最近、テレビやネットなどのメディアでもよく取り上げられる「社食」。
さまざまな趣向を凝らす企業が多い中、今回私がご紹介するのはコチラ!
なんと「農林水産省の中にある社食」です。
だって、「日本の食」をつかさどっているともいえる機関の社食ですよ?
どう考えたって期待が外れるわけがないじゃないですか!!
……という目論見のもと霞が関まで足を運んだわけですが……予想どおり、いや、予想以上にクオリティが高すぎた!
11時半。いよいよお店がオープン!
目的地となるお店は、霞ヶ関駅A5出口を出た少し先にある中央合同庁舎第1号館、「北別館」と呼ばれる場所にあります。
農林水産省内で、入館許可の必要なしに誰でも利用できる食堂は全部で3つ。
良質な国産米を使ったおむすびを提供するテイクアウト専用の「おむすび 権米衛」、そば、うどんがメインの「日豊庵」、そして今回取材をした「手しごとや 咲くら」です。
農水省の職員の方たち、昼食の選択肢が豊富でうらやましい!
「手しごとや 咲くら」は11時30分からですが、この日はオープン前から並ぶお客さんも。
誰でも入れるので、近隣の省庁で働く人たちのほか、一般の人たちも多数訪れるそう。
オープン前の店内を撮影させていただきました。
中はこんなに広々としているのですが、これがお昼時になると座れない人も出るほどいっぱいになるからビックリです。
さあ、11時半になりお店がオープンしたので、私も列に並びましょう。
列は途中でふたつに分かれるように。
いわゆる定食的なセットメニューの列と、自分で好きなメニューを取っていくカフェテリア式の列の2種類があり、自分が注文する列のほうに並びます。
カレー? 丼ぶり? 種類豊富なセットメニュー
セットメニューのほうには、「カレーセット」「丼ぶりセット」「御膳セット」の3種類のカテゴリーがあります。
「カレーセット」には「イワシ鯨(クジラ)竜田カレー」や「『旬』季節野菜カレー」など、
「丼ぶりセット」には「まぐろ漬け丼」や「野菜天丼」など、「御膳セット」には「イワシ鯨ステーキ膳」や「チキンステーキ鉄板焼御膳」「シチューバーグ膳」などが用意されているという充実ぶり!
私は今回、「イワシ鯨ステーキ膳」と「マグロカルビ焼き」という2種類の御膳セットをオーダーすることにしました。
それがこちら!
「イワシ鯨ステーキ膳」(1,000円)と……
「マグロカルビ焼き」(1,000円)!
メインのメニューに副菜、お味噌汁、ご飯とボリュームたっぷりです!
果たして、初めて食べるイワシ鯨の味は……?
実は、鯨料理は「手しごとや 咲くら」の看板メニュー。特に「イワシ鯨ステーキ膳」は「咲くら名物」とうたわれているほど。
私たちの親世代は給食にもよく出てきたという鯨ですが、最近では日常的に口にすることはほとんどありません。
それだけに、ここで食べることができるのはなかなか貴重。
なにしろ私自身、鯨を食べるのは生まれて初めてです。
こちらで使われているイワシ鯨は日本の捕鯨船が鯨の調査用に北大西洋で捕獲したもので、その調査が済んだものを食用として使っているのだとか。
見た目はローストビーフのようですが、実際に味も魚というよりも肉に近い感じがしました。馬肉とか鹿肉とか、そうした野性味あふれる味わいが好きな人には好まれそう。
少しクセのある独特の味かもしれません。
続いては「マグロカルビ焼き」。
しょう油をベースにした焼肉のタレに似た味つけで、こちらもなんだかお肉を食べているよう!
メバチマグロのお腹の部分を使っており、中がレアな焼き加減になっているのがたまりません。
どちらもちょっと濃いめの味つけになっていて、白いご飯との相性バツグン!
箸が進む進む……。
カフェテリアメニューの品数もスゴい!
いっぽうのカフェテリアの料理もとってもバラエティ豊かで品数豊富!
野菜類だけでも「ワカメサラダ」に「豆サラダ」「オクラ胡麻和え」「菜の花の辛子和え」など。
メインのメニューは「アジフライ」「肉じゃが」「鯖(サバ)の味噌煮」といった定番モノから「黒ムツポワレ」「鯨の竜田揚げ」「鯵(アジ)の香草焼き」といったちょっとレアなものまで。
これらをその日の気分や体調によってアラカルトで選べるのが、カフェテリアのほうの魅力!
もちろん、ご飯もしくは麦飯(それぞれ大、中、小)やお味噌汁もつけることができ、定食のようにすることも可能です。
なんなら納豆や梅干し、卵もあるよ! 何この至れり尽くせりっぷりは……!!
すべてのメニューに「食料自給率」の表示がされている!
さて、これまでに料理やメニューの写真も載せてきましたが、皆さん何か気づくことはありましたか? 他の食堂やレストランではまず、というか絶対にないであろうあることを……。
それは、「すべてのメニューに『食料自給率』の表示がされている」という点。
よーく見てみると、メニューの名前、値段、カロリーとともに「自給率○%」の文字が……!
これはなんといっても農林水産省だからこそ。
それぞれのメニューがどれだけ国産のものでまかなわれているか知ることができるんです。
たとえば「鯖の塩焼き」は自給率61%と半分以上ですが……。
「海老フライ」だと自給率29%とかなり低い。
「揚げ出汁豆腐」なんて、ザ・和食なだけに自給率も高いイメージを勝手に抱いてしまいますが、31%と低い。
和食だから自給率も高いというわけではないんですね。
こんなふうに、メニューを選びながら、料理を食べながら、自然と「食料自給率」について意識できるようになっているところが農林水産省ならではです。
「食料自給率」の向上というのは農林水産省の大きな任務のひとつであると思いますが、あらためて考えてみると、「食料自給率」ってどうすれば上げることができるのでしょうか?
私たちにもできることってあるんでしょうか。
せっかくなので、この機会に「手しごとや 咲くら」で総料理長を務める伊藤誉志さんにうかがってみることに!
「食料自給率」を上げるために私たちができること
まず、現在「手しごとや 咲くら」ではどのような食材が使われているのでしょうか?
基本的には国産のものをなるべく使うように。それと東日本大震災や熊本地震以降は被災地支援ということで、福島や熊本、茨城の食材も積極的に取り入れてるようにしています。
お店では「日本の資源をいかに活かし、旬のものを提供するか」を第一にメニュー作りや料理の提供をしているそうですが、これは「食料自給率」を上げるうえでとても大事なことだと伊藤さんは話します。
日本の「食料自給率」って、昔はほぼ100%だったわけですよね。それが現在では39%程度になってしまっているんです。これは時代や食生活の変化のためです。昔の人は、野菜でも魚でもそのときどきの旬のものを食べてまかなってきた。だから私たちも旬をよく知り、旬のものを食べるだけで「食料自給率」を上げることにひと役買うことはできるんです。
そう言われてみると、今の旬の食べ物が何か、皆さんはすぐに答えられるでしょうか?
取材をしたのは7月下旬。「夏野菜のトマト!」と返した私ですが、実はトマトが本当においしい時期は梅雨までだそう。
また、カツオは初夏が旬のイメージですが、いちばんおいしいのは8月からだといいます。
「とにかく旬のものを食べて!」と何度も繰り返していた伊藤さん。
有機にこだわらなくていい、近所のスーパーで十分なので、今何が旬かを知り、それをめいっぱい使って日々の料理を楽しむこと。
それが「食料自給率」を上げるために私たちが日常的にできることのようです。
もし、何が旬かわからなかったら。
もしくは、とにかく旬のものが食べたくなったら。
農林水産省の社食「手しごとや 咲くら」へ行くのもひとつの手。
だって、ここにはいつ来ても、そのときどきの旬の食材を使った料理がそろっているから。
ここまで「食料自給率」や国産にこだわった社食、他では絶対にお目にかかれないはずです。
お店情報
手しごとや 咲くら
住所:東京都千代田区霞が関1-2-1 農林水産省 北別館 1F
電話番号:03-3502-8111(代表)
営業時間:11:30~14:30
定休日:土曜日・日曜日・祝日、及び閉庁日(12月29日~1月3日)
※この記事は2017年8月の情報です。
※金額はすべて消費税込みです。