家族みんなで楽しめる造幣局の工場見学。お金の模様が描かれたお菓子も買ってみた

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いつも身のまわりにあって、ほとんどの人が大好きだけれど、それ自体については意外と知られていないものって、なーんだ!?

はい、すでにお気づきのように、お金です

 

お金は紙幣と貨幣がありますが、それぞれ別の組織で造られていることをご存じですか。 

紙幣は日本銀行国立印刷局に発注して造られ、なるほどよく見てみると、「日本銀行」と印字されています。

一方、貨幣は造幣局に発注して造られ、こちらは「日本国」と刻まれているんですね。

 

そこで今回は、1円から500円まで6種類の貨幣を造っている造幣局へ

大阪に本局、広島埼玉に支局があり、「さいたま支局」には「造幣さいたま博物館」が併設。工場が稼働している平日には自由に工場見学をすることもできます。

お金がざっくざっく生まれる瞬間が見られるなんて、子どもから大人まで興味々! 家族みんなで訪れる人も多いそうです。

さらに、博物館のショップではなんと、お金の模様が描かれたお菓子を買うこともでき、話題を集めているんだとか。

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▲造幣せんべい12枚 600円。神戸の老舗「亀井堂總本店」の瓦せんべい造幣局バージョン。カリカリで香ばしい

 

また、お金についてくわしく知って、もっとお金を身近な存在にしたい人には、事前予約制の「ガイド付きツアー」がおすすめ。

 

ということで、さっそくツアーに参加してきました。

 

入館無料の造幣さいたま博物館。工場見学ツアーも無料

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▲お子さんの学校のお休みを利用して訪れたというご家族とご一緒させていただき、工場見学に出発!「よろしくお願いしまーす」

 

さいたま支局は平成28年(2016)に開局したばかり。JRさいたま新都心駅から徒歩約12分という立地です。

 

まずは、プルーフ貨幣の製造工程から見学。

 

プルーフ貨幣とは、造幣局ならではの特別な技術で表面を磨き、模様を美しく浮かびあがらせた貨幣です。

 

一般にはあまり出まわらず、コレクション用とされています。

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▲ピカピカのプルーフ貨幣セット。ご家族から「わあ、きれい!」と歓声があがる

 

ここで一般に出まわっている通常貨幣のおもな製造工程をご紹介しましょう。

  1. 貨幣の材料である銅やニッケルを貨幣の厚さの板にする
  2. 板を貨幣の形に打ち抜く。これを円形(えんぎょう)と呼ぶ
  3. 円形を酸で洗浄し、表面の酸化膜や油を取り除く
  4. 圧印機で円形に貨幣の表と裏の模様、ギザをつける
  5. キズなどがないか検査し、合格した貨幣を袋づめする

 

手作業で1枚1枚造られているピカピカのプルーフ貨幣

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▲左側の鍋みたいのが研磨機。「円形をどういう方法でかき出していると思いますか」とガイドさん

 

プルーフ貨幣は通常貨幣より工程が増え、円形を酸で洗浄したら、細かい球状のステンレス研磨材とともに研磨機へ。約2時間振動させて、表面をピッカピカに磨きあげます。

 

たいへんなのは磨き終わってから、大量の研磨材の中に混ざっている3000枚の円形を1枚1枚かき出す作業。1枚でも数が足りないと見つかるまで探し続けるそうですよ。

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▲圧印と目視検査を繰り返し、50円を製造中。圧力を加える際のゴンゴンという音が静かに響いている

 

圧印機で円形に模様をつける工程は、ほこりやちりが紛れ込んで表面にキズがつくのを避けるため、クリーンルームで行います。

 

模様がはっきりと浮かびあがるように、2回以上にわたって圧力を充分に加え、ついた模様の状態を1枚1枚、人の目で細部までチェックします。

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▲プルーフ貨幣には色づけしたカラーコインもあり、その印刷方法も見学できる

 

検査に合格したプルーフ貨幣は自動組込装置によって、貨幣セットのケースに表や裏、向きをそろえて組み入れます。最後に革ケースに入れて、ようやく完成。

 

こんなに手間隙かけて丁寧に造られている美しいお金が、世の中にはあったんですね。

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▲プルーフ貨幣セット自動組込装置。お子さんは「あれは何をしている機械ですか」などと積極的に質問

 

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▲「造幣局の工場で働くにはどうすればいいですか」という素敵な質問も。職員さんたちは国家公務員です

 

大量のお金を目の前にしてテンションUP

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次は、通常貨幣の製造工程です。

 

ずらりと並んだ圧印機によって、円形に模様とギザがつけられ、貨幣がじゃらじゃらと造り出される風景に胸が躍ります。

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▲ベルトコンベヤーの上をお金の元となる円形が流れていく

 

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▲1分間に造り出される数は約750枚。通常貨幣は貨幣が大写しになるモニターで模様の状態をチェックする

 

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▲完成した500円。ざざざーっと流れ落ちる音を聞いて、「いい音! ずっと見ていたい!」とお子さん

 

模様の状態が不合格の貨幣は取り除き、合格の貨幣は枚数を数えて貨幣袋につめます。ここでも数が1枚でも合わないと、見つけるまで機械の中などをとにかく探すそうです。

 

そして、見学通路に貼られていた一覧表をなにげなく見たら、平成29年度の貨幣の製造枚数は、11億5,048万枚! 金額にすると2,672億1548万円! 想像を超えた数字です!

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▲日本の人口はいま約1億2659万人(総務省統計局)だから、みんなで平等に分ければ……とかいろいろ考える

 

熟練の技によって造られる勲章の工程を間近で

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▲勲章の工程を見学できるのはさいたま支局だけ。写真左端の職員さんは東京マイスターに認定されていると聞き、「かっこいい!」

 

こちらの工場では、さまざまな分野で活躍した人に授与される勲章も製造。銀板に模様をつけて切り抜き、ゆう薬を焼きつけて組み立てるところを見学できます。

 

勲章は精巧に仕上げられ、まぶしいほどの華麗さ。眺めていると、ため息が出るばかりです。

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▲ゆう薬は秘伝の配合。とくに白色はすべて同じ色合いの白に統一するのが難しいとのこと

 

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▲完成した勲章「瑞宝小綬章」

 

体験コーナーでは子どもたちが大はりきり

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▲千両箱の重さは約20kg。お父さんには「腰に気をつけてください!」の声がとぶ

 

さて、工場見学の後は、体験コーナーへ。

 

ねずみ小僧が屋根の上を走りながら小判をまき散らした、という話でおなじみの千両箱や6種類の貨幣袋の重さを体感できます。

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▲貨幣袋を1つ1つ持ち上げながら、「見た目より重たいよ〜」「あれ? これは思ったより軽い!」

 

貨幣の健康診断機「コイン君」は、貨幣の重さや厚さを測って、すり減り具合を調べてくれる機械。

 

お財布から取り出した貨幣を投入口にチャリン。どう診断されるのか、ご家族みんなで固唾(かたず)をのんで見守ります。

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▲貨幣が規格範囲内だと「健康」、範囲外だと「働きすぎ」と診断され、「しんだん書」ももらえる。「あっ、健康って出た!」

 

本物のお宝がいっぱいの博物館を探検

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最後は博物館です。貨幣の製造工程をおさらいし、日本の貨幣の歴史を知ることもできます。

 

展示されている古銭は1点のみレプリカで、あとは武田信玄が造らせた甲州金、大阪城落城時に残され、旧淀川でしじみをとっていた人が見つけた竹流金、徳川家康が造らせた大判や銀貨など、すべて本物

 

記念貨幣や勲章、オリンピックの入賞メダルなども合わせて約1000点が並び、1日では見きれないほどです。

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▲708年に造られた和同開珎と760年に造られた萬年通寶。「おぉ、和同開珎だ〜」

 

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▲現代の価格にするとかなり高額な江戸時代の大判も展示され、見応え十分

 

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▲わずかしか現存しない20円金貨幣。とくに昭和7年のものは幻の金貨といわれ、オークションでは1,000万円で落札されたことも

 

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▲47都道府県の貨幣がそろう「地方自治法施行六十周年記念 千円銀貨幣プルーフ貨幣セット」。岩手県の銀貨幣が2012年の世界造幣局長会議のコイン・コンペティションで「最も美しい貨幣賞」を受賞

 

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▲日本で行われた過去3回のオリンピックの入賞メダルは造幣局で製造。「長野オリンピックのメダルには漆が使われたんですよね」とお母さん

 

造幣局でしか手に入らないお金の模様のお菓子

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▲造幣局の技術を駆使して製造したメダルや文鎮などの金属工芸品も販売

 

ツアー終了後は、ミュージアムショップの「ミントショップ」に立ち寄ります。

 

「造幣局さいたま支局開局1周年記念2017貨幣セット」をはじめ、いろいろな種類の貨幣セットが並び、購入するとツアーのよい思い出になりそうです。

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▲絵はがき。これで手紙をもらったらびっくりうれしい

 

貨幣の形をした絵はがきのほか、貨幣の模様が描かれたせんべい、ラムネ、キャンディ、竹流金の形をしたチョコ、新発売の秩父銘菓「和銅最中」造幣局オリジナルパッケージなど、造幣局でしか手に入らないお菓子のラインアップも充実。

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販売担当の方にお話をうかがうと、「お金を模したお菓子をとおして、貨幣に親しんでもらえたらいいなと思っています」とのこと。

 

「せんべいやキャンディの模様は、実際のお金の模様より大きく描かれているので、細かいところまでじっくりと見ることができ、あらためてお金ってこんな模様だったんだと気がつくかもしれませんね」。

 

それでは、造幣せんべい、造幣ラムネ、造幣キャンディを購入。

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▲造幣ラムネ250円と造幣キャンディ250円。どちらも模様の色は貨幣袋に用いる封緘具(ふうかんぐ)の色をモチーフにしている。キャンディはすべていちご味

 

さっそく帰宅して、ほっと一息つきつつ、買ってきたお菓子をお金の模様を見ながら実食。

 

あら、5円だけ表に「日本国」の文字が刻まれていないんだ、とか、10円の平等院鳳凰堂以外は模様がぜんぶ植物なのね、とか、50円は菊で、500円はいったい何の植物? とか、これまた子どもから大人まで家族みんなであれこれ言いながら楽しめて、帰ってからも盛り上がれそう!

 

初めての造幣局でしたが、ツアーは興味深く、お金についてたくさん知ることができて、大満足。日本の最先端の偽造防止技術など、だれかに教えたくなる話もいっぱいでした。

 

みなさんもぜひ造幣局に出かけてみてください。

 

施設情報

造幣さいたま博物館 工場見学

住所:埼玉県さいたま市大宮区北袋町1-190-22 独立行政法人 造幣局さいたま支局
電話番号:048-645-5899

開館時間:9:00〜16:30(入館は16:00まで)
定休日:原則無休(臨時休館あり)
入館料:無料


※ガイド付きツアー(事前に電話で申込。見学日の2カ月前の同日から10日前までに問い合わせ)
受付時間:9:00〜17:00(平日のみ)
見学日:月曜日〜金曜日(業務の都合により見学できない場合あり)
見学時間:開始時刻 10:00〜・14:00〜(応相談)、所要時間 約1時間30分
見学料:無料
Webサイト:https://www.mint.go.jp/

 

書いた人:森田奈央

森田奈央

散歩と猫が好きなフリーライター。カルチャースクールで散歩講座も行っています。おいしいものと出会えるとやっぱり嬉しいです。

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