
こんにちは! メシ通レポーターのタベアルキストOtaniです。
この企画は、こだわりの食材と情報誌が届く『食べる通信』を取り寄せ、どんな食材なのか実際に食べてみよう! という企画です。
『食べる通信』とは
一般社団法人日本食べる通信リーグが全国展開している食材付き情報誌。
会費制で、読者になると各地域における農水産物の生産者に焦点を当てた特集記事を掲載した冊子と、彼らが収穫した食物がセットで定期的に届けられる。
突然ですが、魚がおいしい国・日本……「魚を食べることにかけては世界で一番!」と思っている方は多いのではないでしょうか?
筆者もいろいろな国を巡った結果、「国ごとの魚料理の魅力」については千差万別なので一番を決められないものの、単純に「魚のおいしさ」で言うと日本が一番だと信じております。日本ほど魚の捕り方、締め方、輸送方法など全てに気を使い、魚の鮮度を重要視している国はまれだと思います。
しかし、近年、乱獲によって漁獲量が激減しているのはご存知でしょうか? 漁業大国である日本は、技術に任せて魚を捕りすぎてしまい、今や絶対数が減ってしまっている状況にあります。生物学的に魚が種を維持することの出来る、ボーダーラインを超えた漁業を行っている現状……ショッキングですが、これは魚好きの日本人として受け止めなければならいない現実なのです。
さて、冒頭は少し重々しい内容で始まりましたが、『イサリビ - 未来も魚を食べるぞ通信』の編集長である堀田幸作さんは、あくまでも爽やかに目的意識を語っておられます(以下、編集後記より要約)。
「資源管理の話になると、『漁師が』『消費者が』『水産庁が』と、それぞれが別の立場を否定することをよく目にします。それがダメだと言っているのではないのですが、僕らのスタンスではないなと。(中略)誰かを否定している限りはきっと何も変わらない。現状の課題を解決して未来を良きものにしたいなら、自分が変わることから始めるのがいいと思うんです。(中略)より多くの人がアイデアを出し合い明るい未来を作っていけたら素敵だと考えるのです!」
「サステイナビリティ」と言うと少し不明瞭ですが、このような考え方で、自発的に人が動き、現状を変える大きなうねりになっていけば良い……僕も堀田さんの考えに心からの同意を覚えました。
『イサリビ - 未来も魚を食べるぞ通信』とは

今回は、2017年1月に創刊された、テーマ型食べる通信である『イサリビ - 未来も魚を食べるぞ通信』をご紹介します。
こちらは、消費者が意識を変えることでサイテイナブル(持続可能)な魚との付き合いを考えて行こうと言う、非常に魅力的なテーマに基づく『食べる通信』です。
それでは、いつものように調理と実食をご紹介したいと思います。
『イサリビ - 未来も魚を食べるぞ通信』創刊号の「もの凄い鯖」
インパクトあるネーミングの「もの凄い鯖(サバ)」。茨城県波崎の干物職人・越田さんの手による鯖の干物となります。越田さんは、鯖1尾あたり6〜7秒でおろすと言う凄腕。お店(越田商店)は昭和22年(1947年)から続く老舗で、今も昔ながらの製法で手作りの干物を作っておられます。しかし、長い歴史の中で、越田商店は昭和54年(1979年)頃に存続の危機に陥りました。鯖の水揚げ量が激減すると共に、満足出来るクオリティーの鯖が手に入らなくなってしまったのです。
その後、越田さんはノルウェーの鯖を紹介され、使用してみたところ国産の一般的な鯖をしのぐ魚体の大きさと脂の乗り。今ではノルウェーの鯖を安定的に使っておられ、それこそが「もの凄い鯖」となります。
ノルウェーの鯖と鯖漁がなぜ凄いのか? 『イサリビ - 未来も魚を食べるぞ通信』創刊号では編集長がノルウェーに飛び、渾身(こんしん)の取材を行っておられます。非常に面白く、目からうろこの情報が目白押しなので、関心を持たれた方は是非とも一読してみてください! 本記事は、調理取材がメインなので、解説はここらへんで止めておきます……。
「もの凄い鯖」は良質なノルウェー産の鯖を用い、越田さんが手でおろし、45年の秘伝の漬け汁で作り上げた干物。干物ですが非常にジューシーでおいしいため、イタリアン、フレンチなどで積極的に使われております。
そんな「もの凄い鯖」を使い、今回は2つの料理を作ってみました。こちらの『食べる通信』が凄いところは、レシピも妥協していないところ。レストラン・Grisの鳥羽シェフとLA BONNE TABLEの中村シェフのレシピが紹介されており、「鯖の干物」を用いてこんな料理が作れるのか! と作る前からテンションが上がりました。
1品目は「もの凄い鯖」のドフィノワ!
こちらが鳥羽シェフのレシピ。ドフィノワとは牛乳と生クリームを使ったジャガイモのグラタンですが、今回のレシピはそこに鯖が用いられております。鯖と牛乳と聞くと、日本人にとってはおいしいイメージが浮かばないかもしれませんが、作ってみるとこれが抜群のおいしさでした!
まずは、材料の準備。

付け合わせの野菜はお好みで……とのことでしたので、ブロッコリーのスプラウトと季節ものの菜の花を使用しました。

「もの凄い鯖」は頭を落とし、ジャガイモは5mmくらいの幅で輪切りに。

そして、牛乳200ml、生クリーム100ml、塩を混ぜ、ジャガイモを投入して弱火で煮込みます。
大体10分~15分くらいで柔らかくなりますので、その間に「もの凄い鯖」を焼きます。
同時に、オーブンを250~280℃に温めておくと、後がスムーズです。

フライパンに軽く油を引き、皮目から焼きます。

皮がパリッと焼けたら、ひっくり返して熱を通します。後でオーブンで焼くため、完全に火が通らなくてもOKです。

鍋のジャガイモに火が通ったら、耐熱皿に半分にカットしたニンニクをこすりつけ、

ジャガイモとソースを交互に重ねます。

そして、その上にカットした鯖を敷き詰め、

とろけるチーズを乗せ、パルミジャーノレッジャーノチーズを削って、オーブンで12~15分焼きます。
目安はチーズにこんがりと焼き目が付いた頃。

焼き上がり!

最後に、お好きな野菜を盛り付け、砕いたクミンシード、カレー粉を軽く振り掛けて完成!
いただいてみると、「もの凄い鯖は」確かにもの凄かった。力強い香りとパンチのある脂のうま味が持ち味で、実に雄々しい味わいです。
ミルクの甘み、ジャガイモの甘みと香りが一体化したソースに鯖のうま味が加わり、新境地のおいしさ。力強い味わいの濃厚ソースですが、鯖がタフなので巧く調和している印象です。

パリパリチーズの香ばしさとカレーの香りも食欲を加速させ、一気にいただいてしまいました。
2品目は「もの凄い鯖」の塩焼きそば!
こちらが中村シェフのレシピ。ほぼ鯖から出る脂のみで炒めるので、おいしい部分を活かしきる焼きそばです。

ニラ、青ネギは5cmくらいの長さに、エノキは食べやすい長さにカット。

プチトマトは4分の1にカットします。
この焼きそばは、鯖と麺を最初別々に炒めるところがポイント。

まずは油を薄く敷いたフライパンで、麺を弱火で焼き上げます。麺は焼きそば用の蒸し麺で。

フライパンよりも中華鍋(鉄鍋)の方がよく焼き目がつくので、おいしく仕上げられます。

別のフライパンに油を薄く敷き、鯖を皮目から焼きます。これはドフィノワと同じです。ただ、冒頭の通り鯖の脂で炒めるところに妙があるので、油は少なめにしてください! 鯖から十分脂が出ますので!

焼き上がった鯖は粗くほぐします。
このタイミングでヒレや小骨を取り除くと良いでしょう(元々骨が少ない干物なので、気にならない人は骨を無視してOKです)。

そして、プチトマトとエノキを加えて炒めます。

次に、他の野菜を投入。

最後に焼いておいた麺を投入し、軽く水(もしくは酒)を振って炒めます。
味見して、塩で調味しましょう。少し薄口醤油を使っても香ばしさがアップして良いと思います。

完成!
好みで唐辛子や黒胡椒を振っていただきましょう。
鯖が良いのでパンチがあり、プチトマトの酸味が鯖の脂に軽やかさを与え、爽やかにまとめてくれます。
麺との一体感が高いのも、干物ならでは。干物を使用したレシピとして、ドフィノワとはまた異なる発見がありました!
【おまけ】日本人なら食べたい鯖の塩焼き

冊子掲載のレシピにはありませんが、日本人として焼き物もいただかないわけにはいきません(笑)。
味付けせずにそのままいただく焼き物は、フライパンではなくグリルで焼いた方が確実においしいです。丁寧に焼き上げた「もの凄い鯖」は、鯖の力を感じさせてくれる力強い味わい。腹身は脂が乗っており、背の方の身は肉厚でジューシー。ご飯が一瞬で消滅しました(笑)。
いただいた感想としては、和洋問わず活用出来る存在感にビックリしました。
個人的には、脂がノリノリなので、西洋料理の凝った調理で威力を発揮する鯖だと思います。
最後に、「もの凄い鯖」の魅力に触れることで、『イサリビ - 未来も魚を食べるぞ通信』が今後発展し、世の中のメインストリームに一石を投じることになれば……と感じた次第です。
次はどんな食材で、どのような切り口で問題に切り込むのか、今から楽しみです。
今後もご紹介してきますので、楽しみにしていてください!
※ 国産の鯖よりもノルウェー産が絶対的に良いと言うわけでは決してなく、国産の鯖でも素晴らしいモノが揚がっております(国産の価格は段違いで高級です)。本記事の趣旨はあくまでも漁獲量、魚の質、脂の両、価格等を総合的に考慮した上で成立しております。
※この記事は2017年2月の情報です。
参考情報
イサリビ:『イサリビ – 未来も魚を食べるぞ通信』 ※現在休刊中
「もの凄い鯖」ショップ
越田商店:越ちゃんの干物



