日本橋浜町のサイゼリヤで“せんべろ飲み”に挑戦
ファミレス飲みが流行っているようです。ファミレスがアルコールを安く提供し出したことで、安く気軽に飲めるお店として注目されるようになったわけです。なかでも、よく話題になるのが「サイゼリヤ」のコスパの素晴らしさ。もともと非常にコストパフォーマンスの高いイタリアンレストランとして知られる「サイゼリヤ」ですが、ワインの安さは、ちょっと驚くレベル。
だって、グラスワインが1杯100円、500ミリリットルのデカンタが399円、1.5リットルのマグナムボトルが1,080円ですよ。安いなんてもんじゃないですよ。実は先日、大阪の安くて美味い飲み屋さんを飲み歩いてきて、その安さにびっくりして来たわけですが、「サイゼリヤ」はそれ以上のコストパフォーマンス力を持っているのです。
そんな話をしていたんですが、じゃあ、本当に「サイゼリヤ」で本当に1,000円でいい感じに酔っぱらえるのか試してみようということになりました。1人1,000円以内という取り決めでの飲み会です。1,000円でどんな組み合わせで行くのか、ここに酒飲みとしての経験とセンスがにじみ出てくるわけです。
負けられない戦いがここにある!
参加者は、元ワイン雑誌編集長のモギ氏、神保町の特殊古書店・マニタ書房店主のとみさわ昭仁氏、カメラ係で写真には写っていませんが、『メシ通』編集のM氏、そして僕の4人です。予算はもちろん1,000円×4名=4,000円のみ!
さっそくメニューを広げてメニューを吟味します。まず問題となるのは、酒と料理のバランス。せんべろと言う以上、ワイン一杯というわけにはいきません。ちゃんと酔っぱらえる程度の酒量は欲しい。料理にしても、つまみがひと皿だけなんて、寂しすぎる。あくまでも、たっぷり飲んで、たっぷり食べたい。しかも1人1,000円以内で。
そんな無茶な望みを聞いてくれるのが、「サイゼリヤ」ですよ。ね、そうですよ。
「本当だったら、フルボトルを頼んでみんなで分けるのがお得なんだけど、それだけで1,080円いっちゃうからなぁ」
「そうか、サイゼリアって、基本的にワインとビールとサワーしかないのか。焼酎があれば、ドリンクバーと組み合わせる手があったんだけど」
スマートフォンの電卓アプリ片手にメニューを見ながら組み合わせを考えます。真剣です。なにしろ手練の飲み手ばかりですから、下手なセレクトをすると笑われてしまいます。ここはひとつ、みんなをうならせるような鋭い組み合わせを編み出したい。
「実はおれ、この間、近所の『サイゼリヤ』で1人で予行練習してきたんだよね」
とみさわさんがそんなことを言い出します。
うわ、この人、やる気だ。
さて、それではそれぞれのデッキを見てみましょう。
まずは、モギさん。彼は僕の駅弁大会の師匠であり(長くなるので詳細は省略)、某ワイン雑誌の編集長でもあった人です。従ってワインにはうるさいです。ワイン以外にもうるさいです。僕の心の中では、『めしばな刑事タチバナ』と重なることがよくあります。
メインの料理は、たっぷり野菜のミネストローネ(299円)。そこにフォッカチオ(119円)と、プチフォッカチオ(139円)。ワインは250ミリリットルのデカンタを赤と白の両方で、各200円。合計957円!
フォッカチオとワインのダブル使いに老練なテクニックを感じますね。フォッカチオはミネストローネにつけてもよし、テーブルに常備のオリーブオイル(に食塩も)につけてもよし。
「はっきり言って、フォッカチオだけでワイン、いくらでもいけちゃうからね」
ワインのデカンタは250ミリリットル2本と、500ミリリットル1本は1円しか違わないというところに目をつけての赤白2本セレクトというのも、さすがです。ここで、飲み方がグッと広がりますからね。
続いては、とみさわ昭仁さん。自分の目で選んだ変な本しか置いていないという特殊な古書店・マニタ書房の店主にして、ライターでコレクター。自身のコレクター遍歴を綴った『無限の本棚』(アスペクト刊)が好評発売中。この人も、飲み屋さんにはめっぽううるさい人です。そしてこだわりの人です。
メインの料理は「サイゼリヤ」の名物とも言えるエスカルゴ(399円)。そこにキャベツとアンチョビのソテー(199円)。そしてペコリーノ粉チーズ(69円)。ワインは赤の250ミリリットルデカンタ(200円)と白のグラスワイン(100円)。合計967円。
やはり気になるのが、羊の乳から作られるというペコリーノ粉チーズの追加。粉チーズならテーブルに備え付けのが無料であるのに……。
「そう思うでしょ、ふふふ」
とみさわさんは、そう不敵に笑うと、やって来たエスカルゴをひとつ食べると、
その穴にペコリーノ粉チーズを投入! エスカルゴが入ったままの穴にも投入!
エスカルゴの入った容器は熱せられているので、粉チーズが溶けて固まり、これはこれで一品のつまみとなるわけです。なるほど、それで無料の粉チーズではなく、味わい深いペコリーノを注文したというわけですか。やるなー!
では、『メシ通』編集のM君のデッキを見てみましょうか。最初は今日は撮影だけで参加するつもりはなかったということですが、どうせなら人数が多い方が楽しいからと急遽参戦させちゃいました。
メインの料理は、若鶏のグリル ディアボラ風(499円)。そこにフォッカチオ(119円)に白のデカンタ500ミリリットル(399円)で合計1,017円。
なんというか、あまり面白みのない組み合わせですね。しかも17円オーバーしちゃってるじゃないですか。これはやはりメインに499円もかけちゃってるのがよくなかったのでは? (いや、499円って十分安いんですけどね)。
「いや、でも、僕、『サイゼリヤ』ではこの若鶏のグリル ディアボラ風が一番美味しいと思ってるんですよ! 他じゃダメなんです!」
そうですか。そこまで思い入れがあるんじゃ、他人が口を挟むのは野暮というものですね。でも17円オーバーってのは、失格ですよ。
「若鶏のグリルをフォッカチオで挟むと、たまらなく美味しいんですよー」とM君。
ま、幸せそうだから、あまり追及するのは止めておきましょう。
さてさて、それでは僕のデッキも公開いたしましょう。
メインの料理はランチメニューからスパイシートマトのハンバーグ・サラダ、スープ、パン付き(500円)にランチドリンクバー(110円)。そして掟破りのグラッパ(379円)の合計989円。
え、ワインじゃなくて、グラッパ? だいたいグラッパって何? という人も多いと思いますので、説明しておくと、グラッパとはイタリアの蒸留酒でぶどうの搾りかすを発酵させたブランデーの一種。イタリアでは食後酒として飲まれることが多いんですが、僕はあえてこれをメインに据えてみました。その理由はアルコール度数の高さ。なんと40度です。
いや、ファミレス飲みの重要ポイントとして、ドリンクバーの活用というものがあるんですね。焼酎のボトルなどを注文し、それをドリンクバーのドリンクで割ると、たいへん割安なわけです。しかし、『サイゼリヤ』には焼酎は置いていない。じゃあ、なにか強いお酒がないかなとメニューをひっくり返して見つけたのが、このグラッパ。30ミリリットルだけど、これだけ度数が高ければ、割ればかなり飲める。
そしてランチメニューを頼むと通常280円のドリングバーが110円になるんですね。しかもランチならサラダもスープもパンも付く。
うん、これはお得だ。完璧なデッキだ!
というわけで、それぞれ自分の注文したメニューで飲み始めます。僕もドリンクバーに行って、グラスに炭酸と氷を入れてきます。味のついていない炭酸があるのは、うれしいですね。これでグラッパを割って……。
……うん、グラッパって、ちょっとクセがあるんですよね。
独特の香りと苦味というか……。これはこれで悪くはないけれど、うーん、ちょっと飽きるかも。あと、食後酒だけあって、料理と合わせるには、少々アクの強い味かも……。いや、悪くはないんですけどね。みんなが飲んでるワインがうらやましい(笑)。
トニックウォーターとか烏龍茶とかでも割ってみたんですが、味がぶつかっちゃって、あまりよろしくない。ああ、ここに焼酎かウォッカがあればなぁ……。イタリアンレストランなんだから、それは無理な希望ですよね。でも、250ミリリットルのデカンタでワインを頼んで、炭酸で割っていくという手もあったかな、なんてことも考えました。
それはそれとして、サラダをパンに挟むとおつまみ力がグーンとアップ。パンはオリーブオイルをつけても美味しいし、もっとたくさん食べたいくらいだな。いくらでも欲しいな、パン。もしくはフォッカチオ。
……おじさんたち、楽しそうですよね。
さて、お会計です。4人で合計3,930円。M君が17円オーバーしたけれど(しつこい)、無事4,000円以内に収まりました。
飲兵衛ばかりのメンバーなので、正直、もうちょっと飲みたいな、という酔い具合なのでベロベロとまでは行きませんでしたが、1,000円で十分に楽しめたことは間違いありませんし、実際はマグナムボトルをみんなで頼むなどすれば、もっと安くたくさんワインが飲めるわけです。
でも、こういうゲーム性をもたせた飲み会というのも、たまには楽しいんですよね。実は、以前にも「某コンビニで1人1,000円の予算で買ってくる飲み会」というのをやって、大変楽しかったんですよね。
さて、次はどんな1,000円飲み会をやろうかな。
お店情報
サイゼリヤ 日本橋浜町店
住所:東京都中央区日本橋浜町3-21-1 日本橋浜町Fタワープラザ2F
電話番号:03-5651-1251
営業時間:11:00~0:00、夜10時以降入店可、日曜日営業
ウェブサイト:サイゼリヤ