近年東京でひとつのブームを巻き起こしている、山形発祥の「冷やしラーメン」。都内のラーメン店でも提供されている他、コンビニラーメンとしてもとてもポピュラーな存在となりました。暑い夏にこそ食べたい冷やしラーメンですが、その誕生秘話と正しい食べ方をご存知でしょか? 山形在住のメシ通ライター、矢口がお教えします!
ラーメンブロガー注目のお店、山形県天童市「麺屋いばらき」
冷やしラーメンの誕生秘話を探るべく、山形在住の私が訪ねたお店がコチラ。天童市にお店を構える「麺屋いばらき」です。
ラーメン消費量日本一を誇るラーメンの激戦区、山形において今ラーメンブロガーが最も注目するお店のひとつなんですよ。
モダンな雰囲気のお店の暖簾をくぐると、そこには威勢のいい声で出迎えてくれるイケメン店主・茨木一学さんがいました。
噂では、店主目当てに訪れる女性ファンも多いのだとか。ここだけの話……店主はまだ独身だそうです。
さっそく目的の冷やしラーメンを注文することに。それがコチラ。
「おろし中華(600円)」
鶏ベースの透き通ったあっさり醤油スープに、コリコリとした歯ごたえの親鶏のチャーシュー、大根おろしがのっています。いわゆる一般的な冷やしラーメンとは違ったタイプのラーメンですが、ここを取材先に選んだのにはワケがあります。まずは店主に、元祖冷やしラーメンの誕生秘話をうかがってみました。
冷やしラーメンのルーツは山形市のそば店だった
冷やしラーメンは、山形市にお店を構えるそば店「栄屋本店」が発祥なんだとか。戦後、とある常連客の「冷たいそばがあるんだから、冷たいラーメンがあってもいいだろう」という一言がきっかけでメニューを開発したそうです。
ただ、一番苦労したのは、スープの脂が固まってしまうこと。そこで約1年ほどかけて研究と試行錯誤を重ね、
知られざる冷やしラーメンのもうひとつのルーツ
さて、なぜ私が今回の取材先としてこちらのお店を選んだか、それは知られざる冷やしラーメンのもうひとつのルーツがここにあるからなのです。
「麺屋いばらき」店主のご実家は、山形県河北町のラーメン店。河北町といえば、ご存知の方もたくさんいらっしゃるかもしれません。近年B-1グランプリを賑わせている"冷たい肉そば"発祥の地なのです。
“冷たい肉そば”のお店が軒をつらねる河北町で、今もラーメン店を営んでいる店主の親父さん。
その昔「“冷たい肉そば”があるんだから、冷たいラーメンがあったっていいだろう」と始めたのが、さきほど写真でご紹介した「おろし中華」なんだとか。あれ? どこかで聞いたセリフです。
今では、来店するお客さんのほとんどがこの「おろし中華」を注文するそうで、その好評ぶりが美味しさを物語っています。
こちらも研究と試行錯誤を重ねて、脂が固まらない絶妙な温度管理を編み出したのだとか。その親父さんから秘伝の製法を受け継ぎ、「麺屋いばらき」では開発者直伝のラーメンとして、「おろし中華」を提供し続けているのです。
冷やしラーメンの“正しい食べ方”とは?
ちなみに、元来山形のそば店は、仕事のあとに一杯やるお店という居酒屋文化があります。
以前、河北町ではそばの他に馬肉の煮込みを提供していたそうです。とある常連客がそれをそばの上にのせたことがきっかけで、冷たいかけそばの上に肉と刻みネギがのる、今の“冷たい肉そば”のスタイルに発展したのだそう。
つまり、上に乗る肉と刻みネギをつまみながらお酒を飲み、最後のシメにそばをすするのが“由緒ある正しい食べ方”なんだそうです。お酒を飲みきる最後まで、麺が伸びないようにするために冷やしたというのが、冷やしラーメンの本当の誕生秘話なのかもしれませんね。
「さすがに今の時代、そんな食べ方されたら困りますけどね……」
そう冗談まじりに言いながら、笑い飛ばす繁盛店の店主。お店が空いているときに、山形の美味しいお酒を飲みながら、一度チャレンジしてみても面白いかもしれませんよ。
近年ブームを巻き起こしている冷やしラーメンには、そば店の常連客が発した思わぬ一言と、山形の居酒屋文化にルーツがある、冷たくもあたたかい誕生秘話がありました。
この夏は是非、山形の冷やしラーメンを食べてみてはいかがでしょうか?
お店情報
麺屋いばらき
住所:山形県天童市北目3−8−3
電話番号 :090-8922-5849
営業時間:11:00〜14:00、夜営業 18:00〜20:00(月火金土のみ)
定休日:木曜日
※金額はすべて消費税込です。
※本記事の情報は取材時点のものであり、情報の正確性を保証するものではございません。最新情報はお電話等で直接取材先へご確認ください。