早朝の京都で「なんだか腹が減ってきた」なら
一大観光都市、京都。連日国内外から多くの観光客が訪れます。メシ通読者のみなさんも、京都に来たことあるよ〜って人も少なくないはず。私ライターの平山は、京都にまあまあ住んでいるのと、職業柄もあり、行楽シーズンともなればよく「京都の穴場スポットおしえて〜」と何年も会ってない人から突然連絡がきます。
そういう人は「久々に会いたいわー!」とか「今度ご飯いこー☆」とテンション高めにLINEが来る割に、観光当日の朝からパッタリと連絡が途絶えます。当然会わないしご飯も行きません。そんな輩に穴場スポットを教えてなるものか……!とヤキモキしつつも、ナイスなお店は誰かに言いたくなるのが食べ歩き好きの性。
今回は特別に、メシ通読者のみなさまに京都で穴場の朝ご飯スポットをご紹介したいと思います!
たとえば夜行バスなんかで京都に来た場合、JR京都駅に到着するのはだいたい朝の5時から6時くらいになるかと思うんですが、その時間だと駅前のお店は開いてませんよね。空腹に負けて全国どこにでもある牛丼チェーンに入ろうもんならスタートの段階で旅は終わります。
ローカルなメシ屋に入ってこそ、旅は思い出深くなるというもの。まずはJR京都駅から山陰本線に乗り、JR丹波口駅へ向かいましょう。ちなみに、わたくしライター平山がお届けするのですが、ここは徹夜明けの朝なんかによく食べに行ってるお店です。
丹波口駅は京都駅からJR山陰本線で一駅。徒歩だと30分くらいです。
丹波口の改札を抜けたら、右へ。京都の台所である「京都中央市場」を左手に見ながら、西向きに進んでいきます。
「五条七本松」の交差点を左に曲がり、七本松通をずんずん南下。すると、七条通の手前に、「朝定食」と書かれたノボリが特徴的なお店が見えてきます。こちらが今回、京都の朝ごはん処としておすすめしたい「村上食堂」さん。この地にお店を構えて約半世紀にもなる、丹波口界隈を代表する食堂です。
年季の入った店構え。この店名のフォントとか、のれんの重みでたわんだ棒とか、隣り合ったお店とのコントラストとか、もうほんとグッときます。
嗚呼、これぞ昔懐かしの食堂の姿
入店した我々を出迎えてくれたのが、店主の村上さん。この食堂の二代目です。
店内は古きよき時代を感じる懐かしいつくり。奥にはふたりがけの小テーブルと、お座敷があります。夜行バスで足が疲れた人は、お座敷でくつろぐのがいいかもしれません。
さて、食事をいただきましょう。店内入ってすぐに、たくさんのおかずが並んだ棚と冷蔵庫が鎮座しています。毎日数十種類が並ぶおかずは、全て村上さんご夫妻と、パートさんたちの手づくり。
おかずは棚や冷蔵庫から自分で取るセルフスタイルです。お味噌汁やご飯は、厨房に声をかけてよそってもらいます。冷蔵庫の中にある食品は、乾燥しないようひとつひとつ丁寧にラップがされていました。
お味噌汁とご飯で、王道の定食にしようかな〜とも考えたのですが、飲ん兵衛の私の目は冷蔵庫下段から目を離せませんでした……。
うっ……
うう……
まあ、飲むよね。
という事で、早くも予定は狂い、朝ご飯から朝酒へとシフトチェンジ。同行した撮影補助の友人が「何時やと思ってんの……」と若干引いてますが気にしません。
朝からお酒を飲むって、えも言われぬ背徳感がありますよね。しかも旅先のホテルで……とかじゃなく、町の食堂で飲むってのがたまらないんです。ぐふふ。
ちなみにおかずはお皿の種類で値段が決まる明朗会計。一番高いおかずですら500円です。やっす〜い。
すっかり脳は飲みモードへシフトチェンジしましたが、村上食堂評判メニューの双璧、カレイの煮付けとマグロの刺身はしっかりキープ!カウンター奥の食器棚から、小さいグラスを確保!ビールはアサヒスーパー!ドゥルルラァ〜イ!!
……完璧な朝酒プレートが完成した事をここにご報告いたします。
ビール片手に、いざ実食!
カレイの煮付け350円、マグロの刺身250円。瓶ビール(大)500円。
甘辛いタレが染みたカレイは、柔らかくホクホクの身がぎっしり。これこれ、胃袋を包み込むようなやさしさ。まさに古き良き食堂の味! 評判商品であることが問答無用にわかる一品です。
マグロは赤身がしっかりしたタイプ。わさびを多めにつけて、ツーンときたところをビールで流すともうたまりません。別売のとろろと合わせて、山かけマグロにしてもいいかもしれないなぁ。
お酒のツマミ的に、てっぱいと漬物も追加。あ、「てっぱい」は関西の方言ですよね、確か。関東では「ぬた」や「酢味噌和え」と言えばわかるでしょうか。
てっぱい150円、漬物100円。
トロトロのわけぎと、歯ごたえのある蛸を一緒に箸でつまんで、酢味噌を絡めて食べるともう……。途中途中で漬物をポリポリ齧りながら、ビールを飲みつつしばらくテレビを眺めます。極楽かよ。
だし巻き200円。
友人が分厚いだし巻きを追加。醤油をすこしたらしていただきます。こちらのだし巻きは、ぎっしりと卵が巻かれたハードタイプ。固めながらも、噛むとしっかりだしが溢れ出ます。
最後は、これですよ。カレイの端っこ。
私、貧乏くさいかもしれませんが、この骨にまとわりついたトロトロの身が大好きなんです(好きなものは最後に食べるタイプ)。時と場合によっては食べられない端っこの部分を、今日は何の遠慮もなく骨ごとパクリ!骨は丸ごと食べても問題ないほどに柔らかく、脂の乗った身がはかなく口内で溶けてゆきました。
座敷の席から入り口に向かって撮影。映画のセットに出てきそうな空間です。
父の後を次ぎ、毎日食堂に立ち続ける
さて、お腹も満たされたところで、ご主人の村上さんにお話をおうかがいしましょう。
──お父様の代から数えて創業約50年とか。すごいですね。やっぱり場所柄、中央市場の方が多いんでしょうか?
「そうですねぇ、昔はそれこそ市場で働いてる方ばっかりだったんですけど、最近は市場の人だけではなく、夜勤明けのタクシードライバーのお客さんも多くなりました」
──出た、「タクシーの運ちゃんが行く店は総じて安ウマい店である」法則!
「あとはホステスさんなど、朝方まで働いている人もお客さんとして来ていただいてます。仕事がはじまる人や、車で帰宅する人は定食を、これから寝る人はビールと小鉢で一杯。いろんな使い方で来ていただいています」
──個人的に何度か来てるのもあるんですが、今回は京都に旅行にきた人に、村上食堂さんをおすすめしたいんですよね。京都の旅のスタートに、ここで朝ご飯や朝酒をするっていう。
「それはありがたいです。ぜひ来ていただきたいですね」
他人うどん500円。
ダメ押しの〆に、他人うどんを注文。こちらは注文してから村上さんが作ってくれます。卵でとじられたなかには、薄切りの牛肉がたっぷり。うどんは京都らしいコシのないやわやわ麺です。甘辛い牛肉の風味がうどんだしに溶けて、〆にはピッタリのメニュー。
うどん&そばは、シンプルな「かけ」が最も安く300円。追加料金でトッピングも可能です。店内の壁には要注文のメニュー表が貼ってあるので、初来店でも安心。
ちょうど満腹になったところで、ひとりのおじさんが来店しました。おじさんはヒョイヒョイとおかずを選ぶと、村上さんに手渡していました。村上さんが取り出したのは透明なトレイ。
持ち帰り! そういうのもあるのか
取材を終える頃、お昼に近い時間帯になっていましたが、また昼頃からは近所の方などお客さんが増えるそう。平日・土曜は朝の5時から、日曜・祝日は朝の7時半から開店。春夏秋冬、毎日さまざまな人のお腹を満たす村上食堂、なんと年中無休なんです。
いつでも開いていて、おいしいご飯を食べさせてくれる……まるで実家や田舎のおばあちゃん家に帰ってきたような安心感がこのお店にはただよっています。この安心感がお客さんの心をグッとつかんで離さないのが、お店が長年続いてきた秘密なのかもしれませんね。
行楽や観光で京都にやってくるみなさん、旅のはじまりは村上食堂の扉を開けるところからスタートしてみませんか? ノスタルジーをかき立てる朝食はもちろん、朝日を浴びながらの一献もまた、オツなものでありますよ〜!
お店情報
村上食堂
住所:京都府京都市下京区西七条北東野町95
電話番号:075-313-5523
営業時間:平日・土曜:5:00〜20:00、日曜・祝日:7:30〜14:00
定休日:年中無休