【蒸気で作る鍋】雲南省の「汽鍋鶏(チーコージー)」で鶏肉を限界まで美味しく食べる【ブームの予感】

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中国・雲南省に未知のスープがあった

「蒸気で作るスープがある」という話を聞きました。

 

中国の料理に、容器に入れたスープを大鍋で蒸すものがあるのは知っていました。

しかし、このスープは、水を一切入れずに、吹き上がる蒸気だけで作るというのです。

 

なぜ? 蒸気だけでスープができるのでしょうか?

 

それは、中国西南部に位置する雲南省の伝統料理なんだそうです。

その名は「汽鍋鶏(チーコージー)」。

 

日本ではまだ珍しいこの料理を食べられる店が四谷にあるそうなので、さっそく訪ねてみました。

 

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日興苑 食彩雲南 過橋米線(にっこうえん しょくさいうんなん かきょうべいせん)」(以下、日興苑)は、東京新宿区の四谷三丁目駅近く。

新宿通り沿い、ビジネスパーソンが行き交う場所にあります。

 

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これぞザ・中華! という雰囲気の広い店内。

ランチタイムには近隣にお勤めの方々で大盛況です。

 

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宴会対応もバッチリです。

 

「特級厨師」が作る本格的な雲南料理の世界

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店長の牟明輝(ム メイキ)さんにお話をうかがいました。牟さんは大連出身。

都内で数店舗の中国料理店を経営されています。

 

f:id:jurilin:20191003134851j:plain牟さん:日興苑では、雲南省の料理をメインで出しています。中でも雲南を代表する料理、汽鍋鶏と店内で麺を作っている手作りの米線がおすすめです。

 

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こちらは料理長の張永富(チョウ エイフ)さん。

 

中国政府認定の最高級の調理師資格である特級厨師を取得しているすごい方で、雲南料理のキャリアは40年以上だとか。

 

──雲南料理、日本ではまだ珍しいと思うのですが、どんな料理なのでしょう?

 

f:id:jurilin:20191003134851j:plain牟さん:雲南料理は辛さ、酸味のどちらもあり、「医食同源」という考えで漢方の薬膳材料も取り入れた料理が多いです。 辛いといっても、四川料理のようには辛くはないです。うちの店では天然食材の風味、香り、栄養を生かした料理を出してます。

 

──今回出していただく汽鍋鶏は、雲南の人は日常的に食べているものなのでしょうか?

 

f:id:jurilin:20191003134851j:plain牟さん:そうですね。みんな毎日と言っていいほど食べていると思います。特に疲れている人とか風邪気味の人はこれ食べるといいですよ。お客さんで何人か、「食べたら風邪が治っちゃった」って言ってる人いますよ。飲むと背中が全体的に熱くなるんですよ。代謝が良くなるから。

 

だんだん冷え込んでくるこれからの季節にぴったりですね。さっそく作っていただきましょう。

 

具材と蒸気だけで魔法のようにスープができる

汽鍋は鶏肉、羊肉、すっぽんなど食材を薬膳材料と一緒に、真ん中に穴の空いた汽鍋という特殊な鍋に入れて作るスープです。

 

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日興苑では、食材と薬膳材料の組み合わせを変えた様々な汽鍋を出しています。

 

薬膳材料は日本ではあまり馴染みがなく、名前を聞いてもわかりづらいですよね?

そこで今回は、料理する前の薬膳材料を見せていただきました。

 

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汽鍋の材料一覧。

このすべての材料が入るわけではなく、メニューによって構成が変わります。

 

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鶏肉は丸鶏が基本です。

 

f:id:jurilin:20191003134851j:plain牟さん:鶏肉は内臓以外のすべての部分が入ってます。丸鶏をぶつ切りにして、全部入れます。骨も入れます。骨から良い出汁が出るんですよ。

 

骨もぶつ切りになっているので、中からも滋養深い出汁がたくさん出るそうなのです。

 

ここからは薬膳材料です。

 

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クコの実。

 

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天麻、別名おにのやがら。

 

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三七人参(サンシチニンジン)。ウコギ科の薬用植物で、宮廷への献上品としても珍重されたもの。

 

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高麗人参。

 

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トウキ。セリ科シシウド属の多年草で、漢方薬として古来より重宝されてきました。

 

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さなぎたけ。ノムシタケ属に属する菌類の一種で、漢方薬として利用されてきました。

 

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きぬがさたけ。


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生姜。

 

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塩。

 

こちらの薬膳材料は、すべてが1つの汽鍋に入っているのではなく、メニューによってそれぞれ違う配合がされています。

 

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例えば、こちらのミニ汽鍋。こちらの具材、薬膳材料はこんな感じ。フカヒレ並みの希少価値だというきぬがさたけも入っています。

ランチタイムには、定食を頼めば、プラス350円で追加できます。

 

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こちらが、今回のメインでご紹介する汽鍋鶏。チーコージー。

蒸気で蒸す前の姿です。

基本となる具材の構成は、骨つきの鶏肉、トウキ、クコの実、生姜、塩。

 

調理時間は5〜6時間。蒸気でじっくりエキスを沁み出させる

さて、厨房を覗かせていただくと、そこにあったのは……。

 

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そびえ立つ、汽鍋タワー!

 

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この丸い蓋の下がすべて蒸気の吹き出し口になっているそうです。

 

汽鍋は真ん中に穴が空いているので、これで下から上まですべて同時に蒸すことができるのです。

 

──水を全く入れないのにスープができるんですよね?

 

f:id:jurilin:20191003134851j:plain牟さん:そうです。下から蒸気が出て、それが真ん中の穴を通って上までいきます。その熱で具材からゆっくりと旨味をたくさん含んだ水分が出てきて、蒸気の水分と合わさってスープができます。

 

──汽鍋は何時間くらいで出来上がるんですか?

 

f:id:jurilin:20191003134851j:plain牟さん:4〜5時間くらいかけてじっくり蒸します。それで栄養分や旨味のエキスが凝縮されたスープができるのです。

 

──そんなにかかるんですね。汽鍋はランチタイムにいただくことはできるんですか?

 

f:id:jurilin:20191003134851j:plain牟さん:はい。ランチでも大丈夫ですよ。朝から仕込んでいるので、ランチには出来上がってます。ランチにレギュラーメニューの汽鍋も頼んでいただけますし、ランチ用のミニサイズもあります。

 

滋味深く、低糖質。毎日でも食べられそうな味

そして、きました、汽鍋鶏!

 

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▲伝統汽鍋鶏(988円)

 

レギュラーサイズの汽鍋鶏はこのように、もやしの入った丼とともに供されます。

 

これは、低糖質! 高たんぱく! そして滋養もいっぱい! と筆者が大喜びしたメニュー構成です。

 

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黄金に輝くスープの中には、一口サイズに切られた骨付きの鶏肉がたっぷりと入っています。

 

f:id:jurilin:20191003142216j:plainクコの実と高麗人参も発見。

 

f:id:jurilin:20191003134851j:plain牟さん:中に入っている薬膳材料はかじって食べちゃってくださいね。身体に良いので。

 

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もやしの上には青唐辛子のスライスと実山椒がたっぷりのっています。

 

──私は辛いの大好きなので嬉しいのですが、これ、けっこう辛いですよね?

 

f:id:jurilin:20191003134851j:plain牟さん:そうですね。でもほとんどのお客さまが、そのまま食べてますね。辛いのが苦手な人は青唐辛子や実山椒をどけちゃってくださいね。

 

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スープの中の鶏肉を好きなだけもやしの上にのせます。

 

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そして、タレをかけます。これは良いつまみ!

 

──雲南省でもこうやって食べるんですか?

 

f:id:jurilin:20191003134851j:plain牟さん:いえ、雲南省の人は、スープだけで飲みますね。これは、日本の人はおつまみにできた方が良いと思ってうちで考えたオリジナルなメニューなんですよ。日本の人は骨付きの肉を食べ慣れていないので食べやすくなるように。でもスープにする時には骨がないと出汁が取れないから、骨を外すわけにはいかないんですよ。

 

なんと、この素晴らしい低糖質メニューはオリジナル!

 

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まずはスープをいただきます。

なんて、濃い鶏出汁!

上の方にある脂も全部鶏の脂、チーユです。鶏の旨味に複雑な香りが加わっていて、この大きな汽鍋1つ分でも、余裕で1人で全部飲めてしまいます。

そして、確かに背中の方からポカポカしてきました。

 

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骨付きの鶏肉はホロホロに柔らかくなっているので、口の中に入れると自然に骨が外れます。そして、タレのかかったもやしの辛さがなんともさわやかです。 

実山椒、青唐辛子を噛み締めながら鶏肉を食べていると、こちらもいくらでも食べられそう。

それに脂っぽさがほとんどないので、どんどん箸が進んでしまいます。

 

スープと鶏肉ともやしを交互に食べていたら、身体がどんどん温かくなってきました。

そして、食べ終わった後の、胃もたれのない爽快感。

 

さて、ちょっと風邪気味だから今日のランチも汽鍋鶏にしましょうか。

 

お店情報

日興苑 食彩雲南 過橋米線(にっこうえん しょくさいうんなん かきょうべいせん)

住所:東京新宿区四谷3-3 エスパスコンセール1F
電話番号:03-5363-8338
営業時間:月~日、祝日、祝前日: 11:30~15:15 (料理L.O. 14:30 ドリンクL.O. 14:30) 17:00~23:30 (料理L.O. 22:45 ドリンクL.O. 23:00)
定休日:年中無休(年末年始除く)

nikkouen-shokusaiunnan.owst.jp

 

書いた人:工藤真衣子

工藤真衣子

カメラマン。美しい人が好きなのでグラビア、音楽が好きなのでライブ写真、映画やドラマが好きなのでスチール写真、美味しい食べ物が好きなのでグルメ写真。雑誌、WEBなど各メディアで活動中。趣味は美味しい料理を作って食べること。子供写真スタジオ「アトリーチェ」の経営もしております。

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