こんにちは、パリッコです。今回も調査という名の飲み歩き活動にいそしんでいきたいと思います。
東京都文京区に「千石」という駅があります。
「おばあちゃんの原宿」こと巣鴨や、都立庭園「六義園」のある駒込からも近いのですが、派手な繁華街などはあまりなく、夜ともなれば静かな雰囲気の街。
その駅前に、暖かそうな明かりがぽわっと灯った、こんなお店があります。
「ティンカーベル」
こちら、
「WE'RE OPEN」
と書かれたお手製看板以外に、 何屋さんか判断する情報が一切ありません。
窓の外から店内をのぞいてみても、メニューなどは見当たらず。だけど、カウンターの中には女将さんらしき人がいて、お客さんが何やら食べたり飲んだりしているように見えます。
これはなかなか扉を開けるのに勇気がいるお店ですよね。
けどものすご〜く気になる!
メニューが……ない!?
ある時、再び前を通りかかったところ、先客がいないようだったので、思い切って入ってみることにしました。
「こんにちは〜。あの、こちらって、お酒が飲めたりするんでしょうか……」
見知らぬ一見客が急に入ってきて、一瞬驚いたような顔をされたあと、すぐに笑顔になり、
「ええ、どうぞこちらへ」と招き入れてくれた女将さん。とりあえず一安心です。
店内は、こういったカウンター立ち飲み店のイメージからするとちょっと意外なほどに、清潔でおしゃれな雰囲気。
かわいらしいオブジェの数々に女将さんのセンスを感じる。
あ、ここにメニューが……違うな。
店内を見渡してみても、やはりお品書き的なものは見当たりません。
そこで「お酒は何がありますか?」とうかがうと「ビールにチューハイにハイボールに……あとはそうね、飲みたいものがあれば言って。あれば出せるから」と。
いい、最高にいい。
まずは「生ビール」を。
冷凍庫で冷やされたグラスに一杯ずつサーバーから注がれる生ビール。
これが驚くほどにうまい!
昼も夜も「日替わり」
さて、ひと心地ついたところで女将さんにいろいろとお話をうかがうことができました。
「ティンカーベル」は、この地でもう20年以上続く、家族経営のお弁当屋さん。
冷凍食材は一切使わず、全てお店で手作りする日替わりの弁当をリーズナブルに提供されているお店。
定番の「からあげ弁当」や「ハンバーグ弁当」。
5年ほど前にご夫婦で相談し、昼間に作ったお総菜を余らせてしまうくらいなら、地元の人たちに安く提供して満足してもらおうと、夜の立ち飲み営業を始められたそう。
そういう家庭的なお総菜をつまみに、こうして飲ませてもらえるなんて、いや〜、なんて幸せなお店なんでしょうか!
なので、決まったメニューというものはありません。
基本的にはお酒以外の注文もこちらからするのではなく、「今日は〇〇があるわよ。食べる?」というシステム(一品一品の内容も値段も日によって変わり、合計でいくらというスタイルなんです、このお店は。ご了承ください)。
「レバーとキムチを炒めたの、食べる?」
「いただきます!」
食材はごくごく庶民的ですが、熟練の技術のおかげか、ものすご〜く深みがあっておいしい!
トロッと半熟の卵もうれしすぎますよね。
「エビのかき揚げ食べる?」
「いただきます!」
かかっているのはオリジナルの甘ダレで、身の大きなエビ(甘エビ?)の風味が豊かで、う、うますぎる〜!
チューハイ
ちょうど常連さんが大量に持ってきてくれたスダチがあるからと、添えていただきました。
爽やかな酸味と炭酸の爽快感、これ以上何もいらない!
じんわり癒やされる
のんびりとお酒を飲みながら、女将さんとTVのニュースについてあーだこーだとおしゃべりさせていただくぜいたくな時間。
あれ? 気がつけば、ものすご〜く心穏やかに落ち着いている自分がいるぞ。
単に食事やお酒を提供する場ではない、お客さんの心までもじんわりと癒してくれる、これぞ個人店の真骨頂! というお店ですよ、ここは。
この日は特別お腹が空いているというわけではなかったので、生ビール、チューハイ×2杯、おつまみ2品、それから、
「変わり親子丼」
これもお店の名物のひとつであるというお弁当。
ひとつだけ余っていたようなので、明日の朝ごはんにでもしようかとお土産にいただいて帰ることに。
どこにも値段が表示されていないのが不安といえば不安だったんですが、なんと以上全部で2,000円という驚きのリーズナブルさでした!
す、すごいな……。
ちなみに気になる「変わり親子丼」は、ご飯の上にカツオ節がたっぷりと乗っているところ、そして、鶏肉を小さくカットしてカツにしているところが特徴のオリジナル。
どこか洋風のテイストも感じて、「ごちそう!」って感じの一品でした。
おいしかった〜。
体が喜ぶツマミたち
さて、一発であまりにこのお店を気に入ってしまった僕。
後日、「近々飲もうよ!」と話していた友達2人を誘って、また行ってみることに。だってほら、この素晴らしさ、他の人とも共有したいじゃないですか。
友人ごしの女将さん。
女将さん、見ての通りモダンでおしゃれな方です。
そして底抜けに明るいキャラクターは、常連さんが集まる一番の理由に違いなし。
あ、「ちなみに情報」ですが、手前で飲んでいる友達は、シンガーソングライターのbutajiさんです。
毎週月曜日と木曜日は、他のお弁当は作らない「カレーの日」らしく、今日がまさにその日。
「だからあまり大したものはないわよ」とのことでしたが、
「サラダ食べる?」
「いただきます!」
こんな健康的なつまみで酒を飲んだのはいつ以来だろう?
野菜はシャキシャキとみずみずしく、ゴマドレッシングも異様にうまく感じます。
体が喜んでる〜。
「マーボー豆腐食べる?」
「いただきます!」
家庭的で優しい味わいながらもピリリとスパイシーな、極上のおつまみ。
枝豆もうれしいですよね〜。
スダチチューハイ。
スダチもまだ残っててラッキー。
やっぱりおいしいなぁ。
第二のリビングルーム
今日は常連さんもいらっしゃいました。
女将さんとみんなで楽しそうに会話をされていて、もはや家族か親戚にしか見えない!
ちなみに手前の女性は21歳で、お酒はまだそんなに得意ではないそうで、いつも「熱燗ください」と言って「白湯」を飲まれているとのこと。
ね、もうここ、単なる飲み屋さんじゃないんですよ。
この方にとっては、大事な大事な「第二のリビングルーム」なんです。
あ〜、なんていい話なんだ。
「おもち食べる?」
「いただきます!」
おもちを食べるのは正月以来か。
「え、モチってこんなに!?」っていう、意外なおいしさの再発見。
「フランクフルト食べる?」
「いただきます!」
すんごいボリューミーな、大迫力のフランクフルト。
「ここの、おいしいのよ〜」としか言われてなかったんですが、どこか近所の肉屋さんとかで作られているのかな?
豪快にケチャップをかけて。
ジューシーかつ濃厚な肉のうま味と、華やかなケチャップ味のハーモニーで、これまた感涙もののうまさ!
スダチチューハイは、おかわりを重ねると深みも増していく
タバコが吸いたくなった方は、灰皿を借りてお店前のベンチでどうぞ。
このベンチの佇まいも、なんかいいんですよね。
再びの「ちなみに情報」として、上に写っているのはラッパーのMETEORさん。
butajiさんもMETEORさんも素晴らしいミュージシャンなので、気になった方はチェックしてみてくださいね。
記事とは何の関係もないけど!
というわけで、気になったお店に勇気を出して入ってみれば、そこには心癒される酒飲みの天国が広がっていました。
あ、そうそう、この日のお会計は、ビールやチューハイなどをみんなで何杯かずつ飲んで、おつまみもきちんと一人一皿ずついただいて、なんとひとり1,900円!
なんで前よりも安くなるんだ……。
月木の昼カレーが目玉すぎる
そうだ、さっきはサラッと流しましたけど、お昼の営業の「カレーの日」のインパクトも相当なもんなんです。
もともとは年に一度、感謝の気持ちを込めてのサービスデーだったそうなんですが、それが月一になり、週一になり、とうとう週に2日の定番にまでなってしまったそうなんですが、
この値段!
とんでもないでしょう?
カツカレーが350円って、もしかして世界で一番安いとかそういうレベルなんじゃ……?
もちろんカツカレー大好きっ子の僕としては、こちらも味わわないわけにはいかないので、昼間にも行ってみましたよ。
▲カツカレー(350円)
大鍋でたっぷりと煮込まれたカレーソースには、トロトロに煮込まれた肉や野菜がたっぷり!
そこにサクサクの揚げたてとんかつが3枚も!
食べ終わったあとでもいまだに信じられないお得感と満足感でした。
お昼の営業も、夜の営業も、ご夫婦のお客さんへの愛情がたっぷりと詰まった名店「ティンカーベル」、今後も通わせてもらいたいと思います。
ただし、MAXで5人入れば満席という小さなお店、興味を持って行かれる際は、満員だったら時間を置いて出直すなど、常連さんへのご配慮のほど、僕から勝手によろしくお願いします!
お店情報
ティンカーベル
住所:東京都文京区本駒込2-29-13
電話番号:03-3947-8097
営業時間:10:00~15:00(お弁当のみ)、 17:00~23:00(店内営業)
定休日:日曜日、祝日
※この記事は2017年10月の情報です。
※金額はすべて税込みです。