山口名物「瓦そば」の瓦にはどんな意味が隠されているのか

山口のそばはせいろではなく、瓦に乗って出てくるらしい。しかも熱々の瓦。もちろん瓦の上のそばも熱々。豚肉と錦糸卵が乗っていて、麺の焼けた部分がパリパリで美味しいらしい。でもなぜ瓦にそばをのせるのか。山口・下関「元祖 瓦そば たかせ 川棚本館」でそのあたりを聞いてきた。

エリア下関市その他 (山口)

f:id:Meshi2_Writer:20161223140552j:plain

「瓦そば」の瓦に意味はあるのか

「恋ダンス」で話題を呼んだ、TBS系ドラマ『逃げるは恥だが役に立つ』。ドラマは最終回を迎え、世に多くの平匡ロスを生み出してしまいましたね。

もう少しドラマの余韻に浸りたいと、録画していたものを第1話からまた見ていたところ、気になるものが……。

劇中で主人公・平匡(ひらまさ)の子ども時代の思い出の食べ物として出てくるのが、山口名物「瓦そば」! 

山口県民でなければ、なじみのない「瓦そば」。調べたところ、どうやら本場山口では名前の通り瓦の上にそばを乗せて食べるそう……。

ドラマでもお皿の上に乗せて普通に食べてたし、

いったいどんな味なのか?

というか、わざわざ瓦の上に乗せる意味あるの?

結局、味は一緒では……。

 

そんな疑問を感じ、瓦そば発祥のお店である山口下関市「元祖 瓦そば たかせ」に取材に行ってみることにしました!

f:id:Meshi2_Writer:20161223112111j:plain

 

ふぐで知られる下関市の中でも、温泉地の川棚という場所です。

f:id:Meshi2_Writer:20161222191930j:plain

 

以前は民家で、築100年ほどになるそうです。

f:id:Meshi2_Writer:20161222191952j:plain

 

なんだか純和風で風情を感じる建物ですね。

f:id:Meshi2_Writer:20161222192143j:plain

 

お店の方にアノ質問をしてみると

お店の方に取材とお伝えしたところ、事務室に案内してもらいました。

f:id:Meshi2_Writer:20161222170742j:plain

そして今回お話をうかがったのは統括部長の山本さん。

 

瓦そば発祥のお店ということで、まずは「瓦そば」が生まれた経緯についてお聞きしました。

 

フグで有名な下関ですが、ここ川棚温泉にも何か名物をつくりたいと、創業者の高瀬慎一が考えていました。そんなときに、古老から「西南戦争では薩摩軍の兵士たちが合戦の合間に瓦で肉や野草を焼いて食べていた」という話を聞き、瓦を使ってうどんや日本そばなどを試しに焼いてみたようです。そうして最終的に、現在お出ししている茶そばに行き着きました。茶そばを焼くなんて発想はどこにもなかったのですが、焼いてみるとお茶の香りが広がります。それに真っ黒な瓦の上に、緑の茶そば、黄色い錦糸卵と彩鮮やかで見た目にも美しかったんですね。(山本さん)

 

f:id:Meshi2_Writer:20161223115500j:plain

▲「元祖 瓦そば たかせ」創業者の高瀬慎一さん(写真左)

 

ほ〜。「瓦そば」が誕生したのは今から65年ほど前だそうですが、もっと昔の明治時代の逸話にヒントを得ていたとは!

こうして生まれた「瓦そば」は山口名物となっていますが、実際に山口県民の間には根付いているのでしょうか?

 

はい。この辺のスーパーでは店内の一角に「瓦そばコーナー」が設けてあって、茶そばやつゆ、もみじおろしが売られています。一般のご家庭で多いところでは週に1度、食卓に出てくるほどなじみあるものですよ。(山本さん)

 

すごい! 川棚温泉を盛り上げようと考案した「瓦そば」を、しっかり地元の食文化として根付かせたのですね。

さすがに、ご家庭で作る際には瓦の代わりにお皿の上に盛り付けるそう。お店では本物の瓦を使っていますが、この瓦はどこから入手しているのですか?

 

最近の家の瓦は塗料が塗ってあって食器としては適さないので、古い民家やお寺を解体するときに提供してもらっていました。ただ、瓦は消耗品なので次から次に必要になる一方で、古い瓦自体が減ってきていまして。瓦不足の時期は悩みましたが、元祖のお店がお皿で出したらまずいじゃないですか。どうにか瓦で出したいと、瓦の産地として有名な島根県の石州瓦さんに10年ほど前からお願いしています。(山本さん)

 

「元祖 瓦そば たかせ」は現在ここ川棚を中心に6店舗あり、各店舗に常時50枚は必要とのこと。年間500枚もつくってもらっているそうです。

そんなに作れば当然、手間もコストもかかるはず。山本さんとも打ち解けてきたところで、いよいよ一番聞きたかったアノ質問をしてみますか……!

 

「すいません、大変恐縮なのですが……

そこまでして瓦で出す意味、実際あるんですか!?

 

さぁ、どう出るか……!?

f:id:Meshi2_Writer:20161223170253j:plain

「ええっと……(やや斜め上に視線をそらして)」

 

気のせいか山本さん、目が泳いでいる様子。

……と、思いきや、

 

瓦には遠赤外線効果があるので、保温性に優れており、時間が経っても熱々の状態でいただけます。さらに、瓦に接した部分がまるでおこげのようにパリパリに仕上がるんんです!(山本さん)

 

なるほど。瓦を使っていたのには見た目のインパクト以上にちゃんと理由があったのですね!(山本さん、大変失礼いたしました)

 

見た目はインパクト十分!

気になっていた疑問も解消したところで、調理現場を案内してもらいました。

f:id:Meshi2_Writer:20161223135751j:plain

まず瓦を直火にかけて300度近くまで温めます。  

 

f:id:Meshi2_Writer:20161223135711j:plain

その間に隣の鉄板で麺を炒めます。お店の方の手際がものすごく早い! 

 

f:id:Meshi2_Writer:20161223140616j:plain

そして温まった瓦の上へ! 

 

熱々の茶そばに錦糸卵や牛肉を加え、ネギに海苔、レモン、最後にもみじおろしを添え、出来上がったものがこちら。

f:id:Meshi2_Writer:20161223140552j:plain

▲元祖 瓦そば 1,080円

 

色鮮やかでお美しい!

 

パリパリともちもちの競演

なんといってもこの「瓦そば」、目の前で実際に見る瓦のインパクトは想像以上!

というか瓦そのものがデカイ!!

f:id:Meshi2_Writer:20161223164454j:plain

隣のスマホと大きさを比べてみてもご覧の通り。

1つの瓦で3人分は乗せることができるそうです。

 

テーブルに運ばれてきた「瓦そば」からが鳴り響くジュージュー、パチパチという音。

茶そばの上品な香りや牛肉の香ばしい香りにテンション上がります!

 

麺は北海道の音江産そば粉に、京都で最高品質の高級宇治抹茶を練り込んだもの。

ネギは香りと甘味が日本一とされている下関安岡産ネギ、のりは山口宇部のものが使われています。

f:id:Meshi2_Writer:20161223162547j:plain

かつおと昆布の深み豊かな、たかせ秘伝のめんつゆにつけます。つゆも温かです。

瓦で焼かれたパリパリのおこげと、麺のもちもちした食感が口の中でハーモニーを奏でます。さらに少し甘めなつゆを吸っていて、あっさりしつつもコクのある上品な味を演出。

 

最後まで熱々なのに感激

お店の方のおすすめで、途中からめんつゆにレモンともみじおろしを加えます。

f:id:Meshi2_Writer:20161223164048j:plain

こちらに麺をつけて食べてみると……

 

おっと味変!

ピリッとした辛さと爽やかな酸味が加わりました。

 

通常、グルメ取材では話を聞いたり、撮影をしながら食べるので、いつも最後の方は冷えた料理を食べているのですが、さすが「瓦そば」! さきほどの山本さんがおっしゃったとおり、ずっと熱々の状態でおいしいまま、完食させていただきました!

 

ちなみに「元祖 瓦そば たかせ」では通信販売もやっているので、注文すれば「瓦そば」をご自宅でも作れます!

 

『逃げ恥』に登場した直後には通販の注文が殺到したそうですが、やはり本場の味は格別。是非山口の川棚まで足をのばし、本家本元の「瓦そば」を食べてみてください。お盆や年末年始には県外からのお客さんが多く訪れ、お店の前に行列ができるそうですよ。

f:id:Meshi2_Writer:20161223165736j:plain

 

お店情報

元祖 瓦そば たかせ 川棚本館

住所:山口下関市豊浦町大字川棚5437
電話番号:083-772-2680
営業時間:11:00~20:00(最終受付 19:30)
定休日:木曜日、金曜日(祝日の場合は営業)

※この記事は2017年1月の情報です。
※金額はすべて税込みです。

 

書いた人:栗山遼(くりやまりょう)

f:id:Meshi2_IB:20161028103855j:plain

1989年生まれ、福岡出身の編集者・ライター。「働き方を変えた人たち」を特集したリトルプレス『HOWLAND』を創刊。ライターとしては雑誌『ケトル』、ウェブサイト『福岡移住計画』などで執筆経験アリ。和食好きです。

過去記事も読む

トップに戻る