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生産性向上=「機械でできることは機械に」「人でしかできないことを人に」

2016.08.09

タブレット端末の登場とともに、外食産業は「産業革命」といえる大きな変革期に入った。
タブレット端末を介して、「安価なPOSレジと会計システムの連動」「ネット予約を予約台帳で管理」、「シフト管理システムでシフト業務、労務管理を効率化」「順番待ちシステムで離脱防止」etc.劇的に業務効率が改善される時代に入り、それは「産業革命」と言ってよい。外食産業は、これまでの時代においても機械化や合理化・・・さまざまな改革を経験してきた・・・、にもかかわらず日本のサービス業の「生産性」は諸外国と比べても低い。これはなぜなのか?
政府はサービス業の生産性向上を2020年までに3%向上させるという目標を掲げたが、そもそも生産性とは何なのか?
経営用語としては一般的に、従業員あたりの売上総利益(粗利)を指すことが多いが、外食産業の場合は、下図のように解釈するとわかりやすくなるのではないだろうか?

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「失われた20年」で付加価値を削ってしまった日本の外食産業

日本の外食産業は、「失われた20年」と呼ばれる長い不況期において、分母である効率化・合理化を進めてきた結果、分子である付加価値を削ってしまったのだ。効率化を劇的に進めてきた結果、偽装や過重労働という産業全体にかかわる問題を引き起こしてしまったという指摘もある。
今や、日本は世界で最も食が「安い」国の一つであり、数百円でこれだけのクオリティの「食」が提供できる国は他にはない。そのこと自体は日本の外食産業の努力の賜物であるわけだが、その努力が、一方で「付加価値に相応の対価をいただく」ことを退化させてしまったという皮肉な結果を招いてしまったといえる。

「機械でできることは機械に」「人でしかできないことを人に」…「効率」と「付加価値」の両方を向上させる

ITは労働集約的だったバックヤード業務を劇的に効率化する。
ITという機械に任せて効率が上がった分、人は「人でしかできない」業務・・・丁寧な接客や、手作業による調理など・・・「付加価値」を高める業務に注力が出来る。
また、実際に繁盛店を視察に行ったり、おもてなし力向上のための教育や人材採用、あるいは売上データやお客様アンケートを分析して商品企画・PR戦略を考えるなど、人でなければできない創造的な仕事に時間を割くことも可能になってくる。
外食産業の「産業革命」は、効率化=「分母」だけでなく「付加価値」を向上させるチャンスなのだ。

IT活用は「手段」。「目的」をいかに達成できるかが経営の大きな課題である。

したがって「IT化」は手段であって、それ自体が目的ではない。
「目的」は、自社の強みに経営資源を集中させ、付加価値を高めることにある。
例えば、WEB予約では、紙の予約台帳をただWEBに置き換えるだけではなく、受電業務の削減効果や、グルメサイトへの在庫の出し方、現場で席結合をパターン化するノウハウの確立し、顧客管理との接続で接客のレベルアップなどを是非狙いたい。シフト管理システムは、業務の削減効果が大きいが、削減できた分、「人は何に取り組むのか?」という課題設定が重要だ。
IT活用によって業務を効率化できた分、店長にはどんなミッションや役割を担ってもらうのか?このことは外食企業のキャリア形成に影響する課題でもある。
であるから、IT化は単に効率化するだけでなく、どんな付加価値向上を狙うのかということが目的であり、明らかに経営者マターなのだ。
IT導入にあたっては、こうした導入の「目的」を明確に定め、経営者自らに力強く自ら旗を振っていただきたいと考えている。

生産性向上によって、外食は「人がかがやく産業」へ!

外食産業は、働く人々にとっても魅力的で、働く人々が輝やかねばならない。
・高い価値を提供し対価を得られる産業となる(決して高級志向ということではない)
・労働分配率を高め、働く人々が経済的にもっと豊かになれる
・多様な労働力を受容し、働く人それぞれが働く喜び、経済的な満足、社会接点を持てる
サービス産業は日本の7割のGDPと雇用を担う産業である。これからの日本をしょって立つ「産業」として、生産性を向上させ、高い付加価値を生み出し、高い収益を上げる、日本の基幹産業にならなくてはならないのである。

竹田邦弘

竹田 邦弘ホットペッパーグルメ外食総研  エヴァンジェリスト