でらいつカレーvol.15 水を一切つかわない「ヨーグルトチキンカレー」の作り方。
「当店のカレーは水を一切使っておりません」
そんなうたい文句のカレー屋さん、見たことありませんか?
市販のルウで作るようなカレーだと「水を使わない」ってのはハードルが高いと思いますが(だって、最後にたっぷり水を入れて煮込んでルウを溶かすって工程がありますからね)、スパイスだけで作るカレーなら、水を使わないなんて簡単です。
だって、水のかわりにトマトジュースを使うとか、水分の多い野菜をたっぷり使うとか、とにかく「水の代わりの水分」を何かしらで加えればいいんですから。
ということで今回は、水の代わりの水分を「ヨーグルト」で補っちゃおうというカレーの紹介です。
水を一切使わない「ヨーグルトチキンカレー」!
ここで言うヨーグルトってのはプレーンヨーグルトのことですが、ひとくちにプレーンヨーグルトと言ってもいろいろあり過ぎて「どれがいいのよ?」って悩んじゃいますよね?
今回の「ヨーグルトチキンカレー」用に選ぶ時のポイントはひとつ、乳脂肪分です!
とりあえず乳脂肪分が3~4%のものがちょうどいいので、それくらいのものをチョイスしてください。
ちなみに、2%以下だと仕上がりが少々あっさりし過ぎるし、4%以上だとこってりし過ぎる、という単純な理由なので使えないわけではありません。
お好みに合わせて使い分けてみるのも、面白いかもしれませんね。
さー、どんなヨーグルトを使うかが決まったところで、さっそく材料とレシピに進みましょう!
今回使う食材はこんな感じ。
材料 (2人分)
- 鶏もも肉:250g程度
- プレーンヨーグルト:400ml
- 玉ねぎ:小1個
- トマト:小2個
- 香菜:1株
- にんにく:1片
- しょうが:1/2片
- ターメリック:小さじ1/2
- レッドチリパウダー:小さじ1/2
- クミンパウダー:小さじ1
- コリアンダーパウダー:小さじ2
- カルダモン(ホール):4粒
- マスタードシード:小さじ1/2
(詳細は最後に記載します)
今回は「カレー粉」ではなく、「基本の4種の個別スパイス」を使います。
なければ、カレー粉を大さじ1と1/3で代用してください。
前にも書きましたが、この4種のスパイスは今や100均でも買えます(ない場合もありますが……)。
個別のスパイスは一度そろえると、カレー作りが楽しくなります。
是非ご購入を!
おっと、危うくスルーしそうになりましたが今回はホールスパイス(粒のままのスパイス)を2種類使います。
ひとつはカルダモン、これは前に一度使っていますね。
もうひとつは、マスタードシード。これ初登場ですね。
ガルダモン(上)は「スパイスの女王」なんて呼ばれたりします。
爽やかな香りが特徴で、チャイなんかにもよく使いますが、最近だとカルダモンコーヒーなんてのもありますよね。
ちょっと大きめのスーパーに行けば売っていると思います。
マスタードシード(下)は皆さんよくご存じの「マスタード ≒ からし」や「粒マスタード」の原料です(※正確に言うと「からし」は違う品種が原料です)。
「マスタードの原料」というとちょっと辛いイメージがしますが、カレーで使うときの役割は、辛さのためではありません。
油でテンパリングすることで、香ばしい匂いがしてきますので、それを加えるために使います。
と、ゆーことなので、マスタードシードは、なければ省略してもOKです。
間違っても「粒マスタード」で代用しないようにしてください。
ま、粒マスタードは粒マスタードで、加えればおいしくなりますけどね。
スパイスについてはカレースター水野仁輔氏(元東京カリ~番長:調理主任)が『いちばんやさしい スパイスの教科書』という本を上梓しています。そちらを是非ご参考に!
と、元番長メンバーの宣伝はこの辺にしてさっそく調理に取り掛かりましょう!
まずは下ごしらえから
スムーズな調理のため、下ごしらえをしましょう。
- 玉ねぎ:繊維方向にスライス。
- 香菜(パクチー):根の部分を切り落としてざく切り。 根の部分はみじん切り。
- にんにく、しょうが:みじん切り。
- トマト:1㎝角程度のさいの目にざく切り(粗みじん切り)。
- 鶏もも肉:皮付きのまま食べやすい大きさにカットし、塩コショウを振る。
それぞれ、こんな感じです。
▲玉ねぎ:繊維方向にスライス
スライスする前に繊維と垂直方向に半分に切ってください。
スライスの厚さは2~3mmでOKです。
▲香菜(パクチー):根の部分を切り落としてざく切り。根の部分はみじん切り
最近は根っこが長ーく残っているものがありますが、あればそれの方がベターですね。ちょっと得した感があります。
▲にんにく、しょうが:みじん切り
めちゃめちゃ細かく切る必要はありませんが、大きすぎるのも困るので、まー、この程度で。
▲トマト:1㎝角程度のさいの目にざく切り
1㎝角のさいの目じゃなくても構いません。
なんとなくざく切りになっていればそれでOKです。
※この写真は小1個分です。小を2個用意したら2個とも同じように切ってください。
▲鶏もも肉:食べやすい大きさにカットし、塩コショウをする
皮付きのままカットしています。
「唐揚げ用」みたいなカットされているものを買ってくれば楽ですね。
ちなみにですが、実はこれら下準備の順番にも意味があるんですよ。
水分が少なくて細かい切りくずが出ない玉ねぎを切って、同じく水分の少ない香菜を切り根っこをみじん切りにし、その流れでにんにく・しょうがをみじん切りにし、水分の出るトマトを切って、まな板を拭いて、肉を切る。
ホラ、この順番で切っていくと、まな板をいちいちきれいにする手間が省けますでしょ。
こーゆーのって地味ですが、ホント主婦目線的には大事ですからね。
さー、そんな小ネタを挟みつつ下ごしらえが終わったら調理の開始です!
いよいよ調理開始!
・フライパンに調理油(大さじ2)を中火で熱し、カルダモンとマスタードシードを炒める(テンパリングする)
カルダモンは粒が大きいので、フライパンを傾けて深さを作りましょう。
どちらも熱すると油の中から飛び跳ねることがあるので、やけどには注意してください。
特にカルダモンは、突然バーンと弾けて飛び出すことがありますし、
マスタードシードはパチパチパチパチと飛び跳ねます。
テンパリングの最中は、香りを確かめるために顔を近づけるようなことは絶対しないでください!
写真は撮影の都合上手前に傾けていますが、奥に向かって傾けると飛び跳ねても自分に飛んでこないのでやけどの防止になります。
※カルダモンは最初に割っておく、あるいは軽くつぶしておくと、飛び跳ね(破裂)防止になります。
・にんにく、しょうがを加え、きつね色になるまで炒める
カルダモンがほんのり色づいたら、あるいはマスタードシードのパチパチがおさまってきたら、にんにく、しょうがを加えましょう。
目指すきつね色はこの程度。
ここまで色づいたら、みじん切りにした香菜の根を加えます。
・みじん切りした香菜の根を加える
香菜の根は、加えた瞬間にいい香りが立ち込めます。
「香菜なんてダイキライ!」という人にも、この香りは一度嗅いでみて欲しいですね。
きっと香菜に対する印象が変わる……かな~(笑)?
・玉ねぎを加え、焼き色が付くまで炒める
香菜の根を加えたら、10秒ほどで玉ねぎを加えます。
通常の玉ねぎ炒めは、「きつね色になるまで」とか、「あめ色になるまで」と書きますが、今回は「焼き色が付くまで」です。
この表現の違いはこのあと、後半で説明します。
玉ねぎを加えたら、いつものテクニック。
塩を振りましょう!
ふたつまみ程度でOKです(分量外)。
これによって玉ねぎから水分を出しやすくし、玉ねぎ炒めを早く終えることができます。
塩を振ったらすぐに全体をしっかり混ぜ合わせてください。
その後は、玉ねぎ炒めの基本テクニック&ポイントをきっちり実践していきましょう。
もう覚えましたよね?
- 強火で炒める!
- 「放置して動かす」を繰り返す!
- ちょっとくらいのコゲは気にしない!
これです!
いつもはこの3つのポイントにプラスして「差し水をする」というテクニックのひとつを紹介するのですが、今回はあえてしません。
だって、「水を一切使わない」って言っちゃいましたから(えへへ)。
今回の玉ねぎ炒めはこの程度でOKです。
いつもなら、「まだまだ玉ねぎの中まで火が入っていませんね~」とか言うところですが、今回はこれでいいんです。
もちろん、きっちりあめ色になるまで炒めても構わないのですが、ここで止めた理由は具材としての玉ねぎの存在を少し残すためです。
きっちりあめ色になるまで炒めると、玉ねぎはトロトロになります。
そこに水分を加えて煮込むと玉ねぎ感はほとんど感じなくなりますが、玉ねぎ炒めをこの程度でとどめておくと、煮込んだ後でも少~し玉ねぎ感を感じられます。
その状態を作りたいために、今回の行程の説明では、「焼き色が付くまで炒める」と書いたのです。
よく、「レシピは行間を読む必要がある」なんて言いますが、それはこのようなちょっとした表現の違いでその先の目指すものが違ったりしてくるためなんです。
同じレシピを見ておいしく作れる人とおいしく作れない人がいるのは、調理テクニックのあるなしもさることながら、レシピの行間を読めるか(すなわち想像力が働くか)どうか、というのも大いに関係します。
もしあるレシピを作ってみておいしくできなかったら、そのレシピをディスる前に自分の理解力や想像力といった力量を省みる必要があるかもしれませんね……。
なーんて言ってますが、もちろん、レシピがひどいことも多々ありますけど(笑)。
ちょっと長くなりました。
調理に戻ります。
・トマトを加え、水分がなくなるまで炒める
トマトを加えたら手早くしっかり混ぜ合わせましょう。
火加減は強火のままです。
トマトの水分が入るので、弱気にならず、強気で炒めましょう!
トマトを入れてからも「放置炒め」です。
動かすときにトマトをつぶすように炒めると、早く炒められます。
途中しっかり鍋底をこそぎながら炒めるのを忘れずに!
※注意:「強火」を強調していますが、実は写真を撮る瞬間はいったん火を消しています(消さないときもあります)。そのため、写真での鍋中は実際の調理状態より静かです。そこはあらかじめご理解ください。
トマトがつぶれ水分が出てくると、コゲた(ように見える)玉ねぎが少し目立ってきます。
どうしてもコゲが気なる場合はこの時点で取り除きましょう。
ちなみに、この木べらの上のコゲた(ように見える)玉ねぎ、私は全然気にならないので、このまま鍋中に戻して炒めていきます。
ところで、このトマトを入れて炒めるという行程は、おおよそ10分程度(※)です。
時間を有効活用するために、この間に鶏もも肉も焼いてしまいましょう。
※作る分量でも変わってきます。2~4人前を作るときの目安時間と思ってください。
・別のフライパンで鶏もも肉を炒める
ポイントは、鶏もも肉を皮目から焼くことです。
「火をつける前に」フライパンの上に鶏もも肉を並べましょう。
この「火をつける前に」というのが地味ながら大事なポイントです。
肉を焼くときのポイントですが、玉ねぎと同じで強火で炒めることと、放置することです。強火で一気に表面を焼き付けるためには、動かさないコトも重要です。
ガスが2口あればこのように同時進行が可能です。
皮面がきっちり焼き色が付くまで炒めたら、裏がえし、全体に焼き色が付くまで炒めていきます。
この右側のお肉程度まで焼き色が付いたら完成です。
この後で煮込むので、中まで火を入れる必要はありません。
玉ねぎ炒めはトマトの水分がなくなってきて油のテリが目立ってきたら完成間近です。
このように、玉ねぎがボタっとひとまとまりになるようであれば完成です。
ここまで出来たらいったん火を止めるか弱火にしましょう。
・パウダースパイスと塩を加え、しっかり混ぜ合わせながら炒める
パウダースパイスを焦がさないように、弱火で炒めましょう。
スパイスにもしっかり火を入れたいので、弱火をキープしながら炒めていきます。
時間の目安は1~2分です。
パウダースパイスと塩がしっかり混ざりスパイスの香りが立ったら「カレーの素」は完成です。
・ヨーグルトを加え、しっかり混ぜ合わせる
ヨーグルトは加える前にしっかり混ぜてなめらかにしておきましょう。
あ、わたくしヨーグルトのことをグルトって言いますので、グルトってのは誤植じゃないですよ。
ヨーグルトを混ぜるときは弱火のままです。
火加減が強すぎるとダマになりやすいので注意してください。
※ヨーグルトの量が少ないときはさほど気になりませんが、量が多いとダマも目立ちます。少々時間はかかりますが弱火~弱めの中火で混ぜるのがベターです。
・焼いた鶏もも肉を加え、弱火で10分煮込む
鶏もも肉を焼いたときに出た油もすべて加えてしまいましょう。
と言いつつ、カロリーが気になるようであれば、油は入れなくてもOKです。
脂のうま味がなくてもこのカレーは成立するカレーですから。
……でも、入れた方が分かりやすくおいしくなりますよ~。
煮込むときは表面が大きくボコボコ言わない程度の弱火をキープしましょう。
・刻んだ香菜を加え、5~10分程度煮込む
5分と10分じゃ倍も違いますが、この煮込み時間はお好みの香菜の火の通り具合で決めてください。
香菜の存在感を残したければ短めに、その逆なら長めに。
そもそも香菜がキライなら無理して入れる必要はありませんが、ワタクシ的には入ったほうが絶対おいしいと思うけどな~。
煮込むときは時々かき混ぜることを忘れずに。
そして、かき混ぜるときは鍋底をしっかりこそぐように!
弱火でも意外と鍋底はコゲたりしますからね。
ちなみに、これは煮込んで5分程度の状態です。
香菜の茎の部分がまだまだシャキッと残ってるのが見えるかと思います。
この時点で煮込み終了! というのも全然アリだと思います。
・砂糖を加え、しっかり混ぜ合わせ1~2分煮込む
砂糖は味に深みを出すためのものです。
甘くするためではないので、ほんの少しでOKです。
果実系のジャムを加えるというのもアリですが、砂糖類は無理に加えなくてもOKです。
ここはお好みで。
表目にオレンジ色の油が浮かんで来たら完成です!
最後に味見をして、塩気が足りなければお好みで調整してください。
あとは盛り付けるだけです。
お肉がホロホロにやわらか〜い、水を一切使わない「ヨーグルトチキンカレー」の完成でーす!
パッと見、バターチキンカレーと見分けがつきませんが、こちらはヨーグルトがメインのカレーですからね!
ヘルシー度合いが違います! さ、温かいうちに食べましょう!
まずは何と言っても今日のメイン、ヨーグルトのカレーソースをご飯とともに。
あ~、このヨーグルトの酸味、そしてシンプルながらカルダモンがほのかに香るカレーソース。
こりゃー無限ループですよ!
続いて、チキンをばパクり。
ん~、コレコレッ!
キチンと下味を付けて焼きを入れたチキン。
弱火でゆっくりだけど、決して煮込み過ぎていないチキン。
肉のうま味もキチンと残っていて、絶妙なチキンだわ~。ハァ~。
毎度毎度書いてますが、やはり今回も最後のひと口がやってきました……。
無限ループは存在しませんでしたが、満足のいく一皿。
今日も大成功です!
ちなみにカルダモンて、人によっては「カルダモン爆弾」とか言って残しちゃう人が多いですが、わたしは食べちゃう派です。
あっという間の完食、ごちそうさまでした!
このヨーグルトカレーを食べていつも思うことは、「ヨーグルトってご飯に合うんだねっ」てコト!
なんにも手を加えていないグルトをそのままご飯にかけてもおいしいわけですから、それが玉ねぎやら、トマトやら、スパイスやら、なんやらと一緒に煮込まれて完成したものが「ヨーグルトカレー」ですからね。
ごはんに合わないわけがない!
断言します!
これぞ、ご飯のためのカレーだと!
「ヨーグルトチキンカレー」の作り方・おさらい
【材料】(2人分)
- 鶏もも肉:250g程度
- 玉ねぎ:小1個(160g)
- プレーンヨーグルト:400ml
- トマト:小2個(250g)(大1個でも可)
- 香菜:1株(45g)
- にんにく:1片(5g)
- しょうが:1/2片(5g)
- ターメリック:小さじ1/2
- レッドチリパウダー:小さじ1/2
- クミンパウダー:小さじ1
- コリアンダーパウダー:小さじ2
- カルダモン(ホール):4粒
- マスタードシード:小さじ1/2
- 塩:小さじ1
- 調理油:大さじ2
- 塩コショウ:少々
- 砂糖:小さじ1/2(省略可)
【下準備】
- 玉ねぎ:繊維方向にスライス。
- 香菜(パクチー):根の部分を切り落としてざく切り。根の部分はみじん切り。
- にんにく、しょうが:みじん切り。
- トマト:粗みじん切り。
- 鶏もも肉:皮付きのまま食べやすい大きさにカットし、塩コショウをする。
【調理】
- フライパンに調理油を中火で熱し、カルダモンとマスタードシードを炒める。
- にんにく、しょうがを加え、きつね色になるまで炒める。
- みじん切りした香菜の根を加える。
- 玉ねぎを加え、焼き色が付くまで炒める。
- トマトを加え、水分がなくなるまで炒める。
- パウダースパイスと塩を加え、しっかり混ぜ合わせながら炒める。(これでカレーの素が完成)
- ヨーグルトを加え、しっかり混ぜ合わせる。
- 焼いた鶏もも肉を加え、弱火で10分煮込む。
- 刻んだ香菜を加え、5~10分程度煮込む(時間は香菜の火の通し具合で調整)。
- 砂糖を加え、しっかり混ぜ合わせ1~2分煮込む。
- 味を調えて完成。
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最後にワンポイント!
ヨーグルトは乳脂肪分3~4%のものを使おう!
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いかがでしたか?
水を一切使わない「ヨーグルトチキンカレー」
いろんな種類のあるヨーグルトですが、400~450g入り100~200円程度のヨーグルトであれば大体どれでもうまくいくと思います!
今回のカレーは、「ヨーグルトの酸味はご飯と相性がいい!」そんな風に絶対思ってもらえるはずです。
ヨーグルトがキライな人以外は……。