秋田だけでしか味わえないアイス体験「ババヘラアイス」!極上の寄り道エクスペリエンス

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あなたが秋田県の国道をクルマで快調にぶっ飛ばしたら、パラソルとおばちゃんのセットを何度も目にすることになるだろう。

 

こっちでも。

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あっちでも。

 

そう。これがババヘラアイス。

秋田県民なら知らないものはいない、路上でのアイス販売だ。

 

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中高年の女性(ババ)がヘラで盛るからババヘラアイス。

 

秋田の方言で、中高年の女性をババと呼ぶ。それより若い女性はアネッチャである。中高年男性はオド。犬が「inu」であるように中高年以上の女性はババである。シニフィエとシニフィアンである。『一般言語学講義』に書いてある通りだ。

 

概念としての「中高年女性全体」を「ババ」というのです。イントネーションはBAbaです。ちなみに「ババヘラ」はフラットなイントネーションで発話します。

さて、一生懸命に秋田弁の弁護をしたところでババヘラを買いに行こう。

 

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ババヘラは主に国道沿いやイベント会場に出ている。黄色とピンクのパラソルの元にアイスのでっかい缶がありババがいるのが目印である。

 

デスロード国道のもしもしピットにV8マシンを停めてゆらりとババヘラに歩み寄る。

 

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「イッコケレ(ひとつください)」

「ハーイ(かしこまりました)」

「ナンボダ?(いくらですか?)」

「ニヒャグエン。ソサオデケレ(200円になります。そこに置いてください)」

ババが慣れた手つきでアイスをコーンに盛り付ける。

 

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ジス・イズ・ババヘラアイス。

 

イチゴ味バナナ味の2色ということになっているが、正直そこまでフレーバーは強くない。薄めのジェラートという感じである。

 

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これを国道脇でぺろりんちょする。

 

これが実にうまいのである。

 

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駄菓子に近い距離感。この寄り道スタイル。ババヘラはアイス体験である秋田に来たらぜひ楽しんでいただきたい。

 

ドライブ中に「あ、ババヘラだ」っつって車を停めて小休止するのがおすすめだ。ババヘラたちは、必ず車を停めやすい場所にいる。

 

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ここは秋田の港湾地区にある道の駅というか観光施設。ポートタワー・セリオン。見ての通りババヘラは家族連れに大好評である。

 

観光客や秋田にイベントに来たタレントさんなども記念に食べていくことが多い。

 

「ウメガー?(ババヘラアイスはおいしいですか?)」

「おいしいー」

「スキダガ?(ババヘラアイスは好きですか?)」

「好きー」

 

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黄色とピンクのアイスをババはちゃちゃっと仕立てる。

 

県内あちこちで見かけるババヘラだが、ここ進藤冷菓の場合、工場は一か所である。

朝5時、秋田県中央部にある男鹿市の工場から、アイスを充填した缶を積んだワゴンが一斉に県内に散る。途中でババたちを拾っていき、路上のババヘラアイススポットにババと道具を降ろしていくシステム。日が暮れたら逆順で回収してくるのである。ゆえに、最も遠い場所に行くババは稼働時間が3時間くらいともいう。

 

アイス売りのババはハローワークで募集もするが、実際は現役ババの紹介で間に合っちゃってるみたい。志望者が現役ババに「あんたババヘラやってらんだべ、オラもババヘラやりてんだども紹介してけれ」と言ってくるのね。

 

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技術講習などはとくに無く、新人ババはベテランババに2、3日くっついて、すぐにひとり現場を任されることになる。そこはババ。世慣れた女性なのでわりと問題なく適応していくという。盛る量は目分量とのこと。マジか。

 

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盛り方にはいろいろあり、こっちが「バラ盛り」。バラの形だからバラ盛り。

いわゆるチューリップ型は「秋田盛り」という。バラ盛りが現れるまで盛り方を区別する必要が無かったため、後から便宜的に「秋田盛り」と名付けられた。

 

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これは黄色いバラ盛り。花言葉は「嫉妬」。

バラ盛りは自然発生的にできあがったものらしい。いまバラ盛りを会得しているのは3〜4人のババとのこと。ほかはまだ「お花盛り」とでも言うべきレベルで、きれいなバラの形はわりと難しそう。確かな技術の証しなのである。

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ババヘラは春から秋まで道端で食べられる。冬季のみ休業なのだが、春の初めにババを全員集めての決起集会というか始業の集まりがあるらしい。そこが技術交換の場になっているらしく、アイスの盛り方の技術を教え合ったり孫の写真を見せ合ったりするのだそうだ。

 

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取材ということでタダババヘラをいただき、ごきげんの私だ。

このババヘラ、缶ごと取り寄せることが可能だ。「缶卸し」というサービスである。たとえば町内会やお誕生会、結婚パーティなどでですね、自分たちでババヘラ屋さんごっこができるって寸法だ。ただし、配送可能なのは秋田県内のみ。その代わり、家庭用のちっちゃいお取り寄せアイテムがある。詳しくは進藤冷菓のサイトでチェック。

 

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さて、ババヘラのババは自分の道具を持っている。春夏秋と一日中道端でアイスを売る彼女たちの装備品はどのようなものか。今年の24時間テレビでタスキリレーに参加した菅原さんのケースで見てみよう。

 

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消毒用アルコールと予備のヘラ、そしてお会計セット。菅原さんのお会計セットはお弁当箱だ。かわいい。

 

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パイプ椅子の下にあるのがババヘラセット。

中身は昼食、水筒、携帯電話、着替え、雨ガッパ、寒い時にはカイロなどとなる。

 

ちなみにトイレ問題だが、近くに公衆トイレのあるところに配置されるか、見回りのワゴンを携帯電話で呼んで連れてってもらう仕組みだ。安心して欲しい。

 

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ババヘラババの多くは自分用にカスタムしたマイヘラを持っている。ヘラ自体は支給されるし、ネット通販でも買えるものらしいのだが、毎日たくさんのアイスを盛り付ける彼女たちの場合はそれなりにカスタマイズされたものでなくてはならない。プロの仕事道具である。

 

某TV番組に出演したこともある菅原さんのマイヘラは、水道のホースでグリップを自作したもの。かっこいい。プロが自分の手に馴染むようにカスタムした道具はかっこいい。

 

ヘラは薄いステンレス製なのでずっと使っていると指が痛くなっちゃうのだ。

人当たりのいいババが道端で売っているアイス。お花の形に盛り付けて、秋田県民を笑顔にできるわけです。ババヘラアイスは道草体験であり、ひゃっこい文化なのだ。

 

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なにが文化かって、おみやげ物のお菓子にババヘラ味ってのがけっこうな数出てるのね。ババヘラって売られ方と食べる状況に特徴があるのであって、味の問題じゃないんだけど、このようにすでに名物なんですわ。

 

で、おもしろいのは、他県でのババヘラ発売はたぶん無理だってこと。

これは輸送コストの問題もあるけど、販売形式が特殊すぎて、新規で始めるには許可が下りないっぽいのである。秋田ではすでに定着しており、現状なんの問題もない。ここが文化。

 

ババヘラについて気になる3つの噂

①カンボジアでも食べられます

この秋田限定ロードサイドアイス文化ババヘラだが、実はカンボジアでも食べられる。

これは進藤冷菓がNGOに技術提供した結果なのだけど、その目的はカンボジアの女性に仕事を与えるためという。アイスの缶とヘラがあれば道端でアイスを売れるわけで、東南アジアの女性にこれほど雇用機会を与えるスタイルもない。

 

販売ノウハウとレシピを提供。今は現地の工場でアイスを作り、現地の女性が販売しているという。

カンボジア語で「ババヘラアイス」という意味の名称かと思ったら、現地では「ハッピーアイス」と呼ぶらしい。ハッピーという言葉がカンボジアでは好まれるからとのこと。ローカライズは大事ですな。

 

さあ同時に言いましょう。ハッピーアイスクリーム!

 

②女子高生の夏休みバイト「ギャルヘラ」

筆者が高校生のころ、ババヘラのパラソルの下に女子高生が座っていたことあった。もちろんVツインマシンをUターンさせて買った。

 

昔から、ごくまれに女子高生または若い女性のババヘラが目撃されており、それをババヘラと区別する意味で「ギャルヘラ」と呼んだ。どこどこでギャルヘラ見たという噂話がまことしやかにささやかれる時代があった。

 

いまはどうなっているのか。

あいにく、安全面を考慮したのか絶滅してしまったらしい道端でたった一人で女のコが一日中座ってる商売であるまあねえ

 

それにたとえいま若いコがババヘラ志願してきたとしてもギャルヘラの若い女のコたちが犯罪に巻き込まれないか心配でババヘラ送迎ワゴンのドライバーがそのコを放置して次のババヘラ任地に向かうのは心情的に無理だというのであるわかる昔はおおらかな時代であった

 

③青いババヘラが僕を攻める

ピンクと黄色がアイデンティティのババヘラだが、実は青いババヘラもある。

そもそもは2013年の「海フェスタおが」というイベントで、航空自衛隊アクロバットチーム・ブルーインパルスが秋田にやって来ると。で、イベント合わせで青いのを試作したら「できちゃった」ものらしい。進藤冷菓も自分でびっくりするほどおいしくできちゃったのだそうで。

 

で、「海フェスタおが2013」だけで終わる予定ではあったものの、せっかくレシピはあるのでもったいない。そこに現れたのがJ3サッカーチーム・ブラウブリッツ秋田だ。いまはブラウブリッツ秋田のホームゲーム会場で青いババヘラアイスが食べられるらしい。ドイツ語で「青い稲妻」という意味の「ブラウブリッツ」だ。

 

本当に秋田でしか食べられないババヘラ

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ババヘラアイスはお取り寄せが可能なので県外でも食べられる。もっと言うと、東京でも秋田県のアンテナショップで食べられます。

 

しかし本当に秋田に行かないと、ここポートタワー・セリオン真下「道の駅あきた港」じゃないと食べられないババヘラアイスがある。それがババヘラソフトだ。

 

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ソフトクリームは機械がないと出せない。国道の脇では販売できない。だから道の駅のショップ形式なのである。本当に現地じゃないと食べられないものなのでご紹介します。冷静に考えたらババでもヘラでもない。この日4つめのアイスですが、がんばりました。いつだって別腹です。

 

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見たまえこのコントラストの効いたカラフルなソフトクリーム。カッティングエッジのシルエットがかっこいいぞ。

 

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もうカメラアングルも狂ってる。ウルトラマン撮ってるみたいな超アオリ。空がきれい。

 

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うまい。

 

あのね、イチゴとバナナのツインテイストがババヘラ味なんだけど、普通のババヘラは正直そこまでの味は来ないのです。フレーバーは遠くに感じるものなんすよ。でもババヘラソフトはね、牛乳が土台に入ることでフレーバーが立ち上がってくるんですね。イチゴ牛乳もバナナ牛乳もおいしいでしょ。それそれ。それがソフトクリームになってるの。

 

僕は缶ビールとソフトクリームは外でってのがサイコーだと思っているのだけど、かなりいいアイス体験ですよ。

こりゃいいもの作りましたね。

 

ちょっとそこ行く女のコたちにも訊いてみました。

「これ、おいしいよね!」 

「ババヘラアイスもソフトもどっちも好き!」とのことでした。

 

お店情報

有限会社進藤冷菓

ババヘラ・アイスの進藤冷菓

 

書いた人:鷲谷憲樹

鷲谷憲樹

フリー編集者。ライフハック系の書籍編集、専門学校講師、映像作品のレビュアー、社団法人系の広報誌デザイン、カードゲーム「中二病ポーカー」エバンジェリストなど落ち着かない経歴を持つ器用貧乏。好きな立教OBは中島かずき。

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