無洗米は本当に美味しいのか? その答えを探すために工場見学&米料理専門店に行ってきた ~前編~

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みなさん、もちろん「無洗米」をご存知ですよね。

その名のとおり、洗わなくても……とがなくても、食べられるお米です。時間がなく忙しい現代人の強~い味方である一方、それ以外のメリットがイマイチ浮かんでこなかったも事実。正直、今の私の知識量では無洗米の良さって「時短」くらいしか思いつかない……。

 

いや、でもそんなことはないはず。

最近では無洗米をデイリーで使っているという家庭の話をよく耳にするし、きっといろいろな長所を持ち合わせているに違いないですよね。 

 

そう思った私は、「ぶっちゃけ無洗米ってどうなのよ!?」という、素朴な疑問を解消すべく、お米の総合メーカー 「東洋ライス株式会社」の無洗米工場を見学させてもらうことにしました!

 

東洋ライスサイタマ工場へ!

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東洋ライス株式会社は、全国の無洗米の中でも圧倒的なシェア率を誇る、無洗米の第一人者と言える会社です。今回うかがったのは、坂戸市にある東洋ライスサイタマ工場。こちらでは、普段から一般のお客さんに向けて工場見学を実施しているそうです。

 

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今回の取材は、工場長の清水敏行さんと、企画広報部の戸張奏佑さんにアテンドしていただくことになりました。見学をスタートする前に、戸張さんから、無洗米の基礎知識を教えてもらいます。

 

そう、考えてみたら私、無洗米のことなんも知りません……! 

ただ、とがなくていいってことしか知らないんですよね。

 

――というわけで、まったく無知な状態で工場までやって来てしまいました。そもそも、無洗米ってどんなお米のことを言うんですか?

企画広報部・戸張泰佑さん(以下、戸張):無洗米は、とぎ洗いして取っていた肌ヌカを、あらかじめ工場で取り除いたお米のことを言うんです。普通のお米=精白米は、玄米から胚芽と糠(ヌカ)を取り除いた状態のものですが、表面にはまだ粘着性のある肌ヌカが残っています。無洗米はその肌ヌカをあらかじめ工場で取り除いているので、とがずに炊けるのです。

 

――なるほど~。つまり、無洗米は精白米を工場で、あらかじめといでおいたものってことなのですね

戸張:いえ、それがちょっと違うんですよ。弊社の工場では、精白米をステンレス製の筒内で高速でかくはんし、筒内の金属壁に接触させて無洗米にするんです。粘着性のある糠だけが瞬時に付着して、この糠に他の米粒の糠がどんどんくっついて米からはがれ落ちる……これが繰り返されるような仕組みです。この製造手法から、弊社の無洗米は「BG無洗米」という名前が付けられています。 

 

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――えっ! 水を使ってといでるわけじゃないんですか!?

戸張:そうなんです。実をいうと、弊社はもともと精米機メーカーの会社でして、工場内で使っている機械は、ほぼ全てが自社製品なんです。もちろん精白米を無洗米にする機械も弊社の開発品です。確かに最初の開発段階では、瞬間的に水で洗って、瞬間的に乾かすという方式の機械でした。しかし、それでは弊社の代表である雜賀慶二が、無洗米を作った信念に反してしまうことになるので、製品化はせずに、水を使わずに無洗米にする技術を改めて作り出したのです。

 

――ほお……その信念とは?

戸張:「きれいな海を取り戻したい」という思いです。実は、無洗米は環境汚染を危惧した雜賀が、海をきれいにしたいという使命感で作り出したものなのです。

 

――えぇっ!! 「主婦に楽させてあげたい」みたいな、そういうことではないんですか?

戸張:家事が楽になった、というのは結果論ですね(笑)。リンや窒素が多く含まれているお米のとぎ汁は、実は水質汚染の一因と言われています。とぎ汁が川に流され、海へと向かうとヘドロや赤潮の原因になってしまうんですね。先に話した水を使った無洗米製造機は、結局工場から大量のとぎ汁を流すことになってしまうので、本末転倒ということで世には出さなかったんです。

 

――なんと……! 無洗米がそんな崇高な志のもとに生まれたお米だったとは!! これはものすごいことを知ってしまった気がする……

戸張:確かにこの話、意外と知られていないんですよね。便利な面ばかりがピックアップされがちですが、無洗米の根本は環境汚染の抑止にあるんです。では、この話をふまえた上で、工場見学へどうぞ!

 

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――ここが搬入口ですか? この袋に入っているのは、玄米ですね。まだ精米される前のやつ!

工場長 清水敏行さん(以下、清水):そうです。トラックで全国各地から毎日大量の玄米が運ばれて来ます。ここから室内に入り、まずは玄米に混ざった小さなゴミを除去します。

 

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――ここで混ざったゴミと玄米を分別する作業が行われるのですね。

 

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清水:けっこう大きなゴミがゴロゴロ出てくるんですよ。小石とか。

 

――あっ! 本当だ……

清水:まあ、ここはきれいなお米を作る第一段階の場所、といったところでしょうか。ゴミが除去された玄米は、精米機へと運ばれていきます。

 

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――茶色い玄米が止めどなく機械の中を流れている! 玄米流星群? 

清水:先ほど、ゴミが除去されたばかりの玄米です。この後、精米機で玄米は精米され、精白米へと変わります。

 

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――精米機だ! ついさっきまで茶色かった玄米があっという間に白くなって出ていきますね

清水:せっかくなので精米した直後の精白米、ちょっと見てみますか?

  

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――おお! 一般的によく見知られているお米の状態ですね。白くてキレイ!

清水:胚芽と糠が取り払われた直後の精白米です。普通の工場ならばこの状態で出荷されるのですが、無洗米の工場では、工程がもう一つ増えます。無洗米加工の部屋を見てみましょう。

 

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――ここで無洗米が作られているのですね。中も見てみたい!

清水:この工程は無人運転の製造室で行われています。普段は中に入れないのですが、本日は特別に、写真撮影はNGですが中に入るだけならOKです。ぜひ、精白米が無洗米になっていく様を目に焼き付けてください。

 

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想像していたより無洗米の製造機は小さい機械でした。

でも、その働きっぷりというか、仕組みというか……お米を当てる圧力や回転速度が計算され尽くしていて、ちょっと感動しちゃうほど細やかで面白い流れでしたよ。おや? この黄色い粉はいったい……

 

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清水:これが、家庭では水洗いで落としている肌ヌカです。栄養分が豊富なので、天然の有機肥料「米の精」として活用されています。では、この肌ヌカが除去された直後の無洗米も見てみましょう。

 

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――左が精白米で……右が無洗米。なんだか無洗米の方が白く見えますね。

清水:肌ヌカがなくなったぶん、白く見えるんですよ。色味もなんだか少し違うでしょう? 玄米から精米では、約10%の糠が除去され、残る約1.5%の糠がここで肌ヌカとして取れていくので、さらに白さが増しているはずです。これでもう、完全にとぎ洗いがいらない状態になりました! では、最終段階の選別機室に行きましょう。

 

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――無洗米ができあがったら、ここで、細かい異物を取り除くというわけですね。機械がいっぱい! 

清水:この中に石抜機というものがあるのですが、この機械の開発が弊社のスタートと言われています。小さなお米の中に混ざってしまった小さな石粒を選別する機械なのですが、昭和36年の創業当時からこの仕組みはいまだ変わってないんですよ。穀物から石粒を取り除く技術として日本のほとんどの精米工場で採用されてるんです。

 

――その石抜機って、どんな仕組みなんですか? 50年以上も変わってない技術、興味あります。

清水:小型機があるんで、見てみますか?

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――正直なところ、すごく原始的なように見えますが、でもしっかり石と米が分離している……。

清水:皆、これを見ると驚かれます! この原理は、今ではコーヒーやゴマ等の選別にも応用されているようです。

 

――でも、この機械のおかげで、私たちは石も一緒に食べずに済んでいるんですよね。東洋ライスに感謝!

 

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――この袋詰めで工程はラストですね! 次々と商品になっていく。

清水:この後、重量チェックや金属探知等で最終確認をして、万全の状態で送り出します! 

 

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――そして出荷へ……あの茶色かった玄米が、立派な無洗米となって旅立っていく……。ちょっと感慨深いですね。

清水:はい。ここからみなさんのご家庭や、飲食店に届けられます。無洗米の工場見学、いかがでしたか?

 

――無洗米の技術に驚きました! 想像していたのと全く違っていて……。実は、私どこかで「無洗米って、ふつうのお米より美味しくないんじゃない?」って思っていたんですよ。でも、こうして製造過程を見させてもらった今は、絶対美味しいよこれ! って確信してます。食べたい! 無洗米を今すぐ食べたい!!

清水:もちろん、試食できますよ(笑)。戸張が用意しておりますので、ぜひ食べてみてください。

 

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――ふっくら炊き立ての無洗米! 見るからに美味しそうじゃないですか~。戸張さんありがとうございます(感涙)。

戸張:それは良かった。この無洗米は、最新の精米技術で作られた「金芽米」です。

 

――金芽米!? BG無洗米とは違うんですか?

戸張:玄米から精米する段階で、金芽という胚芽の基底部と栄養価の高い亜糊粉層という糠と白米の境目にある層も残した無洗米です。ごはんの膨張率がよく、米一粒一粒が大きくてふっくらとした炊き上がりになります。体調改善効果も高く、東洋ライスが今イチオシの無洗米です!

 

――あれ!? 炊飯器がもう一つありますが、こっちは……?

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――こちらは少し茶色い……。もしや、これは玄米ですか?

戸張:はい。これは「金芽ロウカット玄米」です。玄米表面のロウ層を除去した玄米なので、白米と同じくらいふっくらとした炊き上がりなんですよ。栄養価は玄米と同等ですが、これも無洗米なので手軽に炊けますし、カロリーもふつうの白米より20%カットできます。

 

――なんと2種も実食できるとは……いただきます!

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――むーん、両方とも美味しいっ! まず金芽米の方ですが、甘味がすごいです。今まで私が思ってた無洗米とはぜんぜん違う味です。これをマズイと思ってた、工場に来る前の私のバカッ。

戸張:美味しさについては、甘みもうま味も普通の白米より格段に高いことが、科学実験でも証明されてるんですよ。金芽ロウカット玄米の方はいかがですか?

 

――私、玄米かなり苦手意識あったんですが、それも払拭してくれましたね。玄米特有の硬さがないんですよ。これもいいですね。いろんな料理に使えそうですね。飲食店でももっと扱えばいいのに! 

戸張:実をいうと、弊社でも2016年1119日より銀座で、金芽米や金芽ロウカット玄米をつかった料理を楽しめるお米料理店「金のダイニング」をオープンするんです(※編集部注)。「寿司」、「おにぎり」、「丼」、「おかゆ」など、お米本来の美味しさを味わえる料理だけでなく、「お米スイーツ」も提供するんですよ。

※編集部注:取材時点での会話です。現在「金のダイニング」はオープンしています。

 

――えっ……何それ、ちょっとそれ行きたいです! 戸張さん、どうにかなりませんか!?

戸張:よろしければ、オープン前のレセプションにご招待させていただきましょうか。ぜひ、改めて無洗米の美味しさを実感してください!!

 

――わぁ~い!!

 

というわけで、次回は東洋ライス株式会社が米の新たな魅力をプロデュースするお米料理店「金のダイニング」のレセプションに潜入取材を敢行! 

どんな米料理が出てくるのか……こうご期待!

 

~後編へつづく~

  

施設情報

東洋ライスサイタマ工場

住所: 埼玉県坂戸市にっさい花みず木7-5
電話番号:049-288-4700

www.toyo-rice.jp本記事の情報は取材時点のものであり、情報の正確性を保証するものではございません。最新情報はお電話等で直接取材先へご確認ください。

 

書いた人:もちづき千代子

もちづき千代子

人生が常に大殺界な人妻ライター。日大芸術学部放送学科卒業後、映像技術者・メーカー広報・WEBサイト編集長を経て、2015年よりフリーライターとして活動を始める。人生のテーマは「酒と涙と男と女」。

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