(※この記事は感染症対策のため、オンラインで取材を行っています)
家庭ではおでんや中華丼の具など、脇役として使われることの多いうずらの卵。
しかし、日本に9戸しかないうずらの生卵の卸をしている「浜名湖ファーム」の社長、近藤哲治さんによると、もっといろいろな使い方があり、コース料理よろしく、「うずらの卵フルコース」も可能だという。
▲浜名湖ファームの前で、飼育するうずらと、そのうずらが産んだ生卵を持つ近藤哲治さん(写真提供/浜名湖ファーム)
今回は近藤さんにレクチャーしていただき、うずら農家直伝のレシピを再現してみた。
うずらの卵の旬は1月後半から3月前半
「うずらの卵の旬って知ってますか?」
うずらのレシピを聞こうとすると、開口一番、近藤さんが問いかけてきた。
一年中流通しているうずらの卵に旬なんてあるのだろうか。
近藤:1月後半から3月前半がうずらの卵の旬なんです。寒い時期、うずらはエサをいっぱい食べて放熱します。そのときの卵が一番美味しいです。逆に夏は食欲が落ちてしまい、水ばかり飲んじゃうんですよ。
どのように味が違うのだろうか。
近藤:黄身の味が濃厚になり、白身は爽やかです。生で食べると自然の味を感じられるのでわかりやすいですよ。
▲美しい色合いのうずらの生卵(写真提供/浜名湖ファーム)
うずらの卵に旬があるとは目からウロコだ。
まさに今の時期は、うずらの卵の旬なのである。
美味しいうずらの卵の見分け方とは?
近藤さんに美味しいうずらの卵の見分け方も聞いた。
近藤:それほど味の違いはないかと思いますが、「美味しい=健康」という観点で見ると、見分け方があります。
健康なうずらの卵は、殻が白く粉を吹いたようになっています。この白いものはクチクラといいます。クチクラによってバイキンが卵の中に入らないようになっているんです。
▲下の列に並んだ左右のうずらの卵が、全体をクチクラで覆われているのがわかる
白っぽくなっていると逆に「古いのかな」なんて思っていたが、実は健康で美味しいうずらの卵だったのだ。
さらに、うずらの卵の柄にも驚きがあった。
近藤:柄は、うずら一個体にひとつのデザインなんです。うずらによって柄が違い、同じうずらは同じ柄しか産みません。
一匹のうずらにたったひとつの柄があったなんて……。ロマンチックで生命の神秘を感じさせるではないか。
1品目 うずらのゆで卵
いよいよ、うずらの卵を使ったフルコースレシピを紹介しよう。まずは付き出しの「うずらのゆで卵」。
当然、鶏卵とはゆで方も異なるので、浜名湖ファームが推奨する「うずらのゆで卵を簡単に作る裏ワザ」を紹介しよう。
1.水からではなく、沸騰した状態のお湯にうずらの生卵を入れる。かたゆでは3分、半熟は2分半がベスト。
2.湯切りをして、冷水で急激に冷やし、余熱を取る。
3.余熱を取ったうずらの卵を鍋に入れ、蓋をして左右に振り、殻全体がバリバリになるぐらいヒビを入れる。
4.うずらの卵の「お尻側(太いほう)」の殻と薄皮を破り、先端に向かってりんごの皮を剥くように殻と薄皮を螺旋状に剥く。ヒビが入っているので、意外と簡単にグルグルと剥けるのが楽しい。
近藤:ゆであがった直後に食べると本当に美味しいですよ。
鶏卵に比べてうまみが強く、ゆで卵好きなら誰が食べても美味しいと言うはずだ。
2品目 うずら卵の天つゆ漬け
続いては、1品目に作ったゆで卵をプラスチック容器などに入れて、ひたひたの天つゆに1時間漬けるだけの「うずら卵の天つゆ漬け」。
天つゆの濃さは好みもあるだろうが、ここでは「濃縮2倍」の天つゆを、希釈せずに使用した。そしたら、たったの1時間で味の染みたうずらの卵が完成した。
近藤:うずらの卵は小さいのですぐに漬かって、煮玉子みたいになるんです。
お弁当のおかずにもぴったりの1品だ。
3品目 うずらシラス丼(湖西丼)
次は「うずらシラス丼」。
炊き立てのごはんの上に、シラス、うずらの生卵をのせるだけ。シラスとうずらの生卵はお好みの量で。トッピングに刻みネギ、みょうがなどを加えてもいい。
近藤:浜名湖ファームは静岡県湖西市にあるので、うずらシラス丼を「湖西丼」と名付けたら、雑誌にも紹介されました。
うずらの生卵かけごはんだけでも十分に美味しいのに、シラスがあると、増幅されたうまみに塩っけが加わり、何杯でも食べられる。
浜名湖ファームの公式オンラインショップでは、湖西市の漁港で水揚げされた新鮮シラスの釜揚げと、浜名湖ファームのうずらの生卵とお米を3種セットにした、2人前の「シラス丼セット」も販売されているので、興味のあるかたはぜひ!
4品目 うずらの百目焼き
ごはんのおかずは炒め物で「うずらの百目焼き」。うずらの卵を妖怪の"百目"に見立てた浜名湖ファームオリジナルのユニークなネーミングだ。
材料
- うずらの生卵 6個
- ベーコン 4切れ
- キャベツ 1/8個
- 塩コショウ 適量
作り方
1.キャベツは大きめにざく切り、ベーコンは1センチ幅に切る。
2.ベーコンから出る油でキャベツを炒め、塩コショウで味を調える。
3.うずらの生卵を入れて、目玉焼きを作る要領で仕上げる。
近藤:卵の焼き加減はお好みですが、個人的には半熟がオススメです。湖西市はキャベツも有名なので、この料理ができたのだと思います。
意外にあっさりしているので朝ごはんにもオススメだ。
5品目 うずらのホットケーキ
最後はデザートで「うずらのホットケーキ」。
市販のホットケーキの素を買ってきて、鶏卵の代わりにうずらの生卵を使用する。うずらの生卵の分量は、「鶏卵1個=うずらの生卵6個」が目安。
あとは説明書通りの材料と作り方で焼くだけ。
うずらの生卵を入れるとふんわり、濃厚な味に仕上がる。鶏卵よりも、卵の味が強く感じられる。
近藤:ホットケーキも美味しいですが、ケーキのスポンジなんかにうずらの生卵を入れてもいいです。
さらに、近藤さんにうずらの卵の美味しい食べ方を聞くと……。
近藤:生卵、ゆで卵、どちらもカレーやスープのトッピングに合います。すき焼きのとき、うずらの生卵につけて食べると美味しいですよ。全般的に甘辛いものに、うずらの卵は合いますね。
うずらの卵というと、水煮で購入する方が多いのではないだろうか。
実際に筆者もそうだった。
しかし、うずらの生卵から調理すると、比較にならないぐらい美味しい。
しかも今回使用した浜名湖ファームのうずらの生卵は、抗生物質不使用で、エサや飼育場にもこだわっている。ぜひ公式オンラインショップなどで購入して安心・安全なうずらの卵を味わってほしい。
休日の夜、うずらの卵のフルコースで豪華な気分を手軽に味わうのはいかがだろうか。
撮影:丸山剛史
書いた人:松本祐貴
1977年、大阪府生まれ。フリー編集者&ライター。雑誌記者、出版社勤務を経て、雑誌、ムックなどに寄稿する。テーマは旅、サブカル、趣味系が多い。著書『泥酔夫婦世界一周』(オークラ出版)、『DIY葬儀 ハンドブック』(駒草出版)
- 公式サイト:「~世界一周~ 旅の柄」