獣医を辞めて「牛乳パックで作った財布」で200万円くらい稼ぐことに挑戦する男のお話

財布や名刺入れなど普段使いできるものを、牛乳パックで制作するGNPKcrft(ジーエヌピーケークラフト)さん。 牛乳パッククラフトの魅力や、異色の経歴をインタビューした。

 

財布や名刺入れなど普段使いできるものを、牛乳パックで制作しているGNPKcrft(ジーエヌピーケークラフト)さん。

牛乳パックは、デザインが可愛くて、丈夫で長持ち。鮮度が重要な商品なので、流通範囲が限られていて、各地域にローカルの牛乳パックがあるのも魅力の1つだと語る。

もともと東京の離島・神島で公務員獣医師として働いていたが、現在は「牛乳パック一本」の生活に挑戦中。

牛乳パッククラフトの魅力や、異色の経歴についてお話しをうかがった。

 

 

「一番飲んでる水分は、牛乳ですね」ひたすら飲んで牛乳パックを入手する

 

▲おわら風の盆がモチーフの牛乳パックで作った財布(富山県)

 

ー牛乳パッククラフトを始めたのはいつからですか?

 

2018年からです。
鳥取に住んでた大学時代、しょっちゅう飲んでた「白バラ牛乳」が東京のデパートに売ってて。なんか、当時を思い出して懐かしくて。飲むだけじゃなくて、持ち歩きたくなっちゃった。

それで、白バラ牛乳のパックで、財布を作ったのが始まりです。


ー誰かに作り方を習ったんでしょうか


いえ、独学です。

皮の財布の構造なんかを分析して、独学で作ってます。
カードケースなら1リットルの牛乳パック1枚で作れますが、財布は内側・外側で1枚ずつ使うので、小さなものでも牛乳パック2枚必要です。折り畳みの大きな財布なら4枚使います。

牛乳パック1枚あたりの大きさが決まってるので、工夫がいりますね。

 

▲牛乳パックの名刺入れの構造。かなり本格的だ


ーけっこう牛乳パックの枚数必要ですね。どうやって入手してるんですか?


とにかく飲むんですよ!一番飲んでる水分は、牛乳ですね。
好きだからい良いんですけど、同じ牛乳を沢山飲まなきゃいけないんでけっこう大変。
たとえば、2泊3日の静岡旅行では牛乳2.5リットル飲みました。
旅行先では、飲み切りやすい200mlとか500mlとかの牛乳を飲んでます。


ー2.5リットル!牛乳だけでお腹いっぱいになりそう


以前、東京の離島で公務員獣医師をやってた頃は、通販で買った牛乳が船便で運ばれてくるので、つねに賞味期限との戦いでした。いつも「あと1週間で6本飲まなきゃ」みたいなプレッシャーがあって。
コーヒーで割ったり、そのまま飲んだり、とにかく1日1本は牛乳を飲むようにしてます。

 

ー素材ゲットが第一の関門なのか……


練習用だったら、牛乳パックだけメルカリで買ってますよ。牛乳パック200枚セットみたいの売ってる人がいるんです。
あとは、飲食店やってる方や、私の活動を理解してくれてる知り合いが、まとまった量を送ってくれるので助かってます。

 

 

獣医を辞めて、牛乳パック一本の生活

 

▲牛乳パッククラフトのワークショップの一場面

 

ーさきほどちらっとお話しされてましたが、もともと獣医だったんですよね

 

そうです。東京の離島・神島で公務員獣医師をやってました。

2022年3月に辞めて、今は牛乳パック一本です。

獣医時代も牛乳パック作品を作ってましたが、販売し始めたのはここ最近です。

 

ー獣医から牛乳パックへの転身!変わった経歴だ

 

まぁ安定してたし、仕事として良かったんですけど、違うおもしろ味を追及しても良いかなと思いまして。
獣医を辞めたって言うとセンセーショナルですけど、もしこの生活がダメだったら、また復帰も出来ますし。地元の兵庫に戻って、職を選ばなければ大丈夫かなって気持ちもあります。

 

ーご家族には牛乳パックでやってくって伝えたんですか?

 

親に言いましたけど、良くも悪くもなにも聞かれませんでした。腫れ物みたいな感じです(笑)。
結婚してたら出来ない選択でしたね。

 

ーそもそも、なぜ獣医になったんでしょう

 

高校時代に「手に職があるのって、かっこいいな」と、なんかピンときました。

学力的に医者はムリだったので、獣医がいい落としどころかな、と。

 

ー神島では公務員獣医師としてどんなお仕事をされてたんですか


もう、なんでもやりましたよ。

「野良猫うるさいから、どうにかして」って相談に対応したり、狂犬病の注射の手伝いしたり。旅館を見回って「ここに窓が必要」とか「トイレを設置してください」とか、設備基準の点検もしました。
いろんな仕事をまんべんなくやってたので、住民の皆さんとたくさん関われて楽しかったですね。

 

 

ちなみにカードケースの作り方は、こんな手順です

 

牛乳パックのカードケースの作り方の手順は、こんな感じだ。


①牛乳パックに型紙を当て、水性ペンでなぞる

②なぞった線に合わせて、切る

③なぞった線を水ぶきして消す

④順番に折りたたんでいく

⑤ハンドプレスという器具で、折り返し部分に金具をつける

GNPKcrftさんのワークショップでは、カードケースの作り方を教えている。

初心者でも数時間で作れるようになるそうだ。

 

 

牛乳パック財布も、自作LINEスタンプも、コミュニケーションのきっかけ

 

▲牛乳パックのキーホルダー

 

ーもともと、ものづくりがお好きだったんですか

 

ん~、そうかもしれません。

大学時代にはLINEスタンプ作ってましたし。

LINE交換するきっかけになったら良いなって、下心からですけど。自分が作ったスタンプ送るとウケるんですよ。

 

ーえ、LINEスタンプ??どんなの作ってたんですか

 

一番インパクトあるのは「おしゃべりすね毛」です。


ーなに、それ!?


すね毛が文字になってるスタンプです。
めっちゃ濃いすね毛が「ありがとう」とか「好きだよ」になってる。親や恋人へストレートには伝えられない気持ちを、冗談っぽく伝えられるスタンプ。

 

ー売れました?


ちょっとだけ。

と言っても、1ヶ月間でコンビニのチキンが買えるぐらいの収益です。

まぁ話題作りがメインなので、そこは意外と効果ありました。けっこうLINE交換もできたし。

 

▲おしゃべりすね毛

 

ー私も普段、牛乳パックの名刺入れ使わせていただいてますが、名刺交換で「なんですか、それ!?」って絶対聞かれます。話題作りって意味では同じ効果だ!

 

そうそう、それが根底にあるんです。
牛乳パックの名刺入れとか財布使ってると、自分の話しができるんですよ。
島で働き始めた時、村役場に挨拶行って。牛乳パックの名刺入れを見せて「こういう活動してます」って説明したら、教育委員会の目にとまって、小学校でワークショップをやることになりましたよ。


ー牛乳パックがコミュニケーションのきっかけになってくれるんですね。足立さんのSNS拝見してると、地方の牛乳メーカーさんともやりとりされてますよね

 

そうですね。牛乳パックの素晴らしさを伝えるZINEを作る際とか、要所要所でメーカーさんとやりとりしてます。
牛乳パック使うことを喜んでいただけると嬉しいですね。


ーローカルな牛乳パックなら、その地域のことも話せるし地域振興にも良いですね

 

牛乳パックありきの旅行も楽しいんですよ。
牛乳は鮮度が重要なので、各地域にローカルなメーカーと商品がたくさんあって、デザインもそれぞれ。調べても把握しきれないぐらい種類があります。

水玉もようの「榛名牛乳」だったり、トキがモチーフになっている佐渡島の牛乳「佐渡牛乳」だったり、カワイイものがたくさん。いつになっても新しい出会いがあるんですよ。

 

▲トキのイラストが可愛い「佐渡牛乳」

 

人生を賭けた「やってみた」


ー今後の目標はありますか


イベントにいっぱい出て、売れる物をいっぱい作りたいですね。
イベント出展が一番売れて、1日で30~40個ぐらい出ます。見たことない物なんで、手に取って確認したいようです。

生活もあるのでお金になるように活動したくて。2023年4月までに、この活動で200万円ぐらい稼げなかったら、いったん牛乳パック一本の生活は辞めようかなって考えてます。

 

ー明確な目標ですね。2023年4月までに200万円、イケそうですか?

 

今のところ、難しいです。

難しいんですけど、そのへんもふくめて「やってみた」なんで。


ー「やってみた」?

 

やってみた系の記事が大好きなんです。

今の生活自体がやってみたというか、一種の実験なんです。こういう活動したら、なにが起きるのか。ワクワクします。

突然、テレビ局から出演依頼の打診が来たり、農林水産省から連絡来て展示やらせてもらったり、やってみた冥利に尽きるな、と。

まぁ、ダメだったとしても、経営の素質がないのが分かればそれはそれでありだと思ってます。

 

ー人生を賭けた「やってみた」ですね

 

 


GNPKcrftさんの作品買いたい、イベント参加したいという方はこちらをご覧ください!

GNPKcrft ホームページ
SHOP
Twitter

 

書いた人:松澤茂信

松澤茂信

観光会社「別視点」の代表。「東京別視点ガイド」を書いてます。

過去記事も読む

 

トップに戻る