ハードボイルド・「鮮魚ラーメン」の世界 ~ 食べ歩きマニア道 其の2【タベアルキスト】

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みなさん、こんにちは! メシ通レポーターのタベアルキストYamauchiです。

今回は、タベアルキストたちが特に気になるメニューを挙げ、食材や調理法などに着目し皆さんにお届けする「食べ歩きマニア道」シリーズの第2段です。

 

数年前から密かなブームになっている「鮮魚ラーメン」。和食でも定番の魚を極めたり、その日に入った複数の魚を日替わりで使ったり、甲殻類や貝類を使ったりと、さまざまな特徴を持ったお店が増えてきています。
そんな中から、このブームが始まる前から限定で「鮮魚ラーメン」を提供し、ラーメンマニアから近隣の常連さんにも評判となっている「超純水採麺 天国屋」を取り上げます。

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「地獄ラーメン」から「超純水採麺」へ

もともとは「地獄ラーメン 天国屋」という店名でスタートし、激辛の「地獄ラーメン」を頼むお客さんが大半のお店でした。
その一方で素材にこだわった淡麗系ラーメンの好評もあり、徐々にそちらを注文するお客さんが増えて来て、3年程前に「超純水採麺 天国屋」としてリニューアル。それからは以前にも増して小さなお子さんと一緒に来られる家族連れも多くなり、子どもからお年寄りの方まで幅広い客層に愛されるお店になりました。

 

こだわりの淡麗系

店主・佐々木さんの作る淡麗ラーメンは、理想とする味を求めて素材を足して構築していくのではなく、素材の持つ本来の味を生かした「シンプルイズベスト」なもの。
鶏・鮭節・ウルメ煮干などの出汁と醤油・生揚醤油・白醤油・塩などのタレの組み合わせで、レギュラーメニューだけでも何種類もあります。
タレだけでも常時8~10種類も用意されており、店主のこだわりを垣間見る事が出来ます。

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店名にもなっている逆浸透膜でろ過した「超純水」を使って、厳選した素材のうま味を最大限に引き出す。

そして、スープのとり方やタレの素材など日々改良を繰り返していて、毎週のように食べていてもその変化に毎回驚かされます。

 

限定の「鮮魚ラーメン」

一方、限定ラーメンは一発勝負。

その時々の素材の状態を視覚・触覚・嗅覚で判断し、そのうま味を最大限に引き出すための調理方法や味の組み立てを決定していきます。調理人としての経験と知識はもちろん、動物的な感覚が研ぎ澄まされていないと出来ない技です。

今までに扱った素材は、金目鯛(タイ)、真鯛、真鱈(タラ)、カジキマグロ、天然カンパチ、秋鮭(サケ)、アトランティックサーモン、寒鰤(ブリ)、黒瀬鰤、鰹(カツオ)、秋刀魚、ハタハタ、甘エビ、赤海老、スルメイカ、アブラボウズ、モウカザメなど。数えだしたらきりがありません。そしてそれらを使った全てのラーメンが、臭みが全くなくうま味だけが抽出されており、魚介類が苦手でもここのラーメンだけは食べられるという人も少なくありません。


帆立ラーメン

とある日の限定は、常連さんの田舎から送られてきた天然の帆立を使った「冷しホタテ麺」。

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前日に届いた帆立は、そのまま食するための身が大きくて高級なもの。ラーメンの出汁に使う事をあまり想定せずに、とにかく最高級品を選んで送ってくれたらしいです。

 

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帆立をさばきながら貝柱の味見をすると、醤油をちょこっと垂らすだけで、いくらでもお酒が飲めてしまうほど美味しいです。
残った卵巣と貝ひもは白醤油に漬け込みます。

 

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帆立の雌と雄とでは味が違うため別々に調理してから合わせる予定でしたが、このまま普通に出汁をとるだけでは勿体無いと判断した店主は、即座に調理方針を変更して生の帆立の旨味を生かしたスープを作る事に。

貝柱をフードプロセッサーで崩してから純水にさらし、ごく短時間火にかけてから、氷水で急速に冷却します。

 

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これでスープは完成。傍で見ている分には非常に簡単そうですが、帆立の状態から火を入れる時間を決めるなど職人の技が光ります。そして、素材のうま味をいかすために、余計な手は加えません。

 

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タレは作らず、沖縄の海塩「ぬちまーす」を少量入れて味を調えるだけ。ミネラル分が豊富なパウダー状の「ぬちまーす」は塩分控えめでまろやかなうま味があり、この帆立出汁に最適です。

 

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「冷しホタテ麺」(ご飯付き 800円)

まず見た目が美しい。
白く透き通ったスープに、九条ネギの緑とタマネギの紫が映えます。

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うま味にうま味を重ねた最近主流の淡麗系に慣れてしまった人には、非常に薄く感じられるかもしれません。和食にも通じるこの繊細な味は食べ慣れると癖になります。
まず淡いスープを味わい、麺の小麦の風味を味わい、帆立の切り身のうま味を堪能し、帆立フレークの塩気を徐々に加えながら楽しむ。
子どもの食育のためには、ぜひ食べさせたいラーメンです。「子どもに食べさせたいラーメン」は、なかなか無いですよね。

 

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そして〆のご飯には、卵巣と貝ひもの白醤油漬けが乗っています。これに帆立出汁のスープをかけて、冷し茶漬け風にしていただきます。
こちらは白醤油のうま味が加わり、超淡麗なラーメンの後では強力なうま味が感じられ、ご飯をお代わりしたくなります。

 

限定の情報は、お店の公式FacebookやTwitterで告知されます。
そして限定ラーメンだけでなく、レギュラーメニューの中からも気になったものを試していただければ、「天国屋」の淡麗系の虜になること間違いなしです。
「シンプルイズベスト」なラーメンを是非味わってみてください。

 

お店情報

超純水採麺 天国屋 ※移転後の情報を掲載しています

住所:東京町田市鶴間3‐13‐13
TEL:042-850-7731
営業時間:11:30〜20:30 ※材料なくなり次第終了
定休日:水曜日
facebook:https://www.facebook.com/jigoku.tengokuya
twitter:天国屋

※金額はすべて消費税込です。
※本記事の情報は取材時点のものであり、情報の正確性を保証するものではございません。最新情報はお電話等で直接取材先へご確認ください。

 

書いた人:Yasuharu Yamauchi

Yasuharu Yamauchi

ラーメンとIPAが主食のタベアルキスト。麺料理担当。淡麗系から二郎系まで幅広く全国を食べ歩く。一杯のラーメンのために、自転車で数百キロ走って行く事もある。「ラーメントライアスリート」を名乗っているが、トレーニングはそこそこに、日々カーボローディングに精を出している。

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