「回転レストラン」を知っていますか?【存続危機でも、今なお回り続ける楽園へ】

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▲photo by Alpsdake,J o,RJD,Alpsdake,タッチ

 

私は子どものころ、回転レストランが大好きでした。

地元・千葉県の柏や船橋にある回転レストランに連れて行ってもらい、「お店が回る」という不思議な体験に、テンションが上がったことをいまも思い出します。

 

しかし日本のファミリー層を楽しませてくれた回転レストランはいまや激減し、現在も回転稼働しているのはあとわずか(※なお、この記事での回転レストランは、広く「回転機構を持った飲食店」を指す)

その残り火をともす数少ないお店の一つへ、片道3,030円の格安高速バスに揺られて出かけました。

 

いざ、天空の「まわる喫茶室」へ

やってきたのは神戸市須磨区にある須磨浦山上遊園。目的のお店は、園内の山頂にあります。

10時前に着くと、団体客がすでにロープウェイ乗り場の入り口で並んでいました。

 

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駅のすぐ目の前には海が見えます。なんだか死ぬときにふと思い出しそうな、ウソみたいにキレイな光景。

ここから2つの乗り物を乗り継いで、山頂をめざします。

 

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▲1957年に開業したロープウェイに乗って……

 

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▲“日本一の乗り心地の悪さ”で人気の「カーレーター(ベルトコンベアを使って人を運ぶ登山用交通機関)」に乗り……

 

古くて懐かしい乗り物に運ばれた山の上に、それはありました。

 

1958年に誕生した回転展望閣

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年季の入った建物。それもそのはず、この回転展望閣ができたのは1958年。そこから内部が現在の形になったのは1991年のことでした。もっとも、その間に売店が存在した時期もあったそうです。

1階はジュークボックスのある休憩所、2階はレトロゲームの多いゲームセンター。そして3階に「喫茶コスモス」があります。

 

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▲なお、100円/小人(小学生)50円の入場料がかかる

 

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笑顔が魅力的な須磨浦遊園株式会社の専務取締役・森秀幸さんにお話を伺いました。

 

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──なぜ展望室を喫茶にしたんですか?

 

森秀幸さん(以下、森):もともとは長椅子を置いていただけでしたが、一周回るうちにのどが渇く人もいらっしゃるので、「それでは喫茶にしよう」と思いまして。

 

──ちなみに、ふつうの喫茶とちょっとテーブルの配置が違いますね。

 

森:窓側一列だけにテーブルを置いているので、どこの席からでも景色を見られるんです。

 

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▲長椅子を置いていた時代の写真

 

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▲いまでは外側一列にだけテーブルを置いている

 

──しかし、すごくいい景色ですね。これはデートにもバッチリです。

 

森:ありがとうございます。ちなみに姫路のほうにもお店があったんですけれども、もう閉鎖しちゃって。兵庫ではもうこことポートタワー(清酒ラウンジ「SAKE TARU LOUNGE」)くらいです。

 

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明石海峡大橋と淡路島も見える

 

「1周45分でもまだ早い」

──回転させるための電気代はどれぐらいかかっていますか?

 

森:個別でどれぐらい、というのは出ないんですが、すべて電気で動かしているのでそれなりにはかかりますね。

 

──じゃあ入場料を払うのも仕方ないですね……!

 

森:そうですね、入場料を払っていただく代わりに、何もオーダーしなくとも回転展望室を楽しめますから。

 

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──ちなみに、数年前に回転速度をゆるめたってホントですか?

 

森:ゆっくり景色を見ていただくために1周45分から、55分にしました。それでも、まだ早いという方もいらっしゃいますよ。

 

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▲ゆるやかに風景が移り変わる

 

レギュラーメニューの一番人気はエビピラフ

──ちなみにこのお店の一番人気のメニューはなんですか?

 

森:もうこの夏はしらす丼でしたね。しらすは季節限定なので9月には終わっちゃったんですけれども。近くの垂水漁港で獲れたものを使っていました。 

 

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──ちなみにレギュラーメニューだとどうですか?

 

森:常時置いているものでは、エビピラフ(単品650円/セット870円)ですね。

 

──エビピラフ! 意外な名前が出てきましたね。

 

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▲素朴かつクセになるおいしさのエビピラフ。行楽地のレストランならではの、万人ウケする味わい

 

森:あとカレーライス(単品650円/セット870円)は2年前ぐらいから提供している人気メニューですね。

 

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──う~~ん、期待を裏切らないおいしさです。観光食堂としてちょうどいい味ですね。

 

森:あくまで軽食ですから。

 

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▲食後のプリン(500円)も注文。甘くてやさしい生クリームと相まって、子どものころのハレの日の味がした

 

コースターは地元の名画家のもの

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──このコースターもかわいいですね。

 

森:ここができたときからあって、施設の絵が描かれています。

 

──女の子が座敷わらしみたいで独特のかわいさです。集めたくなりますね。

 

森:ケント紙を彫って絵を描く「彫画家」の伊藤太一さんの作品で、持って帰る方もいますよ。地元の神戸新聞さんもこの方の風景画をよく使っています。

 

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▲須磨浦山上遊園のマップにも伊藤さんの絵が使われていた

 

──ほかにも園内にはたくさんの遊具や施設がありますが、「喫茶コスモス」ってどんな存在ですか?

 

森:この建物自体が目印になるので、園のシンボルみたいな存在ですね。園内で一番標高が高い地点でもあります。

 

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──特に見てほしい風景はありますか?

 

森:春は山全体に咲きわたる桜です。それに良く晴れて視界のいい日は大阪湾が向こう岸まで一望できるので、楽しんでほしいですね。

 

──すごくいいですね!

 

森:海は季節によっても違うし、日によってもぜんぜん違って見えるので、来る度に楽しんでいただけます。中には「船がここから消えるまで追いますわ」っていう気の長い方もいらっしゃいます。

 

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もう部品のストックがない?

──回転の操作って、どんな形でやっていらっしゃるんですか?

 

森:ターンテーブルを電動のローラーで回しています。

 

──それっていま、メンテナンスしてくれるところも少ないのでは?

 

森:点検は当社の社員が日常的にやっていますが、古い施設なのでむずかしいところですね。何しろもうストックしている部品がないんです。

 

──えええ……!

 

森:だから、ちょっと傷んだ古い部品を、もう一回使えるように再生しています。

 

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▲1958年から回り続ける回転展望閣

 

──なるほど……そのほかに苦労はありますか?

 

森:ここでイベントをするとき、ステージを組むのに「この景色をバックにしたいから、ここで回転を止めよう」とするんですけれども、1周まわるのに55分かかるので、準備に時間がかかります(笑)。

 

──「あれ、止めるの忘れてた」ってなったら、また55分かかってしまいますね(笑)。

 

森:あと山に道路がないので、ものを持ってくるのはすごく苦労するんですよ。食材や什器を持ってくるときはロープウェイかカーレーターを使うしかないので。

 

──さっき乗った、揺れが激しいあれを使うんですね……大変。

 

森:デカいものはいよいよかついで階段で上がっていかざるを得ないので、あれでもまだマシなんです(笑)。

 

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回転レストランが減り続けるワケ

──ちなみに、なぜ回転レストランは減ってしまったと思いますか?

 

森:おそらくですが……さっき言ったメンテナンスの問題や、窓側にしかテーブルを置けずに席数を増やしづらいことが理由なのではないかなと思います。

 

──お店は儲けなくちゃいけないですからね。

 

森:どうしても商売なので、回転を止めてテーブル数を増やすことにした店もあるのかもしれない。

 

──採算面を考えると、ずっと営業するのはむずかしいと……。

 

森:さらに利益を出そうと通路側にも席を増やせば、今度は窓際との不公平が生まれます。そうなってしまうと、肝心の回転を止めることに行き着きますからね。

 

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──こちらのお店は、どうでしょうか……?

 

森:長い年月回しているので、いずれ改修することになるかもしれません。部品ってそんなに長持ちしなくて、それを補修しながら続けてもお金が高くついちゃいますから。

 

──きびしいですね、できるだけ続けていただけたらうれしいのですが……

 

森:こちらとしてもなるべく続けたいですね。昔は遊園地や回転レストランもたくさんありましたが、だんだん淘汰されていっています。
そんな中で街の中ではなく、山の頂上にあることで、都市と自然の光景が両方楽しめるのはウリだと思っていますので。

 

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何十年ぶりに来る人の「思い出」を守りたい

──やはりお子さま連れが多いですか?

 

森:ファミリー層も多いのですが、それ以上に目にとまるのはカップルですね。中には「数十年ぶりに来たよ」っていうご年配の方もいます。近隣の方は、小学校のときに遠足でいらっしゃってますから

 

──それは思い出の場所になりますね。

 

森:県外に嫁いだりなんかして、帰省時に来られる方もいらっしゃいます。もう60年以上やっていますからね。

 

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──ちなみに神戸は阪神・淡路大震災がありましたが、トラブルはなかったですか?

 

森:園内にはそこまで被害がなかったんですけれども、最寄りの山陽電鉄やJRの駅には被害が出て、その影響でここも長らくお休みしました。約半年後の7月に駅が再開したのに合わせてようやく営業再開できましたよ。

 

──それは本当に大変でしたね……! でもそこから立ち直って、24年後のいまも続いていてよかった。

 

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▲ロープウェイから見た山陽電鉄・須磨浦公園駅

 

──それにしてもここ、ホントにゆっくりしやすい雰囲気ですね。

 

森:はい、のんびりゆっくり楽しんでいただけたらと思っています。別に2時間いようが「出て行ってください」なんて言わないですから(笑)。1月1日には初日の出を見たいお客さんのために特別営業をするんですが、お昼までいらっしゃる方もいますよ。

 

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──最後に。このお店を守り続ける中で、一番大事にしていることはありますか?

 

森:施設のメンテナンスや接客をしっかりして、お客さんを出迎えることです。今年で60歳(60周年)の歳を召したこの施設を懐かしんで、「ここが思い出(の場所)や」と言ってくれる方を大事にしたい。
そうした方々が今度はお子さんやお孫さんを連れてきていただいて、彼らがまた来てくれるようになったら最高ですね。

 

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お店情報

喫茶「コスモス」

住所:兵庫県神戸市須磨区一ノ谷町5丁目3番2号
電話:078-731-2520
営業時間:10:10~17:30(季節により変更あり)
定休日:火曜日

www.hotpepper.jp

www.sumaura-yuen.jp

 

書いた人:辰井裕紀

辰井裕紀

卓球と競馬とサッポロ一番みそラーメンが好きなライター、番組リサーチャー。過去には『秘密のケンミンSHOW』を7年担当しておりローカルネタが得意。

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