
第4回:ホッピーにも“生”はある! 立石の「秀」で3種の生ホッピーを堪能
こんにちは、パリッコです。今回も調査という名の飲み歩き活動にいそしんでいきたいと思います。
関東の大衆酒場ではおなじみのお酒に「ホッピー」というものがあります。これ、簡単に説明すると、終戦から3年後の1948年に、当時高級品だったビールの代替品として開発されたノンアルコール飲料のこと(厳密にはアルコール度数0.8%)。これで焼酎を割る飲み方が庶民の間で爆発的に広まり、今も根強く評判です。現在はビールの代わりというよりは“ホッピーという飲み物”として楽しんでいる方が多いようですね。
喉ごしはビールに似た爽快感があり、それでいてスッキリとして飲み飽きせず、自分で割るのでアルコール度数の調節も可能という、いいことだらけの愛すべき存在。サービスの良いお店だと、ジョッキに8分目くらいの焼酎(ナカ)とビン入りのホッピー(ソト)が「ホッピーセット」として出てきて、1本のホッピーで追加焼酎のおかわりが3回くらいできちゃったりすることもあり、これを“ソトイチナカサン”と呼んだりしますね。

で、そんなホッピーにも、ビールと同じように“生”が存在します。ホッピーの生とは一体どんなものなのか!? 今回は、生ホッピーが味わえる数少ないお店の中から、飲兵衛の聖地ともいえる「立石」にある名店「秀(ひで)」さんにおじゃまし、その魅惑の味を堪能しつくしてきたいと思います!
「生」は瓶と比べても爽快感が別次元!

はい、着きました。「ホッピー」「ホッピー」「ホッピー」「ホッピー」「ホッピー」と、店頭のちょうちんも完全にホッピー押し! 喉が鳴ります。
店内はこんな感じ。カウンターが数席にテーブルが数席。ピカピカに磨かれた清潔で心地よい空間です。
壁にはこのように
所狭しとメニュー短冊が。
別にメニュー表もちゃんとあって、トータルすると相当な品数ですね。眺めているだけで楽しく、そして大いに迷います。
飲み物メニューはカウンター上にずらーっと。
生ホッピーを目当てにやって来ましたが、是非味わってみたい珍しいお酒もたくさんありますね。が、まずは! なにはともあれ! 生ホッピーを注文しましょう!
ちなみに今日は、酒友達であり、以前この店を僕に教えてくれた人物でもある、バンド「チミドロ」のリーダー、スズキナオさん。バンド「nakayoshi group」のボーカリスト、Tetsuya Gotoさん、そしてさっき別の酒場で知り合った男性Bさん、僕の4人でおじゃましています。というわけで、

どーん!
と、いきなり生ホッピー全種類を注文してしまいました! 左から「生ホッピー 黒」(450円)、「生ホッピー ハーフ&ハーフ」(450円)、「生ホッピー 白」(450円)です。
ホッピーには基本的に白と黒があり、白はいわゆるスタンダードな味のホッピー。対して黒はビールに対する黒ビール的な感覚で捉えてもらって大丈夫かと思います。で、生ホッピーが通常のものと違うのは、一般的なビンからではなく、樽から直接ジョッキに注がれるという点。これによりきめ細かい泡となめらかな味わいが生まれるというわけなんですね。ちなみに割る用の焼酎は、大定番「宮崎本店」の「キンミヤ焼酎」を使われているそう。生ホッピー自体飲める店が多くないんですが、黒はさらに貴重! ましてやハーフ&ハーフなんてめったに出会えるもんじゃありませんよ! いや~興奮する。
では失礼して、
グイ?!……プハーッッッッ!!! 最っっっっっ高!!!
普通のホッピーももちろん大好きですが、それとは別次元といってよいほどの爽快さ、まろやかさ、そしてクリーミーな泡! 特に白の飲みやすさは飛び抜けていて、ほとんどアルコールを感じないほどにスイスイと飲めてしまい、逆に危険ですよこれは。黒の方はそこに若干の苦味とコクが加わる大人味でこれまたうまい。そして幻のハーフ&ハーフですが、この絶妙のバランス感覚は一番好みかも! 同行のナオさんいわく「もはやカフェオレですよ!」とのことで「え、カフェオレ?」とか思うかもしれませんが、実際に味わってみると妙に納得! 黒ホッピーのコク深さと白ホッピーの爽快さのいいとこ取りで、一口ごとに「う?ん」とうなってしまう幸福な味です。
「ホラホラ、Gotoさんも飲んでみてくださいよ!」
「何これぇ??」
特製ハイボールは甘酸っぱい下町の味
そもそもホッピーには、販売元である「ホッピービバレッジ株式会社」が推奨する“三冷(さんれい)”という飲み方があります。基本は、ホッピー、焼酎、ジョッキを全て冷やしておくこと。これに加え、厳しい品質とサーバー管理、焼酎との正しい割合を守ることなど、たくさんの条件をきちんとクリアしたお店でのみ、生の提供が許可されているそうで、今後増えていくこともほとんどないそうです。白の生が飲めるお店すらそんなに多くないのに、ましてや黒はその1/3程度とさらに貴重! そう聞くと一口の重みもさらに増しますな?。
おっと、しばらくみんなで生ホッピーに夢中になってしまいましたが、おつまみも頂いていきましょう。
大根サラダ(330円)
ここへ来たら必ず頼む大好物。甘辛いタレと、絶妙な太さに切られたみずみずしい大根のシャキシャキ感がたまりません。
あさり酒蒸し(380円)
見るからにプリプリとしたアサリ、うまいに決まってますよね。滋味深いダシがたっぷりと染み出たツユまで残さず頂きます。
あ、そうそう、さっきはあまりにも熱く生ホッピーについて語ってしまいましたが、こちらも是非味わってみてもらいたいのが、写真左の、
特製 秀ハイボール(300円)
これまた下町特有の焼酎の飲み方に“下町ハイボール”というものがありまして、焼酎を炭酸で割り、専用のエキスをたらして色と風味をつけたもの。最も一般的なのは「天羽の梅」というエキスで、これが使われているものを“元祖ハイボール”と呼んだりします。この秀ハイボールは、そのエキスの部分が自家製の、オリジナル下町ハイボールというわけです。「天羽の梅」は、実はそんなに味のあるものではないんですが、秀の特製エキスはほんのりと甘酸っぱく、そして梅の実のような爽やかな香りも感じる逸品。配合は企業秘密だそうです。この絶品ハイボールが300円で飲めてしまうなんて……。
豚なんこつ煮(300円)
なんこつ部分までトロットロ! 無料のサービスメニューである、

紅しょうがと合わせれば、心は沖縄にひとっ飛びです。
ちなみにこの紅しょうが、ナオさんは「余裕でこれだけでつまみになりますよ!」とのことで、
「いっちゃっていいすか?」
パクッ
「……」(恍惚)
さすがに「そんなに??」と突っ込みたくなりましたが、きっとお店の方の心意気も一緒に味わわれているのでしょう。
ラムネ割、コーヒー酎、数々の絶品揚げ物!

ハムかつ
通常は3枚で320円ですが人数に合わせて4枚出して頂いたので正確な値段は不明。こちらで揚げ物を頂くのは初めてだったんですが、これが超?うまかった! 見ての通りフワッフワサックサクの衣に包まれた、ジューシーなハム。衣が軽くて全くもたれることがなく、そしてお肉屋さんの揚げ物によく使われているラードの香りがものすごく香ばしいです。
マヨネーズは「いらない人も多いから」という理由で普段はつけておらず、有料(30円)でいつでももらえます。そりゃあいくでしょ。
衣に染み渡るソース、これぞ居酒屋の絶景
途中気分を変えて、
ラムネ割り(330円)
や、1ヶ月もの時間を費やして作る、自家製の
コーヒー酎(330円)
なんかも挟みつつ、「さっきのハムカツ絶品だったね。もうちょっと揚げ物いきたいね」ということで、
メンチかつ(320円)
串かつ(2串450円)
を追加。やっぱりご主人の腕、すごいです! フワッフワの衣が肉の旨みを包み込むメンチは、なんなら1人1枚ほしいくらい。
串まで衣に包まれた串かつ
も見るからにうまそうです。ではさっそく……
ガブリ!
「あっつ…… あ! うま!!!」
柔らかく、脂身に甘さを感じる肉厚の豚と、熱々の玉ねぎ、そしてラード風味のサクサク衣のハーモニー。
箸休めのつもりだった、
しゅんぎくのおひたし(280円)
が、素材を活かした優しい味付けでまたびっくり。
今日は食べられませんでしたが、オーソドックスな串焼き系や煮込み系も充実し、さらに目移りする居酒屋料理の数々が大量に並び、ご主人におすすめを聞けば優しい笑顔で「好きなものを食べてもらうのが一番ですよ」と返ってくる。これってつまり、全てに自信があり、全てがおすすめであるっていうことですよね。どうもごちそうさまでした。他にも色々味わってみたいし、絶対また来ます!
というわけで、みなさまも是非この夏、魅惑の生ホッピーと、秀の絶品料理の数々を堪能してみては!
お店情報
秀
住所:東京都葛飾区立石7-2-11
電話番号:03-5670-8739
営業時間:17:00~22:30 ※21時前後に暖簾が閉まります
定休日:木曜



