ハイテンショングルメレポート選手権やってみた

f:id:yoppymodel:20190925100105j:plain


こんにちは。ヨッピーです。これまで、ライターとしてたくさんのグルメ記事を書いてきましたが、自分自身で書いた記事を読み直してみると、

  • だいたい「うまい」としか書いてない
  • 「美味さ」を表現する時に文章ではなく顔芸でなんとかする傾向にある
  • そもそも繊細な味を理解していない


という、グルメライターとして致命的な欠点を抱えてる事が判明しました。
そこで本日は、「グルメ表現ならワシに任せろ!」と意気揚々とやってきた3名の方に、「グルメ表現のイロハ」について教えて頂こうと思います!

ご紹介します!こちらの3人です!

f:id:yoppymodel:20190924221558j:plain

じゃん!

f:id:yoppymodel:20190927014834p:plain

狂気のライター、pato。
伝説のテキストサイト「Numeri」の管理人。ライターとしては「東京の一戸建てを宣伝しにシベリア鉄道に乗る」「四国の全駅制覇とお遍路を同時にやる」などといった、どう考えても大変な企画を難なくクリアしてゆく狂気のライター。「狂ってる」「頭がおかしい」など周囲からの評価も高い。


f:id:yoppymodel:20190927014847p:plain

バーグハンバーグバーグ社員、山口むつお。
大人気おもしろサイト「オモコロ」を運営する会社の社員。持ち前のPCスキルを活かしCG+実写を駆使して変な画像を量産している。「魔列車」のシリーズはヨッピーからも「あれは本当にすごい」と太鼓判を押されている。

f:id:yoppymodel:20190924222441j:plain

CGと実写の悪魔合体によって生まれた傑作「魔列車


f:id:yoppymodel:20190927020543p:plain

漫画家、凸ノ高秀。
代表作は週刊少年ジャンプ「アリスと太陽」など。画力をメキメキ上げており、ヨッピーから「とっつんは本当に絵がうまいねえ……」としみじみ語られて嫌そうな顔をしていた。今回は唯一の漫画勢として漫画ならではのグルメ表現を追求する。


以上の3人で……、

f:id:yoppymodel:20190930111017j:plain



グルメ表現を争います!!!


f:id:yoppymodel:20190927014917p:plain

patoさんだけモザイクかかってるしアロハシャツだしでハワイあたりのマフィアっぽさがすごい。

f:id:yoppymodel:20190927014834p:plain

いやー、でもいい企画ですね。ヨッピーは本当に味の表現が下手。

f:id:yoppymodel:20190927020543p:plain

普通にご飯食べに行っても「美味い」と「まずい」しか言わないですからね。


f:id:yoppymodel:20190927014917p:plain

でもさ、味なんて「美味い」と「まずい」の二択でじゅうぶんでは?

f:id:yoppymodel:20190927014847p:plain

もうライターやめろや。


【今回のルール】

  • 3人がそれぞれ別のお店で美味いものを食べてレポートする
  • 「一番美味しそう!」と思わせた人が勝ち!


以上、ルールは単純明快です!


f:id:yoppymodel:20190927014834p:plain

でも今回は勝てると思うよ。彦摩呂とかが出てきたら流石の僕も厳しいかと思ったけど、みんな素人じゃん。絶対勝てるよ。

f:id:yoppymodel:20190927014847p:plain

patoさんグルメ記事なんて書いたことありましたっけ?

f:id:yoppymodel:20190927014834p:plain

無いよ。

f:id:yoppymodel:20190927020543p:plain

その自信はどっから出て来るんですか。

 

【凸ノさんのターン】

 

f:id:yoppymodel:20190925002619j:plain



f:id:yoppymodel:20190924195955j:plain

さあ、そんなわけで凸ノさんにはしゃぶしゃぶ、日本料理でお馴染みの「木曽路」さんに来て頂きました。高級感溢れる店内に期待が高まる!

f:id:yoppymodel:20190924200121j:plain

奥がブランド牛の代名詞、松阪牛(1人前9720円)で手前が和牛の特選霜降り肉(1人前 昼5076円、夜6156円)。もはや一目で「いいお肉」である事がわかる。ちなみに、すき焼きを注文すると、先付、しゃぶしゃぶ(肉・野菜盛)、きしめん、餅、御飯、香の物、デザートが付いてくる。

f:id:yoppymodel:20190924200623j:plain

ちなみに木曽路さんでは主原料であるゴマ、他にピーナツやクルミといった秘伝の材料、調味料を配合したごまだれ。醤油の風味とコクを活かし、香りの良い柑橘と伸びのあるだしを配合したオリジナルのポン酢の2種類で提供される。

f:id:yoppymodel:20190924201031j:plain

ベテランのお姉さんに「ベストな状態」のしゃぶしゃぶを作って貰おう!

f:id:yoppymodel:20190924201116j:plain

完全に美味そう……!

f:id:yoppymodel:20190924201006j:plain

それでは、凸ノさん、グルメレポートをお願いします!

f:id:TEPPEI3:20190927170137j:plain

木曽路さんでは特にゴマだれが人気で、このゴマだれを求めてわざわざ買いに来る人もいるらしい。

f:id:TEPPEI3:20190927170118j:plain

「ほおお……、これはこれは……」 

f:id:yoppymodel:20190924224908j:plain

「あーー……!」


f:id:yoppymodel:20190924225121j:plain


f:id:yoppymodel:20190924225144j:plain


f:id:yoppymodel:20190924225209j:plain


f:id:yoppymodel:20190924225225j:plain













 








 






 






f:id:yoppymodel:20190924162406p:plain


f:id:yoppymodel:20190924162425p:plain



f:id:yoppymodel:20190924201836p:plain



f:id:yoppymodel:20190924201907j:plain

「ごちそうさまでした」


【品評開始】

 

f:id:yoppymodel:20190927014917p:plain

灰汁(あく)を出すな。

f:id:yoppymodel:20190927020543p:plain

いや、「この世界」においては「灰汁」がめっちゃ貴重で大事なんですよ。だからお肉ちゃん達が僕を誘惑しまくってなんとか灰汁を出させようっていう異世界転生モノですね。

f:id:yoppymodel:20190927014847p:plain

お肉のギャルゲーやね。ハーレム物と見た。

f:id:yoppymodel:20190927014917p:plain

「マツザカァァァァア」とか「ワギュウゥゥゥウ」とか擬音がイチイチうっとおしい。

f:id:yoppymodel:20190927014834p:plain

いやー、でもクール系キャラの和牛ちゃんがいいね。

f:id:yoppymodel:20190927014847p:plain

ちなみにこれ、時間どれぐらいかけたんですか?

f:id:yoppymodel:20190927020543p:plain

いやヨッピーさんが急に言うてきたから全然時間なかったんですよ。1日で描きました。

f:id:yoppymodel:20190927014847p:plain

1日でこんだけ描けるのか……。トーンもちゃんとはってあるし……。

f:id:yoppymodel:20190927014917p:plain

変な所に感心すんな。


f:id:yoppymodel:20190924230322j:plain

ちなみにこちらのしゃぶしゃぶ、お肉だけじゃなくて野菜も死ぬほど美味しかったそうです。羨ましい。

お店情報

しゃぶしゃぶ・日本料理 木曽路 銀座5丁目店

住所:東京都中央区銀座5-8-17 ヒューリック銀座ワールドタウンビル5F
電話:050-5257-85532
営業時間:月~金、祝前日: 11:30~15:00 (料理L.O. 14:30 ドリンクL.O. 14:30) 17:00~22:00 (料理L.O. 21:30 ドリンクL.O. 21:30) 土、日、祝日: 11:30~15:00 (料理L.O. 14:30 ドリンクL.O. 14:30) 17:00~21:30 (料理L.O. 21:00 ドリンクL.O. 21:00)
定休日:お気軽にお問い合わせ願います。

www.hotpepper.jp

 

 

 

山口くんのターン】

 

f:id:yoppymodel:20190925014226j:plain




f:id:yoppymodel:20190924230051j:plain

続いて山口くんには、お馴染み築地にあるすしざんまいの「本陣」に来て頂きました「本陣」は外観や内装、設備など、他の「すしざんまい」とはちょっと趣の違うお店で、個室にも対応!歓送迎会から接待まで、幅広いシーンで使えるお店だ!

f:id:yoppymodel:20190924230633j:plain


今日は本鮪大とろ(1個398円)にあぶりのどぐろ(1個398円)、

f:id:yoppymodel:20190924230739j:plain

イクラ(1個338円)にウニ(1個550円)、

f:id:yoppymodel:20190924230803j:plain

そして丸ごと1本分を使った上穴子(1個550円)といった大人気シリーズを食べて頂きます!
それでは山口くん、レポートをお願いします!

 

f:id:yoppymodel:20190924230051j:plain

こんにちは。今日は「すしざんまい本陣」さんにお邪魔してたいへん美味しそうなお寿司をいただきます。

f:id:yoppymodel:20190924230803j:plain

見てください……こちらの美味しそうなお寿司たちを……。さっそくいただいてみたいと思います

f:id:yoppymodel:20190924231202j:plain

まずは、こちらの本鮪の大とろをいただきます……!

f:id:yoppymodel:20190924231247j:plain

パクっ

f:id:yoppymodel:20190924231308j:plain

……くぅ〜〜〜〜っ

f:id:yoppymodel:20190924231339j:plain

美味しすぎ……


f:id:yoppymodel:20190924231358j:plain

 

バンッ!!!!


f:id:yoppymodel:20190924231428j:plain

 

!?

 

f:id:yoppymodel:20190924231453j:plain

 

は??? こんなところでいきなり亜空間へのトンネルがつながる??? こりゃただごとじゃないっしょ????

f:id:yoppymodel:20190924231513j:plain

 

!?


f:id:yoppymodel:20190924231540j:plain

 

ちょっと!! あまりの美味しさに、超古代から「美味恐竜」を召喚してもうてるやないかい!!!!!!!!

 

f:id:yoppymodel:20190924231607j:plain

 

「それだけやないで」

 

その声は……ヨッピーさん!? 死んだはずじゃ……

 

山口くんのピンチを感じ取って、こうして地獄からメッセージを送ってるんや」

 

やっぱり地獄に落ちたんですね!

 

「そんなことはどうでもええ! 空を見てみい!」

 

f:id:yoppymodel:20190924231701j:plain

 

え!?!?

f:id:yoppymodel:20190924231741j:plain

 

日本中の空に、何か巨大なものが映ってる????

 

 

これってもしかして……!?!?!?!?

f:id:yoppymodel:20190924231807j:plain

 

f:id:yoppymodel:20190924231819j:plain


 

f:id:hotpepper-gourmet:20190930220407g:plain









f:id:yoppymodel:20190925000059j:plain

 

 

これだけの事を起こしてしまうとは……どうりで美味しいはずですね!

 

それでは☆

 

 

 

f:id:yoppymodel:20190925000114j:plain

 

f:id:yoppymodel:20190925000134j:plain



f:id:yoppymodel:20190925000153j:plain



f:id:yoppymodel:20190925000215j:plain




f:id:yoppymodel:20190925000230j:plain




f:id:yoppymodel:20190925000240j:plain



f:id:yoppymodel:20190925000316j:plain


ごちそうさまでした!




【品評開始】

 

f:id:yoppymodel:20190927014917p:plain

俺の若いころの写真を勝手に使うな。

f:id:yoppymodel:20190927014834p:plain

これ、グルメレポートか!?

f:id:yoppymodel:20190927020543p:plain

美味(うま)恐竜ってなんなんですか。

f:id:yoppymodel:20190927014847p:plain

元々は、シューティングゲームの世界に吸い込まれて、「美味弾(うまだま)」をぼんぼん飛ばして来る敵に囲まて美味弾をかわしつつ、最後には美味弾を食らっちゃうっていうのを考えてたんやけど、「美味弾って意味わからんな」って思って変えました。

f:id:yoppymodel:20190927020543p:plain

美味恐竜も全然意味わからないですけどね。

f:id:yoppymodel:20190927014834p:plain

これ、ヨッピーは死んだってこと?

f:id:yoppymodel:20190927014847p:plain

そうですね。死にました。

f:id:yoppymodel:20190927014917p:plain

殺すな。


f:id:yoppymodel:20190925001840j:plain



f:id:yoppymodel:20190925002124j:plain


ウニもイクラもアナゴも絶品!

f:id:yoppymodel:20190927014834p:plain

これ、余計な事しないで普通に食べてる写真載せるのが一番美味そうなんじゃないの?

f:id:yoppymodel:20190927014917p:plain

気付いてはいけないところに気付いてしまったか……。

お店情報

すしざんまい 本陣

住所:東京都中央区築地4‐4‐3 築地市場外
電話:03-5565-3636
営業時間:月~土、祝前日: 11:00~翌4:00 (料理L.O. 翌3:30 ドリンクL.O. 翌3:30) 日、祝日: 11:00~23:00 (料理L.O. 22:30 ドリンクL.O. 22:30)
定休日: 年中無休※年末年始も通常通り営業中

www.hotpepper.jp

 

 

 

patoさんのターン

 

f:id:yoppymodel:20190925002546j:plain

 

f:id:yoppymodel:20190925003201j:plain

続いてpatoさんにはかに料理専門店の「然」さんに来て頂きました。
新宿駅ほど近くという立地で、生ずわい蟹のコースが4,000円~とリーズナブルに楽しめる人気のお店だ。

 

f:id:yoppymodel:20190925002836j:plain


「もはや別にpatoさんが食べなくても写真だけでじゅうぶん美味しさが伝わるのでは?」と思ってしまう。それではpatoさん、レポートをお願いします!


【「かに料理 然」グルメレポート】

そこにあったのは異様な光景だった。


家族の食卓で全員が勢揃いしてカニを食べている。なかなか高級なカニだ。死んで赤く茹でられてなお、少しだけ品のある顔をしている。ちょっと誇らしそうな表情にも見える。そんなカニを家族たちは貪るように食べていた。ただし、それはあくまでも“家族”だけだった。


その場に参加している僕自身は、そこにいながらなぜかカニを食べていない。家族全員が貪るように、そして競うようにして次々とその堅い甲羅を剥ぎ取り、柔らかい身を口に運んでいるというのに、この僕はその光景を眺めているだけなのだ。本当に、カニを囲んだ食卓にいるだけだ。僕はそこに“いる”だけなのだ。

どうしてこんなことになってしまったのだろうか。



生まれた街は小さな漁港の街だった。


一年の半分以上が曇天で、特に大きな商業施設も遊び場もない、当時はコンビニすらなかった。大人になった頃にできたコンビニには長蛇の列ができ、夕方のローカルニュースで取り上げられた。そんな寂れた街だ。


街の特産品は他の都市より少しばかり多く取れる魚介類くらいのものだった。けれども冬にもなると、“松葉ガニ”と呼ばれる高級なカニが獲れるらしく、それを求めて県の内外から多くの人が訪れていた。まあ、日本各地にありがちといえばありがち、そんな街だ。

この“松葉ガニ”が生まれた街の特産品だ。普通に考えれば地元の街の特産品なんて子供の頃から飽きるほど食べていて、また松葉ガニィ~、飽きたよ、となりそうなものだが、正直に告白しまうと、食べたことがなかった。むしろ、いまだにそのカニを食べたことがない。本当に食べたことがないのだ。地元で獲れる名産なのに、自分の人生からはすっぽりと抜け落ちているのだ。

カニが嫌いだったというわけではない。むしろ好きだ。いまだに飲み会などで出る鍋料理にカニが入っていると我先にと食べる。それくらい好きだ。

では、あまりに高級品すぎて松葉ガニに手が出なかったのか。詳細は忘れてしまったが、メロンだったかマンゴーだったか、高級なブランド果物を栽培する農家が、それがあまりに高級すぎて作り手でありながら口にしたことがない、という話を聞いたことがある。紅花を摘む女たちはただの一度もその紅花から作られる赤い紅をひいたことがなかった。紅花はそれくらい高級品だったのだ。もしかしたらその類の話だろうか。


いいや違う。確かに我が家は貧しかったが、そこまでではなかった。たぶん、ちょっと無理すれば松葉ガニくらいはいけたはずだ。現に、あの日、思い出の中のあの光景では大量の“松葉ガニ”を家族が食している。それなのに食べた記憶がないのだ。これはなにかとんでもないことが巻き起こっているに違いないのだ。

ただ漠然と食べなかったわけじゃない。何らかの明確な理由があったはずなのだ。何かあるような気がするのだが、どうしても思い出せないのだ。その記憶のロックが何か大切なものを見落とす原因になっているような、そんな気がする。



今回、メシ通の企画でレビューを書くということで、行くように指定されたのはカニ料理屋さんだった。

 

f:id:yoppymodel:20190925002546j:plain



新宿駅の東口を出てすぐの場所にある「かに料理 然」というお店だ。新宿の東口を出てすぐの場所と聞いていたが、思った以上に東口からすぐの場所で驚いた。徒歩1分とかそんなレベルだ。

店内は高級感溢れる和風な内装だ。和の装というものは本当にカニに合う。これからカニを食べるぞ、という気持ちにさせてくれるのだ。否が応でもカニテンションが高まってくる。ただ、私事で申し訳ないが、この光景を見ていると頭の奥底に眠っているあの記憶が呼び起こされるのだ。

そう家族の中で自分だけカニを食べていなかった記憶だ。あのシーンが鮮烈に思い出されてしまったのだ。

生まれ育った家もちょうど似たような廊下だった。木材の質感や内装が少しだけ似ている。その先に通じる居間であの惨劇が繰り広げられていた。いつのまにかあの日にタイムスリップしたような感覚を覚えた。

なぜか居間には家族が勢揃いしていた。父親に母親、そして爺さんに弟、そして自分だ。おそらく僕が小学校高学年くらいの頃の記憶だろう。この面々が持つ面影はちょうどそれくらいの年代の出来事のように思えた。

畳敷きの居間の中央には食卓兼コタツみたいなテーブルがあり、家族でそのテーブルを取り囲んで食事をとっていた。ただ、その食卓の上には“松葉ガニ”が威風堂々と並んでいたのだ。高級な“松葉ガニ”がズラリと並び、おそらく家族全員に行き渡るであろう十分な量がそこにあった。

これは自分の中にあった願望が見せた白昼夢なのだろうか。いいや、そんな類の物じゃない。これは実際にあった出来事の記憶だ。完全にリアルだ。そう、我が家に“松葉ガニ”は来ていた。そしてそれを取り囲むようにして家族が勢揃いしていた。願望なんかじゃない。これは歴然とした事実だ。


さらにその続きの記憶が呼び起こされた。


なぜか家族全員、爺さんから弟に至るまで全員が一心不乱に“松葉ガニ”を食べているというのに、僕だけが全く手を出していないのだ。そう、思い出した。確かにこれは事実だ。ファクトだ。我が家に“松葉ガニ”がやってきてそれを食べる機会は確かにあった。そして家族は一心不乱に食べた。それなのに僕自身は一切食べることなく、その光景をただ黙って見つめていたのである。


いったい何がどうなったらそんな状況が生まれてしまうのだろうか。分からない。前述したようにカニが嫌いだったわけじゃない。むしろ食べてみたかったはずだ。高級品である“松葉ガニ”であったのならなおさらだ。幼かった僕が飛びつかないはずはない。


もしかしたら虐待でもされていたのだろうか。


急に不安になってきた。高級なカニだけれどもお前だけは食べてはいけない、そんなことを言われた可能性がある。家庭内で理不尽な差別を受けてカニを食べることを許されなかった。よくよく考えると幼いころから「お前は橋の下から拾ってきた」と、ことあるごとに言われてきた。「まさかあ」と思っていたが、あれは本当のことだったのかもしれない。そして、ことあるごとに差別され、カニを食べることを許されなかったのだ。


いいや、そんなことはない。あるはずがない。貧しいながらも愛を持って育てられてきたはずだ。虐待だとか家庭内差別だとか、橋の下だとかそんなことがあるはずがない。心の中に生まれた一抹の不安を断ち切った。本当にそうだろうかという小さな声を無視しながら。


“今日はこのお店のカニ料理をグルメレポートするために来ているんだ”


心の中で静かに言い聞かせていた。よく分からない思い出に蓋をし、小さな声を置き去りにする。そう、思い出だとかなまっちょろいことを言ってる場合じゃない。このお店と自身の思い出は全く関係がない。プロに徹してグルメレポートをしなくてはならないのだ。ギュッと唇を噛みしめた。



金髪が良く似合うかわいい店員さんに案内されるまま店の奥へと進んでいく。

 

f:id:yoppymodel:20190927015448j:plain

見れば見るほどこの感じはあの家に似ている。あの居間に続いているような錯覚を覚えた。いかんいかん、今日はグルメレポートで来ているんだ。同じことを何度か繰り返した。

奥の部屋に通されると、やはりそこは居間ではなかった。当たり前だが、普通にこのお店の客室が展開されていた。

 

f:id:yoppymodel:20190925004205j:plain

まさか新宿駅から徒歩1分、雑踏の中に佇むビルの中にここまで眺めが良い席があるとは思わなかった。とにかく眺めが良い。雑踏を見下ろすような眺望で、まるでこの街を手中に収めたような感覚がしてくる。“新宿王”よく分からないがそんな単語が頭の中に浮かんでは消えていた。


取材時は昼間だったが、夜になると新宿のネオンがまた煌びやかに感じられそうだ。デートとかでこういった場所に来ればイチコロじゃないだろうか。

 

f:id:mesitsu:20191003170710j:plain

 

待ち合わせのメッカである新宿駅東口の交番前も窓から見える。こうして眺めている今まさに、待ち合わせと思われる男女が、時に笑顔で、時に苛立ち、時に照れ臭そうにしながら立っている。この光景を眺めているだけでも楽しめそうだ。


ただ、その光景を眺めている時、全く別の記憶が思いだされた。店の入り口の雰囲気が実家に似ているというだけ変な記憶を思い出してしまったので、ちょっと心がナーバスになっているのだろうか。


新宿駅は言わずと知れた巨大ターミナルだ。毎週のようにここに来て交番前を通り抜け、飲み会やら何やらに繰り出しているが、そういえば幼い頃に僕はこの場所に来たことがある。そう、確かに来たことがあるのだ。



あれは小学校に入る前とか、それくらい幼い頃だったと思う。生まれた街は東京から遠く離れた田舎町だが、確かに僕はここに来ている。そう、思い出した。


母は当時の田舎町には珍しいインテリだった。田舎町から東京の大学に出てきて勉強をしていたとかなんとか聞いたことがある。その後、地元に戻って仕事をし、父親と結婚したはずだ。


僕が生まれて数年、田舎でひっそりと暮らしていたが、そこに大学時代の友人から手紙が来たそうだ。結婚することになった。結婚式に参加して欲しい、そんな内容だった。


親友の晴れ舞台だ、懐かしい面々にも会いたい、その想いだけを携えて特急列車と新幹線を乗り継いで新宿へと出てきた母の姿がそこにあった。なぜか、連れてこられた父親と幼き僕の姿もそこにあった。そういえば見たこともない都会の雑踏に恐れおののく記憶が断片的に残されているような気がする。


毎週、この場所を通って飲み会に繰り出していたというのに、どうして今の今まで忘れていたのだろうか。とにかく、一度思い出してしまうと簡単で、連鎖的に次々と記憶が思い起こされてきた。


そこにあった記憶は、この雑踏の中で一人佇む僕の姿だ。


初めてきた大都会東京、巨大ターミナル新宿、暴力的に行き交う人々、そんななか、就学前の子供が一人佇んでいるのだ。不安で泣いている。そこに父親の姿はない。なんて記憶を思い出してしまったんだ。何が起こったらそんなことになるのだろうか。もう一度詳細に思い出してみた。



母が大学時代の友人の結婚式に参加すべく、僕たちを伴って新宿にやってきた。たしか母は気合を入れてドレスアップをしていたように思う。ただ、参加するのは母だけだったらしく、僕と父親はこの新宿の街に取り残された。たしか、こうやって二人で新宿を彷徨ったという思い出はずいぶん後になって聞いたことがあるので、この部分は間違っていないのだと思う。


田舎から出てきた親子が新宿に残される。行く当てもなく右往左往するように思われがちだが、父親には行く当てがあった。狙いがあった。古い友人が新宿二丁目で飲み屋をやっているという噂を頼りに、その店に向かうことを決意したようだ。今考えると、新宿駅から二丁目まで幼子を連れて歩くにはまあまあ距離がある気がするが、それでも父親は歩いたらしい。たぶん僕は疲れてしまって歩きたくなかったのだろうけど、父親のことが怖くて言い出せなかったのだと思う。その記憶はなんとなくだが薄っすらとある。


命からがら目的の店に到着すると、その店は潰れていた。白塗りの壁が汚く変色したビルの一角で縁だけが赤茶色いレンガで彩られたドアがあった。そこにポップな字体で「みよちゃん」と書かれていたと思う。よほど絶望したのだろう。なぜかこの光景はよく覚えている。


「あれ、あれ」


父親は焦っていた。まだ開店していないとかそういうレベルじゃない。なぜか裁判所からの紙みたいなものがドアに貼ってあった。完全に潰れている。


「あれ、おかしいな、あれ」


旧友の店が完膚なきまでに潰れているという事実と、この東京砂漠で親子二人行く当てがなくなってしまったという事実が父親を狂わせた。


「なあに、行きつけの店ならまだあるんだ。心配するな」


なぜ幼き息子にそのような強がりを見せるのかちょっとよく分からなかったが、父親はまた歩き出した。完全に当てがないくせに、まるで新宿(ジュク)は俺の庭、と言わんばかりに歩き出したのだ。


その次の記憶が、その父親の庭である新宿(ジュク)に取り残された僕の姿だ。何が起こったのかはよく覚えていない。父親の姿はなかった。完全に取り残されていた。雑踏の中に佇む僕の視界は知らいない大人の足だけで、その足すらも田舎では見たことのない速さで右に左に消えていった。


不安だった。本当に不安だった。何も頼るものがなかった。その記憶だけがこの新宿の雑踏に溶けて消えた気がした。



また意識が戻ってきた。なぜああなったのか、父親は何をしていたのか、考えても仕方がない。今はこの「然」さんのグルメレポートをしなくてはならないのだ。思い出はいつだって鋭利な刃物のようだ。無防備な心を抉るようにして、熟れきった果実の皮を剥くようにして無防備下に晒してしまう。そうなってはグルメレポートどころの話ではない。

 

f:id:yoppymodel:20190925002836j:plain



f:id:yoppymodel:20190925004811j:plain

今回、食するのは「然」さん一押しの「カニの刺身」と「かにしゃぶ」だ。本来は、この「然」さんはカニ尽くしのコース料理に力を入れている。

www.hotpepper.jp
これを見ても分かると思うが、例えば4000円のコース料理の場合、「蟹の茶碗蒸し」「蟹味噌とほぐし身のサラダ仕立て」「ズワイ蟹の水炊き鍋」「天麩羅」「蟹甲羅グラタン」「至福の蟹雑炊」「本日の甘味」と充実のラインナップで4000円だ。3時間の飲み放題をつけても5500円で、ちょっとした記念日などの宴会にもってこいだ。

このコース料理を食してグルメレポートしようと思ったが、「フルコースでレポートされると載せられないレベルで長い文章になるので勘弁してください」という編集部のよく分からない懇願により、2品だけをレポートすることになった。何をビビッてんだかちょっとよく分からないな。


とういうことで、「然」さんは一品料理も充実しているので、その中から特に食べてみたいものを二品チョイスすることにした。それが「の刺身」と「ズワイ蟹の水炊き鍋」だ。

 

f:id:yoppymodel:20190925004913j:plain

 

f:id:yoppymodel:20190925004938j:plain

この「然」さんで用いられているのは新鮮なズワイだ。僕の思い出に登場した“松葉ガニ”はこのズワイを水揚げした産地で分類して特別な呼び方をしたものである。他にも越前ガニなども、同じズワイ蟹であり、産地によって呼び方が異なる。つまり、いままさに目の前にあるカニは、呼び方こそ違えど、あの日、目の前にあったカニなのだ。念願の高級カニを一心不乱に家族で食べているのに、僕だけ食べていなかったあのカニだ。


「実はですね、子供の頃にこういったカニを食べる機会があったんですけど、なぜか家族の中で僕だけ食べていなかったんですよ。なんだかこのお店の廊下が実家に似てましてね、そのこと思い出しちゃいました」


ついつい、同席していた編集さんにそんな話をしてしまった。


「あ、そうですか」


今日、この取材の現場で初対面となった編集さんは、突如として悲しい思い出を語りだす僕に対して「あ、こういう面倒くさい人なんだ」という想いを隠そうともしない表情を見せた。


「それでね、考えたんですよ。同時にすごく幼い時にこの新宿に置き去りにされた記憶もあるんです。もしかしたら僕は虐待されてたんじゃないか、そう思うんです。だってそうでしょ、こんな大都会に置き去りにしたり、カニ食べさせなかったり。どう思います?」


「あ、そっすね」


今日、この現場で初対面となったカメラマンさんは、パシャパシャと料理の写真を撮りながら、「あ、面倒くさいライターが来ちまったな」という想いを隠そうともしない表情でそう言った。


「やはり僕は何らかの虐待をされていたのでしょうか。もしかしたらそれが僕と父親との確執になっているのかもしれません」


もう僕の言葉に反応する人はいなかった。いよいよたまりかねてポン酢を持ってきてくれた金髪のかわいい店員さんに言おうと思ったが、逃げるようにして奥に引っ込んでしまった。なかなか勘が鋭いようだ。

 

f:id:yoppymodel:20190925101315j:plain

いよいよグルメレポートがスタートである。

まずは「ズワイ蟹の水炊き鍋」の方から食べてみることにする。

 

f:id:yoppymodel:20190925005124j:plain

完全に豪華絢爛である。

何から食べようかと考えた時、どこからどう考えてもメインであるカニから食べるべきだが、ここはちょっと通っぽく“シイタケ”から食べてみることにしようと思う。特に深い理由はないけれども、例えば今日初対面となる編集さんやカメラマンさんに「なぜメインのカニではなくシイタケを最初に?」と質問されたら、「あのね、鍋物はシイタケを食べれば全部わかるの」みたいなことをハッタリで言うためだ。今日初対面となる編集さんやカメラマンさんに「こ……こいつ、できるやつ」と思わせる必要がある。それが後々のやりやすさに繋がる。


「最初にシイタケからいきます」

「あ、そっすか」


パシャパシャ。


想定していたやりとりがあるわけではなく、淡々と時間だけが過ぎていった。

■シイタケ

f:id:yoppymodel:20190925005209j:plain

金髪のかわいい店員さんによると、ズワイ蟹の水炊き鍋の具材は全て生で食べられるものらしい。それでもキノコは熱を通した方が良さそうなので、念入りにしゃぶしゃぶする。


箸でつかんでみて分かったが、予想以上に厚みがある。一見するとこういった鍋料理の彩りとして添えられがち。だが、白だしの中に念入りにシイタケをくぐらせるとシイタケがだし汁をグングン吸っているのがわかる。いま、シイタケの中では吸い込まれた旨味ともとからいる旨味が手を取り合っているところだ。

 

口に運ぶ。


噛んだ瞬間に中からジュワッと汁が飛び出してくる。その汁が、シイタケが本来持っている旨味と、だし汁のものが混じり合ったもので、立体的奥行きを演出している。あまりにこれがすごいのでポン酢などの味付けなしでそのままいける。


このだし汁とシイタケが織りなす旨味のハーモニーにより、この鍋はどれだけの奥行で味が展開されていくのかおおよそのところが理解できるのだ。つまり、最初にシイタケを食べるのは完全に正解だった。


「やっぱりですね、最初にシイタケを食べると味の奥行ってやつが分かるんすよ」


「あ、そっすか」


パシャパシャ。


質問されなかったので自分から最初にシイタケを食べる理由を説明したけど、こいつら本当にわかってんのかな。


それにしても美味しいシイタケだった。ただ、幼い頃の僕は、嫌いだったような気がする。どうしてもシイタケが食べられなかったような記憶があるが、いつごろから食べられるようになったのだろうか。




f:id:yoppymodel:20190925011747j:plain

 f:id:yoppymodel:20190927014847p:plain

うわっ、見て! シイタケ食べ始めるまでで7,000文字ある。

f:id:yoppymodel:20190927020543p:plain

完全に頭おかしいでしょ。

よくよく考えると、シイタケのように大人になってから食べられるようになったものがいくつかある。それがナスとピーマンとシイタケだ。ピーマンやナスは、その苦みが子供から見るとややつよい毒であり、防衛本能でそれから守ろうと嫌いになるのが普通という話を聞いたことがある(諸説あります)。ただ、大人になるとその苦みというか毒も平気になるので、逆に味わい深くて大好きになるというパターンが多いようだ。僕もそうだった。


確かに、子供の頃の僕はピーマンもナスも嫌いだった。でも、今は好きだ。では、どうして同じように嫌いだったシイタケを食べられるようになったのだろうか。何かそういうきっかけがあったような気がする。



そうだ。幼き日、我が家は居間ではなく、キッチンで食事をとっていたのだ。猛烈に思い出した。キッチンのやや広い場所、ダイニング的になっている場所に机を置き、そこに家族が座って夕食をとっていた。その日は焼肉だった。


「お肉嫌い!」


弟は肉が嫌いだった。たしか、肉から溢れる肉汁が本当にグロテスクで嫌だとかそんな理由だったと思う。


「ちゃんと食べなさい」


母は優しく弟に言い聞かせた。


「肉だって食われたくて焼かれてるんじゃないんだぞ!」


父親のセリフはちょっとよく分からなかった。


「もういい! 食べない!」


ジュウジュウと音を立てて焼かれる肉の傍らで、ついに弟は叫んだ。


「もう食べなくていい!」


「食べない!」


完全に決別というやつで、ついに弟はそのまま居間に移動してしまった。ドアを閉め、一人でテレビを観始めたようだった。


「けっこう高いお肉だったのに」


母親が残念そうに言った。


「懲らしめないといかんな。このままでは将来、肉を軽んじる大人になってしまう」


父親の言うことはよく分からなかった。


そこで採用した作戦が、弟をビビらせるという作戦だった。弟によって残された肉が恨みを持ち、化けて出てきたという設定だ。


「うまい、さいこう」


「いい焼き加減、最高!」


「ウェルダン! ウェルダン!(よく意味を分かっていない)」


普通に焼き肉をしていたのに突如として家族が姿を消したという恐怖を演出するため、居間の弟に聞こえるようにわざとらしく声を挙げながら、こっそりと家族全員が風呂場に移動していく。完全に腰が曲がった爺さんすらもキビキビと動いて風呂場に移動していく。


風呂への避難が完了すると、父親はそこにあったブレーカーを落とした。一切の躊躇なく、バチンと全ての電源を切って落とした。


家全体が闇に包まれる。そして居間の方から弟の悲鳴が聞こえる。いいや、悲鳴じゃない。絶叫だ。テレビを観ていたら真っ暗になった。停電かなと家族のいる食堂に移動すると、さっきまでいたはずなのに忽然と姿を消している。精神がぶっ壊れるほどの恐怖だ。


惨劇はそれだけでは終わらなかった。我が家にはなぜかリアルなゴリラのお面があったのだけど、父親はいつの間にかそのお面をかぶっており、恐怖に震える弟に攻勢を仕掛けた。


「俺の肉を残しやがって~俺の肉を~」


もちろん、それに弟は泣き叫んだが、いつの間にか我が家で食べていたのは豚肉でも牛肉でもなくゴリラ肉だったのかと感じてしまった。


結局、弟はあまりの恐怖に泣きつかれて寝てしまったのだけど、それ以降、食べ物を粗末にすることはなくなった。そして、同時に、僕は恐怖だったのだ。なぜなら、その焼肉の場でどうしても好きになれずシイタケを残しまくっていたのだ。


「シイタケは嫌いだから残す、なんて言ったら何されるかわからん」


その恐怖支配はなかなかのものだった。大変なことになる。その恐怖だけが僕を衝き動かしていた。目を瞑り祈るようにして食べたシイタケの記憶。少しだけほろ苦い旨味が口の中に広がったように思う。



「まあ、食べてみたらそこまでまずくなくて、なんであんなに嫌ってたんだろって思ったんです。それでもいまやシイタケは大好きですからね」


「あ、そっすか、少し湯気がすごいんで火力下げてもらっていいですか」


いつの間にか、水炊きの鍋はグツグツと音を立てて豪快に煮立っていた。


「シイタケ食べたらそんなこと思い出しちゃいました」


「あ、そうっすか」


「でもね、そんなことより重大なことがあるんですよ。なぜならこのシイタケのエピソードでは、台所に置かれたテーブルで家族が食事をとっているんです。けれども、あの記憶の断片にある僕だけがカニを食べなかったシーンでは、居間で食べているんです。そこに謎を解くヒントがあると思うんです。すごくないですか?」


「あ、そうっすか」


次第に明らかになっていく大きな謎。その闇は僕と編集さん、そしてカメラマンさんを飲み込むようにして翻弄していく。僕らは無力だった。抗う術を持たなかった。一体どうしたらいいんだ。何も知らない僕たちはただただその激流に身を委ねることしかできなかったのだ。


■にんじん

f:id:yoppymodel:20190925005518j:plain

f:id:yoppymodel:20190925005601j:plain

花びらの形に切られたにんじん。これも彩りのように思われがちだが、しゃぶしゃぶを構成するうえで重要なファクターだ。

「にんじんいきます」


メインであるカニにいかずに、にんじんにいくのには深い理由があるが、どうせわかってもらえないので説明はしない。


「あ、紫の方はにんじんじゃなくてカブですね」


冷静に指摘されてしまった。


「にんじんとカブいきます」


僕も負けじと冷静に言い直した。


これらは、先ほどのシイタケと違い、ほとんどと言って良いほどに素材がだし汁を吸い込まない。これらをだし汁にくぐらせて食べたとしても、うっすらとその表面に味が付く程度なのだ。しかしながら、それは同時に素材の味とだしの味を同時に口に放り込みながら別々に味わうことを可能にしている。


そして、そこににんじんとカブ、2種類の野菜があることの意味が生じてくる。例えば、にんじんにおいて味わったものは、それはだしとにんじん、別個なものだよ、とは最初の段階では気が付かない。けれども、同じようにしてカブを口に放り込んだ瞬間、あれ、さっきとは同じ部分もあるし、別の部分もある、と気が付くのだ。

 

まず共通なものを感じる。そして次に共通を感じるからこそ、そこに別個のものが介在することを理解する。そこに本質があり、さっきのはあくまでだしとにんじんを別個に味わっていたんだ。そして、このカブすらもだしとは別個に味わっている。そう、口の中のレイヤーを感じることに意味があるのだ。


「これは味のレイヤーっすね」


「あっ、そうっすか」


「そういえば、にんじん、味のレイヤーっていうとこういう話を思い出します」


僕は編集さんたちの返事を待たずに、切々と語りだした。



小学生くらいの頃だっただろうか、当時、遠足だとか修学旅行に行くと必ず街のカメラ屋さんみたいな人が同行してきて写真を撮っていた。その写真は後日に番号を振って廊下に貼りだされることになる。みんな、そこで自分の写っている写真をチョイスし、備え付けの封筒に番号を書いてお金を入れて提出する。数日するとその封筒に注文した写真が入ってくるというものだった。


ある時、弟の部屋を漁っていたら、遠足の時のその封筒が出てきた。中には何枚か写真が入っており、弟がちゃんと友達付き合いできているのか心配になった僕は迷うことなくその封筒の中身を見た。


そこには僕の知らない弟がいて、友達たちと笑顔で写る弟や、何の変哲もない樹木を背景に意味不明に5人くらいで横並びになってポーズを決める弟の姿があった。ただ、その中に異様な一枚があった。

 

弟が写っているわけでもない。友達が写っているわけでもない。ただ、女性がポツンと写って、何の変哲もない石を背景にして写っている写真だった。


なんでこんな女子の写真が入っているのか。何かの手違いか? 写真屋さんが間違えていれたのか? 


謎は深まるばかりだが、この封筒は表面が注文書になっているのですぐにわかった。確実に弟が自分の意志でその番号を記入している。つまり何らかの意図があってこの女の子の写真を購入しているのだ。


「こりゃあ、この子のことが好きなんだな」


父親は探偵が推理するときのようなポーズを見せてそう言った。気が動転してどうしていいか分からなくなった僕は父親に相談したのだ。


「この子はあれだ、街の外れにあるステーキハウスの娘さんだ」


どういう情報網を有しているのか分からないが、父親は瞬時にその女の子を特定した。


「こりゃあいっちょ、あいつの恋を応援してやらないといけないな」


こうして、我々家族は連れ立ってそのステーキハウスに行くことになったのだ。


挙動不審になる弟を他所に、問題のステーキハウスに行くと、弟が好きな女子のお父さんと思われるシェフが対応してくれた。「いつもお世話になっております」みたいなことをお互いに言い合っていたと思う。


「ここで豪快に高級なステーキを食べてればいいわけよ」


と父親は豪語したが、メニューを見て顔色を変えた。早い話、予想以上に高級店だったのだ。ちょっと田舎町にあるまじきレベルの高級店だったようだ。


「全然お金が足りない。帰ろうか。挨拶に来ただけってことにして」


父親は消え入りそうな声でそう言った。僕もまあ、長いこと生きているが、いまだにこの時の父親くらい情けない大人ってやつを見たことがない。

 
「いや、カレーライスならいけるはず」


母が助言した。こうしてステーキハウスに来て家族全員でカレーライスを食べることになった。好きな女子の家族が経営する店において家族総出で情けない姿を披露する。弟は本当に恥ずかしかったことと思う。


「嫌いだった肉を食べられるようになったのにな」


あの、ゴリラ肉の惨劇によって肉を食べられるようになっていた弟が皮肉を込めて言った。ただ、僕はその運ばれてきたカレーにとても興味があった。


さすがステーキハウスのカレーらしく、含まれている肉はなかなか高級そうなものだった。けれども、これが実に合わないのだ。いうなれば、カレーと高級な肉が別個のレイヤーとして存在しているのである。これならばいつも我が家で食べている安い肉の方が合うと思えるほどだった。


高ければいいってものじゃない。問題は相性なのである。それは確固たる信念としていまなお僕の心に存在する。


そして、もう一つ重要なファクターがこのカレーに存在した。それがにんじんの形だ。当時、カレーの王子様だったかなんだか子供向けのカレーが大々的に発売され、バンバンとテレビでCMをしていた。そのCMでは必ずにんじんが星型になっていたのだ。

 


随分とそれに憧れて、カレーの王子様を買ってくれとねだったものだった。そしてついに、カレーの王子様を買ってもらい、いよいよ食卓に並び、胸をときめかせながらかぶりついたら、そこには普通の半円状に切り取られたにんじんしかなかったのだ。


これはまあ、普通に考えれば普通なことで、販売しているカレーはあくまでもカレーのルウだ。にんじんなどの野菜は各家庭で準備して放り込む。つまりカレーの王子様を買ってきても、母がにんじんを星形に切らない限り星形にはならない。逆に言えば、ジャワカレーでも星形に切れば星形になる。


「星形じゃない……」


ものすごい失望と絶望が心の中を支配した。ただ、それで“食べない”とか言い出すとブレーカーを落とされ、闇の中で悶絶することになるので黙って食うしかなかった。ただただ、星形のにんじんが食べたかったという想いだけを残して。


けれども、このステーキハウスのカレーには星形のにんじんがふんだんに入っていた。いつもそうだったのか、それとも同級生の家族が来たということでシェフが粋な演出をしてくれたのか、その辺は定かではない。けれども妙に嬉しかったのを今でも覚えている。


「というわけで、まさかここで星形のにんじんに出会えるとは思わなかったですよ。巡り合わせって面白いですね。カニ料理屋さんで出会えるなんて」


興奮した僕はにんじんを口に運びながらそう言った。


「まあ、にんじんとカブですけど」


「というわけで、まさかここで星形のにんじんとカブに出会えるとは思わなかったですよ。巡り合わせって面白いですね」


冷静に言い直した。


■しらたき

 

f:id:yoppymodel:20190925005833j:plain

 

「僕はね、しらたきってやつは実に反抗期的なものだと思うんです。あの青き想い、決して忘れることのない反抗心。しらたきにはそれがある」


僕の言葉を編集さんとカメラマンさんは黙って聞いていた。たぶん聞き入っているのだろう。なぜなら反抗期というやつは多かれ少なかれ誰にだってあるものだからだ。もしかしたら、その青き血潮が滾るその期間のことを恥ずかしく思っているのかもしれない。なんであんなことしちゃったんだろう、なんであんなこと言っちゃったんだろう、そうやって後悔の念を抱える人も多い。


「この透明なのか濁ってるのかどっちつかずの外観。これは反抗期の無垢な想いそのままだと思うんですよね。それでいて、弾力がありそうに見せてそうでもない。簡単にほどけてしまう。そこがすごく反抗期の想いっぽい」


編集さんもカメラマンさんも黙っている。何か思うところがあるのだろうか。


いまだグツグツと煮えたぎるだし汁にしらたきをくぐらせ、ゆっくりと口に運んだ。


特に噛まなくともしらたきはバラバラっと口の中でほどけた。それは頑なな心が解きほぐされる様によく似ている気がした。

 

f:id:yoppymodel:20190927020543p:plain

まだ全然読み終わらん。「生まれた街は小さな漁港だった」からはじまるグルメレポートなんてある!?

f:id:yoppymodel:20190927014847p:plain

やっとしらたき食べたわ。



あの日、中学生になった僕は反抗期の真っただ中だった。なんだか親に反抗するのが生きがいみたいな部分が確かにあったように思う。同時に、父親との確執は決定的なものになっていた。


“自分は愛されていないんじゃないだろうか?”


決定的にそう考えていたのだ。そこには、記憶の断片に残る「新宿に置き去りにされたあの日」「自分だけカニを食べなかったあの日」の光景があったからだと思う。そして、ステーキハウスに行ってカレーを食べる羽目になった情けなさや、弟の好きな女子のことを暴く父親のことをいかがなものかと思い始めていたのだ。

 

早い話、父親がすることの全てに腹を立てていた。


そんな折、地元の祭において、「合戦!カラオケバトル!」という、担当者が何を思ってカラオケバトルの頭に「合戦!」とつけたのか、どういうテンションでそれをやったのか徹底的に問いただしたくなるイベントが開催され、それに父親が出場することになった。


父親は自分の歌唱力に絶対的な自信を持っていた。もちろん、それは完全に父親の中だけの話で、傍目には別に普通の歌唱力であったのだけど、本人だけは絶大な歌唱力を持ちながら歌手にならなかった悲劇の男、みたいに認識しているところがあった。なので、この「合戦!カラオケバトル!」においても並々ならぬ自信みたいなものがあったようだった。


いよいよ「合戦!カラオケバトル!」の日がやってくる。合戦である。本当は死ぬほど参加したくなかったが、たしか学校行事の一環でもあって、それぞれが必ず一回は地域の行事に参加する、みたいな鉄の掟があったので嫌々ながら参加した。


「合戦」と謳っている以上、さぞかし大々的な合戦が繰り広げられると予想していたが、小さな公民館で開催され、手書きの看板に壊れかけのカラオケセットと考えうる限り最高のしょぼさの大会だった。これで「合戦」とはよくぞ言ったものである。


会場に到着してさらにしょぼい衝撃の事実を知ったのだけど、参加者が2人だけらしかった。観客は老人などを中心に公民館がパンパンになるくらい来ているのだけど、肝心要のカラオケを歌う参加者は2人だ。


もちろん、そのうちの1人はウチの父親だ。そして、もう1人は、なんか地元の権力者みたいな爺さんだった。完全に一騎打ちの様相である。これで「合戦」とはよくぞ言ったものだ。

いよいよ「合戦」が始まり、オーディエンスはその熱狂に包まれた。最強のグルーヴが巨大なムーブメントとなって公民館を包み込んだのである。というのは真っ赤な嘘で、早い話、権力者の爺さんも、ウチの父親もまあ、下手とまでは言わないけど普通のレベルだった。案外、客もその辺は正直で、かなり冷ややかなものだった。


「さあ、いよいよ優勝者の決定です。最高級松坂牛は誰の手に!?」


2人の歌が終わると、お前いたの!? と言いたくなるレベルで突如として司会者風の男(雑貨屋の加賀さん)が舞台上に現れ、客を煽り始めた。この時点で優勝賞品が松坂牛であることを知った。正確に言うと参加者は2人しかいないので「誰の手に!?」よりは「どちらの手に!?」の方が的確であると思った。


「優勝者を決めるのは観客の皆さんです!」


突如として司会者が全てを丸投げし、判定を観客に委ね始めた。


「竹下さんだと思う人?」


しかも挙手制をとっており、とても効率が悪かった。パラパラと挙がった手を司会者が数えていく。


「ななななな、なんと、同点です! 白熱してきましたね。これだけ白熱してくると私も「合戦」とつけた甲斐があるというものです!」


興奮しているのは壇上の司会者だけだった。っていうか「合戦」ってつけたのお前か。別にどっちが優勝でもいいよ、みたいな雰囲気が会場内に蔓延する中、司会者がとんでもないことを言い出した。


「では、まだ挙手をしていなかったあの少年に決めてもらいましょう! 少年の1票が優勝の行方を占います!」


そう言って指名されたのは、壁際に佇んでちょっと中二病っぽくかっこつけていた僕だった。確かにかっこつけて票を投じなかったが、それによって大変注目されることとなり、なんだかすごくかっこわるいことになってしまった。


あれよあれよという間に壇上に上げられる。壇上から父親を見ると、妙に神妙にしている反面、「勝ったな」「ああ」みたいな余裕が読み取れた。それもそのはずで、優勝を決する1票が実の息子に委ねられたのだ。


ただ、僕は迷うことなく竹下さんに入れた。地元の権力者みたいな爺さんに入れた。なんでそんなことをしたのだろうか。ちょっとよく分からない感情が僕を支配しつつあった。それは僕と父親の確執だったのかもしれない。


優勝賞品は高級松坂牛だったけど、準優勝賞品はしらたきのパックだった。パンパンにしらたきが詰まった筒みたいなものが3本あった。その日の夕食は肉じゃがだった気がする。貰ったばかりのしらたきが入っていて、少し濃い茶色に染まっていた。


沈黙の中、黙々と食べたのを覚えている。


「あの時、なんで父親に入れなかったんでしょうね。しらたき見るとそういうこと思い出しちゃうな」


僕の言葉が彼らの心の柔らかい部分を刺激するのか、編集さんとカメラマンさんは何かを誤魔化すように「光の加減が」「4時までに取材を終わらせて」と相談を始めた。強がっているがたぶん目を真っ赤にして涙を堪えているのだと思う。そう、誰にもこういった反抗期の迷走には心当たりがあるのだ。


■ねぎ

f:id:yoppymodel:20190925010024j:plain

よくよく考えるとネギってやつは不思議な食材だ。薬味として用いられるネギは本当に苦いし辛いしで、なかなか攻撃的な味わいを持っている。けれども、鍋などに投入してコトコトと煮込み、半分溶けてるんじゃないかというくらいまでにしたネギは、信じられない甘味をもっている。

そういった意味ではしゃぶしゃぶにおけるネギの立ち位置は面白い。


サッと加熱するだけで生に近い状態で食べれば辛みなどやや攻撃的な味わいを楽しめ、アクセントにもなる。その反面、鍋に常駐させてグツグツと煮込めば、だしの味も染み込むし、ネギ自身も途方もない甘みを発揮する。


つまり、辛みも甘みも自由自在というわけだ。誰にも強制されることなく、自由に自分で味わいを決められる。それがしゃぶしゃぶにおけるネギの魅力ではないだろうか。


いつもならトロトロになったネギの甘味が好物だが、ここまでの食材で生じた僕の心の中の機微を考えると、ここはアクセント的に辛みを感じた方がいいと思ったのだ。


すっとくぐらせ、口に運ぶ。


シャリっという音が響き渡り、切断された細胞の一つ一つからジュワッと辛みを含むネギ汁が飛び出してきた。それが表面にうっすらと膜のようにして存在していただし汁と絡み合う。辛みがその存在感を強調することで、だし汁がもつ旨味がギュッと濃縮されたように感じる。なるほど、甘みもいいけど辛みもいいものだ。なんだか妙に腹落ちした気がする。


「ネギって不思議ですよね。いつも裏切られている気がする」


僕はそう呟いて、また思い出の中へと旅立っていった。



広島の夏は暑かった。

市民球場からほど近い場所にある百貨店の中にバスセンターがあって、たしか3階とかだったと思うけど、そこに大きなバスが吸い込まれていくのだ。大きな建物に大きなバスが吸い込まれていく光景はちょっとしたカルチャーショックだった。


大学生となった僕はそのバスセンターの待合場所に佇んでいた。


生まれた街を離れ、広島で大学生をするようになって2年が経っていた。それでも、このバスセンターに来たのは初めてだった。長距離バスが発着するこのフロアは、大きな荷物を持った人たちで賑わっていた。


なぜこんな場所にいるのか?


それを考えると少し憂鬱になる自分がいた。これからここに父親がやってくるのだ。あの田舎町からローカル線と高速バスを乗り継いで、ここ広島にやってくるのだ。確か、父親の仕事において必要な資格があって、その試験が広島でしか開催されないとかそんな理由があったと思う。それなら息子が広島で大学生やってるし、いっちょ世話になるか、というノリだったように思う。


こんなにも憂鬱な気持ちになる理由は明確だった。そこには大きく分けて二つの要因があったのだ。


一つに、本来なら市内の音楽大学の女性との合コンが設定されていたという点だ。市内の音楽大学のお嬢様である。絶対にフルートとか吹いている清楚なイメージだ。実家は洋館で8人のメイドが居て、不治の病で先が長くない親の財閥を僕が引き継ぐ事になり、なんだかんだあった上で最終的には世界を征服する。そんな未来が待ってたんだ。

何か月も前から楽しみにしていた合コンなのに突如として父親が来襲することとなり、参加できなくなったのだ。


そしてもう一つが、父親と二人っきりで何を話していいのか分からない、という点だ。あのカラオケ合戦以来、特に不仲というわけではないがやはり確執めいたものはあって、さすがにもう大学生なので「大人は何もわかってくれない」みたいな思春期真っ盛りの思想などないものの、やはりちょっとしたわだかまりみたいなものが存在していた。家族がいる中では普通に接することができるが、父親と二人きりなんてどうなってしまうんだろうか、そんな気持ちが僕を憂鬱にさせていた。


バスが吸い込まれてきた。ゾロゾロと人が降りてきて、その中に黒いスポーツバックを持った父親の姿があった。


「おう」


「おう」


そんな言葉を交わしたように思う。久々に会った父親はなんだか少し小さくなったように感じた。


バスセンターのある建物を出て、熱した鉄板のようなアスファルトの上を歩く。しばらく進むとそこにはアーケード商店街があった。完全に殺意を持った日差しから逃げるようにしてそこに入る。そこは同じ考えの人たちでごった返していた。


「試験は明日だからな、昼飯でも食うか」


「……」


そんな会話を交わした。アーケード商店街にはたくさんの飲食店があって、どこにするか迷うくらいだった。せっかく父親が広島に出てきたのだから広島名物のお好み焼きでも食べようかと考えつつ、言い出せないでいると、父親は何も考えることなくラーメン屋に吸い込まれていった。特に考えがあったようには思えない。最初に出会った店、だから入ったという感覚だった。


「いりゃっしゃーいえーいやー!」


そこは当時としては珍しい威勢の良いラーメン屋だった。草野球の外野の守備くらいの威勢の良さがあり、とにかく声を張りあげる店員が複数存在していた。


「食券ぅををををををお買い求めえええクシャルダオラ!!!」


もはや何を言っているのかわからん。まあ、食券の販売機があるので買わなきゃならないんだろうなと思った。


父親が何枚かの千円札を吸い込ませてくれたので、やった奢りだぜ、チャーハンもつけたろうか、と考えていると、なんか勝手に「ネギラーメン」を押しやがった。


「ネギは体にいいからな、食わなきゃならん」


そう言いながら父親が選んだラーメンはチャーシュー麺、僕のだけネギラーメンなのだ。何だか無性に腹が立ってきた。なんで勝手に選ぶのか。


「ヘイ、オマチイイィ、ネギラーメン、チャーシューメン、オドリャア! クシャルダオラ!」


なに言ってんだよ。わかんねえよ。


途方もない掛け声とともに運ばれてきたのは山盛りのチャーシューが入ったラーメンと山盛りのネギが入ったラーメンだった。


「おれ、辛いの嫌いなんだけど」


そのあまりの山盛りっぷりについに堪り兼ねてしまい、不快感を顕わにしながら言った。あの辛いネギが山盛りだ。もう厨房から運んでくるところからこんもりネギが見えていた。こんなものラーメンを味わうどころじゃない辛さに決まっている。


「そうか?」


どこか他人事な感じの父親の対応に、さらに腹が立った。


「こんなに辛い物を勝手に注文してどうするんだよ! 他に食べたいものあったのに!」


少し声を荒げながら、スープに浸っていた部分のネギを口に運ぶ。


「甘い」


そのネギはけっこう甘かった。
ネギはいつだって裏切ってくれる。予想する味と実際のものが大きく異なるのだ。


「これは甘いからいいけど、勝手に頼むのはおかしいと思う。だいたいいつだって勝手に行動しすぎだ。勝手にラーメン屋に入るし、勝手にネギラーメン頼むし」


そこまで悪態をついて、一つの思い出が頭の中で弾けた。新宿で、あの雑踏の中で置き去りにされた記憶だ。たまらず、そのことを口に出してしまった。


「どうせ東京に行った時もそうやって自分勝手に行動して幼い俺を新宿に置き去りにしたんだろう!」


もはやそこにあるのは怒りだった。ネギラーメンの甘味を誤魔化すために便乗して幼き日の思い出まで怒った格好だ。便乗怒りだ。初めて父親に対して怒りを表明したような気がする。


「……」


父親は黙って麺をすすっていた。


もう一度、ネギをつまんで口に運ぶ。今度はなんだか辛い気がした。


■えのき&しめじ

f:id:yoppymodel:20190925010406j:plain

f:id:yoppymodel:20190925010435j:plain



ラーメンを平らげると、父親は少し神妙な表情を見せた。

 

「ワシはお前が投票しなかったことをいまだに根に持っている」

 

明確にそう言い切った。一瞬、なんのことだろうと考えたが、どうやらあの「合戦!カラオケ大会」において優勝を決める最後の一票を投じなかったことを言っているらしい。

 

「根に持ちすぎだろ」

 

吐き捨てるように言うと、父親は全く同じ口調で言った。


「根に持ちすぎだろ」


沈黙がテーブルを覆った。うるさすぎる店員の声だけが響き渡っていた。


「出ようか」


店を出ると、またアーケード商店街の雑踏が待っていた。それはなんだか、子供の頃に置き去りにされたあの新宿の雑踏に似ている気がした。ズンズンと突き進んでいく父親の後ろを歩いて行く。いったいどこに行く気だろうか。


もはやシャッター通りと化していた地元の街とは違い、この商店街は活気があり、そしてアーケードが長い。まさか端から端まで歩くわけじゃないだろうなと訝しげに思っていると、ふいに父親が振り返った。


「母さんのお土産を買いに行こう」


そう言ってお土産物屋まで行った。たしかアーケードの端っこに小さな店があったと思う。


広島のお土産といえば「もみじまんじゅう」や「しゃもじ」などが有名だ。あとは「おたふくソース」や「牡蠣」なんかも広島らしいといえば広島らしい。まあ、「しゃもじ」がいいんじゃないかと勧めてみたが、父親は首を縦に振らない。


「そういうのじゃないんだよな」


じゃあ牡蠣でいいじゃん。持って帰るのが大変だけど、母さん好きだったろ、と勧めてみるのだけど、やはりしっくりこないらしい。結局、そのお土産物屋では購入せず、僕が住んでいたアパートの近くにあったスーパーでよく分からないものを購入していた。


それこそ、夕飯のおかずみたいな、野菜だとか缶詰だとか、なんか「しめじ」や「えのき」なんかも購入していたと思う。普通の夕飯ですな、という買い物だ。何考えてるんだこの人。


「いつも思うんだけど、例えばしゃもじとか、何か文字とか書いてあるから使わないよな。そんなものより日常で使うもの貰った方がお土産としても嬉しいよな。ワシ、普段飲まないような高級な酒もらうより、いつも飲んでる4リットルいくらみたいな焼酎の方が嬉しいもん。だからこういうお土産にするわ」


それはもはやお土産ではない。


「だいたい、けっこう新鮮さが大切な食材あるけど、どうやって持って帰るの? 今から二泊するするわけで、高速バスで帰るわけだけど?」


その言葉に父親は黙ってしまった。


「まさか考えていなかったの?」


また黙ってしまった。


やはり、考えなしに行動する父親にたいしての怒りが高まっていった。なんだかものすごく腹が立って腹が立って仕方がなかった。


■白菜

f:id:yoppymodel:20190925010620j:plain



仕方がないので、母への土産にと父親が買った食材の数々は、調理して夕飯にした。ちょっとしたギネスを狙えんるんじゃないかというレベルのジャンボな白菜が2玉も入っており、白菜をメインとしたディナーコースみたいになってしまった。炒める、煮る、刻む、あらゆる調理を試し、色々な味で食べた。


白菜自身は“無”であるという印象が強かった。何かの料理に入っていても、その何かの味を反映しているだけであり、白菜自身には何も味がないと思っていた。ただ、こうして白菜づくしの料理を食べてみると分かる。本来は、白菜とは濃厚な旨味があるのだ。ほのかに甘くもある。


「ワシはカラオケ大会のことをまだ根に持っている」


ポン酢に浸した白菜を食べながら父親がそう言った。まだ根に持ってんのかよ、しつこいな。再度そう思った。


「それを言うなら、俺は幼い時に新宿に置き去りにされたことを根に持っている」


負けじと根に持っていることアピールした。


「それに、もう一つ根に持っていることがある」


さらに追い打ちをかけるように主張する。白菜をすりおろし、キノコ類と混ぜてしょうゆをぶっかけたものを食べながら主張した。


「子供の時に、家に松葉ガニが大量に来たと思うんだよ。でも、家族全員が食べているのに俺は食べなかった。あれはたぶん、食べることを許されていなかったんだと思う。きっと虐待なんだと思う。それも随分と長いこと根に持っていて、それがトラウマなのか、いまだにカニを食べたことがない」


沈黙が6畳一間のアパートを覆った。壁越しに隣の大学生の鼻歌とテレビの音が聞こえていた。


「どうして新宿に置き去りにしたんだ。どうしてカニを食べさせなかったんだ」


言葉にして初めて分かった。これらの事実は、実際には僕の心の中でかなり重いものになっているのだ。なんだかそういうこともあったなあ、という軽い認識だったが、実はそれはけっこうなウェイトがあって、自分は愛されていないんじゃないかってどこかで思っていたのだと思う。ただ、それを表明するのは恥ずかしかったんだと思う。


その時、父親は何も言わず、ただ黙って白菜を細切りにして麺みたいにした謎の料理をすすっていた。


入浴を済ませ、もう就寝しようと電灯の明かりを落とすと、今度は大学生のへたくそなギターの音が聞こえてきた。


「実はな、東京の話なんだけどな」


布団にもぐりこんだ父親は切々と語り始めた。あの日、新宿で何があったのかを。


■スープ

f:id:yoppymodel:20190925010748j:plain

父親の声は濃厚なだし汁のように6畳一間の空間に染み渡った。


「あの日、ワシらは知り合いの店を目指して歩いたんだ」


しかしながら、あてにしていた店は閉店しており、僕ら親子は一気に行き場を失ってしまった。問題はそこからだ。僕の記憶では、「まだ歩くのかよー」という新宿駅から新宿二丁目まで歩いて疲れ果て、うんざりした記憶があるだけだった。そして、その次の記憶が新宿の雑踏で置き去りにされた記憶だ。


「仕方がないから連れてこなかった弟と爺さんにな、土産を買おうと思ったわけだよ」


弟は幼すぎたので祖母に預けられており、東京には来ていなかった。その弟に土産を買おうと、新宿の百貨店に向かった。ただ、朝が早かったためかまだ百貨店は営業しておらず、またもや途方に暮れることになった。


「はたして弟はおもちゃを喜ぶだろうか?」


行くあてもなく新宿の街をさまよっていると、突如として僕がそんなことを口にしたらしい。どういうことか分からず、自動販売機で売っていたジュースを購入して飲みながら話を聞くと、おかしなことを言い出したようだ。


「都会で買ったおもちゃだとかお土産だとか、そういうものよりいつも食べているスナック菓子の方が嬉しいんじゃないだろうか。少なくとも僕はそうだ」


「だからいつものお菓子を買おう!」


そう言われたが、さすがに東京まできていつものお菓子を買わなくても、と父親は渋ったそうだ。


「いいや、おもちゃとかの方がいいって」


そう主張するが、聴く耳を持たない。ついには勝手に走り出し「スーパー探してくる!」と大暴れしたそうだ。この大都会ではぐれてしまっては大変と何とか食い止めたが、信号待ちの隙をみて消えてしまい、本当にいなくなってしまったそうだ。


とんでもないことになった。


よくよく考えると、新宿の雑踏、その中で孤独に佇む僕の記憶の中に、たしかにそのスナック菓子の記憶があった。手に持っていた。不憫に思った道行く人がくれたと思い込んでいたけど、たぶん、買ったんだと思う。いいや、お金は持たされていなかった。じゃあどうしたのか。


「あとから見つかった時には金持ってないのにスナック菓子持っててな。どうも勝手に持ってきたんじゃないかと思ってな、でもどこのものだか分からないし、周辺のスーパー全部に謝りに行ったんだよ」


なんてことはない。僕が悪かったのだ。僕が全て悪かったのだ。


「まさか、カニの話も……」


なんだか急に怖くなってきた。それでもおそるおそる訊ねてみると、父親は少し勿体つけてこう言った。


「まあ、それは明日にでも」


もはや怖すぎて眠れない。いったい何があったのか。もう一度、あの日の記憶を思い起こす。家族全員で松葉ガニを食べている。それを僕は食べずに見ている。大丈夫だ。これは虐待だ。頼む、そうであってくれ。よく分からない感情を抱えたまま、天井の木目を数えていた。

f:id:yoppymodel:20190925012058j:plain

 

f:id:yoppymodel:20190927014847p:plain

見て! これ! サイドバーちっちゃ! まだカニも食べてないのに!

f:id:yoppymodel:20190927020543p:plain

なんちゅうものを書いてくるんですかアンタは……。

 
■カニ

f:id:yoppymodel:20190925010917j:plain

その日は、広島市の中心にある大きな公園で、父親の試験が終わるのを待っていた。かなり朝が早かったので眠くなるのを堪えつつ空を見上げると、やはり太陽が頑張って辺り一面を照らしていた。広島の夏を思い出すといつも暑い。それと同じく、カニを思い出すといつもあの不可解な光景が思い起こされる。悲しいあの思い出だ。ただ、本当にあれは悲しかったのだろうか。よく分からない。怖い。真実を知るのが怖い。


「おう」


「おう」


資格試験を終えた父親とそんな言葉を交わして合流し、繁華街の方へと歩いて行った。


「昨日な、ラーメン屋に行く途中に見つけておいたんだわ」


相変わらずグングンと勝手に進んでいく父親に追随して歩いて行くと、そこにはカニ料理屋さんがあった。


「カニ?」


「そう、カニ」


何の躊躇もなくズイズイと入っていく父親。ついて行くしかなかった。


おそらく「然」さんと同じくらいの設定であるコースを頼んだと思う。もう一度言うが「蟹の茶碗蒸し」「蟹味噌とほぐし身のサラダ仕立て」「ズワイ蟹の水炊き鍋」「天麩羅」「蟹甲羅グラタン」「至福の蟹雑炊」「本日の甘味」と充実のラインナップで4000円のものだ。3時間の飲み放題をつけても5500円くらいのものだったように思う。


運ばれてくるカニを食べながら、カニというものはすごいものだと実感していた。まず、カニだ。完全にカニの味はカニなのだ。なんというか、カニなのだ。


そして、カニの身の感触が素晴らしい。ちょっとした塊に思いがちだが、どんな調理形態であれ、カニの身は口の中に入れた瞬間にパッと口の中で解け、ふわっと広がる。下手したらほっぺの内側を突き抜けて拡散するんじゃないかと思うほどに身の感触が広がる。そしてぶわっと追いかけるようにカニとしか言えない味が広がるのだ。


「うまいね、美味いよ」


「カニのしゃぶしゃぶも食べてみるか」


父親はコースとは別に追加でオーダーした。それもやはり、ぶわっと広がってドワっと味が追いかけてくるのだ。


「どうしてあの日、僕だけカニを食べなかったのか」


やはり、こんなにも美味しいものを食べない理由がないのだ。そこにはきっと悲しい背景があるに違いない。そう確信した。だから僕は自信を持って切り出した。


「話はバーバー山本にまでさかのぼる」


父親はそう切り出した。バーバー山本とは実家からやや離れた場所にあるお店だった。奇しくも、後に惨劇が繰り広げられることになるあのステーキハウスの近くにある店だった。


その店は非常に合理的なシステムを採用していた。いちいち髪のオーダーをするのは非効率的だということで、店の入り口に券売機が置かれていたのだ。


「大人の普通カット」「子供普通カット」「坊主」「スポーツ刈り」みたいな感じで各種の髪型がラインナップされており、それを選んで購入する。すると「スポーツ刈り」とか書かれたプラスチックの板が出てくるので、それを店主に渡す。そうすると切ってくれるのだ。無駄な会話一切なし。同時にカット代の支払いもそこで終わってしまう。


父親はそのシステムを大変気に入っており、いつもそこで「大人の普通カット」を購入していた。たぶん、店主と会話するのが嫌だったんだと思う。


一度だけ、僕も父親に連れ立ってそのバーバー山本に行ったことがある。そこで「子供普通カット」の券を購入してもらったのだけど、いざ父親の券を購入する段階になって、何をトチ狂ったのか僕が勝手にボタンを押した。バスンと排出されてきたプラスチックの板には威風堂々と「角刈り」と書かれていた。


間違えて買ったからとか言って変えてもらえばいいものを、どうも父親はいかにしてこの店で店主と会話しないか、という部分を重要視しているらしく、そのまま渡していた。そして、みるみると角刈りが出来上がっていた。


家に帰ってから、「人間ってこんなに怒ることできるんだ」と思うほどに烈火のごとく怒られた僕だったけど、すげえ怒ってる人がめちゃくちゃ似合わない角刈りなのがただただおかしかった。


「その角刈りの報復としてカニを食べさせなかったとか? たかだか勝手に券を買ったくらいで?」


いよいよ酷い虐待である雰囲気が漂ってきた。なんだかワクワクしてきた。


「そうじゃない」

 

f:id:yoppymodel:20190925011203j:plain



父親はカニの爪の中に含まれる身をほじくりながら言った。


「あちこちで角刈りを笑われるワシの姿に、さすがに心が痛んだんだろうなあ、ことあるごとにあることを要求してきた」


「なに?」


僕もまた、カニの身を喉の奥まで放り込んだ。そして父親が衝撃の発言を繰り出す。


「ゴリラのお面をかぶって生活しろって。そうすれば角刈りを隠せるから」


けれども父親は断った。普段からあのリアルならゴリラの面をかぶって生活するわけにはいかない。確かに毛の部分がフサフサだけど、やはりそういうわけにはいかない。普通に当たり前のことだけど、どんどんと僕の心は蝕まれていった。


そして、父親は「おそらくだけど」と付け加えて話し始めた。

 

「ついに松葉ガニを食べられるぞ、という時になってお前がカッコ『カニは嫌いだ、食べない』と言い出したんだ。それはたぶん嘘で、そうすることで肉の時みたいにブレーカーを落とされてゴリラの面をかぶってもらえるって思ったんじゃないか」


また家族全員が風呂場に隠れてブレーカーを落とされて、と考えていたようだった。我が家の構造から考えて、台所から風呂場に避難するのは難しいという以前の経験を踏まえ、居間で食べよう、カニ、居間で食べよう、でも僕は嫌いだから食べない、と熱烈に要求してきたらしい。僕、バカだったのかな。


結局、一人で台所に棒立ちし、「カニは食べない、嫌いだから」と言ってるのに誰も何も動くことなく、家族はカニを貪り食っていた。みんな大好物だったので「食べない」と意味不明に言い出している奴に構っている暇などなかった。


そのうち僕も居間に移動してきたのだけど、いまさら食べるとも言えず、ただ黙って見ていたようだ。


なんてことはない。原因は全て僕だった。虐待なんてとんでもない。全部自分が悪かったのだ。


「じゃあ帰るわ、体に気を付けてな」


地元へと帰るバスに乗るべくバスセンターの前で父親と別れた。なぜか父親はしわくちゃの1万円札をくれた。


向こうの空はちょうど夕方と夜の境目みたいな明るさになっていて、その境界を仕切るように薄い雲が筋状に広がっていた。


「親父も体に気を付けてな」


初めてそんなセリフを口にしたような気がする。口の中にはまだカニの味が残っていて、今度はこの味をどんな時に思い出すんだろうかと、目を細めながらその黄昏時の空を眺めていた。


■カニの刺身

f:id:yoppymodel:20190925011326j:plain

これは今回の取材で初めて食べた。カニの刺身とはこういうものなのか。カニを食べる時、ほとんどが熱を通したものだ。そこで認識される味こそが“カニの味”であるが、本来はそうではない、と気づかされる。この刺身によって味わうものこそ、カニが本来持つポテンシャルなのだ。

チュルンと喉の奥まで染み渡るカニの風味、そして柔らかな口当たり、それらがやや甘口に仕立て上げられた醤油と混ざることでいっそう色濃い風味になっている。これが本当のカニなんだ、と言わんばかりの攻勢だ。


世の中のことがそうであるように、僕らの内面にもそういったことは数多くある。


僕らの記憶はいつの間にか薄れていき、断片化され、色褪せていく。そしていつの間にかそれが真実であるかのように感じることがある。けれども、数多く食べられる熱を通したカニと、カニの刺身が持つ本来の味わいのように、現実と記憶には大きな乖離があるのかもしれない。


古来より、カニを食べると無口になる。という言葉がある。これはカニの旨さがすさまじく、夢中で食べるから無口になってしまう、という面と、そもそもカニは堅い甲羅から剥いて食べなくてはならず、その作業がなかなか大変なので熱中しているうちに無口になる、という二つの側面がある。


けれども、もしかしたら、カニを食べる時、みんなどこかで自分の内面の何かに向き合っているのかもしれない。カニを食べるとき、思い出の中のカニにもう一度会いに行っているのかもしれない。それだけ、多くの人々の心の中に存在する食材、ということではないだろうか。


「やっぱね、カニって自分に向き合いますね」


「あ、そうっすか」


おそらく、編集さんもカメラマンさんも、自分の中のカニと向き合ったのだろう。取材後半は本当に無口で僕がずっと思い出を語っていた。


カニを食べると無口になる。


それでいい。僕らはカニを食べながらもっと自分の内面に向き合うべきだ。新宿の雑踏を見下ろし、誰かと向かい合いながら無口になる。そこでは新たな自分に出会えるかもしれない。「カニ料理 然」さんで、そんな経験をしてみるのもまた粋なのかもしれない。

 

f:id:yoppymodel:20190925101349j:plain



ごちそうさまでした。


お店情報

かに料理 然 新宿本店

住所:東京新宿新宿3-27-5 K3ビル4F
電話:050-5355-7489
営業時間:月~日、祝日、祝前日: 16:00~翌0:00 日曜営業
定休日:不定休あり

www.hotpepper.jp

 

【品評開始】

 

f:id:yoppymodel:20190927014917p:plain

ちなみに、patoさんから原稿貰って確認したら25,000文字ありました。


f:id:yoppymodel:20190927014847p:plain

カニを食べるだけで4分の1冊分の文字を書くな。

f:id:yoppymodel:20190927020543p:plain

ちなみに僕、この間patoさんと飲んだんですけど、「明日カニのグルメレポートの締め切りなのにまだ書いてない」って言ってましたよ。あれからこの量書いたんすか。

f:id:yoppymodel:20190925012218j:plain

 

f:id:yoppymodel:20190927014847p:plain

でもね、悔しいけどこのお店ちょっと行きたくなりますね。

f:id:yoppymodel:20190927020543p:plain

そう。味の表現が確かに上手なんですよ。「味に奥行きが出る」とかそれっぽい。

f:id:yoppymodel:20190927014917p:plain

あー、わかる。読んでると確かにカニ食べたくなる。

f:id:yoppymodel:20190927014834p:plain

でしょ!? これ僕が優勝なんじゃない!?

f:id:yoppymodel:20190925012433j:plain

生のズワイ蟹をさっとくぐらせて食べる。完全に美味そう……!

 

f:id:yoppymodel:20190925012535j:plain

 

f:id:yoppymodel:20190927014834p:plain

刺身も美味いんだけどね、サッと湯通しする事でうま味が濃縮される感じがあるね。味が濃くなる。

f:id:yoppymodel:20190927014917p:plain

あーーーーーー。

f:id:yoppymodel:20190927014834p:plain

やっぱこれ、僕が優勝じゃない!?



【そして結果発表】

 

f:id:yoppymodel:20190925012725j:plain

 

f:id:yoppymodel:20190927014917p:plain

というわけで皆さん、本当にお疲れ様でした! 僭越ながら僕の独断と偏見で、優勝者を決めたいと思います!

f:id:yoppymodel:20190927014847p:plain

まあ美味いもん食わしてもろたし全然いいけどね。

f:id:yoppymodel:20190927014834p:plain

すしざんまいもいいよね。なんなら俺、寿司もしゃぶしゃぶも全部ハシゴしてレポート書きたかったもん。

f:id:yoppymodel:20190927014917p:plain

それで本が一冊出来ちゃうだろ。

f:id:yoppymodel:20190927020543p:plain

そういえば木曽路に行った時、ついてきただけのヨッピーさんがなんなら僕より肉食べてましたからね。

f:id:yoppymodel:20190927014917p:plain

まあまあ。まあまあまあ。


果たして結果は……?

f:id:yoppymodel:20190924200121j:plain

f:id:yoppymodel:20190924230633j:plain

f:id:yoppymodel:20190925002836j:plain

 

f:id:yoppymodel:20190927014917p:plain

えー、今回優勝は「全員」という事で、全員のギャラに5,000円プラスします!


f:id:yoppymodel:20190925101626j:plain

 

f:id:yoppymodel:20190927014847p:plain

おー! やったぁ!

f:id:yoppymodel:20190927014917p:plain

まあね、すごい判断が難しくてね。なんせ全員ジャンルがバラバラやし、みんなかなり手が込んでるから……!

f:id:yoppymodel:20190927014834p:plain

でもほんと、これを良い経験としてね。ヨッピーも我々を見習って味の表現をもっと磨きなよ。

f:id:yoppymodel:20190927014917p:plain

こんなこってりした味付けのグルメ記事ばっかり書いてたら胸焼けするわ。

 

 

ハイテンショングルメレポート選手権のお店が食べたくなったら

f:id:TEPPEI3:20191001155616j:plain

凸のさんがしゃぶしゃぶを食べた「しゃぶしゃぶ・日本料理 木曽路 銀座5丁目店」は銀座にあるお店。

 

松坂牛が常時食べられるのは木曽路の中でもここだけらしい!

f:id:TEPPEI3:20191001155637j:plain

 

取材時にお店の方の説明があまりにも熱心で、その詳しさに取材陣一同びっくり。 店長曰く「ぜひこだわりのごまだれでしゃぶしゃぶを食べてほしい!」とのことだった。

f:id:TEPPEI3:20190927170137j:plain

お店情報

しゃぶしゃぶ・日本料理 木曽路 銀座5丁目店

住所:東京都中央区銀座5-8-17 ヒューリック銀座ワールドタウンビル5F
電話:050-5257-85532
営業時間:月~金、祝前日: 11:30~15:00 (料理L.O. 14:30 ドリンクL.O. 14:30) 17:00~22:00 (料理L.O. 21:30 ドリンクL.O. 21:30) 土、日、祝日: 11:30~15:00 (料理L.O. 14:30 ドリンクL.O. 14:30) 17:00~21:30 (料理L.O. 21:00 ドリンクL.O. 21:00)
定休日:お気軽にお問い合わせ願います。

www.hotpepper.jp

 

 

山口むつおさんが寿司を食べた「すしざんまい 本陣」は築地の場外にあるお店。

f:id:TEPPEI3:20191001162100j:plain


寿司は1個から注文できる! 年始にニュースになることもある、自慢のマグロを食べてほしい! 美味しさのつるべ落としが脳内に登場するかもしれない。

f:id:TEPPEI3:20191001162122j:plain

お店情報

すしざんまい 本陣

住所: 東京都中央区築地4‐4‐3 築地市場外
電話:03-5565-3636
営業時間:月~土、祝前日: 11:00~翌4:00 (料理L.O. 翌3:30 ドリンクL.O. 翌3:30) 日、祝日: 11:00~23:00 (料理L.O. 22:30 ドリンクL.O. 22:30)
定休日:年中無休※年末年始も通常通り営業中

www.hotpepper.jp

 

 

patoさんがかにを食べた「かに料理 然 新宿本店 」は新宿の駅前にあるお店。

f:id:TEPPEI3:20191001170846j:plain

 

かにが水炊き・刺身・焼きで食べられる! patoさんがレポートしたかった蟹のコースは4000円からとリーズナブル!取材時、最後はみんなほんとに無口になってかにを食べていた。

f:id:TEPPEI3:20191001170920j:plain

お店情報

かに料理 然 新宿本店

住所:東京新宿新宿3-27-5 K3ビル4F
電話:050-5355-7489
営業時間:月~日、祝日、祝前日: 16:00~翌0:00 日曜営業
定休日:不定休あり

www.hotpepper.jp

 

 

※記事初出時、表記に不正確な箇所があったため加筆・修正いたしました。大変申し訳ございませんでした(2019/10/2)

書いた人:ヨッピー

ヨッピー

「オモコロ」「SPOT」「Yahoo!ニュース個人」など、さまざまなWEBメディアで活躍中のライター。 「WEBでウケること」の第一人者として、タイアップ広告案件なども多数手がける

過去記事も読む

トップに戻る