
部署異動や転勤など仕事上の変化も多いこのシーズン、「接待」という場に臨まねばならない人もいるはず。だけど、接待ってどんなお店を選び、どう飲み食いして、ナニに注意すれば……!?
というわけで、さっそく「大人養成講座」シリーズで有名な石原壮一郎さんに、接待の心得について根掘り葉掘り聞いてきました。
エスニック系や焼き肉は接待に向いていない

石原壮一郎
コラムニスト。三重県松阪市生まれ。1993年に『大人養成講座』でデビュー以来、『大人の女養成講座』『大人力検定』『大人の合コン力』などなど、大人を テーマにした著書を発表。2012年には「伊勢うどん友の会」を立ち上げ、翌年には世界初の「伊勢うどん大使」(伊勢市麺類飲食業組合&三重県製麺協同組 合公認)に就任。
まず気になるのがお店のチョイス。石原さんによれば「接待は店選びからすでに始まっている!」のだとか。
「お店を選ぶセンスは、仕事のセンスにも少なからず影響してくるので、利害関係が生じる接待という場では普段以上に慎重にならないといけませんね。たいして美味しくない料理を猛烈に勧めてくるようなセンスの人と仕事したいと思わないじゃないですか」
デートも接待も同じ。最初の店選びが肝心ってところでしょうか。
「スタンダードな接待の場といえば、5、6人で入れる、ちょっといい感じの和食屋さんのコース料理でしょうね。あとは雰囲気のいい居酒屋。相手があまりお酒を飲まないのなら、お寿司屋さんなんかも選択肢に入れてもいいでしょう」
理由は、和食はあまり好き嫌いがないから。インド料理など、普段食べなれていないエスニック料理を選ぶのは非常にリスキー。焼肉屋や牡蠣小屋なども机の上がせわしなくなるのが難点で、話に集中出来ないことが多いので避けた方が無難です。
しいていうなら、「円卓を囲む中華料理ならアリなのかも」と石原さん。
女性はブーツを脱いで座敷に上がるのを嫌がる
「意外に使えるのが、ホテルのレストランですね。道にも迷わないし、そのまま二次会に使えるバーも館内にありますし。東急ホテルやハイアットリージェンシーなんかはおススメですよ」
ただ和食がベターとはいっても、イメージ的にはどうしても個室を選びたくなりがちですが、大事なのは予算との兼ね合い。
「予算が少ないのに個室にこだわってしまうと、学生が騒ぐようなお店を選ばざるをえなくなる恐れがありますね。こっちは慎重に話を進めたいのに、隣の部屋でワーワー言っていたり、大声で下ネタ連発しているとさすがにマズイでしょう」
それを見越して、石原さんの場合は常日頃から、魚料理ならココ、日本酒を楽しむならココというように、お店のストックを2、3店用意されているのだそう。ただし、いちいち下見にいくのも面倒。やはりグルメサイトやSNSなどで飲食店の情報をマメにチェックしておくのがよさそうです。
「接待する相手の中に、女性がいる場合は前もって座敷なのかどうなのかを知らせておいてあげるといいですよ。たいていの女性はブーツを脱いで座敷に上がるのを嫌がりますから。理由は……大人なら分かりますよね」
接待相手のご当地料理を選んだら、逆効果になる恐れも……

ところで、どんなに良い店を選んでも、会話が弾まなければ失敗してしまうのが接待の怖いところ。ありがちな出身地や天気などの話題だけだとなかなか共通点を見つけにくいものですが……。
「人間という生き物は悲しいことに、話題に困ると仕事の話をし始めちゃうんですよね。接待なのである程度は仕方ないにしても、そればっかりだとせっかくの親睦も深まらない」
雑談の大原則は、共通の話題を見つけること。たとえば、お互いの目に入っている料理から好きなグルメの話題を広げてみるのも手。料理が美味しいとそれだけで話が弾むというものでしょう。
「当たり前ですが、政治と宗教の話は絶対NGです。他にも、苦労してこのお店を見つけましたなんて恩着せがましいことを言うのも感心しませんね」
かくいう石原さんにも、実は接待の場で失敗した経験があるのだとか。それは「相手に合わせすぎてしまった」こと。以前、接待する人が地方出身だからその土地の料理が好きだろうと勝手に思い込み、都内で見つけたご当地料理店に連れて行くと、「これなら地元の方が美味い」と文句をつけられた経験があったそうです。
「接待を成功させれば、社内でも株が上がります。あいつに任せればイイ店をセッティングしてくれるとか、駅近くの裏路地に詳しくて二次会にバッチリなお店をいっぱい知っているとか、お店に詳しくなると、宴会部長とは違った意味で重宝されるかもしれません」
最後に、石原さんはこう力強く言い放ちました。
「接待というと、もてなす側にばっかり意識がいきがちですが、実は接待される側の姿勢も大事なんですよ。お互いの暗黙の上に成り立つ“共同作業”みたいなものですね」
もてなす側はもちろん、もてなされる側も礼をつくしてこそ、初めて接待という場が成り立つ。たとえるなら茶道のようなものでしょうか。このいかにも日本的なコミュニケーションこそ、無形文化遺産に指定されるべき「お作法」なのかもしれません。



