みなさまこんにちは。京都のライター・ナガオヨウコです。
ここ数年で、日本の弁当文化は成熟期を迎えていると感じています。「弁当男子」という言葉も一般的になりました。
本屋さんに行くと弁当レシピ本がずらーっと並んでいますし、ハンズやロフトに行くと、通年でおしゃれな弁当箱が置かれています。
SNSではカラフル弁当や地味弁当にたくさん「いいね!」がついているので、「誰かの弁当の中身を見ることが好きな人って多いんだな」と思います。
そして、外国の弁当が「ビニール袋に入ったパンと、丸ごとのリンゴだけ」というシンプルさを見ては「信じられない! 日本のお弁当はおかずがいっぱいあって、彩り豊かなのに!」と、日本の弁当を誇らしく感じるのは、私だけではないでしょう。
日本初!? 弁当専門店
今回ご紹介するのは、京都の弁当箱専門店「Bento&co(ベントーアンドコー)」。
オーナーは、フランス人のベルトラン・トマさん。
子どもの頃から日本のアニメやゲームが大好きだったベルトランさん。2003年に京都大学に留学し、その後はワーキングホリデーのビザを取得して京都で暮らしていました。
ベルトランさん(以下敬称略):「フランスに住む母から『フランスの雑誌で、日本のお弁当が紹介されているのを見たの。素敵ね!』と聞き、すぐに市場調査をしてビジネスにすることに決めました。
2009年、日本の弁当箱を販売するフランス語のサイトをオープン。その後、英語サイトと日本語サイトを立ち上げると同時に、海外への卸をスタートしました。実店舗は京都市内に本店があるのみです」
ベルトラン:「料理を外に持っていって食べる、という文化は世界中にあります。ただ、ヨーロッパでは“食べ物を持ち運ぶための箱”という扱われ方でした。
私が子どもの頃は、プラスチックの食品保存容器にパン、鶏肉、ソースを入れて持って出かけて、皿に移し変えて電子レンジで温めていたものでした」
▲和風柄は外国人に好評
しかし、近年、海外でも日本のような弁当がポピュラーになりつつあるそうです。
ベルトラン:「京都の店舗では、お客さまの約3割が外国人。フランスをはじめ、世界の多くの国では、お弁当のことを“BENTO(ベントー)”と、日本語そのままで呼ばれるほど、弁当文化は普及しているんですよ」
フランス人オーナーの自作弁当3選
まずは、ベルトランさんのお弁当をご覧ください。
▲ベルトランさんの自作弁当その①/画像提供・ベルトランさん
ベルトラン:「仕事に行く前、自分のために作りました。
ご飯の上に、フランスの家族が持ってきてくれたチーズと目玉焼きを乗せています。
目玉焼きの上にかけた赤いソースは、アメリカのピリ辛ソース・シラチャー。
食べる前にレモン汁をたっぷりかけます。ご飯とレモン汁の組み合わせが大好きです」
▲ベルトランさんの弁当その②/画像提供・ベルトランさん
ベルトラン:「洋風牛丼。京都の三嶋亭さんという高級精肉店の牛肉を玉ネギとニンニク、塩こしょうで炒め、フランスのマスタードを添えました。こちらもレモン汁をかけて食べます。スープは、無印良品のオマールエビのビスク」
▲ベルトランさんの弁当その③/画像提供・ベルトランさん
ベルトラン:「レモンのスライスを乗せたカルボナーラ。付け合わせは、ニンジン、ブロッコリー、フランスのチーズ、果物」
おお! 全部美味しそう!!
3種類ともレモンづかいがポイントとなっています。
ベルトラン:「お弁当の中身は、パスタでもフレンチでもなんでもいいと思います。いろんな種類のおかずを詰めなければと思う人もいるでしょうが、難しく考えなくていいんですよ」
ベルトラン:「日本の弁当箱は、石川県のメーカーさんのものが多いですね。もともと加賀はうるし職人が多かったため、プラスチックの時代になっても、型づくりや塗りといった技術が受け継がれているんですよ」
ベルトラン:「ニーズが高いのは、電子レンジや食洗機が使えるお弁当箱。しかし、これからは脱・プラスチックの時代。ヨーロッパのお客さまからは『食洗機や電子レンジOKの100%プラスチックではない弁当箱が欲しい』というリクエストをよく受けます。
竹やトウモロコシ由来などエコ素材を使った弁当箱を開発すべく、今はいろんなメーカーさんと交渉しているところです」
お箸セットやシリコンケース、ランチバッグなどお弁当グッズも多彩に揃えています。
日本の弁当箱を輸出
3階は社長室。
ベルトラン:「売上の7割は、海外の法人・個人客。現在、105カ国に輸出をしています。残りの3割は、京都の実店舗と日本向けサイトでの購入です」
店舗の2階は、事務所です。
こちら京都で働いている外国人スタッフは6人。
ベルトラン:「2017年には、『Ship&co』というシステムを立ち上げました。これまで培った輸出ノウハウを活かし、オンラインショップ経営者や物流会社向けのサービスを提供しています。1つのプラットフォームで在庫管理・運送会社の料金比較・送り状作成まで完結するシステムを開発したんです。
2019年2月には、Ship&coシンガポールオフィスを立ち上げ、今後は東アジアにも営業を広げるべく活動しています」
国際郵便の送り状の作成は、これまで1枚につき3分かかっていた作業がわずか20秒に短縮されたのだそう。
オリジナル弁当箱も開発
では、メシ通読者におすすめの弁当箱をご紹介しますね!
簡易スタジオボックスで弁当箱を撮影させてもらいました。
プロ用の大きなライトなどは使っていないのですが、どえらくきれいな写真が撮れました!
▲西陣弁当 楽園紫/2,200円(税別)
上段・下段を合わせると950mlの大容量ですが、食べ終わったあとはコンパクトに収納できます。
ベルトラン:「着物生地をフタに貼り付けるという特別な技術で作ったオリジナルです。特にフランス人に人気の弁当箱です」
▲ビッグ弁当 青海波/2,200円(税別)
日本の伝統模様・青海波(せいがいは)。
1色ずつシルクスクリーンで印刷されているという、なかなか手の込んだ品です。
ベルトラン:「大きい弁当箱は男性用というイメージがあるかもしれませんが、野菜をたっぷり食べたい女性にもおすすめ。惣菜やサラダは意外とかさばるので、大きめの弁当箱を選ぶといいですよ」
▲Black+Blum Stainless Steel Sandwich Box/3,600円(税別)
イギリスのデザイナーによるサンドイッチケース。直輸入なので、日本ではなかなか見かけないかも。
ベルトラン:「天然竹のフタはまな板として使えます。バゲットやベーグル、食パンも入る大きめサイズ。ピクニックに持っていって、その場で惣菜やサラダをはさむと、おしゃれですよ」
▲曲げわっぱオリジナル/6,000円(税別)
秋田杉の曲げわっぱ。使いやすい、スリムな小判型です。
「手入れが大変そう」と思ってしまいますが、こちらのオリジナル曲げわっぱなら心配ナシ!
ベルトラン:「ウレタン塗装を施しているので、揚げ物や色素のあるものを入れても、木地に色移りすることはありません。中性洗剤をつけたスポンジで汚れを落とし、水洗い後にしっかり拭き取るだけ。ね、簡単でしょう?」
▲京都の繁華街、錦市場にも近い
では場所のおさらいを。
寺町通りと御幸町通りのあいだ、六角通り沿いにあります。
京の台所・錦市場にも近いので、観光ついでにぜひお立ち寄りくださいね。
お店情報
Bento&co(ベントーアンドコー)
住所:京都府京都市中京区八百屋町117
電話番号:075-708-2164
営業時間:12:00〜19:00
定休日:不定休
書いた人:ナガオヨウコ
ライター歴22年、京都在住のフリーライター。食、手芸、子育て、京都関連の雑誌や書籍、webに執筆中。10年間続けている自然農業の畑では、20~30種の野菜やハーブ、花を栽培。
- ブログ:しましま畑でつかまえて