具ナシのインスタントラーメン、なにを加えると栄養アップする?【誰でもできるコンビニ食材&冷凍野菜活用術】

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「料理に時間はかけられない」
「でも、栄養は心配……」

というかた、とても多いですね。現代人、本当に忙しくて、疲れている人が多い。帰宅したら1分でも長く休んでいたい、家事の手間は最小限にしたい ── そう願う人のなんと多いことか。

けれど、やっぱり腹が減っては戦は出来ぬ。食べなければ活力もわきません。
手軽で簡単、かつ栄養バランスをよくするシリーズ第3弾。今回はインスタントラーメンで考えてみたいと思います。

 

教える人:監物南美(けんもつなみ)

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女子栄養大学の月刊誌『栄養と料理』前編集長。現在は編集委員。「どうしたら栄養情報をもっと面白く読んでもらえるか?」に取り組みつづけて早20年 。『食生活ジャーナリストの会』幹事。

 

ケンモツさん、今回はインスタントラーメンの栄養アップ術、よろしくお願いします。

 

監物:インスタントラーメンって、一般的にはちょっと“不健康”なイメージがあるかもしれませんね。でも、やっぱり使い方次第。

何よりも、ふだん「料理しない」または「料理はできない」という人でも「インスタントラーメンなら作れる」という人は多いのでは? 自炊に取り組む上で、おすすめの素材だと思います。

 

なるほど。たとえば以前に教えていただいた「冷凍野菜のちょい足しテク」って、インスタントラーメンにも応用できますか?
あのとき「冷凍野菜をはじめて使ったが、手軽で楽!」「冷凍野菜で栄養が取れると思っていなかった」と、かなり反響があったんです。

 

監物:やはり冷凍野菜は、日ごろ自炊されない方の強い味方ですね。

  • 買い置きができる
  • 切りわけたりせずに、すぐ使える

この2点がやっぱり便利。ただ冷凍青菜はフレッシュなものより食感が劣る点は否めません。おひたしなどにするとべチャッとした感じや、筋っぽさが気になるんです。

でもラーメンのようにコクのあるスープを含ませる場合はおいしくいただけます

 

それでは、インスタントラーメンの栄養バランス術をご紹介します。まずはコンビニでも入手しやすい、緑の冷凍野菜から加えてみましょう。

 

【冷凍野菜】ホウレン草

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凍ったまま鍋に投入OK。
栄養的には、ビタミンが豊富(βカロテン、ビタミンC、K、葉酸)で、その他のビタミンB群や、カリウム、カルシウム、鉄、マンガン、銅などのミネラルも適度に含み、緑黄色野菜の中でも抜群の栄養価です。

鉄分も多いので、鉄が不足しがちな女性にもおすすめ。

ホウレン草の旬は冬。夏のものより、冬のほうが栄養価が高いんです。ビタミンCで見るとその差は約3倍。冷凍野菜は旬に収穫されるケースが多いとのことなので、栄養的にもお得です。

 

【冷凍野菜】ブロッコリー

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凍ったままスープに投入OK。
ブロッコリーも冷凍すると食感がやや悪くなりますが、うま味やこくのあるスープを含ませるとおいしくいただけます。パスタに使う場合はつぶしてソースに絡めるとおいしい。ビタミンK、B1、B2、C、葉酸、食物繊維が豊富です。

 

冷凍野菜を加える量はどのくらい?

ホウレン草とブロッコリーそれぞれ、どのくらいの量を加えたらいいんでしょうか?

監物:意外かもしれませんが、どのくらいでもいいんです。

 

えっ!?

 

監物:野菜ってよく「1日350g取ろう」といわれますが、かならずしも野菜350g取らなくても栄養は取れます。

 

厳格にやらなくてもいい、ということですか?

 

監物:義務的になってもおいしく食べられませんし、まずは「このくらいの量なら足せるな」と思うところからはじめていただければ、と思います。
でも、やっぱり参考程度の分量は必要ですよね。今回はキリ良く100gでチャレンジしてみましょう。ハクオーさん、やってみてください。

 

ハイ、遅ればせながら聞き手でライターの白央篤司、やってみます。100gを目分量でやるコツってあります?

 

監物:野菜の種類にもよりますが、生野菜なら両手にいっぱいで、加熱野菜なら片手にいっぱいで100g超えるぐらい、とざっくり考えてください。

 

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ペンを隣に置いてみましたが、先の2種ミックス100gでこのぐらい。1種で100gでもやってみたんですが、ちょっと飽きますね。なので2種混ぜて使ってみました。

 

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ちなみにこれ、冷凍野菜の自作ミックス。

ホウレン草、ブロッコリー、インゲン、アスパラを混ぜて、ジッパー付き保存袋で冷凍保存。ラーメン、レトルトスープ、カレーなどを食べるとき、1つかみぐらいを加えてます。

しかしアスパラの冷食、昔食べたときより食感が良くなっていて驚きました。いろいろ進歩してますねえ。

 

監物:アスパラは葉物野菜よりもラーメンスープの塩分を含みにくいので、塩分カットが見込めますよ。

 

コンビニやスーパーで売っている温泉卵

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さてケンモツさん、インスタントラーメンの具材で、他におすすめはありますか?

 

監物:卵はいろいろな栄養素を満遍なく含む食材です。殻を割るだけで使える、温泉卵やゆで卵はいかがでしょう。
ただ「インスタントラーメン1食で栄養バランスよく」となると、もう少したんぱく質をしっかり取りたいところ。

 

たんぱく質は肉、魚、大豆食品などから主に取れるんですよね。

 

監物:はい。ラーメンとくればチャーシューが定番ですが、より低脂肪のサラダチキンを使うのはどうでしょうか 。

 

コンビニのサラダチキン

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サラダチキンはコンビニでも買えるので、読者さんもありがたいと思います。こんなふうに切って、残りは冷凍できるのもうれしい。

 

さあ、それぞれを載せてみましょう。

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野菜もりもりです。冷凍野菜は味つけを一切してないんですが、ラーメンスープの味だけで食べられちゃうものですね。

監物:まさにそこ! そ・こ・が・冷凍野菜×ラーメンのいいところなんです。

 

どういうことですか?

 

監物:たとえばラーメンにチャーシューとネギをのせていただくとして、「ちょっと野菜が足りないな」となってホウレン草を足すとします。この場合、おひたしであってもソテーであっても、調理して味をつけることになりますね。

 

はい、つまり……

 

監物:結果的に、塩分の取り過ぎにつながるんです。現在、日本人の健康問題は全体で見ると、野菜不足よりも塩分過多のほうが深刻なんですよ。
減塩を心がけることで、高血圧、そして脳卒中の予防効果が期待できます。誰しも血圧って年齢と共に上がるものなんです。減塩することでそれを抑えることができます。

 

そうか、以前の『メシ通』の記事でもケンモツさん、「若いうちから減塩を心がけると、中高年になってから差が付く」って言われてましたね。

 

監物:はい。今回ご紹介したような冷凍野菜とインスタントラーメンの組み合わせですと、塩分をあまり増やさずに野菜の栄養素を補えます。もちろん、スープをどのくらい取るかにもよりますけど、いいとこどりが実践しやすいんです。

あ、1点細かいことですが補足を。

 

なんでしょう?

 

監物:冷凍の万能ねぎだと事情が違っちゃいます。ラーメンにも合うし少量でも栄養価が高いのですが、万能ねぎを食べようとすることで、スープを結果的により多く飲んでしまうんですよね。なので塩分を抑えつつ栄養アップを考えると、「ネギ足し」よりも青菜やブロッコリーがおすすめというわけです。

 

なるほど。

 

【冷凍】ミックス野菜

さて、ほかにインスタントラーメンの栄養アップ術、どんなやり方があるでしょう?

 

監物:もっとも手軽なところだと、冷凍の野菜ミックスは便利ですよね。

 

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ということで今回、いろいろ試してみましたよ。ラーメンのトッピングにいいなあ、と思ったのがこちら。

マルハニチロ「すぐに使える肉入りカット野菜」、私はファミリーマートで購入しました。豚肉まで入っているのがうれしい。内容量は120gで、100gあたりの食塩相当量が0.3g。

 

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インスタントラーメン1食がしっかり満足感のあるものに。プラス温泉卵でさらに充足感! 

栄養的にはいかがでしょう。

 

監物:キャベツ、ニンジン、ピーマン、玉ねぎなどの野菜に加えて、きくらげも入っているのが良いですね。

 

ちなみにセブンイレブンにも「肉入りカット野菜」はありました。全量(豚肉とキャベツ、玉ねぎ、にんじん、青ピーマン)でトータル130g、塩分が0.04g。こちらもラーメンプラスに便利。

監物:ラーメンに限らず、たとえばカップ焼きそばなんかにも、こういった商品を加えて具だくさんにするといいですよ。加工食品は万人受けするように味がしっかりついているものが多いので、そこに野菜を加えるだけで、手軽に栄養バランスのよい食事が楽しめます。 

 

また冷凍食品の話になると必ず「中国産は不安」という意見もいただきます。この点について監物さんはどうお考えですか?

 

監物:食品の安全性は、国によるというよりも、その管理体制によります。現在日本に輸入されている冷凍野菜の多くは、日本の企業が中国で協力を得て管理しているものが多いので、少なくとも「中国産だから不安」ということはありません。上記の商品のメーカーをはじめ企業はその体制について情報公開しています 。

商品をお届けするまで | 安全安心 | マルハニチログループについて|マルハニチロ

心配な方は、日本冷凍食品協会の「認定証マーク」を目安にするのも一つかと思います。

認定証マークについて | 冷凍食品の認定制度 | 一般社団法人 日本冷凍食品協会

 

なるほど、ありがとうございます。

 

ダイエットならノンフライ麺を

インスタントラーメンを選ぶ上での注意点やポイントってありますか?

 

監物:ダイエットしたい方なら、ノンフライ麺がおすすめです。「ノンフライ=油で揚げていない」ということ。摂取カロリーに差がでます。製品にもよりますが、1食あたりの脂質がフライ麺と比べて10gほど差がつくと思ってください。

 

そんなに違うんですね。ちなみにインスタントラーメンのちょい足し、普通の野菜ですと何がおすすめでしょうか? 

「野菜を洗って、切って、鍋に加えるぐらいだったら、やってもOK」という人向けに、聞いておきたいんです。

 

監物:それでしたら、栄養価が高いものとしては、

  • チンゲン菜
  • 豆苗
  • 小松菜

この3つあたりがおすすめです。

 

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チンゲン菜や豆苗はアクが少なく、すぐに煮えるのも魅力。

 

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小松菜は最近のものはアクが少ないですが、若干加熱に時間がかかります。炒めてから加えたほうが失敗はないかもしれません。

小松菜はβ-カロテンなどのほか、カルシウムや鉄も多く含み、ホウレン草と並んで栄養的には最強の野菜です。

 

小松菜を炒めるのが面倒であれば、細かく刻むと火のとおりは早いですね。あと、もやしを加える人って多いと思いますが、この場合の栄養アップってどうなんでしょう?

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監物:もやしもいいですよ。その場合は大豆もやしを使うとカリウムやビタミンE、K、B1、葉酸、食物繊維、たんぱく質、イソフラボンなどが、大豆がくっついている分、普通のもやしより多く取れるんです。ちょっとだけ割高にはなりますけどね。

 

安いのが何より助かりますよね。

 

牛乳×ラーメン→意外とイケる


監物:栄養を取るなら野菜だけに限らず、フルーツも活用してほしいです。調理せずそのまま食べられるフルーツは、塩をとらずに食物繊維やビタミンC、カリウムなどが補えます。あと、インスタントラーメンなら、牛乳を使った栄養アップ法も。

 

牛乳をどうするんですか?

 

監物:お湯ではなく、牛乳でインスタントラーメンを作るんです。この場合、スープの素は半量で十分おいしい。牛乳のうま味で補えるんですね。栄養もアップ、スープの塩分カットが同時にできるレシピとして、おすすめ!

 

うーん……ちょっとにわかには信じがたい(笑)。味が随分と変わってしまいそうな。

 

監物:それが不思議なことに、牛乳が味を主張せず、うま味とコクだけ残るんですよ。インスタントラーメンのレシピコンテストの審査員をやったことがあるんですが、そのときこのやり方を知って、おいしさにびっくり。

牛乳で減塩する方法は料理家の小山浩子さんが「乳和食」として開発・研究されたものですが、味の物足りなさを感じないんですよねえ。試してみればきっと納得していただけますよ。

あ、牛乳でやる場合はふきこぼれやすくなるので、その点だけ注意してくださいね!

 

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さっそくやってみましたが、これが本当に「アリ」で驚きました。味噌味、担々麺に特によく合うように思います。牛乳ではなく、豆乳でやるのも良かったですよ。写真のは野菜ミックス1袋入れて、ラー油を入れてあります。

 

栄養学についてもっと知りたいなら

さてケンモツさん、おすすめしたい本があるそうですが?

 

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監物:はい、「かならずしも野菜1日350g取らなくてもいい」とお話しましたが、なぜ私がそう考えたのか、また「減塩がなぜ必要なのか」をもっと詳しく知りたい方は『佐々木敏のデータ栄養学のすすめ』(写真上)という本に詳しい解説があります。佐々木敏さんは東京大学医学部の教授で、栄養疫学の第一人者なんですよ。

 

栄養学ではなく、栄養疫学?

 

監物:すごくざっくりいうと、食と健康のつながりを、人の「集団」で調べて社会に役立てようとする学問が栄養疫学です。

たとえば厚生労働省が「なに(栄養素)をどのくらい食べたら健康を維持できるか」を示した基準(「日本人の食事摂取基準」)がありますけれど、これは動物や個人のデータではなく、人の「集団」で調べたデータを集めて、適切な「量」を探って策定されています。

ある栄養素が体内でどのように働いて寄与するか、メカニズムの研究も大切ですけれど、実際に日常生活でどのくらい取ると、どんな影響がありそうかを突き詰めるわけです。

「日本人の食事摂取基準」は日本全国の学校や病院、福祉施設などの給食の基準として使われていますが、佐々木敏さんはこの「日本人の食事摂取基準」策定において中心的な役割を担っているんです。

 

日本人の食と健康を考える上でのキーマン、といっても過言ではないですね。

 

監物:テレビやネットでも「食と健康」の情報は毎日流され、その真偽を見極めることが困難な状況です。けれどこの本を読めば、どんなふうに栄養情報に向き合えばよいのか見えてきます。果物のよさや、お酒好きな人へのメッセージも忍ばせていますし、「低糖質ダイエット」の見方もあり、盛りだくさんです。編集を担当しましたが、皆さんの食生活にもきっとお役に立つはずですよ。

 

ケンモツさん、今回も本当にありがとうございました。

 

冷凍食品の要チェックポイント

さてライター白央、このところ冷凍食品をかなりいろいろ調べておりました。買う前に、使ってみる前に「ここを知っておくと便利! さらにおいしい!」と思った点を書いてみますね。

まずセール日確認

スーパーマーケットって「冷凍食品〇割引の日」とか「冷凍食品半額デー」を設けているところ、多いんですよ。週2回やるところもありました。買う前にホームページなどでチェックするのが断然お得。安いときにまとめ買いしちゃいましょう。

 

裏面読みを丁寧に

冷凍食品って「600Wで〇分〇秒」「500Wなら20秒長く」「お皿に平らに盛り加熱」「自動ボタンは使用しないで」などの注意書きが裏面にいろいろと書かれてます。
私はそりゃもうズボラで、面倒くさがり。「へーきへーき」なんて感じでテキトーに冷食の加熱やっていたのですが、注意を守ると守らないとでは
うまさが全然違う!

マジです。

あと「加熱後は袋がしぼんだ後に取り出す」など、安全に関する注意は必ず守ってください。湯気でヤケドを負うこと、あります。

「シチューなどには凍ったまま使用して」などの調理上の説明が書かれていることもあるので、このへんの調理ポイントも見逃さないで。

「なんだよー冷凍食品って面倒そうだなー」って思われるかもですが、最初に一読しさえすれば、あとは簡単の便利グッズ。くれぐれも「裏面熟読」だけはやってください。おねがい。

 

以上、第3回目の「ケンモツさんに聞く! かんたん栄養アップ術」でした。

 

月刊「栄養と料理」

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女子栄養大学が発刊する1935年創刊の月刊誌。栄養バランスを考えたレシピが毎号たっぷり掲載されている。プロの栄養士が愛読するのはもちろん、ビギナーでもわかりやすくがモットー。毎号「食物繊維をアップ」「風邪をひかない!」などのテーマのほか「お酒好きのための健康術」「夏までにきれいにやせる」など、『メシ通』の読者にもおすすめの特集が組まれている。詳細はこちら→ 女子栄養大学出版部 - 栄養と料理一覧

 

企画・文・撮影:白央篤司

白央篤司

フードライター。雑誌『栄養と料理』などで連載中。「食と健康」、郷土料理をメインテーマに執筆をつづける。著書に「にっぽんのおにぎり」「にっぽんのおやつ」(理論社)「ジャパめし。」(集英社)がある。

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