだんと醤油の出汁が定着したなんて話もあります。

 

へえ! 出汁の違いにはそんな歴史背景があったんですね。

 

あと、これは私の個人的な考えですが、落語に登場するようないわゆる“江戸っ子”の気質も関係しているんじゃないかと思います。というのは、昆布が時間をかけて出汁を取るのに対して、かつお節は熱湯に入れてさっと取るのがセオリー。せっかちな江戸っ子には、短い時間で出汁が取れるかつお節が好まれたのではないかと。

 

「コシがある」の定義は?

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「うどん」を食べたときに、「コシがある」という表現を使いますよね? どういう麺を「コシがある」と表現するのでしょうか?

 

それが難しいんですよ……。「コシってなに?」と聞いたときに、全員同じ答えが返ってくることはないと思います。人によって「硬い」や「伸びる」ことをコシがあると表現するのですが、はっきりとした定義はありません。ただ、コシを科学的にアプローチしている方の話を聞くと、柔らかいけど中心が硬い、かみ切るときに力がいることを、コシがあるというそうです。

 

井上さんが考えるコシがあるの定義は?

 

私がよく使う言葉は、食感のグラデーションがある状態ですかね。

 

かっこいい!

 

ファーストタッチは柔らかいけど、中に入るにつれて歯に圧がかかる。それがコシがあるという定義だと考えています。うどん屋さんの店主でも定義が違いますから、難しい問題ですね。

 

女性が一人で入りやすいうどん屋さんが増えた

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今日のお店もそうですが、最近おしゃれなうどん屋さんが増えましたよね。

 

そうですね。女性一人でも入りやすいうどん屋さんが増えました! また、デートで飲みに行けるような「うどん居酒屋」も増えていますね。

 

デートでうどん屋さんですか……! 意外な使い方ですね。

 

デートで使えるお店なら、「今度はランチに行ってみようかな」と昼間も女性が入るようになるじゃないですか。内装がモダンだったり、夜にお酒とちょっとした一品料理をだしたり、そういうお店が増えましたね。これからもうどん業界全体に盛り上がっていってほしいです!

 

いやぁ、勉強になりました!

 

「うどん」って親しみやすい存在なのに、本当に奥深いですよね。私もまだまだ勉強中です。

 

井上さんのおかげで、もっと「うどん」が好きになりました。

 

もう一度「うどん」を食べてください!

 

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パクッ! ウ、ウ、ウマくなっている!!

井上こんさんのおかげで、「うどん」の疑問を解決することができました。

 

うどんを食べても太りにくくする方法、“香川県といえばうどん”のイメージが定着した理由、福岡県、埼玉県、群馬県もうどんが名産ということ、関東と関西の出汁の違い、「コシがある」の定義など、これまで知らなかったことばかり。

 

ふだん当たり前のように食べている「うどん」に隠された、奥深い世界。今まで以上に「うどん」を身近に感じられるようになったのではないでしょうか?

 

みなさんも今回紹介した知識を踏まえ、作法を実践することで、よりおいしいうどんライフを堪能してください!

 

「メシのはてな」を知ると、食はもっとおいしくなっていきますよ。

 

※2017年秋取材

 

書いた人:大川竜弥

大川竜弥

1982年生まれ。アパレル販売員、Web開発会社、ライブハウス店長、ザ・グレート・サスケ氏のマネージャーなどさまざまな職を経て、現在は"自称・日本一インターネットで顔写真が使われているフリー素材モデル"として活動している。

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