超人的な集中力と体力を必要とするアスリートたち。そんな彼らの食生活って気になりませんか。今や、世界的サッカー選手として活躍しているインテル所属の長友佑都選手の専属シェフ、加藤超也さんにアスリートのレシピやメニュー考案のうえで気を付けていることなど、知られざる「アスリートメシ」について聞いてみました。
長友選手の日々の練習量や体調に合わせてメニューを考案
―― そもそも加藤さんはどのような経緯で長友選手の専属シェフになったんでしょうか?
加藤:実はSNSがきっかけなんです。もともとイタリア料理店のシェフだったんですが、長友選手に興味があり、よくTwitterやブログを見ていて、食事にこだわりのある方だなと思っていました。当時、お店にアスリートの方もよくいらっしゃっていたので、ただおいしいだけの料理を提供するより、資本となる体のコンディションから作り上げていくような食事を提案したいと勉強し始めていたので、長友選手のブログに「食事のサポートをさせてほしい」とせんえつながらメッセージを送りまして。それがきっかけで、今はイタリアで専属シェフとして働いています。
―― 長友選手の食事を考えるうえで重要視していることは?
加藤:いろいろありますが、一番大切なのはバランスですね。本人のコンディションやトレーニング量にあわせてタンパク質の多いメニューにしたり、ビタミンやミネラルを増やしたり。練習場で何を食べたか、どんな練習をしたか、現在の体調はどうかをこまめにLINEなどで報告を受けながら、その日ごとにメニューを決めています。毎食、栄養素の基準値を決めていますので、各基準値の値になるようにメニューを考え、摂取量はすべて記入して管理しています。
―― いろいろと制限がある中、毎日メニューを考えるのも大変じゃないですか。
加藤:食事は毎日のことですから、食べる人が飽きないメニューを考えるのが私の仕事。確かにアスリートの食事はパフォーマンスをあげるために、いろいろと制限はありますが、我慢するのはストレスとなるので、基本的には長友選手が食べたいものをベースに、各栄養素が摂取できるよう工夫しながら作っています。
たとえば、一般的にカレーは高カロリーで糖質が高い料理ですが、長友選手は大のカレー好き。そのため、市販のカレールーを使わず、体によい食材を組み合わせて作るようにしています。すき焼きも白砂糖は使用せずに甘味をおさえ、肉は赤身肉をスライスして入れています。
―― 一家庭でもつくれる長友選手気分を味わえるような「アスリートメシ」を教えてください!
試合後や移動での時差ボケで疲労ぎみのときの夕食
「鶏つくねのクリームスープ」
【材料】(2~3人分)
(鶏つくね/A)
- 鶏むねひき肉 200g
- 卵白 1個
- 塩 2g
- オリーブオイル 10g
- 玉ねぎ 200g
- 鶏ガラスープ(市販品で代用可) 250g
- ヨーグルト 50g
- 生クリーム 100g
- 味噌 3g
- 万能ねぎ 適量
【作り方】
- 鍋にオリーブオイルを引き、スライスした玉ねぎを入れてきつね色になるまで加熱する。
- 鶏ガラスープ、ヨーグルト、生クリーム、味噌を入れて弱火で5~10分煮込み、ミキサーで滑らかにする。
- 鶏つくねを作る。ボウルに「A」を入れてこねる。
- 「2」のスープを鍋に戻し加熱しながら、鶏のつくねを入れて火が通ったら完成。
加藤:イタリアアウェー移動やインテルの国外合宿などフライトが多いため、ジェットラグで疲れているときは温かいスープを出します。また、試合後で興奮しているときもスープを作ることが多いですね。鶏つくねは、胸ひき肉を使い脂質を少なめに。クリームの白さで視覚的にリラックス効果を出すようにもしています。
昼食でホッと一息するためのソウルフード
「魚と浅利の味噌汁」
【材料】(2~3人分)
(魚のブロード<だし>/A)
- 魚のアラ 適量
- 昆布 1枚
- 水 1リットル
- 香味野菜(ねぎ、セロリ、パセリ茎)
- 白身魚 半尾
- あさり 10個
- 生のり 5g
- 魚のブロード(A) 250g
- 味噌 適量
- 万能ねぎ 適量
【作り方】
- 魚のブロードを作る。魚のアラの血合いをきれいに水洗いする。
- 鍋に水、昆布を入れて強火で沸騰させた後、魚のアラを入れる。再沸騰したらあくを取り除き弱火にする。
- 香味野菜を入れて弱火で10~20分加熱し、裏ごしして完成。
- 新しい鍋に魚のブロード、あさりを入れて火にかける。貝が開いたら味噌を入れる。
- 白身魚を入れて火が通ったところで火を止め、生のりを加えて器に盛りつける。
- 仕上げに万能ねぎをあしらう。
加藤:イタリア・ミラノは漁港があり新鮮な魚が豊富なので、夕食は魚料理でタンパク質を取ることが多いです。そこであまった頭や骨を活用し、魚のだしで作った味噌汁は長友選手から大好評。魚のだしを使用すると塩は少なめでよく、昆布を加えることでアミノ酸が豊富となり栄養満点。発酵食品も積極的に取り入れるようにしています。栄養面はもちろんですが、長友選手曰く「幼い頃から慣れて親しんだ味噌汁を飲むと、気持ちが落ち着いて安定する」そうです。
昼食や試合後には大好物の“甘め”のカレー
「カレーライス」
【材料】(4~5人分)
(豚マリネ/A)
- 豚ひき肉 400g
- 塩 4g
- にんにく 1/2片
- 黒コショウ 少々
- 赤ワイン 20g
- オリーブオイル 10g
- 玉ねぎ(みじん切り) 400g
- オリーブオイル 10g
- 玉ねぎ 500g
(ベーススープ)
- オリーブオイル 10g
- 鶏ガラスープ(市販品で代用可) 500g
- 塩 5g
- にんにく 1/2片
- カレー粉 15g
- ラカントS(自然派甘味料) 10g
(付け合わせ野菜)
- アボカド 1/3個
- マッシュルーム 2房
- ブロッコリー 2房
- パプリカ 適量
- ブロッコリースプラウト 適量
- 白米&玄米 100g
【作り方】
- 豚ひき肉をマリネする。ボウルにAの材料をすべて入れてよくこね冷蔵庫で一晩寝かせる。フライパンを強火で熱し、オイルを引かずに焼く。
- フライパンにオリーブオイルを引き、粗みじん切りにした玉ねぎをきつね色になるまで加熱する。
- ベーススープを作る。鍋にオリーブオイル、にんにくを入れてきつね色になったら、カレー粉を入れる。ラカントS、塩を入れてじっくり甘さを引き出しながら加熱。鶏ガラスープをいれて全体をなじませたらミキサーで攪拌(かくはん)する。
- 「1」「2」「3」を鍋に入れて全体をなじませながら弱火で加熱し味を調える。
- 白米&玄米にカレー、付け合わせの野菜(マッシュルーム、パプリカは軽くソテー、ブロッコリーはゆでる)を添えて完成。
加藤:長友選手はカレーが大好物。スパイシーなものよりも、家庭の味に近い甘めのものが好みということで、玉ねぎで甘さととろみを出すようにしています。ポイントは、市販のカレールーを使わず、油脂の量を最低限に。タンパク質食材の豚肉と野菜で栄養バランスを考えています。長友選手は糖質を取りすぎないよう、1杯目は白米&玄米、2杯目は蒸し野菜にカレーをかけて食べていますね。
仕事で疲れたときは、スープで胃腸を整え、疲労回復!
―― 最後にアスリートではないですが、仕事の疲労を回復するためにおすすめのメニューはなんでしょうか。
加藤:夜遅く仕事から帰ったときはスープがおすすめです。レシピを紹介したクリームスープでもいいですし、味噌汁でもいいです。温かいスープは胃腸を休める作用があるので、寝る前に食べるには適したメニューですよ。
―― もうひとつ最後に、メタボを脱出できる食事法として「まず、これをやれ!」というものを教えてください。
加藤:外食の際にごはんの量を半分にすることから始めてはどうでしょうか。日本に戻って外食の際に思うのは、定食などで出てくるごはんの量。運動していない人にとっても比較的多い分量だと思うので、ごはんの量は普通盛りより少なめにして、魚料理を一品追加するだけで栄養バランスが良くなりますよ。
参考書籍
『長友佑都の食事革命』 長友佑都 著 (マガジンハウス)
セリエAのインテル・ミラノ所属の長友佑都さんが実際に取り組んだ、カラダが劇的に変わった「食事革命」を紹介。
書いた人:中屋麻依子
21歳で物書き稼業に足をつっこみ、気が付けば10数年。漁師から起業家、ハリウッドスターまで述べ10000人以上にインタビュー。ウマいメシと至福の一杯のために物を書くをモットーに日々、文章と戯れ中。座右の銘は「酒の誘いは断るな」。