50歳で農家になり旭山動物園公認の「白くまコーン」を生み出すまでの軌跡

旭山動物園公認の土産品に「白くまコーン」の名で愛される白いとうもろこしがあります。このとうもろこしを栽培しているのは、かにをインターネットで販売するお店の店主。なぜ、かに専門店の店主が農家になってとうもろこしを作っているのかを、とうもろこし畑まで行って伺ってきました。

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「行動展示」という動物本来の生態や能力が見られるように工夫した展示方法で、全国的に知られるようになった北海道旭川市の「山動物園」。その山動物園公認のとうもろこしがあるのをご存じですか?

 

そのとうもろこしは、商品名を「白くまコーン」といい、糖度が高くて甘いのが大きな特徴です。

 

「白くまコーン」を栽培しているのは、「かに太郎」の屋号でインターネット通販を中心に、かにやエビ、ホタテ、イクラといった海産物や、メロンやアスパラガスなど北海道の特産品を販売しているお店の店主、深瀬益一さんです。

 

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▲白くまコーンを栽培している深瀬益一さん

 

なぜインターネット通販の店主が、自ら白くまコーンを栽培しているのかは、後ほど説明するとして、まずは白くまコーンのおいしい食べ方を深瀬さんにお聞きしました。

 

生でも食べられる糖度の高いとうもろこし

深瀬さんによると、白くまコーンの糖度は17度以上、その甘さはフルーツを食べているような感覚です。

 

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しかも粒皮が薄いので、深瀬さん曰くぜひ生のまま食べてフルーツのように高い糖度を味わって欲しい」とのこと。

 

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▲ゆでるときには薄皮を1枚残すと長時間みずみずしい

 

生でも食べられるといっても、やっぱり一番おいしい食べ方は「ゆでとうきび」。北海道ではとうもろこしのことを”とうきび”と呼びます。

 

ゆでる際、一般的には皮をすべて剥いてからゆでますが、深瀬さんおすすめのゆで方は、薄皮1枚を残してゆでる方法。薄皮を残すことで、ゆであがりのみずみずしさを長時間保つことができるそうです。

 

保存する際は、皮がついたままビニール袋に入れて冷蔵庫に入れると、翌日もおいしく食べられます。

 

とうもろこしはバーベキューで焼いて食べるのもおいしいですよね。この際もゆでてから焼くと、ムラがなくきれいに焼けるそうです。焼きあがったとうもろこしにバターと醤油で味付けしたら最高のおいしさです。

 

農業者として認められるまでに5年かかった

深瀬さんは、もともと札幌ススキノの寿司店で働いていました。その時、出入りの業者さんに「浜から直接海産物を仕入れて販売してはどうですか?」とすすめられたそうです。そこで旭川市でかに専門店を開業、1998年ぐらいからインターネット通販に力を入れ始めました。

 

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▲タラバガニを持つ深瀬さん

 

最近ではロシアからのかにの輸入量が減って、なかなか手に入らなくなりましたが、以前は欲しいだけ買い付けできたそうで、インターネットでもかなり売れたそうです。

しかし、かにがよく売れるのはお中元やお歳暮が中心で、それ以外の時期はあまり売れませんでした。

売上を安定させるために目をつけたのが、アスパラガスやメロン、スイカ、とうもろこしといった北海道の農産物でした。

 

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──なぜ、自分でとうもろこしを育てようと思ったのですか?

 

f:id:exw_mesi:20200727000227j:plain深瀬:ずっと親戚や知り合いの農家さんに生産をお願いしていましたが、どの農家さんも高齢のために農業を続けることができなくなってしまいました。ある時、たまたま知り合った農家さんから、「農地を貸すから自分で作ってみたら?」と言われたのが農業を始めたきっかけです。

 

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▲自ら農機具に乗ってとうもろこしの苗を植える

 

──農家になるのは大変でしたか?

 

f:id:exw_mesi:20200727000227j:plain深瀬:農家になるためには、その地域の農業委員会が選んだ農家さんのところに行って、研修を受ける必要があります。自分の場合は、農地を借りる農家さんのところで研修を受けたいと希望しましたが、なかなか認められず、農業者と認められるまでに5年かかりました。46歳から農業を始めて、農家になれたのは50歳になってからです。

 

──そんなに時間がかかるんですか!

 

f:id:exw_mesi:20200727000227j:plain深瀬:しかも40代までは新規就農者に対して、いろいろな助成金や補助金、制度資金などがありますが、50歳になってしまった自分はまったく使えず、農機具等はすべて自己資金で購入しました。

 

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▲1列約250本、2列で約500本の苗が広い畑に植えられる

 

──今、自分の畑で生産している野菜は?

 

f:id:exw_mesi:20200727000227j:plain深瀬:とうもろこしとミニトマトを生産しています。とうもろこしは、自分の畑で約12万本、旭川市から少し離れた美瑛町と名寄市でも契約農家さんに10万本以上作ってもらっています。

 

山動物園にあやかって「白くまコーン」と命名

──どうして、とうもろこしに「白くまコーン」と命名したんですか?

 

f:id:exw_mesi:20200727000227j:plain深瀬:インターネット通販では、たくさんの業者さんがとうもろこしを販売しているので、普通に販売してもそれほど売れませんでした。そこで考えたのが付加価値をつけて売ることです。

 

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山動物園公認の白くまコーン

 

f:id:exw_mesi:20200727000227j:plain深瀬:旭川市にお店を構えているのだから、全国的にも知名度が高く、観光客にも人気の「山動物園」にあやかって、動物の名前をつけたら売れるかもしれないと思ったんです。
そこで、白いとうもろこしを「白くまコーン」黄色いとうもろこしを「ライオンコーン」500g以上の特大サイズとうもろこしを「象もろこし」という名前にしました。

 

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──もちろん山動物園にも許可を取って?

 

f:id:exw_mesi:20200727000227j:plain深瀬:はい。山動物園に名前の使用を相談したら、快く承諾してくれました。平成25年には商標登録もしています。

 

──山動物園に売り上げの一部やハネ品(※規格外で除外したもの)を寄付しているそうですね。

 

f:id:exw_mesi:20200727000227j:plain深瀬:名前を使わせてもらっていることもありますし、動物たちのエサ代がものすごくかかるというのを聞いていたので、売り上げの一部と、販売できないとうもろこしのハネ品をエサとして寄付させていただいています。
その他にも、知り合いの農家さんからカボチャなどをいただいて寄付しています。とうもろこしは年に数回、1回に200~300㎏ぐらいを寄付しています。シカやアライグマ、サルなどのエサになっているそうです。

 

収穫時期を見極めてやってくるエゾシカの被害が深刻

──山動物園ではシカのエサになっているとうもろこしですが、昨今問題になっている畑のエゾシカ被害は深刻じゃないですか?

 

f:id:exw_mesi:20200727000227j:plain深瀬:エゾシカはすごいですよ。とうもろこしが熟して甘くなると群れで食べに来るんです。甘くなる前は来ないのですが、糖度が17度になるとちゃんとやってきます。嗅覚なんでしょうね。おかげで収穫時期がわかります(笑)。

 

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▲エゾシカになぎ倒されたとうもろこし

 

f:id:exw_mesi:20200727000227j:plain深瀬:1日に数100本食べられるときもありますし、畑に入ってとうもろこしをなぎ倒していくので、被害は甚大です。エゾシカは夜中から明け方にかけて群れでやってくるので、以前は大音量でラジオをかけたり照明をつけたりしていましたが、慣れると全く効果がなくなります。

 

──学習能力があるんですね。

 

f:id:exw_mesi:20200727000227j:plain深瀬:昨年使ってみたのは「ウルフピー」という商品名のオオカミのおしっこです。エゾシカの侵入口に仕掛けてみましたが、これは効きましたね。ただ非常に高価なのがネックです。今年はさらに「スーパーモンスターウルフ」というオオカミのロボットも導入する予定です。

 

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とうもろこし畑に取材に伺ったのは7月中旬。

 

今年の北海道は雨が多く、苗の定植がかなり遅れているとのことでした。それでも早く植えた畑は、8月に収穫できそうとのことです。

 

「白くまコーン」は、かに太郎から購入できます。また旭川市のふるさと納税の返礼品にも選ばれています。旭川市と山動物園を応援したいという人は検討してみてください。

 

とうもろこしの概念を覆す甘さはやみつきになりますよ。

 

お店情報

かに太郎

住所:北海道旭川市豊岡12条7丁目1-6
電話番号:0166-32-5959
営業時間:9:00~17:30
定休日:日曜日・祝日

www.kanitaro.net

書いた人:都良

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生まれも育ちも北海道で、半世紀以上生きてます。「北海道フードマイスター」「北海道観光マスター」の資格を持ち、「自称」北海道の食と観光の専門家。暇な時には農家さんの手伝いもしていて、農業も大好きです。本業はフリーのWEBライター。ライフワークは障がい者スポーツ。北海道ボッチャ協会の審判員・普及員で、週末には各地で「ボッチャ」の体験会をしています。

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