ドデカいカツに、こんもりと盛られたキャベツの千切り。舟型のステンレス皿全体を、ご飯が見えなくなるほど覆う濃厚なルー。
そのヘビーな見た目のインパクトで、食べ盛りの学生、そして働き盛りのビジネスマンから絶大な支持を集める“金沢カレー”。
2000年代から徐々に東京でも知られるようになり、さまざまな店が“金沢カレー”を謳い文句にオープン。数ある中でも「カレーの市民アルバ」は、その源流となった店のひとつなのだ。
今回は、そんな「カレーの市民アルバ」の知られざる歴史を紐解くと共に、その魅力に迫ろう！
すべてのはじまりは1955年、金沢のレストラン「ニューカナザワ」
「カレーの市民アルバ」を立ち上げたのは、今度忠さん。彼は、1955年に金沢で鉄道弘済会が運営する「ニューカナザワ」なるレストランで働いた際、4人の若者たちと出会う。
後に独立を果たす4人は、「ニューカナザワ」のレシピを共有し、それぞれカレー専門店を開業。田中吉和さんは「チャンピオンカレー」、宮島幸雄さんは「キッチンユキ」、野村幸男さんは「インデアンカレー」、そして、実家のうどん店を継いだ高田義教さんは「うどん亭 大黒屋」でカレーうんを提供するようになる。
彼らの弟弟子であった今度さんは、各店の開業時に助っ人として手伝ったり、時にはチーフを任されることもあったという。
ついに独立！ 1971年「カレーの市民アルバ」誕生
そして、1971年、各店舗を渡り歩いた今度さんもついに独立！ 石川県小松市に「カレーの市民 アルバ」を開業する。
金沢を代表するカレー店すべてを知り尽くした今度さんが進化させた味だけに、徐々に評判に……。
順調に客足を伸ばしていく中で、今度さんは「全国展開したい」という夢を“ある男”に語った。その相手は、日本有数の電子部品メーカー、加賀電子の社長・塚本勲さん。
高校の1つ上の先輩に当たる塚本さんは、今度さんの夢を聞いて「任せとけ！」のひと言で、外食産業専門の子会社「KGF」を立ち上げる。
フードビジネスの世界はシロート同然だったが、10年前に「カレーの市民アルバ ヨドバシマルチメディア 横浜店」をオープン。
しかし、今度さんが独自に育て上げた“アルバ”の味は関東でも評判になり、昨年、5店舗目となる写真の秋葉原本店を立ち上げるまでに至った。
KGFの社長、田巻慎也さんは、初めてアルバのカレーを食べたときの感想について、「カレーという感じはしなかったですね。ビーフシチューを食べているような感覚かな」と語る。
それもそのはず。そもそも創業者の今度さんは、デンマークのコペンハーゲンを中心に、2年間西洋料理の修業をした料理人。
タマネギをふんだんに使い、野菜と牛肉をじっくり6時間以上煮込んだ、シチューベースのカレーを作り上げた。さらに塩分を抑えることで、食べる人の健康にも気遣ったレシピにしているのだ。
今も人々を魅了し続ける「カレーの市民アルバ」の味
というわけで、早速、自慢のカレーを食べてみた。選んだのは「満塁ホームランカレー」（1,000円）と「とろとろオムカレー」（720円）の2品。
「満塁ホームランカレー」は、カツ、ウインナー、海老フライ、目玉焼きがドーンと乗るヘビー級。これをランチに食べれば、若者でも間食することなく夜まで過ごせることも間違いなし。
「とろとろオムカレー」は、濃厚なルーを玉子の甘味が緩和。胃袋が弱った齢44のおじさんライターでもペロリ！
うれしいのは、そのどちらにも共通するのが、食べた後に胃がもたれないこと。創業者の今度さんが、健康を気遣って考案したカレーであることを実感した。
「ニューカナザワ」での下積み時代から半世紀以上……。「カレーの市民アルバ」を食べずして、金沢カレーは語れないのだ！
お店情報
カレーの市民アルバ 秋葉原本店
住所：東京都千代田区外神田3-2-9
電話番号：03-3254-5686
営業時間：11：00～21：00
※本記事は2015年3月の情報です。
書いた人：寺田剛治
旅雑誌、モノ雑誌の編集者を経て、フリーランスとなったおじさんライター。食、旅、玩具、鉄道など、仕事は雑色系。「一度は見たい！日本一百景」（洋泉社）を企画・構成したことを機に、趣味は全国各地の日本一”めぐり！
