
どうも、ディスク百合おんと申します。
自分事で恐縮ですが、ここ数年で環境が変わり、家にいる時間が多くなって自炊が増えました。
そのおかげで、ちょっとした料理ならレシピを見なくても作れるレベルに上達! 冷蔵庫の余りものでなんとなく作ったりもできるようになりました。

▲こちらはペペロンチーノ
そんな中、今まではとりあえずそろえればいいかと、調理器具は安いものを中心に使っていたのですが、料理をする機会が増えてくると、器具の質の悪さや不便さが目に付くように。正直、ワンランク上の調理器具を使ってみたい!
今、一番気になっている調理器具は……

鉄フライパン
一流シェフや料理人が持っているイメージなんですよね。だから、絶対良いに違いない!
ただ、憧れがあるだけで、鉄フライパンの何がいいのか、どういう利点があるのか、分からないことだらけ。少し調べてみても、いろいろな製法やサイズがあって素人には難しい……。
安い買いものではないし、ちゃんと理解しておきたい!

と、いう訳で、これはもうプロに聞くしかないなと決意し、鉄フライパンを製造している、神奈川県横浜市の山田工業所にやってきました!
鉄フライパンについて教えてもらおう

▲有限会社山田工業所 代表取締役・山田豊明さん
過去、中華鍋の記事でもご協力いただいた、山田豊明さんに、鉄フライパンについていろいろ聞いてみました!
「自分はフライパンの作り手であり、料理人ではないから……」という、至極もっともな前置きをいただきつつ、こちらのぶしつけな質問にも丁寧に考えて答えていただきました!
──まず、そもそも鉄フライパンの特性って何なんでしょうか?
山田社長:鉄フライパンは高温でも使えるのが最大の特長だね。コーティング加工をしているフライパンは、強火で使うと劣化してしまうから、そこまで温度を上げられない。
──なるほど、焼き目を付けたり、手早くサッと炒めたりしたい時に向いていそうです!
山田社長:あと、コーティング加工をしていると、コーティングをキズ付けたり、はがしたりしてしまう金属製のフライ返しやトングは使えないけど、鉄フライパンは多少乱暴に扱っても大丈夫というのもあるね。
──鉄フライパンのいい選び方はありますか? 自分は一人暮らしで、自炊はそこそこするというレベルなんですが……。
山田社長:自宅のキッチンやコンロのサイズ感を踏まえて選んだ方がいいね。標準的ならよく売られている24cmくらいとか。もっとスペースが限られているなら20cmとかを選んだ方が扱いやすいかもしれない。
ただ、小さすぎると作れる料理が限られてしまうから、どんな料理を作りたいかも大事だね。
──プロの料理人が使っているのは結構大きいイメージがありますが、小さいサイズでも問題はないでしょうか?
山田社長:確かに大きい方が仕上がりもよく火の通りが早いという利点があるからね。
ただ、フライパンが大きくなるとその分業務用レベルの火力が必要になってくるし、そもそも一般家庭だと収納も難しい。標準サイズか小さめが現実的だと思いますよ。
──家で使うなら確かに、調理環境と目的を考えて選ぶべきですね! それでは買った後、鉄フライパンの基本的なメンテナンスの仕方を教えてください。
山田社長:鉄はサビるから、使った後に洗ったら必ず水分を飛ばすようにしてほしいね。
──とにかく、サビさせないように気を付けると。
山田社長:正直、使っている人次第だし、環境も関係するからね。長く使わないでシンク下に保管し続けると、そのうちサビてしまうよ。
──保管場所はどこがいいでしょうか?
山田社長:使わない時は、風通しがいい場所に、立てかけたりつるしたりする方がいい。やっぱり、使い続けることが大事だね。
使用後、洗いすぎないようにして、サビ防止のため油を残す。キレイに洗った場合は油を塗り直す作業が必要になるよ。
なにしろサビさせないように「乾燥させる」「油を塗る」、これが大事だね。
──特性を踏まえた上で、鉄フライパンが向いている料理はありますか?
山田社長:日頃料理はしないからねえ……。ただ、取材を受けて披露しなきゃいけない時があるのよ。そういう時、私は知り合いの料理人に教えてもらった「黄金チャーハン」を作っているね。卵とご飯のみのチャーハンだよ。ちなみに、そのチャーハンは取材用に用意したのに、何人前も食べてくれたこともありましたよ。
──なるほど! 「チャーハン」! やっぱり中華料理ですね。
山田社長:そうだね。板前さんやシェフでウチの鉄フライパンを愛用してくれる人もいるけどね。
──そういうシンプルなメニューの方が鉄フライパンの良さを実感できる気がします。ありがとうございます!

取材の後、工場まで見学させていただきました。
重厚な機械たちと熟練された手業は迫力があり、「打ち出し」という作り方によって、1枚の丸い鉄板が、立派な鉄フライパンになっていく様子は圧巻でした!
お話を伺って、ますます鉄フライパンへの憧れが強くなりました。山田さんほか山田工業所の皆さま、丁寧なご説明ありがとうございました!
意外と簡単だった下準備
取材後、すっかり鉄フライパンに魅了されてしまった私。後日、山田工業所製の鉄フライパンを入手いたしました!

職人さんの打ち出しで作られた、全く同じものはない、世界に一つの自分だけの鉄フライパンです。
私は、料理技術もキッチンのスペースもそこそこなので、様子を見て、少し小さめの20cmくらいのものを選びました。
早く料理に使いたい気持ちを抑えて、まずは下準備です!
この鉄フライパンはサビ止めは塗っていないので、それを落とす必要はないのですが、表面に付着した成分(黒皮鉄)により、このまま使うと料理が黒くなってしまいます。なので、まずこれを落とします!

お湯と中性洗剤を使い、タワシ(ここでは金属製タワシでも可)またはスポンジなどでゴシゴシ洗います。

洗って水分を拭き取ったら、油を慣らしていきます。多めに油を入れ、くず野菜を入れて炒めれば良いとのことでした。
くず野菜がなかったので、冷蔵庫にあった大根の葉っぱで代用しました。大きな葉が油をうまくまとってくれて、フライパン全体に行き渡らせやすかったです。葉物がちょうどいいかもしれませんね。

炒め終わったらくず野菜を捨て、冷ましてから再度洗います。

洗い終わって水分をぬぐってみると、こんな感じで黒い汚れが! これは、鉄フライパンの成分の一つ、黒皮鉄の炭化物なので害はありません。ただ、料理に付いて、見た目が悪くなってしまうので、何回か上記の工程を繰り返して、気にならないレベルまで落としました。

以上の下準備をした後の鉄フライパンです。油がなじみ、しっとりとツヤが出ております。鉄フライパンとの関係は始まったばかりですが、既に愛着が湧いてきましたよ!
他のフライパンと比較してみよう!(チャーハン編)
せっかく買った鉄フライパン。他のフライパンとの違いを実感してみたいので、鉄フライパンが得意とする料理でどのような差が出るのか比較してみることにしました! まずは山田さんからオススメしていただいた「チャーハン」を試してみます。
鉄を含め4種類の材質で、同じくらいのサイズの新品を用意しました。
- フッ素加工フライパン
- アルミフライパン
- ステンレスフライパン
- 鉄フライパン
それぞれで作って試食してみます!
フッ素加工フライパン

私が元々使っているのはこれです! 家庭で一番使われているフライパンではないでしょうか? コーティングがされており、食材がくっつかないのが大きな特長ですね。
チャーハンを作る工程はなるべく統一しました!
~作り方~
フライパンに油大さじ1を入れ点火。温まったら1個分の溶き卵を入れ、ご飯100gを入れて混ぜたら、塩とうま味調味料をふって、しょうゆを半回しして炒めたら完成です!

材質の性質上、コーティングに悪影響となる強火はNG。なので中火まででじわじわ温めていきます。

焦げ付く心配がないので、焦らず調理できますね~。

完成しました!
本当にいつものチャーハンですね。おいしいです!
米もパラパラになっていると思います。卵とご飯が少し一体感に欠けるのかな……? でも家で作るチャーハンなんて、このくらいという気がします。
アルミフライパン

鉄やステンレスよりも軽く、熱伝導に優れています。

調理を始めましたが、なんだか油がなじまず、浮いてしまっているように見えました。心なしかベットリしている感じ……。

完成です!
やはり、食感がべちょっとしてしまいました。ただ、気持ち、味には一体感がありましましたね。熱の通り方が影響しているのかな?
なので、別においしいです! ……ただ、食感が劣るかな? といった感じでしょうか。

あと、他のフライパンと違って黒ではないので、調理の様子が見やすいという点が良かったです。味付けをする時や洗う際は非常に便利ですね!
ただ、取っ手が猛烈に熱くなりました! タオルを巻いたりカバーが付いていたりしないと、うっかり握ってしまった時に危ないかもしれません。熱伝導が優れている分、気を付けないといけない点だと思いました。
ステンレスフライパン

多少重さはありますが、温度変化に強く頑丈で余熱調理も可能です。ここまでの3種類のうちだと一番バランスが取れているフライパンかも。

ただ、こちらもコーティングされているので強火はNG。なので中火までで作っていきます。

完成です!
おいしいですね。パラパラに仕上がりました。フッ素加工よりも味の一体感があるような気がします。まあ、ちょっとそんな気がするくらいではありますが……。ここまでのフライパンだと一番うまくいったかも。
鉄フライパン

ついに鉄フライパンの登場です! 正直、ここまでの3種類のフライパンで味に大きな差は感じられず、記事が書けるのか不安になっております! たのむ、鉄フライパン!

溶き卵を入れると、ジュワーーーーー! という気持ちの良い焼ける音が!
ヤバい! テンション上がる!
鉄フライパンは強火にできる分、魅せてくれますね~。でも大事なのは味ですから、油断はできません!

うわさ通りに火の通りが早く、前の3種類のフライパンより調理がてんやわんやに!

完成です!
めっちゃチャーハンだ……! 卵に茶色く焼き目も入って、見た目もだいぶ違いますね……!
味もめちゃくちゃうまいです。今までのとは全然違う……!
これぞパラパラ! 口の中で米粒が気持ちよくほどけていきます。先ほどまでのチャーハンはパラパラというよりパサパサ寄りだったかも……と感じました。
食材同士の一体感もあり、味付けも同じなのにだいぶ味のクオリティが高くなっております。今まで家で作るチャーハンは、ぼんやりした淡泊な印象だったのですが、これはお店のチャーハンに近い!
チャーハンは、どのフライパンでもおいしく作れる。でも、鉄フライパンだともっとおいしくなる! と、断言してもいいかもしれません。すごいぞ鉄フライパン!
他のフライパンと比較してみよう!(目玉焼き編)
さらに「目玉焼き」に挑戦します。より鮮明に比較ができるのではと期待です。
フッ素加工フライパン

こちらも工程は極力統一します。
~作り方~
フライパンを温めてから、油を小さじ1。卵を低い位置からそっと落とし入れて、弱火で白身に火が通るまでじっくり焼いていきます。

完成です!
うん! いつものおいしい目玉焼きです! 白身はプリッと仕上がっており、黄身もとろり。正統派という言葉がぴったりですね。

あと、気が付いたのですが、軽いので非常に扱いやすいという利点はありつつも、一般的な家庭用コンロだと、軽すぎて安定しにくいという面がありました。
他のフライパンはある程度重さがあったので、食材が入っていなくても安定しています。安全性の面から意外と大事な気がします。
アルミフライパン

低い位置から落とし入れたのですが、白身が広がってしまったような……。

完成です!
平べったい仕上がり。白身の食感も少しふにゃっとしています。まあでもおいしいですが!
ステンレスフライパン

やっぱり扱いやすいですね~。フライパン自体は重めではありますが、その分安定して調理はしやすいかと。

完成です!
全く問題なくおいしいです! 3つのうちで一番白身に弾力があるような気がします。少し固くなってしまったともいえるかも……。でもまあ、好みの話ですね。
鉄フライパン
やっぱりここまで3種類のフライパンだと、目玉焼きでもあまり違いが感じられず……。でも、他と比べてチャーハンが本当においしかったので、鉄フライパン、期待大です!

ジューーーーー!! バチッバチッ! ジューーーーー!
かなりヤンチャな音を出して卵が焼かれていきます! 不慣れな自分はドキドキ!

完成です。
これまでの3つのものだと黄身の周辺に火を通す加減が難しかったのですが、鉄フライパンだとうまくいきました! 焼き目も他と比べるとしっかり付いていますね。
わ……うまい。
明らかに今までのとは一線を画す味をしている!
大げさと思われるかもですが、淡泊な感じがせず、調味料を使わなくてもしっかり存在感があります。味の輪郭がはっきりしている!
話はちょっと変わりますが、今まで目玉焼きをご飯にのせて食べる時、それだけだと物足りず、しょうゆをダボダボかけたり、ウインナーと一緒に食べたりしていました。目玉焼きはあくまでトッピング。単体のおかずとしては、ちょっと弱いかも……と思っておりました。
でも、これは単体で戦える目玉焼きです! 焦げ目もふんわり香ばしく、それがまた絶品。トッピングではないです、ごちそうです。今回はそれを学ばせていただきました。
ありがとう、鉄フライパン先生……。
やっぱり良かった鉄フライパン
いやはや……。他のフライパンと比べてこんなに違いがあるのかと驚かされました。そして驚いた分、鉄フライパンと出合えて良かったとも思いましたね!
使えば使うほどに自分になじんでいき、料理の最強パートナーとなってくれそうな「鉄フライパン」。

非常にオススメです! 皆さんも良かったら~!!
おまけ
このまま終わるとアルミフライパンのネガティブキャンペーンになってしまいそうだったので、「ペペロンチーノ風パスタ」を作ってみました!

▲今回は唐辛子ではなく一味唐辛子を使っています(なかったので)
コンロの五徳の上にフライパンを斜めに設置し、そこへオリーブオイルを入れ、風味を付けるために刻んだニンニク、一味唐辛子を入れ弱火でじっくり火を通していきます。やっぱり明るくて調理の様子が見やすいですね!

そこへゆでたパスタを投入し、顆粒コンソメスープの素と粉末昆布茶で味付けをし、混ぜていきます。こちらもすごくやりやすい! チャーハンや目玉焼きの調理の際にはフライパンに油がなじまず浮くのが悩みだったのですが、パスタソースに対してはそれが功を奏して、スムーズにパスタに絡ませることができます!
これでほぼ完成ですが、せっかくなのでトッピングに……

鉄フライパンで作った極上の目玉焼きをドン!
鉄フライパンとアルミフライパンのコラボレーション料理です。これは絶対おいしいでしょ……!

黄身を崩してパスタと絡ませながらいただきます……!

とんでもなくうまい。
パスタはなんだかいつもよりもむっちりとしていて食感は抜群。パスタにソースがしっかり絡まって、いつもよりもプロっぽい……! さらにさらに、そこへ極上の目玉焼きも参戦し、うま味と香ばしさとコクの応酬! これはもうたまらんです!!
あとで調べて分かったことなのですが、アルミフライパンの特性は熱伝導率が高い、つまり熱しやすく冷めやすいこと。アルミフライパンより熱伝導率の低い鉄フライパンでは、一度温度を上げると熱がこもりやすく、ゆでたパスタを入れるとその熱でのびてしまうことがあるそう。今回、いつもより麺がむっちりしているように感じたのは、熱が逃げやすいアルミフライパンはならではのことだったのかもしれません……! まさにパスタの調理に適した材質! イタリアンでアルミフライパンが使われることが多いのには理由があったんですね~。
という訳で、アルミフライパンの有能ぶりもしっかり堪能できました! このパスタの専門店、始めようかな……。
書いた人:ディスク百合おん

ナードコアという特別なテクノを得意とするミュージシャン。コンビニで手に入る食品を合わせて新しい料理を作りあげる「コンビニかけ合わせグルメ」を紹介する人として様々な媒体に取り上げられ、同名の初書籍が2017年11月2日(木)に発売。山本さほ「岡崎に捧ぐ」に登場する杉ちゃんのモデルという棚ぼた知名度も獲得している。


