100年続くレトロ食堂 アツアツとろ~りな名物皿に泣け!【篠田屋】

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鴨川のほとりで一世紀以上続く食堂

食の都・京都には老舗と呼ばれる店が数多あれど、食堂スタイルで100年以上続くところは片手に余るほど。その中の一軒「篠田屋」は、1904(明治37)年創業、今年で112年目を迎えるいぶし銀食堂です。

 

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間口は一間ほどでも奥行きのある“鰻の寝床”式な建物が京都らしい。

 

私め、京都在住25年でありますが、こちらを知ったのはこの数年のこと。京都のメシが旨すぎるゆえ40kgも育ってしまったカラダで、昔ながらのこぢんまりとしたしつらえのテーブルや椅子に申し訳ないと思いつつも、すきあらば足を運んでいる次第です。

 

店は京阪電車の三条駅から徒歩30秒、春は桜並木が美しい鴨川にも至近という便利な立地。

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京阪三条駅9番出口からすぐ。

 

四代目の粂 秀一さんと妻のみどりさん、母上・ツギ子さんが3人で調理や接客を分担し、仲睦まじく働く姿がとても微笑ましい。

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3人とも本当にいいお顔をされています。こんな笑顔をした人がつくるごはんは絶対おいしいハズ!

 

お昼と夕方、二部制の営業時間いずれも客が途切れません。ほとんどの客がどちらか、または両方を注文するのが「篠田屋」の二枚看板。まず1つは、創業以来変わらぬ中華そばです。

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中華そば500円(税込)

澄んだスープはごくあっさりめの醤油味。鶏の出汁が生きています。

鶏ガラの出汁を使った昔ながらの醤油スープの優しい味わいがたまりません。麺は特注の細めストレート。ほどよくコシがあります。「今はこんなシンプルなラーメンがかえって珍しいみたいやねぇ」と粂さん。何十年通っても、これしか食べないという常連さんも少なくないのだとか。老若男女に広く愛される一杯です。

 

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中華そばは、スープを温める釜の上で仕上げていきます。冷めないようにとの心配りが嬉しい。

 

ありそうでなかった組み合わせの妙

そして、もう1つの看板メニューこそが、ここでしか味わえない、その名も「皿盛」! 

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皿盛650円(税込)

皿からはみでんばかりのボリューム感がソソる!

ツヤッツヤのご飯に揚げたての豚カツ、そしてたっぷりとかかったカレー風味の餡は青ネギと牛肉入り。

 

そう、皿盛はカツカレーのように見えて、ルゥならぬカレーうどん用の餡かけ出汁をかけるのが特徴なのです。スプーンを入れると一気に湯気が上がり、カレーとお出汁の香りがふわり。

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うぅ、なんて食欲をそそる香りなんだ……。真っ赤な福神漬けがナイスアシストをしてくれるのも見逃せません。

 

カツはラードで揚げてあるので、薄めなれど存在感抜群。そしてご飯は、今や希少な“おくどさん”(かまど)でガス釜炊きしたもの。ひと粒ずつがふっくらと立ち上がり、優しい甘味を感じさせます。

 

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餡に隠れているけれど、実は茶碗二杯ほどのご飯が盛られているのだ!

 

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できたてのカレー餡を手早くかける。たっぷりと!

そこにとろ~り、アツアツのカレー餡を絡めればこの世は天国。いいの、上顎の皮一枚や二枚くらいめくれたって。 

ザクザクッとしたカツの衣にやわやわと染みる餡、青ネギのシャキシャキ感、時折感じる牛肉の旨み。このバランスのよさったら! 

「あんかけ」「青ネギ」「牛肉」と京都の日常食でおなじみのキーワードがさりげなく揃っているのもイイですね。カレー風味とはいえ辛さはマイルドなので、ヒーヒー言う心配はご無用。デブならちょっと汗が止まらなくなる程度です。

 

常連さんの声で生まれた裏メニューの出世

しかし、なぜこのようなメニューが生まれたのでしょう。粂さんにお聞きしました。

 

今から30年ほど前のこと。当時この界隈にあった「京阪電鉄」本社開発部の面々は昼どきの常連客でした。毎日のように通う彼らは通常メニューに飽きたのか、「飯にカツをのせて、カレーうどんのあんかけ出汁をかけてほしい」と裏モノを求めるように。

粂さんはそれに応じ、はじめはカツ丼のように丼で提供していましたが、そのうち「昼は時間ないし、早よ食べたいねん。丼やったらずっと熱いままやし、冷めやすいよう皿に盛ってんか~」とおねだりが加熱。

皿なるうえは……と思ったかどうか、普通のカレー皿よりも少し大きめの皿を用意したという優しい粂さんご一家。

 

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餡が薄く広がるので、確かに丼よりも冷めるのが早そう。

 

なんせメニューにないもんやから、注文通すのにも「“皿に盛ったやつ”してんか~」言うてたねぇ。長いわなぁ(笑)

とツギ子さん。それがいつしか「皿盛」と略されるようになり、定着。

 

品書きにはない裏メニューとして好評を誇ったものの、数年後、京阪電車の路線がそれまで終点駅だった三条から出町柳まで延びることになり、常連の皿盛チームも異動。「おばちゃん、ごめんな。もう来られへん」。……頼む者がなくなった皿盛。

 

しばらく経ち、「ほかのお客さんはみんな知らはらへんから頼まへんのや。それやったら一度メニューとして書いたらええねや」。3人はそう決め、ついに皿盛は堂々と表世界へのデビューを果たしたのです。

 

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店頭の提灯にも大きく掲げられた名物(反対側には中華そばの文字)。

 

これが25年ほど前のことで、それからは徐々に評判を高め、今や2トップにまで上り詰めました。一度食べると忘れられず、また食べたくなる味。それが皿盛の魅力なのです。

 

見どころ満載の歴史空間

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おくどさんには、ご飯用の釜(左)と、うどん用の出汁(中)、中華そばのスープ(右)が。現在はガスだが、昔はおがくずが燃料だった。

 

ところで、ご主人は粂さんなのにお店の名前は「篠田屋」とはこれいかに?

 

元々、初代の曾祖父が愛知県・篠田村(現・あま市)の出身で、そこから京都に出てきて始めたのでこう名付けたと聞いています(粂さん)

ツギ子さんは

私も篠田村から嫁いできましたんや。私の姑、大姑も篠田の人でしたね。みどりちゃんはぐっと近うなって滋賀から来はった

 

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タイル貼りの床は、地下鉄東西線の工事の際に一度貼り替えたという。

 

四代に渡り大事に使い込まれてきたお店は、昔ながらのしっかりとした造り。「阪神・淡路大震災の時も、茶碗一つ落ちなかったんですよ。古い建物やから、専門家の方が電話してきて『大丈夫ですか』って聞かはったけど、『どうもない』って応えたら驚いてはったねぇ。大工さんが言うには、ものすごく立派な大黒柱が入ってるそうで」。

 

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昔はこの小上がりで赤ちゃんのおむつ換えをする様子もおなじみだったとか。

 

変わらぬ空間は、粂さん一家はもちろん、代々のお客さんをも見守ってきました。

 

この前は、子供の頃におじいちゃんに連れてきてもらってたというお客さんが『おじいちゃんのお墓参りの帰りなんです。あぁ、この席や、ここにおじいちゃんと座ってたんや……』って喜んでくれはってねぇ

と、我がことのように嬉しそうなツギ子さん。旨い料理と人情あふれるこの空間は、今までも、そしてこれからもさまざまな人の思い出に残ることでしょう。

 

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この灰皿も50年モノ! ツギ子さんもまだまだ現役で素敵な笑顔を見せ続けてくださいね。

 

店舗情報

篠田屋

住所:京都京都市東山区三条通大橋東入大橋町11
電話番号:075-752-0296
営業時間:10:30〜15:00(LO)16:30~19:00(LO)
定休日:土曜

 

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書いた人:
泡☆盛子

ライター。沖縄出身、京都在住。京都の水というか食がカラダに合い、40kg肥えたのが自慢。立ち呑みと、おかずケース食堂での昼酒が好き。

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