「ヤムカイダーオ」「ナムトック ペッ」マニアックすぎるタイ料理しかない1.5坪の極楽【京都・四富会館】

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みなさまこんにちは。京都のライター・ナガオヨウコです。

 

近年は、タイ料理が身近になってきたと思いませんか。

トムヤムクン、カオマンガイなどメジャーな料理は、「ああ、あの味ね」ってだいたい想像がつきます。

 

しかも、多くのタイ料理店は、置いてるメニューが似通っているという印象。

 

そこで、タイ料理の奥深い世界をガツガツ知りたいという、タイ料理好き好きラバーズにおすすめのタイ酒場をご紹介します。

「現地の味が食べたい!」「新しいタイ料理に出合いたい!」という人は、絶対行くべき!

 

ディープな「四富会館」にある

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場所は、京都の四条富小路上ル、「四富会館」。

会館、というと、昭和な雰囲気のスナックが並び、年配の常連さんが集っている……というイメージがあるかと思います。

 

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会館の入り口をのぞいてみます。

 

訪問時はほかのお店が開く早めの時間だったので暗いですが、夕方5時以降は廊下に電気がつき、明るい雰囲気になります。

 

初めてでも入りやすい、カジュアルなお店もたくさん軒を連ねているのでご安心を。

 

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お店の名前は「奈落」。

奈落って、「奈落の底」の奈落ですよね。なんちゅーネーミングや……(理由は後述)。

 

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引き戸を開けてみると、木のイスがありました。

座ると、背中すぐが引き戸。むちゃくちゃ狭いです。

お店の広さ(狭さ)は1.5坪で、全6席。店内全体の写真が撮れない。

 

料理もお酒もマニアック

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まずは、メニューの一部をご紹介。

 

クイッティアオクアガイ、グントートガティアム、パッパーカードーンサイカイ、ネーム、サイウア……。

 

分かる人は、相当のタイ料理マニア!

多くの人(わたくし含む)にとって、何かの呪文にしか聞こえない……よな。

 

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▲オーナーの森田 規義さん

 

f:id:Meshi2_IB:20181113115755p:plain森田さん:奈落という店名は、サンスクリット語の仏教用語。インドでは“ナラカ”、タイでは“ナロック”と発音します。六道、つまり人々が生きているあいだの善悪によって輪廻転生する6種類の世界の中で、奈落は一番下層にあたります。1.5坪という小さなお店で料理を作る僕は、“奈落”的存在かなあと思って名付けました」

 

先に言っておきますが、ここの「奈落」は極楽ですからね。

 

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メニューの多くは日替わり。珍しいタイ料理ばかりを振る舞っているのは、お店が超小バコだから。

 

f:id:Meshi2_IB:20181113115755p:plain森田さん:「タイ人が日常で食べている料理や、タイで今人気の料理を食べてほしいと思っています。中にはマニアックと思われる料理もあるかもしれませんね」

 

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食材や調味料は、できるだけタイのものを使用。

写真のナンプラーのほか、だし醤油、唐辛子、乾燥ハーブもタイ産。

 

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粗挽きの唐辛子は、タイの市場で購入してきたもの。

 

日本で粗挽き唐辛子というと韓国産が一般的ですが、料理に使うと甘みが出てしまうのだとか。

 

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ニンニクもタイ産。

 

日本や中国のものより、やや小粒です。

ニンニクってどれも同じじゃないの? って思ってしまいますが、香り高さが段違いなんですって。

 

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ホムデンという、タイのエシャロット。

日本で見かけるのはベルギーエシャロットという、もう少し大きめのものです。

 

見た目は、赤玉ネギのミニ版です。

タイでは、値段が安い赤玉ネギを使うお店が増えてきたようですが、こちらではあえてのタイ産エシャロット。

 

うわー、これから食べる料理に期待!

 

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オーナーの森田 規義さんが初めてタイを訪れたのは15年前、サラリーマン時代のこと。

初の海外旅行で、金銭感覚も価値観も文化も日本とはまったく違うタイに、強烈に魅力を感じたそうです。

 

f:id:Meshi2_IB:20181113115755p:plain森田さん:「毎年有給休暇を使い、タイのさまざまな地方を訪れるようになりました。お酒が好きだったので、お酒に関わる仕事をしたいなあと漠然と夢を見ていました。でも、飲食店で働いた経験もなく、無理かなあと諦めかけていたとき、ここの四富会館の物件に出合ったんです」

 

2010年に「奈落」をオープンさせてからも、食べ歩きと買い出しのため年に2回はタイを訪れているそう。

 

帰国後1週間くらいのあいだは、現地で仕入れた生野菜を使った料理が登場。

「生の白ウコンを千切りにしたサラダは、新ショウガみたいな爽やかさで毎回好評」ですってよ! うわー、食べてみたーい!

 

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まずは、お酒をオーダーよ!

ドリンクメニューを見てみると、またしても知らないお酒ばかりが並んでいます。

 

ドイツの薬草リキュール・イエーガーマイスターをタイのエナジードリンクで割った「イエーガーボム」、泡盛のルーツ「モンシャム」、タイのラム「センソム」、他にベトナムの米焼酎も。

 

よく見ると、ジョニーウォーカー黒もあります。あれっ、ジョニ黒って、タイでも洋酒ですよね?

 

f:id:Meshi2_IB:20181113115755p:plain森田さん:「ジョニ黒はタイの若者に人気なのであえて置いてます。タイのクラブでカッコつけたい人は、国産のセンソムや安価なジョニ赤ではなく、ジョニ黒のボトルを入れるみたいですよ(笑)」

 

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▲センソム(ソーダ割り)/800円

 

サトウキビだけで作られた、タイのラムです。

ラムというより、ウィスキー寄りな味。

 

f:id:Meshi2_IB:20181113115755p:plain森田さん:「タイは、イギリスの影響を強く受けてきたという歴史があります。スコッチ・ウイスキーが好まれているのですが、なにせ輸入のお酒は高価。そこでタイ国内で、イギリスのスコッチに似せたラム酒が作られるようになりました。タイのラム酒といえば、20年くらい前までは、現地でも日本でも“メコン”。しかし、最近のタイの若者にとってメコンは、“年配者の飲み物”という認識なんですね。対してこちらのセンソムは、おしゃれなイメージ。最近は、音楽イベントのスポンサーになるなどプロモーションを盛んに行い、若者にアピールしています。僕も、タイに行ったら必ず飲んでいますよ」

 

こんなタイの現地ストーリーが聞けるのも、6席だけのカウンター酒場ならでは!

 

未知の味が続々と登場

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▲ヤムカイダーオ/700円

 

今回ご紹介するうち、唯一の定番メニュー。

パクチー、干しエビ、ミニトマトなどをナンプラーとライムで和え、白身カリカリの目玉焼きを合わせたもの。

 

じゃくじゃく混ぜ合わせていただきまーす!

 

これは……ウマい!! 

 

具材の味付けはちょっと酸っぱめなのですが、卵の黄身がマイルドなソースとなり、全体をまとめています。

 

なお、酸味づけはライム。お酢と違い、匂いがツンと来ずに爽やかな香りです。

ちなみにトムヤムクンが酸っぱいのもライムを使っているからだそう。タイでは、調理にお酢を使うことはあまりないそうです。

※卓上の味付けセットや、つけダレではお酢が登場します。

 

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▲タムカオポート/850円 ※日替わりメニューの一品

 

これもまた、日本ではなかなか見かけないメニュー。

タイの東北部・イサーン地方の有名な料理「ソムタム(青パパイヤのサラダ)」のとうもろこしバージョンです。

 

蒸したとうもろこしとニンニク、生の唐辛子、トマト、ピーナッツをあえたものに、生のキャベツが添えてあります。

 

生のキャベツは手でちぎってぼりぼり食べるのが、現地流なのだとか。

 

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プリッキーヌという、タイの小さな唐辛子。結構辛いです。しかし、トウモロコシ&味付けに使っているココナッツシュガーが甘いので、唐辛子が程よいアクセントに。

 

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ココナッツシュガーもタイ産。

 

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ココナッツシュガーって、さらさらかと思ったらペースト状でした。

 

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▲エーデルピルス(生)/600円

 

早々にタイのラムを飲み干したので、次は生ビールを。

 

こちらの生ビールは、サッポロのプレミアムビール・エーデルピルス。ちょっと珍しいですよね。

 

飲んでみると……。ナニコレ! 華やかなのに主張しすぎてなくて、ぐいぐいイケちゃう。おいしーーー!!(叫んじゃうぅー!)

 

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f:id:Meshi2_IB:20181113115755p:plain森田さん:一般的なプレミアムビールは、モルトを多く使っているから甘みが強く濃い。しかし、エーデルピルスはしっかりしたモルトの味もありながらホップを大量に使用しているので、爽やかな香りと苦味のバランスが素晴らしいんですよ」

 

サーバーには、祇園や宮川町の芸妓さんシールが貼られています。

芸妓さんが、こんなマニアックなタイ酒場に訪れたという証拠。

運が良ければ、芸妓さんの隣でタイ談義ができるかも!?

 

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▲ナムトック ペッ/1,150円 ※日替わりメニューの一品

 

メニュー名の「ペッ」は、タイ語で鴨またはアヒルのこと。

鴨ロースに、モチ米をから炒りして砕いたものをまぶしています。

 

添えてあるのは、ネギとパクチー、エシャロットをナンプラー、ライム、砂糖、タイの粗挽きトウガラシであえたもの。ピリリと辛い!

 

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自家製鴨ロースはしっとり柔らか。

カリカリに炒って砕いたもち米のぷちぷち、すっと爽やかなスペアミントが好相性。

 

よく知ってる鴨ロースが、驚きのタイ仕様!

 

ちなみに現地では、かたまり肉を炙って切ったものが主流だそう。

しかし、タイの鴨やアヒルは肉が固く、炙るだけだとガチガチ食感になってしまうため、こちらではピンク色に焼いた鴨ロースを使用しています。

 

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▲クイッティアオ クア ガイ/800円 ※日替わりメニューの一品

 

鶏肉ときしめんの玉子炒め。

タイにあるこの料理の専門店が2軒も、2017年・ミシュランのビブグルマンに選出されたのだそう。

その2軒は、タイ人にとっては庶民的なB級グルメの食堂なのだとか。

 

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日本語でいうときしめん、ですが幅が広めのビーフンです。

鶏肉・幅広ビーフン・玉子・レタス・細ネギを、タイの砂糖入りダシ醤油で炒めたものです。

あっさりしていてかなり食べやすい。いいよいいよ〜〜!

 

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添えられていたチリソースをかけて味変。

 

チリソースは、タイで一般的な銘柄のもの。そこまで辛くなく、むしろトマトケチャップっぽい。なのに、トマトは入っていないらしい。謎。

 

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▲カオパッ ナムリアップ/1,050円 ※日替わりメニューの一品

 

黒オリーブのチャーハン。

ご飯が黒紫色っぽいのは、黒オリーブの色が移ったため。

塩気のある黒オリーブが新鮮。お酒が進んで進んで止まらない!

 

こちらのチャーハンは、オーナーの森田 規義さんがタイから帰国後しばらくしか登場しない限定メニュー。

その理由は……。

 

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タイに行くたび、日本では入手不可能な、タイの黒オリーブ缶を10缶ほど抱えて帰ってくるため。

なくなり次第、メニューからは消えます。

 

缶には「OLIVE」と書いてありますが、正確にはオリーブではないそうです。

 

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ああ〜、食べた食べた! ぜんぶウマかった!!

 

なお、「タイ酒場」とはいえ、バーではありません。

基本はタイ料理を食べながらお酒を飲むお店です。ぜひおいしーいタイ料理を堪能してください。

 

6席しかありませんが、予約は可能。満席になることも多いので、予約してからの訪問が確実です。

 

お店情報

奈落

住所:京都府市中京区富小路通四条上ル西大文字町615 四富会館1階
電話番号:075-241-6282
営業時間:19:00〜翌0:30(LO)
定休日:日曜日・祝日
Twitter:https://twitter.com/naraku_jp

 

書いた人:ナガオヨウコ

ナガオヨウコ

ライター歴22年、京都在住のフリーライター。食、手芸、子育て、京都関連の雑誌や書籍、webに執筆中。10年間続けている自然農業の畑では、20~30種の野菜やハーブ、花を栽培。

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