東京駅から仙台駅まで、新幹線で92分もあれば着いてしまいます。早くなったなあ。
さて、改札を出てみると……
駅ビルにはいきなりこんなポスターが。
大きく印刷された「せり」の文字。
そう、野菜のセリです!
いま仙台では、セリを使った鍋が大好評なんですよ。
ちょっと街を歩けば、「セリ鍋あります」「セリしゃぶはじめました!」的な看板がたくさん。 居酒屋さんでは定番メニューにもなっています。
繁華街を歩くと、セリ鍋情報があるわあるわ。お店ごとに具材もさまざま、総称として「仙台セリ鍋」の名で親しまれているんです。
ちょっとまず、基本形をご覧ください!
ブームのさきがけともなった居酒屋「いな穂」で、実際に味わってみましょう。
セリ鍋デビューにおすすめの「いな穂」
仙台駅から200mちょいの好立地、名掛丁センター街という飲み屋街に「いな穂」はあります。仕度中の写真でスミマセン……!
壁には宮城の美酒と魚介メニューがずらり。どれもこれも引かれるけど、きょうの目当てはセリ鍋です!
「いな穂」では「せりしゃぶ」 がメニュー名。火が通りやすいセリは、サッとつゆにくぐらせていただくのが本当。煮込んだらアカン。
さあ、運ばれてきましたよー! これで一人前(1,500円・税別)。
一人前からカウンターで楽しめるのもうれしいところ。さて、写真を見てお気づきの人も多いでしょうが……
そう、仙台セリ鍋の最大の特徴は、セリが根付きであること。
この根っこから、いいダシと強い香りが出るんです。セリの魅力はなんといっても独得のほろ苦さと、香りの強さ。良質なセリは胸のすくような香りがするんですよ。
「根っこの部分はつゆに10秒から15秒、葉や茎は本当にサッとくぐらすだけで食べてください」
と、ご主人。そうしないとせっかくの香りや食感が台無しになってしまうのです。
自慢のつゆは、カツオと昆布のだしに鴨のうま味をプラス、醤油で仕上げたもの。なんとも食欲を誘う香りが漂っています。まず根っこを加えて、軽くしゃぶしゃぶしていきますよ。
食べてみれば、香りが口の中でふわーっと広がって……うまいっ! そして根と茎の付け根のところに、野菜ならではの甘味とうま味がギュッと詰まっています。ここを味わうのがセリ鍋の醍醐味(だいごみ)。
葉と茎はつゆに入れた瞬間鮮やかな緑色に。
シャキシャキとした歯ざわりが楽しく、セリ香が口と鼻いっぱいに広がって……箸が止まらない。うれしいなあ……来たかいがあったというもんです。
シメは雑炊か麺を入れて、つゆを残さずいただきますよ!
「いな穂」さん、ごちそうさまでした。ちなみにこの宮城県の酒「水鳥記」がえらいうまかったので、もし訪れてあったら試してみてくださいね。
お店情報
いな穂
住所:宮城県仙台市青葉区中央1-8-32 名掛丁センター街
電話番号:022-266-5123
営業時間:15:00~24:00
定休日:日曜日
セリ鍋はいつごろできたの?
仙台セリ鍋が広まったのはここ10年ぐらいのこと。
仙台市の南に位置する名取市のセリ農家さんと、市内の居酒屋さんが「新たな仙台名物を考えようじゃないか」と開発に取り組まれたのがきっかけだそうです。
『メシ通』でも以前お伝えしましたが、秋田県ではセリを根付きのまま鍋で楽しむんですね。
このおいしさに注目し、宮城県産のセリも根っこまで楽しんでほしい……という思いから、仙台セリ鍋が考案されたのだとか。
ちなみに、宮城県を代表する新聞「河北新報」にセリ鍋がはじめて紹介されたのが2009年2月のことだそう。そして震災後に芸人のサンドウッチマン(言うまでもなく二人は宮城県育ち)がテレビでセリ鍋を紹介したことから、一気に知名度が上がったよう。
次第にセリ鍋を出す飲食店も増え、アレンジバージョンもたくさん生まれ、今に至るというわけです。
仙台市内では、コンビニでもセリ鍋が!
※ローソンの「せり鍋」は東北エリア限定商品。2018年1月8日までは販売休止期間で1月9日より再販売
現在、仙台セリ鍋は本当に百花繚乱(りょうらん)。
宮城名物の牛タンやカキと組み合わせて出すお店あり、ブリやハマグリ、鶏肉、豚肉と一緒の鍋にするところもあれば、写真のようにちゃんこスタイルのお店まで。スーパーなどでは「セリ鍋用つゆ」まで販売されています。
ブームも加熱してきており、現在では県産の根付きセリ供給が追いつかない、という状況もあるよう。うーむ。もともと県産振興が目的なのだから、うまいことバランス取ってほしいものですな。
さて、そんなセリ鍋をご家庭でも楽しむ方法、ちょっと考えてみましたよ。
家で楽しむ仙台“風”セリ鍋
<材料:1~2人前>
- セリ 120g
- めんつゆ(カツオと昆布だしベースのもの)600ml
- 鶏肉(手に入れば鴨肉を)50g
- 酒 大さじ1
鍋つゆに酒を入れて一度沸かし、鶏肉を入れて5分ほど中火で煮ておきます。これは鶏からうま味を引き出すための加熱。鶏肉は鍋用の骨付きのものがおすすめ。もし手に入れば、鴨肉でやるとさらにおいしくなります。
セリはたっぷり長い根のついた宮城産、または秋田産のものが手に入ればベストですが、やっぱり全国的にはなかなか手に入りませんよね。
一般的に売られているセリは写真ぐらいの長さの根がついています。これでも香りや味は楽しめます。流水ですすぎつつ、たわしや硬めの歯ブラシなどで洗ってください。
洗い終えたら水気を切って、食べやすい大きさに切りましょう。温めたつゆにしゃぶしゃぶして、ご賞味あれ。
白菜や豆腐を加えてもおいしいですよ。個人的にシメのおすすめはそば。セリそばにすると絶品です。
もしよければ、ぜひぜひ冬の仙台にも足をのばしてみてください。3月ぐらいまでがセリ鍋のシーズンです。カキをはじめ海産物もうまいですよー。
写真は仙台でおすすめの飲み屋街、文化横丁。いいお店がいろいろあるんですが、そのレポートはまたの機会に。
今回は仙台セリ鍋についてレポートいたしました!
※この記事は2017年12月の情報です。
※金額はすべて税別です。