こんにちは。酒場ライターのパリッコです。
普段はお酒関係の記事を専門に書かせてもらっているのですが、自分の住む家からそう遠くないエリアに、最近、すごく良い評判をたびたび耳にするラーメン屋さんがあるんです。
なんでも、日本のラーメンに惚れこんだベトナム出身のご主人が作る、ハイクオリティーな「煮干ラーメン」なんだとか。
そこで「近所なら、ちょっと行ってみっか」と訪れてみたところ、だんだんいい年齢になり脂っこいラーメンが重たくなってきていた自分をとことん癒してくれる一杯で、確かに美味しすぎた!
今回はその、「ラーメン屋ジョン」さんをご紹介したいと思います。
店内もメニューもシンプル
▲「ラーメン屋ジョン」
西武新宿線「武蔵関」駅から徒歩1分。住所的には東京都練馬区。
オープンから約2年のラーメン屋さん。
紺色を基調とした外観がシックで、どこか日本蕎麦屋に通じるような「粋」を感じますね。
▲カウンターのみの店内
席数8ほどのこぢんまりとしたお店。
▲壁には達筆の説明書きが
壁掛けを要約すると「数々の有名店で修行を積んだラーメン職人のチャンバン・ジョンさんが、日本全国から取り寄せた煮干を厳選し、化学調味料を使わず、究極に澄んだスープを作り上げたんだよ」というようなことが書いてありますね。
「感謝の気持ちで〜」とか「熱い想いが〜」とかじゃなく、シンプルな説明でわかりやすい! 好感度高し!
▲券売機
最上段にはメインの煮干ラーメンのバリエーション。
他、オーソドックスな醤油ラーメンや塩ラーメンもラインナップ。ビールやチューハイ、ハイボールもあるので食べる前にちょっと一杯飲むことも可能です。
名店で修業後「煮干ラーメン」を志す
店主のジョンさんが留学生として初めて日本にやってきたのは13年前。そのとき何気なくアルバイト先に選んだのが、とんこつ系のラーメン屋さん。
母国のベトナムで食べる麺類とのあまりの違いに驚き、初めはまったく好きではなかった日本のラーメンだったけれども、日本で暮らすうちに徐々に舌の好みが変化し、大好きになっていった。
▲店主のジョンさん
やがて「死ぬまで住みたい」と思うようになるほど気に入った日本。数々のラーメン屋さんで修行をし、特に東十条の名店「麺処ほん田」には6年間も勤めたそうで、もはやすっかりラーメン道にハマってしまったというわけ。
いつしか「自分のお店を持ちたい」と思うのは当然のこと。修行と同時に食べ歩きも重ねる中、もっとも作りたいと思ったのが「煮干ラーメン」だったんだそうです。
当時は埼玉県の川口に住んでいたジョンさんが、偶然に条件の良い物件を見つけたのが、武蔵関の街。
かくしてここに、「ラーメン屋ジョン」が誕生したのでした。
品格漂うジョンさんのラーメン
▲湯切りの技も鮮やか
▲華麗な手つきで盛りつけてゆき……
▲あ、Tシャツかわいい! これはともに働く奥様、チュエンさんのデザインだそう
完成! 「特製煮干」(1,020円)
品のある佇まいながら、具材が盛りだくさんで食べ応えもありそう。
どんぶりが到着した瞬間から、煮干の良い香りがふわりと漂い、強烈に食欲が刺激されます。
低温調理した“極柔”チャーシュー
そしてそして、真っ先に気になるのが、どんぶりの半分以上を埋めつくす3種類のチャーシュー。
▲鶏むね肉
低温調理でしっとりと柔らかな驚きの食感に仕上げられた、ヘルシーなチャーシュー。
▲豚肩ロース
こちらも低温調理によって柔らか。
なんですが、心地よい噛みごたえは残っていて、噛みしめるとギュッと濃縮された豚の旨味が染み出します。
▲豚バラ
甘く芳醇な豚の美味しさに加え、オーブンで炙られた表面の香ばしさがたまらない!
全て国産肉にこだわって作られたこれらのチャーシュー、一杯のラーメンの上でこれだけの食感、味わいのバリエーションが楽しめるのは、幸せとしか言いようがありません。
香り高い麺の秘密は「そば粉」
では麺をいただいてみましょう。
▲製麺所に特注した、中細ストレート麺
パツパツとハリのある麺で、勢いよくすすりこんで噛みしめると、口の中で踊るような食感が心地いい。
表面には若干ザラザラとした質感もあり、豊かな小麦の存在感はもちろん、なにやら気品を感じるような香り高さです。
その理由はなんと、麺に「そば粉」が練りこまれているからだそう。
ジョンさん、こだわるな〜。
飲み干さずにいられない無化調スープ
そして何よりこのスープ! 煮干の主張は大いに感じつつ、しかしまったくもってエグ味がなく、無化調とは思えないほどの主張がある、奇跡的とも思えるバランス。
塩味なのに甘くふくよかで、飲み干すなと言われてもとうてい無理な絶品!
▲清澄なスープ
魅惑的すぎる香りと味の共演に、ズゾゾ、ズゾゾと無心で食べていたら、あっという間に残りわずか。
▲パーフェクトな味付け玉子!
▲「煮干レーモン(レモン)りんご酢」
残りわずかになったところで、卓上にあったこれをサッと一周どんぶりにまわしかけてみると、全く別のラーメンに生まれ変わってしまったような爽やかさで、これまた美味しい!
宣言どおり、一滴残らず飲み干してしまいました。
6種類の煮干で作る「優しい味わい」
ジョンさんによれば「お店を始める前はとにかく不安だった」とのことですが、蓋を開けてみれば、お店は地元の常連さんを中心に、お昼のピーク時には行列が途切れないほどの繁盛店に。
特に、お子さんから老人まで幅広い世代のお客さんが来てくれるのが嬉しいとのこと。
▲笑顔が優しいジョンさん。「近所のお年寄りが美味しい美味しいと食べてくれるのがなにより嬉しい」と話す
中には、糖尿病のため、週に一度だけ食べるラーメンが何よりの楽しみというお客さんが、「他のラーメン屋ではスープを飲まないようにしているけど、ここのスープなら飲める!」と喜んでいた、なんて泣ける話も聞かせてもらえました。
なんという素晴らしい仕事をされているんだ、ジョンさん!
▲スープに使用している煮干
驚くべきことに、写真に写っている、アゴ(トビウオ)、カタクチイワシ、マイワシ、アジなど、6種類の煮干をすべてつかって、一杯のラーメン用のスープを作っているそう。
手に持っているのは、香川県の伊吹島沖合で獲れるカタクチイワシの煮干「伊吹いりこ」で、現在メインとして使っている煮干。
水出し〜寝かし〜煮出しと丸1日かけ、それぞれの分量も日々微調整しながら丁寧に作られるスープは、今もなお研究を重ねつつ進化中なのだとか。
▲低温調理中のチャーシュー
▲店内に飾られていた刺繍には、のどかなベトナムの田園風景が
醤油ラーメンも甲乙つけ難し
ちなみにこちらは「特製醤油」(990円)。
鶏ガラダシにチー油(鶏油)を効かせた、これまた無化調ながらガツンとくる美味しさの醤油ラーメンです。
もちろん麺も別注!
さっきの特製煮干しラーメンとは打って変わり、こちらで使われているのはツルツルとした食感が特徴の玉子麺。のどごしが素晴らしいんです。
こちらは毎年11月から期間限定で提供される「濃厚煮干ラーメン」
なんと通常の10倍の煮干を使って作るんだとか。
ごくり……。
▲こちらが現物の「濃厚煮干ラーメン」(ジョンさんから画像が送られてきたのでそのまま載せてます。やっぱりめっちゃ濃厚!)
はい、というわけで、並々ならぬこだわりを持って丁寧に作られた煮干ラーメンの名店「ラーメン屋ジョン」さんのご紹介でした。
あの、あらためて心から言います。
ジョンさん、チュエンさん、日本に来てくれて、ラーメンを作ってくれて、本当にありがとう!
ごちそうさまでした!
お店情報
ラーメン屋ジョン
住所:東京都練馬区関町北4-1
電話番号:03-6795-1984
営業時間:11:30〜14:30、18:00〜22:00
定休日:水曜日
書いた人:パリッコ
DJ/トラックメイカー/漫画家/居酒屋ライター/他。FUNKY DANCE MUSIC LABEL「LBT」代表。酒好きが高じ、雑誌、Webなどの媒体で居酒屋に関する記事を多数執筆中。
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