風が語りかけて来るんだよな~。本物のウマさにはな~。
あ、大変失礼いたしました。(十万石ポーズ)
気がつけば風に吹かれ、埼玉銘菓「十万石まんじゅう」でおなじみ、「十万石 行田本店」にたどり着いてしまいました。
皆様ご存じですか?
埼玉のソウルフード「十万石まんじゅう」のことを。
▲これが「十万石まんじゅう」の断面。フワフワな皮の中にしっとりしたこしあんが詰まっている
県外の方には少々なじみが薄かったりするかもしれませんが、サイタミー(彩の国埼玉の民)なら知らない者はおそらく一人もいないという銘菓中の銘菓なのです。
この「十万石まんじゅう」がどれほど埼玉に根ざしているかというと、
①埼玉県内にある多くの小学校や幼稚園のお祝いに配られる紅白饅頭が「十万石まんじゅう」だったりする。
▲この絵を見るだけで、めでたい気分になるのだ、埼玉人は。
▲地元の小学校とのつながりも昔から深い
②世界的アーティストが太鼓判を押した。
「十万石まんじゅう」といえば、独特な語り口で魅力を伝えきる伝説のご当地CM「うまい、うますぎる」のキャッチコピーがあまりにも有名(あくまで埼玉エリア内では)。
実はこれ、もとは世界的に有名な版画家である故・棟方志功氏のコメントがもとになっているのです。
▲絵&題字は、かの有名な棟方志功先生だ!(公式サイトより)
③漫画でも「埼玉で最も有名な銘菓」とうたわれている。
『GOGOバンチ』(新潮社刊)にて連載中、
©渡邉ポポ/新潮社
おわかりでしょうか?
「十万石まんじゅう」こそ、埼玉を、いや関東を代表する銘菓のひとつなんですよ!
なぜ埼玉ドメスティックなのか
せっかく「十万石 行田本店」にやって来たわけですからね、なりたちやおいしさの秘密について突撃しちゃいましょう。
▲対応くださったのは、株式会社十万石ふくさや 営業部の石井伸也さん
── 現在、「十万石まんじゅう」は、ほとんどの店舗が埼玉県内ですよね。店舗出店を埼玉にこだわり続ける理由を教えてください(十万石の全39店舗中、37店舗が埼玉県内、残り2店舗が群馬県太田市内。通販での取り寄せは随時可能)。
石井さん:提供する際の状態とも関係しています。「出来たてに勝るものはない、出来たての味を楽しんでいただきたい」という先代からの思いがありまして、県外の広範囲にわたって、大量のお届けするのが非常に難しいという点がありますね。5年ほど前からは真空パックになりましたが、希少価値の高い原材料を使っている点や、賞味期限(通常約5〜6日間)の問題もあり、ベストの状態でお出しすることを考えると、やはり県内に限定した展開ということになりますね。
▲群馬県内の2店舗を除き、すべてが埼玉県内(公式サイトより)
── なるほど。個人的には、毎年5月の感謝デーが楽しみなんですが(通常価格の税別 110円がこの期間のみ税別 70円)、あれってまさに赤字覚悟という価格設定じゃないですか?
石井さん:そうですね、儲けが出ないからこそ感謝デーなので。毎年の感謝デーでは、夜中の12時から生産レーンを稼働し始めてます。
── それはすごい。
アノ超名フレーズの秘密は
── 「十万石まんじゅう」といえば、やっぱり味自体のうまさで支持されていると思うんですよ。このソフトでモチモチな食感に、あんこのなめらかさが今の時代むしろ斬新というか。
石井さん:ありがとうございます。「十万石まんじゅう」は、国産つくね芋を毎朝すりおろし、新潟県産コシヒカリの粉を使った薯蕷皮(じょうようがわ)と、北海道十勝産小豆を自家炊きしたこしあんで製造しています。よく「皮から山芋の香りがほんのり香ってくる」と言われるのはそうした理由からですね。
── 確かにほんのり感じますね、山芋の優しい香りが。創業は昭和27年とのことですが、製造方法は当時と変わっているんでしょうか。
石井さん:基本的レシピ、製法、原材料はすべて創業時のままなんです。
── 創業時からレシピや製造法が変わっていないというのには驚きです! 食のオーパーツですよ、これは。
石井さん:ありがとうございます。当時から変わっていないといえば、このサイズ感ですね。ついつい、あともう一つ食べたくなってしまう絶妙なサイズなんですが、先代が経験則から導き出した大きさが、実は現代の計算で導き出す結果と同じだったんです。
── なんと。かの棟方志功先生もつい1個、もう1個と口に運んだという伝説が。
石井さん:そうなんです。先代が渥美大童先生(書道家)からのご紹介により、棟方志功先生にお会いして、弊社のまんじゅうを食べていただいた際、1つ食べ、2つ食べ、5つ目を頬張りながら6つ目に手を伸ばした時に、「うまい、うますぎる」という言葉がこぼれ出たということです。
── うおーー! 6個も食べてこその「うますぎる」ですよね。2、3個じゃさすがにその言葉は出てこない。
石井さん:この「うまい、うますぎる」というのは、行田名物にとどめておくのはもったいないという意味合いで棟方志功先生が語られたそうです。
── このフレーズが例のCMにつながっていくわけですね! これは個人的な興味なんですが、あのCMは制作会社を通さず作られたんでしょうか。
石井さん:弊社のCMは和菓子文化を伝えたいという思いから作られました。テレビ埼玉の開局当初から流れているそうですが、テレビ埼玉さんが独自で制作くださったものです。
── なるほど、制作会社もメイドイン埼玉だったとは。
徹底して原材料にこだわる
── 昨今では若い世代の和菓子離れといった問題もありますが、和菓子が苦手という子どもたちですら「『十万石まんじゅう』だけは大好き!」と好評だったりします。ズバリ、ソウルフード化している秘訣(ひけつ)はなんでしょう。
石井さん:おまんじゅうは、和菓子の基本形ともいえるシンプルなもの。ごまかしの効かないものです。その中で本当においしいものって、やっぱり確かな品質の素材や原材を使っていたり、料製法をきちんと守っているからだと思うんです。
弊社の場合は、こだわり抜いた原材料と変わらない製法がすべて。お菓子作りの効率化は追求しながらも、おいしさにかかわる手間は決して惜しみません。作業ではなく、思いを込めたものであるという点もあるのかなと。そうした考えから、毎朝つくね芋のすりおろしから作業から始まりますし、今でも焼印は一つ一つ思いを込め黄金色になるよう手押ししています。
▲特別に見せていだいた貴重な焼印
── ええっ、手押しですか! 通りであの焦げ目がおいしいはずです。
石井さん:なかなかのマニアですね(笑)。そんな楽しみ方をしてくださる方や、先ほど申し上げた微妙な原材料の味の違いを感じ取られる、舌のこえたお客様方にも見守られているということが我々の強みなんだと思います。
── なるほど、今回は貴重なお話ありがとうございました。埼玉県人として、今後も永久的に応援し続けます!
和洋菓子の森羅万象
この「十万石まんじゅう」を東京のみんなにも楽しんでいただきたいな~なんて思っていたら、ナチュラルローソン新宿駅西店と日本橋店の埼玉物産コーナーにて購入可能とのこと。ぜひみなさんも食べてみて!
さて、
「十万石 行田本店」の店内を見渡すと、「十万石まんじゅう」だけでなく、常時200種類以上というお菓子のレパートリー!
羊かんやカステラなどの定番をはじめ、
洋菓子や、
ケーキ類まで!
ジャンル広すぎでしょこれ! と石井さんに突っ込んでみたところ、対面販売の際お客様からいただいた「こんなお菓子ないの?」といった注文が続々と商品開発に反映されている結果、こんな森羅万象が出来上がったのだとか。
ちなみに、この『メシ通』埼玉部でもたびたび取り上げている「行田市」ですが、現在はドラマ『陸王』(TBS系列)で一大ムーブメント到来となっていますからね。
この週末にも行田市、行くしかありませんよ!!
というわけで、
やっぱり何度食っても、
うまい!
うますぎる!!!
取材協力:株式会社十万石ふくさや
※この記事は2017年11月の情報です。
※金額はすべて消費税別です。