【地主恵亮】天ぷらにしても溶けないアイスは? 本格天ぷら屋の大将と実験してみた

天ぷらといえば、海老、穴子、なす、かき揚げなどが人気でしょうか。鱚、大葉も美味しいですね。アイスクリームはどうですか。ええ、アイスクリーム天です。どのアイスの天ぷらが一番美味しいか、知りたくないですか? せっかくなのでプロの技術でいただきたくて、千葉・浦安「天悟」さんにお願いしました。

エリア浦安 (千葉)

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食レポ。それは奥深く、終わりなく、果てしない。そんな食レポの道を究めるため、地主恵亮は今日も往く。「食」を求めて彷徨い歩く。そして、散る!……のか!?

 

地主恵亮の「食レポに散る!」第3回
天ぷらにしても溶けないアイスは?  本格天ぷら屋の大将と実験してみた

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秋になったが、日中はまだ日差しが鋭い。そんな日に食べたいのが、アイスだ。冷たく甘いその味わいは我々に幸せをもたらす。

そんなアイスを使った料理がある。パフェやサンデーはもちろん、アイスは「天ぷら」にもなっているのだ。そこで今回は、どのアイスがいちばん天ぷらに適しているのか?を調べたいと思う。 

 

魅惑のアイス天ぷら

そもそも、天ぷらにしてアイスは溶けないの?という当然の疑問はあるけれど、世の中には「アイスの天ぷら」というものが存在しているのだ。

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▲ということで、アイスをいろいろ買って、

 

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▲天ぷら屋さんにきました!

 

どんなアイスでもできるのか?

スーパーでアイスを買い、千葉県浦安市にある天ぷら屋「天悟」に訪れた。4年前にオープンしたこちらのお店は、天ぷら料理の老舗「天一」で20年修行をしたご主人のお店だ。本来は天ぷらアイスなんて作ることのない、マジなお店だ。

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▲こちらがご主人です!

 

そんなお店なので、その天ぷらはさぞかしいい値段がするはず…、と思いきや、天悟さんのメニューの値段は高くないのだ。「安価で質のいい天ぷらを若い世代にも食べてほしい」という思いから、とてもリーズナブルな価格で本格的な天ぷらを提供しているのだ。天ぷらの種類も豊富で、魚介の一部はご主人が自ら釣ってきているとのこと。アイスの天ぷらを食べた後、普通の天ぷらも食べるのだけれど、レベルが違った気がした。とんでもなく美味しいのだ。

 

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▲ただ、まずはアイスの天ぷらです!

 

今までご主人は「天ぷらアイス」を作ったことがないそうだ。一流のプロが作ると天ぷらアイスはどんな味になるのだろうか。期待で胸が張り裂けそうだ。私のこの熱でアイスも溶けるのではないだろうか。

 

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▲衣をつけて、

 

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▲揚げるも、

 

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▲溶けた!

 

さすがに私の熱では溶けなかったけれど、油の温度でアイスは溶けた。よく考えると当たり前のことだ。アイスは熱いと溶けるのだ。ご主人は「溶けるね、なんでだろ」と言っていたが、たぶん熱いからだと思う。

 

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▲次のアイスも、

 

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▲やはり溶けて、油と衣が浮いている

 

いくつかのバニラアイスを持って行ったが、ほぼ全てが溶けて、天ぷらとして成立しないものになってしまった。低温で15秒ほどしか油の中にいないのに、溶けてしまうのだ。予想以上に、「アイスの天ぷら」は実は難しいのかもしれない。

 

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▲6種類くらい試したけれど、軒並み溶けた

 

「レディーボーデン」という希望

溶けたアイスには共通点があった。アイスにも種類いろいろあって、乳成分の量によって、「アイスクリーム」、「アイスミルク」、「ラクトアイス」の3つに分けられる。天ぷらにしようとして、先に溶けたアイスは、「ラクトアイス」と「アイスミルク」だった。

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▲そこでアイスクリームです!

 

レディーボーデンというアイスがある。これはアイスクリームだ。これだとアイスの天ぷらができたのだ。ご主人も答えは「やっぱりレディーボーデンだな」、と言っていた。

 

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▲レディーボーデンを天ぷらにする!

 

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▲完成!

 

これまでのアイスはあんなに溶けていたのに、レディーボーデンは一切溶けなかった! ラクトアイスなどと比べると少し高いが、アイスクリームの偉大さを理解できた。アイスの天ぷらには、レディーボーデンなのだ。

 

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▲美味しい!

 

衣のモチモチとした食感と熱さ、その後にやってくるアイスの冷たさが、絶妙なチームワークを発揮している。ちなみにポイントは、低温で揚げること。高温だと衣が破裂するからである。

 

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▲これには、ご主人も唸る!

 

ちなみにレディーボーデンで販売されているいろいろな味で試してみたけど、どれもしっかりとした天ぷらになった。なかでも、一番美味しかったのはバニラだ。ちなみに同じアイスクリームである「ハーゲンダッツ」はなぜか溶けてできなかった。やはり、天ぷらには「レディーボーデン」なのだ。

 

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▲ご主人、これはどうですか?

 

僕らの味方「あずきバー」

固いアイスの代表と言えば「あずきバー」である。アイスの種類としては「氷菓」となる。カキ氷なども氷菓なのだけれど、ご主人に事前に「氷系は溶けが早いから絶対無理」と言われていた。でも、僕らの味方あずきバーならいけるのではないだろうか。

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▲衣をつけられ、

 

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▲揚げられるあずきバー

 

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▲完成!

 

結論として、あずきバーは溶けなかった。全く溶けなかった。ご主人も驚いていた。あずきバーはもはや冷凍庫に入れなくてもいいのではないだろうか。冷たいけれど、別の食べ物なのではないだろうか。高温の油に溶けないって凄すぎる。

 

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▲まだ固い!

 

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▲美味しい!

 

あずきバーの天ぷらは、味も素晴らしかった。おしるこを天ぷらにした感じだ。衣の熱さの後にあずきバーの冷たさと甘さという組み合わせが、とてもよい。結婚してもいいくらいにお似合いなのだ。

 

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▲ご主人も「美味しい」と!

 

結果が出ました!

これで結果が出た。アイスの天ぷらを作るときは、「レディーボーデン」か「あずきバー」なのである。これなら間違いなく天ぷらのアイスができるのだ。レディーボーデンとあずきバーに拍手を送りたい。

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▲まとめです!

 

しかし、一番美味しい天ぷらは残念ながら、アイスの天ぷらではない。普通の天ぷらである。アイスの天ぷらも確かに美味しかったけれど、天悟さんがいつもお店で出している天ぷらを食べて驚いた。

 

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▲普段もこんなに種類が多い!

 

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▲リーズナブルな定食もある!

 

花定食というのがあって、こちらは1,200円と安い。まとめて出てくるのではなく、カウンターで一品ずつ揚げて出してくれる。周りのカリッとした食感に中の食材の柔らかさ、なんだろう、いままで私が食べてきた料理とはレベルが数段違う気がする。

 

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▲美味しいやつ!

 

天ぷらの油には地域性があり、関西では菜種油などが多いが、東京ではごま油が多い。また天ぷらは揚げ物だけれど、衣は揚げるが、中は蒸すという感じだそうだ。この技術が難しい。

 

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▲何を食べても美味しいやつ!

 

エビやナスなど天ぷらとして定番のものはもちろん、梨や和菓子なども天ぷらにすると美味しいそうだ。果物を天ぷらにすると美味しいとは知らなかった。もちろんなんでも美味しいわけではないけれど、美味しい果物があるのだ。

 

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▲これは和菓子の天ぷら!

 

ということで、アイスの天ぷらも美味しかったけれど、定番の天ぷらはもっと美味しいということがわかった。素晴らしき一日だった。胃が喜んでいる。

いままでチェーン展開している安いお店の唐揚げとかを食べて「美味しい」と言っていた自分が可哀想になった。ここの天ぷらは、天ぷらとしてはもちろん、料理としてレベルが違う。

こんなに褒めると最近のネットではステマとか言われそうだけど、違うの。本当に美味しくて驚いたのだ。

 

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▲幸せを胸に天悟を去りました!

 

お店情報

天悟

住所:千葉県 浦安市北栄1丁目2-37-102伝次郎ビル
電話番号:047-314-5190
営業時間:[昼] 12:00~(ラスト13:30)14:00で閉店/土・日・祝(ラスト14:30)15:00で閉店、[夜] 17:00~(入店ラスト20:30)22:00で閉店 ※なお、種がなくなり次第終了。※変更もあり。
定休日:火曜日

※本記事の情報は取材時点のものであり、情報の正確性を保証するものではございません。最新情報はお電話等で直接取材先へご確認ください。

 

書いた人:地主恵亮

地主恵亮

1985年福岡生まれ。基本的には運だけで生きているが取材日はだいたい雨になる。2014年より東京農業大学非常勤講師。著書に「妄想彼女」(鉄人社)、「昔のグルメガイドで東京おのぼり観光」(アスペクト)、「インスタントリア充」(扶桑社)がある。

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