「京大カレー部」のカレーはスパイス度も偏差値も高めだった

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みなさまこんにちは。京都のライター・ナガオヨウコです。

 

今日は、京都が誇る、いや日本が誇る最強大学・京都大学のユニークなサークルをご紹介します。

 

その名も京大カレー部(任意団体)。偏差値高すぎ・頭脳派のエリート集団が、カレー活動をしているといううわさをキャッチし、さっそく行ってまいりました。

 

京大カレー部が作るカレーは、じつは一般の方でも食べられるんです。2日にわたり、カレーをいただいてきたのでレポいたしますね。

 

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主にお話をお聞きしたのは、こちらの3名。

 

左から

田村 夢海さん(文学部2回生)

鈴木 七央也さん(工学部3回生)…前部長。この取材前後あたりで引退

藤原 萌さん(農学部2回生)

 

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私が訪問したのは、「京大カレー部」が学内出店をする日でした。場所は、吉田南キャンパス・総人(そうじん)広場。

 

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ベンチにカレーと炊飯器を置きまして。カレーは、担当部員の自宅で仕込んできたそうです。

 

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販売は、お昼12時ごろスタート。講義が終わった学生たちに声をかけます。気合が入った出店! というより、なんかゆるい雰囲気。

 

同じカレーは二度と作らない

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▲夏野菜のスープカレー(500円)

 

f:id:Meshi2_IB:20181011144025p:plain田村さん:「インドの野菜のスープカレー・サンバルをイメージ。そこに、豚肉を入れてちょっとキャッチーに仕上げました。私は哲学を学びたくて京都大学に入学しました。ただ漫然と生きていくのではなく、人生には彩りがほしいと考えたとき、興味をもったのが食でした。おいしい食べ物は人を幸せにしてくれるだけでなく、人と人とをつなげてくれる役割もありますから。カレー部に入部したのは、エスニック料理が大好きな両親の影響もあります。来春には、父と一緒にインドとタイを旅行する予定です。京大カレー部では、自宅でなかなか食べない味、街のお店でも出合えない味を作って紹介したいですね」

 

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木陰でいただいたのですが、暑い日にぴったりの爽やかさ! 

日本のスープカレーとは違い、すーっとさらさら。むっちゃおいしい!! 

 

野菜は、トマト、ナス、オクラ、ジャガイモ、玉ネギが入っています。スパイスはマスタードシード・ターメリック・コリアンダー・クミン・カイエンペッパーの5種類。

 

爽やかさを演出しているのは、タマリンドジュース。タマリンドとは、タイやインドではおなじみの甘酸っぱいフルーツ。甘めの梅干しやアンズのような味わい、というと分かりやすいでしょうか。

 

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異国っぽいけどなじみのあるようなカレーでした。

 

お聞きすると、個性的なカレーを食べ慣れない学生も多いため、学内出店ではクセのあるスパイスは控えめにしているそうです。

 

f:id:Meshi2_IB:20181011132730p:plain鈴木さん:「基本的に、同じカレーは二度と作りません。京大カレー部が目指しているのは、さまざまなスパイスを使うレシピを研究したり、カレーを通して人同士がつながることだからです。これまで僕たちは、農家さんにユニークな食材を教えてもらったり、カレー店オーナーさんにスパイスを多角的に見る方法を教えてもらってきました。カレー作りも、人との出会いも“一期一会”。人と会うことが、レシピの可能性を広げる最良の方法なんです」

 

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この日用意されたのは30食分。13時前には完売!

 

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▲ 写真中央、カレーを持っているのは新部長の塩 実久さん(農学部2回生)

 

京大カレー部が発足したのは、2010年。総合人間学部の学生有志が立ち上げたそうです。現在の部員数は約30人。全員が京都大学の学生です。普段は、各部員が個人的に食べ歩きをしたり、レシピを研究したりしているとのこと。

 

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▲『京大カレー部スパイス活動』/石崎 楓 著(世界文化社)

 

京大カレー部は、書籍も出版しています。4代目カレー部部長の石崎 楓さん(現在は卒業)が、スパイス考や京都のカレー店レポート、インド探訪記などを一冊にまとめたもの。新聞や雑誌、ネットなどでも話題になりました。

 

彼女が卒業した現在、在校生が目指していることは……?

 

f:id:Meshi2_IB:20181011144025p:plain田村さん:「これまではカレーを食べて研究する目的の部員が多かったのですが、最近はカレーを”作りたい”部員が増えました。今後はスパイスを極め、カレーを多角的にアプローチしていきたいですね」

 

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京都大学のキャンパスはとても広いため、学生の“足”は主に自転車。ということで、自転車で駆けつける学生も多々。

 

鈴木さん:「学内での出店は不定期です。部員の誰かが、披露したいカレーを完成させたら、みんなで部員の家に集まって作ります。カレーは、その人の性格がそのまま出るから面白い。同じレシピで作っても、きっちり細かい人は繊細な味になりますし、大ざっぱな人はおおらかな味になります」

 

f:id:Meshi2_IB:20181011144025p:plain田村さん:「雑な人の味は、とがってるなと感じます。私自身が目指しているのは、インド人のカレー。スパイスを計量せず、インド人になった気分で作っています」

 

f:id:Meshi2_IB:20181011144740p:plain藤原さん:「鈴木先輩は、梨カレーや中華風など不思議なカレーをよく作りますよね」

 

f:id:Meshi2_IB:20181011132730p:plain鈴木さん:「僕は一人でこもってひたすらカレーを作るのが好き。工学部卒業後は材料工学の研究者の道か、製鉄メーカーへの就職を考えています。カレーも材料工学も、研究の姿勢という意味では似ていると感じます。自宅には、約40種類のスパイスをそろえています。東京カリ〜番長の水野仁輔さんのレシピ本『スパイスカレー事典』はすべてのカレーを作りました。最後の1品を作ったときは、部員を招いてカレーを振る舞いました」

 

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▲左)弟・三宅 浩士朗さん(農学部1回生)、右)兄・三宅 祥太朗さん(農学部1回生)

 

京大カレー部のTシャツを着ていた2人を発見! じつはこちらの2人は、福岡県出身の双子くん。毎日、双子コーデで通学しているそうなので、京大では有名人かも?

 

彼らは食料環境経済を勉強していて、将来は食品メーカーでの開発・企画の仕事に興味があるそうです。

 

f:id:Meshi2_IB:20181011144740p:plain藤原さん:「部員で一番多いのは、私が所属する農学部。農学部は、食に関する勉強をしている学生が多いんですよ。私は食品生物科学を専攻しています。ゼミの教授は、食品を分子レベルで解析したり、新しい化学式を作ったりして、抗ガン作用やメタボ治療にいかすための研究をしています」

 

さすが京大カレー部! 話してくれることすべてがアカデミック。でも、ちゃんと一般人の私にも理解できるように話してくれるのが頭いいポイント。

 

将来、彼らが食を通して世界を変えてくれる……! そんな予感がしました。

 

学外でのカレーイベントにも出店

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とある日、京都・淀競馬場で行われた「カレーダービー2018」。競馬を楽しみつつ、いろんなカレーを食べられるというイベントです。

 

東京大阪の有名カレー店に混じって、京大カレー部のキッチンカーの姿もありました。

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部員のみなさんは、調理・会計・お客さんの呼び込み・広報などを役割分担しています。

 

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この日のカレーは「ジンジャーポーク」。

 

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イベントは2日間行われたのですが、仕込みは1日分でなんと500食分! 部員の自宅でほぼ完成させておき、会場のキッチンカーで仕上げを行なっていました。

 

f:id:Meshi2_IB:20181011132730p:plain鈴木さん:「学外でのイベント出店の目的は、見聞を広めること。お客さんの反応をダイレクトに感じることができますし、他のカレー店の方と交流を深めることもできます」

 

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▲ジンジャーポークカレー・トッピング付き(700円)

 

豚肩ロースをショウガと一緒に煮込み、コリアンダー・クミン・ターメリック・パプリカパウダー・カイエンペッパー・カルダモン・赤唐辛子を加えたカレーです。

 

トッピングのうずら卵は、赤・黄色の2種類。赤い卵は缶詰のビーツで、黄色い卵はターメリックで色付けしてあります。

 

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大きめに切った豚肩ロースが存在感ありあり。

 

溶け崩れることなく、しっかりかみ応えのある仕上がりなのは、いったん煮込んだチャーシューをルウに加えているから。

 

ルウ部分は辛さ控えめですが、千切りショウガも入っていてショウガ感がたまらない! 豚のうま味がいい具合に溶け出していて、フレッシュながら奥行きのあるおいしさ。

 

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紫玉ネギのマリネ。

お酢と砂糖で味付けしてあり、すっと爽やか。

 

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レモンの砂糖煮。

カレーのトッピングとしては珍しいですよね。チャツネ的な存在といっていいでしょうか。シナモンがほんのり香る、京大カレー部オリジナルのレシピだそう。

 

f:id:Meshi2_IB:20181011144740p:plain藤原さん:「最近では、一般の人にとってもスパイスが身近になってきたと感じています。私たち京大カレー部が伝えたいことは、身近な材料と数種類のスパイスだけでも、本格的なカレーを作ることができるということ。組み合わせによって、レシピの数は無限大なんですよ」

 

イベントなどでも京大カレー部のカレーを食べられますが、メシ通読者のみなさんに挑戦して欲しいのはカレー作り。京大カレー部ではホームページ等でレシピを公開していますので、ぜひ参考にしてみてください。 

 

kyodaicurryclub.jimdo.com

cookpad.com

 

書いた人:ナガオヨウコ

ナガオヨウコ

ライター歴22年、京都在住のフリーライター。食、手芸、子育て、京都関連の雑誌や書籍、webに執筆中。10年間続けている自然農業の畑では、20~30種の野菜やハーブ、花を栽培。

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