ホットペッパーグルメ外食総研とは?

業界支援・セミナー

変「質」する外食市場 ~マーケットの読み方と付加価値の磨き方~(後半)

2018.01.25

「居酒屋JAPAN 2018」出展社セミナー
変「質」する外食市場
~マーケットの読み方と付加価値の磨き方~(後半)

2018年1月24日・25日の両日、東京・池袋の池袋サンシャインシティ文化会館で“居酒屋の未来を創造する”展示会「居酒屋JAPAN2018」(主催:居酒屋JAPAN実行委員会/後援:農林水産省、経済産業省、日本政策金融公庫、フード・アクション・ニッポン推進本部)が開催された。

この展示会の「出展社セミナー」で、ホットペッパーグルメ外食総研エヴァンジェリストの竹田クニが「変『質』する外食市場~マーケットの読み方と付加価値の磨き方~」と題した講演を行った。「21世紀の外食市場は、20世紀とは“真逆”の環境にある」と指摘し、現在の消費価値観をモノ消費(70年代、80年代)、コト消費(90年代後半~)に続く「イミ消費」と定義した。さらに「イミ消費」の時代に、外食ならではの付加価値を磨くためのヒントとなる考え方、事例を紹介した。そのセミナーの概要をレポートする。(後半)

前半はこちら

【登壇者】
竹田クニ(ホットペッパーグルメ外食総研 エヴァンジェリスト)

食の大競争時代。外食ならではの「付加価値」とは何か?

食品の生産技術が進化した現在、コンビニやスーパーで販売される弁当や総菜は驚くほど品質が向上してきている。またイートインやデリバリー、ケータリングなどは従来の外食・中食というカテゴリーでは分類すら難しく、現在の外食市場は、所費者のニーズ・ウォンツに対して外食・中食・内食のカテゴリーを超えた大競争時代と言える。特に「ハレ」と「ケ」の「ケ」=日常で食されるメニューは、ラーメンやカレーなどが典型的だが、外食と中食の品質差が少なくなってきており、飲食店からすればこれは脅威と言える。

技術がどんどん進化し、「モノ」としての食において外食・中食の差が縮まる中、「飲食店が消費者に提供する『価値』とは何か?」が改めて問われている。

結論から言うと、メニュー(調理、提供方法)、食材の質、ストーリー、空間の魅力、接客という5つの項目。店のターゲット(狙う客層)と、シーン(外食の場の目的や種類)に照らして、どの要素で他店と、中食と、差別化するのか?という考え方が極めて重要であり、今繁盛している店は、「その店でなければ得られない“価値”」を必ず持っている。

人口増加、市場拡大、拡大するブーム・・・そういう例えば70年代のような環境下であれば、繁盛店の模倣でも拡大が出来た。ところが、人口減少・市場縮小の競争環境では、模倣=「同質化」は価格競争を生む。価格競争はQSC低下、満足度低下、業績低下、労働環境悪化という負のスパイラルの引き金を引きかねない。

その店“ならでは“の「価値」をいかにして創るか、いかに「価値」にふさわしい対価をいただくかが、今後の飲食店経営、外食産業の生産性向上議論に極めて重要なのである。

外食産業の生産性向上
~効率だけでなく、いかに付加価値を高めるのか?

最後に、生産性について考えたい。生産性は一般的には従業員数で売上総利益(粗利益)を割ったものだが、これを向上させるための各要素に分解すると、下記図のように生産性=分子(付加価値向上、新市場開拓)÷分母(効率化、合理化)という計算式に表すことが出来る。

長く続く不況「失われた20年」の中、日本の外食産業は、分母となる効率化・合理化・・・機械化、外注化・集中化、システム化、仕事のマニュアル化に力を入れ、伸び悩む業績の中で利益を生み出す努力を続けた。しかしその努力は一方で、分子である付加価値を削ってしまったのではないか?そしてさらには、行き過ぎた取り組みは、偽装問題、添加物問題、品質低下、マニュアル化弊害といった事象も生み出してしまったのではなではないか?というのが、現在多くの識者による一致した見解だ。

時代は変わった。テクノロジーが大きく進歩したことにより、テクノロジーをうまく活用すれば、効率を高めながら、同時に付加価値を高めることができる。

事例を2つあげよう。居酒屋などの業態を全国に100店舗ほど展開している株式会社ダイニングファクトリーは、POSレジアプリを導入して、レジ締めの時間短縮、予約管理の効率化という一次効果を実現したばかりではなく、全注文データから商品の併売傾向を分析し、おすすめメニューをパターン化して接客マニュアル「おすすめBOOK」を作成。これを活用することによって客単価、顧客満足度を大きく向上させた。

また、ロイヤルホールディングス株式会社が昨年11月に開店した新業態店舗「ギャザリング・テーブル・パントリー馬喰町店」。この店はキャッシュレスで話題になったが、セルフOESによる接客業務省力化、セントラルキッチンと新開発調理設備によるハイクオリティで熟練の料理人を必要としないメニュー構成、在庫管理・発注の自動化トライアルなど、少人数でも運営できる次世代型の飲食店経営モデルとして注目度大だ。

キャッシュレスによるレジ締め業務削減やセルフOES導入によるオーダー業務削減は、効率化や労働時間対策という「分母」側の効果に思えるが、それだけではなく、スタッフがお客様との会話に時間をとれるなど「分子」側=付加価値向上側の効果も見て取れる。テクノロジーの活用を、QSC向上、満足度向上、さらには従業員満足度の向上など、正のスパイラルにつなげ。生産性を向上させる次世代飲食店経営モデルとして、規模の大小にかかわらず大いに参考になる事例ではないだろうか?

竹田邦弘

竹田 邦弘ホットペッパーグルメ外食総研  エヴァンジェリスト