究極の発酵食品「30年もののなれずし」を食してみた

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30年間も発酵させたサンマのなれずし

最近、発酵食品に注目度が高まっているようです。

そんななか、今までに聞いたことももちろん見たこともない、すごい発酵食品があるという情報をキャッチしました。

「なれずし」をご存知でしょうか?

漢字の表記は、「熟れ鮨」「馴れ鮓」などいろいろあります。

 

「なれずし」は「すし」といっても、いわゆる一般的な寿司とは違って、主に魚と塩と米飯を長期間漬け込んで乳酸発酵させた食品です。

「なれずし」は日本各地で、それぞれその土地で獲れる魚で作られています。

北海道や東北のニシンや鮭を使った飯寿司、秋田県のハタハタ寿司、発酵期間が長くて匂いと味わいがハードな滋賀県の鮒寿司などが有名です。

 

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(写真提供:kimcafe)

 

ここは、和歌山県新宮市にある、郷土料理屋さん「東宝茶屋」。

地元の方に愛されている、魚料理が中心のお店です。

 

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(写真提供・kimcafe)

 

ここに、すごいなれずしがあるというのです。ちなみに、この店でのなれずしの漢字表記は「馴れ鮓」となっています。

メニューには、さんま馴れ鮓、あゆ馴れ鮓、さば馴れ鮓の後に、

三十年物珍味本馴れ鮓というものがあります。

 

さ、30年……。

なんとこれは、30年間発酵し続けたさんま馴れ鮓なのです。

 

もう一度いいますが、馴れ鮓の材料は生の魚と塩と米飯です。

こちらはもちろん、きちんとした製法で発酵させているわけですが……それにしても30年とは信じられません。

 

三十年もののなれずしをお店に電話して送ってもらった

なんとしても、三十年物珍味本馴れ鮓を食べたい。

しかし和歌山県は遠い。

東宝茶屋には通販サイトはありません。そこで、お店に電話してお願いしたら、代金引換宅配便で送っていただけました。在庫があれば、即日で送ってくれます。

 

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 ▲三十年物珍味本馴れ鮓・土産用壺入り(5,400円)(※発送の場合、クール便の送料と代引手数料がかかります)

 

和歌山から東京だと、翌日には届きました。

 

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歴史を感じる表書きです。

 

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お店で管理しているものには60年もあるそうです。個人の家では保管状態が心配なので要冷蔵で早めに食べた方が良いと思います。

 

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「本馴鮓 由来記」がついていました。

全部読むのは無理でしたが、「酒肴用美容食に最適で胃腸の弱い方には素晴らしい健康食品で大好評です」と書いてありますね。

発酵食品は体に良いといいますし。

 

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得意な方はじっくり読んでみてください。

 

30年間、発酵し続けるとほぼ液体になる

包装を解き、箱を開けてみました。

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この時点で、プ〜ンと漂う発酵臭。

 

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壺の蓋をあけると、いきなり中身が。なかなか生々しい感じです。そして匂いも強くなってきました。

七味と醤油もセットになっていました。

 

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オリジナルの壺も渋い。 

 

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しかし、ラップを外すと……さすがに今まで食べたなれずしのなかでは最高級な強い匂いです。

しかし、筆者は今まで数々の強烈な臭いの食べ物を食べてきました。

それと比べると、くさやよりも、シュールストレミングよりも、激しくはないと思います。

 

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ドロドロです。

この匂いは、何に例えればいいのでしょうか?

納豆とか、くさやとか、それをちょっと甘くしたような、確かに米が発酵しているだけあって、魚の発酵臭と共に甘さを感じさせる匂いもあります。

 

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ところで、さんまはどこにあるのでしょうか?

掬ってみたら、ほとんど溶けているようですが、ところどころに「かつてさんまだったもの」のようなものが見当たります。

 

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おそらく、これが一番大きな塊でした。 

 

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皮の感じが残っています。 

 

最初にこれを食べようと思った人はすごい

もし、これがその辺に置かれていたとしたら、食べられるものだと思いますか?

今はこれが何か知っていて、きちんとお店で買ったものなので食べられますが、最初にこれを食べようと思った人はすごいと思います。

たとえ、自分で仕込んで作ったとしても、何ヵ月か経ったら不安になるかもしれません。

それが、30年。

30年ということは、もしかしたらこの中のさんまは、昭和に生きていたかもしれません。平成の時代を塩と米飯とともに漬け込まれ、令和となった今、初めて人の口に入るのです。

 

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お店と同じように盛り付けてみました。

 

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そして、お店と同じように七味と醤油を。

 

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いただいてみます。

 

鼻に近づけると、さらに強くなる匂い。

しかし、思い切って口に含んでみると、意外にも味が強くない。塩辛のようなものを想像していたら、それよりも随分と塩味が薄く、酸っぱい、そしてまろやかな甘み。

 

旨いです。

七味と醤油がついていた理由がわかりました。これでちょうど良くバランスが取れます。

 

似た食品を探すとしたら、よく熟成されたウォッシュタイプのチーズでしょうか。

匂いは強いのですが、口に入れてしまうとあまり気になりません。むしろ深いコクとうまみが口いっぱいに広がります。

30年という時間で熟成された味。さすがです。

 

「三十年物珍味本馴れ鮓」に合う食材は何だろう

さて、せっかくの三十年物珍味本馴れ鮓。

このまま食べるだけではもったいない。

他の食材と合わせたら、もっとこの旨さを活かせるのでは?

 

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まずは豆腐と合わせてみます。

豆腐に合わない食べ物は存在しないのでは? と思えるほど、すべての食べ物を包み込んで旨さを際立たせる豆腐。

 

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やはり合います。

本馴れ鮓の風味が少しまろやかになって、つまみにするのにちょうど良い感じになりました。

沖縄料理の「スクガラス豆腐」に似た感じになりますね。

 

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続いてはゆで玉子と合わせてみましょう。

本馴れ鮓のまったり具合とゆで玉子のまったり具合が合わさって、コクが増した感じになりました。

 

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そして、今回の組み合わせのなかで一番ぴったりだと感じたのが、このチーズ。スーパーで売っている、ごく普通のスティックチーズです。

もともとチーズの味が本馴れ鮓に近いこともあって、合わせると味がチーズと本馴れ鮓の中間的な感じになり、本馴れ鮓のクセが和らいで食べやすくなります。

 

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もちろん、定番のきゅうりも合いました。食べやすさだけを基準にすると、これが一番かもしれません。

パクパク食べられてお酒もすすみます。

 

普通のさんま馴れ鮓に三十年物珍味本馴れ鮓をトッピング

さて、冒頭のお店の写真などを提供していただいたブロガーのkimcafeさんは、以前、実際に和歌山県の東宝茶屋まで赴いてこの三十年物珍味本馴れ鮓をいただいているのです。

kimcafe.exblog.jp

 

 

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(写真提供・kimcafe)

▲三十年物珍味本馴れ鮓・付き出し(1,700円)

 

こちらが、店内でいただける三十年物珍味本馴れ鮓、一人前です。

ここでkimcafeさんは、お店の人におすすめされた究極のトッピングをしてみたのです。

 

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(写真提供・kimcafe)

▲さんま馴れ鮓(1,300円)

 

ふつうの馴れ鮓は魚の姿が残っています。さんまの馴れ鮓は、まずさんまを1年間塩漬けにしてから米飯と合わせて漬け込んで約1ヵ月。

漬け込み期間はいろいろなものがあって、好みで馴れ具合を選んでもらえます。

 

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(写真提供・kimcafe)

 

このさんま馴れ鮓に、三十年物珍味本馴れ鮓をトッピング。

kimcafeさんいわく「最高の珍味!」だそうです。

 

おいしくいただける、究極の発酵食品、三十年物珍味本馴れ鮓。

お店で食べても良し、お取り寄せしても良し。みなさまもぜひお試しください。

 

お店情報

東宝茶屋

住所:和歌山県新宮市横町2-2-12
電話番号:0735-22-2843
営業時間:11:30~14:00、17:00〜22:00(LO 21:30)
定休日:不定休

www.hotpepper.jp

 

書いた人:工藤真衣子

工藤真衣子

カメラマン。美しい人が好きなのでグラビア、音楽が好きなのでライブ写真、映画やドラマが好きなのでスチール写真、美味しい食べ物が好きなのでグルメ写真。雑誌、WEBなど各メディアで活動中。趣味は美味しい料理を作って食べること。子供写真スタジオ「アトリーチェ」の経営もしております。

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