人間椅子・和嶋慎治のソロキャンプ。ときどき、メシ

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キャンプブーム到来!

ここ数年、キャンプが空前のブームとなっています。日本オートキャンプ協会の調べによると、泊りがけでキャンプに行く人は5年連続で増加。

 

また、キャンプを楽しむ女子高校生のゆるやかな日常を描いた漫画&アニメ『ゆるキャン△』、バラエティー番組『アメトーーク!』の「キャンプたのしい芸人」といった作品や番組を見て、キャンプに興味を持ち始めたという人も少なくないでしょう。

 

一人でのキャンプには興味があるけれど、なかなか最初の一歩を踏み出せないという人も多いはず。そこで今回、とあるソロキャンプの達人に同行して、一人で行うキャンプの楽しみ方や魅力を探ってみました。

 

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その達人とは、現在再ブレイク中のベテランハードロックバンド、人間椅子の和嶋慎治さん(ギター、ボーカル)。89年『イカす! バンド天国』での華々しいデビューから、長い不遇の時代を経て、昨年リリースした20枚目のアルバム『異次元からの咆哮』は自身最高位となるオリコンチャート18位を記録。近年はももいろクローバーZとの共演や、上坂すみれへの楽曲提供など、活躍の場を一気に広げています。

 

人間椅子「命売ります」MUSIC VIDEO (Short ver.)

 

(『命売ります』……!)和嶋さんがソロキャンプを始めたのは、青森弘前市に住んでいた高校生の頃。自転車で北海道まで行ったのが初めての一人キャンプ体験で、それから現在に至るまで30年近くの間、定期的に一人キャンプに出かけているのだといいます。

 

今では、音楽雑誌『ヘドバン』にてアウトドアをテーマにした連載コラム「孤独が道連れ 野営一人旅」を担当するほど。

 

「当時、一人でキャンプに行こうと思い立ったのは、独立心の表れだったんでしょうね。今でもキャンプに行く理由は一人になりたいから。」と和嶋さんは話してくれました。

 

そんな和嶋さんにオススメされてやって来たのは、山梨県東部に位置する道志村のキャンプ場、「ネイチャーランド オム」。新宿から車で90分という好アクセスながら、自然豊かな山の暮らしが楽しめるキャンプ場です。

 

ソロキャンプの達人・和嶋さんのキャンプグッズへのこだわり

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現地に一足早く到着して和嶋さんを待っていると、現れたのは一台のバイク。なんと、和嶋さんはソロキャンプに行く際、車を使わず愛車のバイクで移動するのだとか。

 

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▲バイク好きとしても知られる和嶋さん

 

バイク愛も深く、今乗っているのは中国から逆輸入したスズキのGN125H。昔ながらの丸みを帯びたデザインと、和嶋さんの好きな色だという赤いカラーリングがお気に入りだといいます。バイクの方が冒険に出かける感覚が強く、よりキャンプ感が増すのだそう。

 

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愛車のタンデムシートに積んだキャンプ用品は、想像をはるかに超えたコンパクトさ。テント、インナーマット、寝袋、折り畳み椅子、ランタン、ヘッドライト、鍋×2、小型コンロ、一人用の食材&飲み物と、必要最小限の持ち物が無駄なく詰め込まれていました。

 

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▲本当にコンパクト

 

f:id:Meshi2_IB:20181105214014p:plain和嶋さんテントは立てやすさを重視して選んでいます。以前、4万円くらいする良いテントを使っていたこともあるんですが、高級品はオシャレで通気性が良いものの、設営するのにすごい時間がかかってしまって……。今使っているものは値段こそ安いですが、設営がとても簡単。逆に、防寒用のインナーマットや寝袋にはお金をかけて、良いものを使っています。山の夜は冷え込みが激しいですから。また、ソロキャンプで一番の必需品は頭に着けるヘッドライトですね。これがあるのとないのとでは、日が暮れた後の作業のしやすさが全然違ってきます。

 

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▲うれしそうにヘッドライトを紹介する和嶋さん

 

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まずはキャンプの基本、テントの設営からスタート。

 

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まずはテントをひろげ

 

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棒を通し

 

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ひっぱれば……

 

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はい完成。ここまで10分。本当に早い。

 

ソロキャンプの醍醐味(だいごみ)、たき火のコツとは?

テントを組み立て一服した後、早速たき火に取りかかります。

 

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▲渋すぎる……

 

まずは、たき火台の上にまきを組み上げ、新聞紙と着火剤を使って点火。

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しかし、キャンプの達人である和嶋さんでも、毎回すんなりと火が安定するわけではありません。火の位置を変えたりまきを組み直したりと、試行錯誤が続きます。慣れた手付きで作業をする和嶋さんに、たき火のコツを聞いてみました。

 

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f:id:Meshi2_IB:20181105214014p:plain和嶋さんあきらめない気持ち。

 

強い気持ち大事。

 

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大切なのは「あきらめないこと」。和嶋さんは真摯(しんし)に火と向かい合います。すると次第にまきのほうに火が……。そして、

 

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守りたい、この笑顔。

 

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▲めっちゃ燃えだした! すごい!

 

f:id:Meshi2_IB:20181105214014p:plain和嶋さん火を起こして、鎮火しないように見ていると、無心になれるんです。キャンプをしている中でも、火を見ている時間が一番好きな時間かもしれないですね。それに、トイレや炊事などでテントから少し離れても、テントのそばにたき火が見えると、まるで我が家に戻ってきたような安心感がある。落ち着いた時間を過ごせるんです。

 

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▲火を見つめる和嶋さん。キャンプではネルシャツをよく着ているとのこと。もちろん好きな赤のネルシャツです

 

大自然の中で食す男メシのうまさよ

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たき火も安定してきたので、いよいよメシ作りの時間です。用意された食材は、お米、キノコ各種(マイタケ、シメジ、シイタケ、ナメコ)、生野菜(エシャレット、キュウリ、ミョウガ)、サバ缶。食材はなるべくその土地のものを食べたいとの理由で、キャンプ場に来る道中やテント設営後に近くの道の駅などに買い出しに行くことが多いそう。

 

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まず炊飯専用の鍋を使ってお米を炊きます。気圧の関係か、山ではお米の炊きあがりが普段より固くなることが多いため、水を多めにするのがコツだとか。

 

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f:id:Meshi2_IB:20181105214014p:plain和嶋さんソロキャンプでのメシはボンベ一個でいかに効率よく料理するかが大切なんです。

 

ご飯が炊けるまでは、用意した生野菜(エシャレット、キュウリ、ミョウガ)に味噌をつけてかじりながら、お酒を飲んで過ごします。自然の中で食べるうまさは格別です。

 

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生野菜としてはなじみの薄いエシャレットとは、若採りのラッキョウのこと。実際に生で食べてみると、ほどよい辛みが味噌とマッチして、おつまみにピッタリの美味でした。

 

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▲フタがカタカタ動かなくなったら火をとめ、10分ほど蒸らします

 

お米を蒸らしている間に、各種キノコを使ったキノコ汁に取りかかります。キノコは包丁がいらず、手で割くだけで調理できるため、なるべく荷物を減らしたい一人キャンプにはうってつけの食材。

 

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キノコは手でほぐすだけ

 

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どんどんほぐし

 

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一服しながら

 

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少し水を入れ、沸騰したら

 

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味噌とお酒を入れて

 

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味見

 

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お好みで塩と日本酒をさらに足して完成!

 

f:id:Meshi2_IB:20181105214014p:plain和嶋さんキノコから出る水分とダシで簡単においしく出来るオススメのメニューです。作り方も簡単で、キノコを適当な大きさに割いて鍋に入れ、水、日本酒、味噌、塩少々を加えて少し煮詰めるだけ。これでキノコ汁の完成です。

 

そしてご飯の蒸らしもそろそろ完了の時間ですが果たして……

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完璧。では早速出来上がった料理を並べましょう。

 

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ご飯にキノコ汁、生野菜とサバ缶。これが一人キャンプを極めた男の究極キャンプメシです!

 

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▲キャンプメシはスプーン1本でOK

 

f:id:Meshi2_IB:20181105214014p:plain和嶋さん一人でキャンプに行くのは、人生を生きる上で何が必要か、見つめ直すため。食事も質素でいいんですよ。山の中では、凝った料理よりも素朴な料理の方がうまく感じます。山の中で山を食らう、というのが良いんですよ。

 

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サバ缶はちまちま食べず、ドバっとご飯の上にかけるのが和嶋流。サバ缶のうま味を余すことなく味わえ、これがまたうまいんです。

 

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キノコ汁も味噌と塩だけで味付けしたとは思えない深みがあり、それぞれのキノコの食感の違いも楽しめる一品。

 

なんと言ってもこのロケーション。和嶋さんもおっしゃっていましたが、ご飯が本当においしく感じます。お腹が空いたときのために、われわれ取材班がもっていったハッピーターンも2割増しでうまい。

 

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▲火の手入れもこまめに!

 

f:id:Meshi2_IB:20181105203700j:plain料理が冷めてきたら、たき火を利用して温め直すこともできます。火力がすごいので、焦げ付き注意。

 

メシが終わったところで、気になることについて聞いてみました。

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▲日が落ちてきましたが、ダブルライト装備でバッチリ

 

キャンプ恐怖話と楽曲誕生秘話

――一人でキャンプすると、どうしても夜が怖いのですが、和嶋さんは一人でキャンプをしていて怖い体験をしたことはないんですか?

 

f:id:Meshi2_IB:20181105214014p:plain和嶋さん何度かありますよ。一つ目は、獣の気配を感じたとき。一度、残飯をテントの外に置きっぱなしにしたまま寝てしまったことがあって、深夜にテントの外で動物が動き回っている音を聞いた時は怖かったですね。あとは、一度だけ霊的な体験というか、不思議な怖い体験をしたことがあります。

 

――れ、霊的な体験……。どういった体験ですか?

 

f:id:Meshi2_IB:20181105214014p:plain和嶋さんとあるキャンプ場に行ったとき、夜中の2時に暴風を感じて目が覚めたんです。それも、風がひどいだけじゃなくて、自分のテントを中心に風がぐるぐる回ってうなり声を上げているような感じで。すごく怖かったんですけど、朝になってテントの周りを見回してみると、外は荒れた様子もなく、昨夜と変わらず静かなままでした。あとから、その辺りの村は昔大きな水害があって人がたくさん死んでいると聞いて、寒気がしましたね。

 

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▲ この状況で話を聞いていることを知ってほしい

 

――……。に、人間椅子の歌詞には、そういった日本の怪奇とも関わりの深いものがたくさんありますよね。一人キャンプの体験が音楽にも影響を与えている部分はありますか?

 

f:id:Meshi2_IB:20181105214014p:plain和嶋さん多少はあるでしょうね。現実は目に見えるものだけじゃなくて、もしかしたら目に見えていない者の方が現実なのかもしれないという感覚は、一人山の中で自分と対話しているからこそ生まれたものかもしれませんし。

 

――キャンプに行った先で曲作りをしたりしないんですか?

 

f:id:Meshi2_IB:20181105214014p:plain和嶋さん昔、やったことはあります。安アパートに住んでいた時代、壁が薄いんで自分の部屋で楽器が弾けなかったんですよ。そこで房総半島でキャンプして、ギターとベースとポータブルのマルチトラックレコーダーを使って曲を作りました。『萬燈籠』というアルバムに入ってる“衛星になった男”という曲がその時に作った曲です。

 

[試聴] 人間椅子「衛星になった男」

 

――一人キャンプの魅力は何だと思いますか?

 

f:id:Meshi2_IB:20181105214014p:plain和嶋さんやはり、自分を見つめ直せるという点に尽きますね。山の中で自分と対話していると、嫌なことも楽しかったことも、いろんなことを思い出すんです。そうすると結局、悩み事の答えを知っているのは自分だけだということに気付く。自分のことは自分が一番よく分かっているんだ、ということが分かるんですね。そうして星なんかを眺めていると、たいていの小さい悩みは解消されていくんですよ。引きこもりだったりイジメだったり、つらい日常を送っている人こそ、ぜひ一人でキャンプに出掛けてみて欲しいですね。

 

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たき火を囲んでいろんな話をうかがっているうちに、すっかり日が暮れて辺りは真っ暗に。一晩泊まっていくという和嶋さんを残して、我々は一足先にキャンプ場をあとにしました。

 

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和嶋さん、ありがとうございました! おやすみなさい!

 

キャンプ場 情報

ネイチャーランド オム

住所:山梨県南都留郡道志村5964
電話番号:0554-52-2275
ウェブサイト:http://www.natureland-om.co.jp/

 

人間椅子 情報

オリジナルアルバム20枚の全楽曲がApple Music(iTunes)、Spotifyなど各配信サイトで配信中!

 

撮影:藤牧徹也

 

書いた人:青山晃大

青山晃大

1983年三重県生まれ、音楽ライター。2006年からフリーランスで活動。現在は〈ザ・サイン・マガジン・ドットコム〉〈Qetic〉〈CROSSBEAT〉〈Real Sound〉他で執筆しています。

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