名古屋のご当地麺、台湾ラーメン。地元では何の違和感も抱かないが、県外の人に「名古屋なのに台湾?」とツッコまれることもしばしば。
台湾ラーメンは、1970年代に名古屋市内・今池の台湾料理店「味仙」の店主が考案し、80年代に到来した激辛ブームにのって話題になった。以降、市内の中華料理店やラーメン店もそれにあやかろうと、こぞってメニューに採り入れた。今では市内の中華料理店の約7割が台湾ラーメンを出すといわれている。今回はそんな中でも今注目の店を紹介したい。
自慢の焼きそばを軸に、台湾テイストをメニューに次々導入
岐阜県多治見市の焼そば専門店『鉄板焼そば わが家』の店主、服部光晴さんも台湾ラーメンの旨さにハマったひとり。
「初めて食べたのは、もう20年以上前になるかなぁ。あまりの辛さに残してしまったんだけど、何回か食べるうちにクセになっちゃって。週2回くらいは友達と一緒に多治見から車を飛ばして名古屋まで食べに行ったよ」と振りかえる。
お店は5年前にオープン。
もともと服部さんは20年間喫茶店を営んでいて、焼そばが看板メニューだった。
独自にブレンドしたソースを使った深い味わいもさることながら、熱々の鉄板に目玉焼き2個も添えられている、見た目も豪華な「鉄板ソース焼そば」(750円)は今でも評判の一品である。
「毎日のように通ってくれるお客さんもいたから味のバリエーションを増やそうと、ソースのほかに塩や醤油、カレーなど10種類くらい作ったよ。台湾もその一つ。一緒に台湾ラーメンを食べに行った友達が『台湾焼そばを作ったら絶対に売れる!』って言うから、20年くらい前に作ったんだ」(服部さん)
台湾ラーメンの特徴は、ニンニクや唐辛子で味付けしたピリ辛の「台湾ミンチ」だろう。台湾ミンチが台湾ラーメンの味を決めると言っても過言ではない。また、近年では台湾ミンチをまぜそばやカレーに用いられている。
今でこそ台湾ミンチのレシピはネットで検索すれば出てくるが、当時の服部さんは知る由もなかった。見よう見まねで材料を集めて作ってはみたものの、店で食べる味とはほど遠いものだった。
「台湾ラーメンを食べに行ったときに『材料は何を使ってんの?』って、ダメ元でお店の人に聞いてみたんだよ。当時、私はまだ20代で若かったし、しょっちゅう食べに行ってたから、あっさり教えてもらえてさ(笑)」(服部さん)
材料はわかったが、さすがに調理法まで聞くわけにもいかず、試行錯誤の末にようやく完成させた。服部さんがめざしたのは、万人受けする味。巷の台湾ラーメン店のものよりも辛さを抑え、肉の旨みを堪能できるように、唐辛子やニンニクの配合を調整した。さらにミンチは国産豚を使用し、背脂をくわえてジューシーな味わいに仕上げた。
これが「鉄板台湾焼そば」(800円 ※平日昼は780円)。味のベースとなるのは、オイスターソース。塩や醤油で作るよりも味に深みが出るという。
通常、焼そばは蒸し麺を使うが、ココでは地元多治見市の製麺会社から仕入れている茹で麺を使用。蒸し麺と違って油でコーティングされていないため、ソースがよく馴染むのだ。
具材は台湾ラーメンと同様にモヤシとニラ。このシャキシャキ感も◎。鉄板に溶き卵が流し込んであり、麺や野菜を絡めて食べるとマイルドな味わいに。
焼そばのほか「鉄板台湾焼きうどん」(800円、平日昼は780円)もある。しっかりとしたコシのある麺を使っているので、焼そばと比べて辛さは抑えめに感じられる。
台湾ミンチのオンパレード! 圧巻のアレンジメニュー
台湾ミンチを使っているのは焼そばだけではない。夜は居酒屋としても営業しているので、ビールや酎ハイ、ハイボールに合うピリ辛のメニューも豊富に用意しているのだ。ここでイッキに紹介しよう。
まずは、スピードメニューの「台湾ピリ辛豆腐」(250円)。冷や奴(冬季は湯豆腐)に台湾ミンチをのせたシンプルすぎる一品だが、これがメチャ旨! これだけで生中1杯はイケるぞ。
同じくスピードメニューの「台湾キュウリ」(250円)。スティック状にカットしたキュウリを台湾ミンチに付けて食べる。箸休めにぴったりのメニューだ。
「台湾串カツ」(2本400円)。台湾ミンチも肉、串カツも肉という意外すぎる組み合わせだが、衣に染みこんだ台湾ミンチが串カツの肉の旨みを引き立てている。名古屋人としては「味噌串カツ」も捨てがたいが「台湾串カツ」は新定番になるかも?
フツーの揚げギョーザのように見えるが、実はコレ、「台湾入り揚げギョーザ」(480円)。ここまでくるとフツウに見えてくる。
カリッと揚げた皮の中には台湾ミンチがたっぷり。ほかの台湾メニューと比べて辛さが強く、口に入れた途端にじんわりと汗が滲む。辛いもの好きにはたまらないだろう。
寒い日はコレで決まり!台湾メニューの大本命「台湾旨辛鍋」
台湾ミンチは野菜にもよく合う。「台湾ピリ辛もやし炒め」(480円)も評判の一品。ちなみに「台湾ラーメンから麺とスープを取り除いただけじゃん」というツッコミは厳禁(笑)。安直なメニューであることは否めないが、台湾ミンチのクオリティが高いからこそシンプルながらも高い支持を得るのだ。
熱々の鉄板でジュージューと旨そうな音を立てて運ばれてくるのは、「台湾野菜炒め」(680円)。モヤシとニラのほか、キャベツやピーマン、ニンジン、キノコが入り、前出の「もやし炒め」よりもグレードが高い。しかも、焼そばと同様に鉄板には溶き卵が流し入れてあり、絡めて食べるとメチャ旨!
鉄板つながりでは、実はお好み焼きもココの評判メニュー。「お好み焼き・台湾玉」(1,000円)は、生地の中に台湾ミンチがたっぷり。完成したお好み焼きの上にもテンコ盛りだ。ソースやマヨネーズとの相性はいかがなものかと思ったが、意外にもイケる! 台湾ミンチは万能調味料なのだ。
台湾メニューの大本命は、「台湾旨辛鍋」(2人前2,200円※要予約)。キャベツやモヤシなどたっぷりの野菜と豚バラ肉を鶏ガラベースのスープ、そして台湾ミンチとともに煮込んである。野菜と肉の旨みが染み出したスープとピリ辛の台湾ミンチは相性が抜群で、思わず一滴残らず飲み干したくなる。台湾ミンチに入る唐辛子やニンニクのせいか、食べた後は身も心もポカポカ。これから寒くなる季節にはぴったりだ。
また単品のほか、飲み放題(100分)と前菜や揚げ物、焼き物などが付く全6品の「台湾旨辛鍋コース」(4,000円※要予約、注文は4名から)も用意している。
お酒の締めに注文したいのは、「台湾チャーハン」(650円)。絶妙な火加減で炒めたご飯の一粒一粒に台湾ミンチの旨みが広がり、スプーンが止まらなくなる。台湾ミンチの持つポテンシャルの高さをあらためて実感した一品だった。
今回、12品の台湾メニューを実食したが、食べ飽きないどころかどんどん食べたくなるのが不思議。それが台湾メニューの魅力でもあるのだ。自分好みのメニューを組み合わせてオリジナルのコースを作っても楽しいかも?
店舗情報
鉄板焼そば わが家
住所:岐阜県多治見市京町3-105
電話番号:0572-24-0444
営業時間:11:15~14:00、17:00~22:00
定休日:月曜日(祝日の場合は営業)
ウェブサイト:http://j47.jp/wagaya/
※金額はすべて消費税込です。
※本記事の情報は2015年10月のものです。