男のスイーツ研究 ~杏仁豆腐を華麗にメタモルフォーゼさせる~

唐突ですが、皆さん杏仁豆腐は好きですか?

僕は杏仁豆腐が大好きです。

 

しかし、世の中ではプリンやゼリー、はたまたヨーグルトほどには、市民権を得ておらず、応用がさほどきかないため肩身の狭い杏仁豆腐。しかも、牛乳プリンとか言う似た見た目の輩まで現れているわけじゃないですか。

 

なので、今回は愛してやまない杏仁豆腐をネクストステージに引き上げて、杏仁の魅力を広く皆さんに知ってもらいたいのです。そのためには、まず杏仁を地球の引力から解放し(ものの喩えです)、汎用性の高さを見せつけることこそ、この研究企画の趣旨とします。

 

以下は、その戦いのレポートです。 

 

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で、まずはスーパーで杏仁豆腐を購入。実際にはカップのものを買ったが、このフルーツ杏仁も結構好き。

 

さて、杏仁豆腐と、メジャーなスイーツとのコラボレーションの可能性を模索していこうと思う。

 

今回、コラボしてくれるのはこの皆さん。 

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時計回りに、ワッフル、エクレア、どら焼き。

エクレアはチョコのものが一般的だが、チョコのコーティングをはがすのに失敗しそうなので、これに。生クリーム、カスタードクリーム、あんなど、スイーツの王座に君臨するスターたちを内包する彼らには何の恨みもないが、中身を徹底的に剥ぎ取ることに。

 

みんな、今日だけは杏仁と一緒に食べさせてくれ! ごめんよ!!!

 

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このように内部をくりぬいた。

みんな恥ずかしそうである。

 

「食べ物で遊ぶな」という声が聞こえてきそうだが、中身部分はパンケーキを焼いて、塗って食べた。これはこれで、すごくおいしかった。

 

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 同時に杏仁の水っ気を抜いておく。

 

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地味な作業が続く…。

 

作業開始から30分。杏仁の活躍ぶりが壮観だ。

さっそく「杏仁withワッフル」から試食を開始する。

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……な、なにコレ! うまい!

 

ふわふわの市販のワッフルとなめらかな杏仁の夢のコラボは、両者が互いに歩み寄りながら、各々の矜持を失わない素晴らしさ。実に安定感がある。商品化したらヒット間違いナシの味で、思わず鼻の下が伸びる。幸先の良いスタートだ。

 

すぐさま次のどら焼きに挑戦しようとすると、袋の裏にこんな表示が…。

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ん?

レンジで温めるとおいしくなるというのか、どら焼きよ!

やるとも、やるに決まってる!

 

600Wで30秒後に取り出すと…

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杏仁豆腐が溶けだしていた。

しかし、杏仁好きにとっては、これしきのことは想定の範囲内。ちゃんとラップを巻いた甲斐があったというもの。「どら焼きfeat杏仁」の誕生だ。

 

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ホットケーキのように食べる。

 

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コレも…すげえうまい!

 

どら焼きをホットケーキ風の味に変えてしまうほどの、杏仁豆腐の隠れたポテンシャルの恐ろしさ。今後、ホットケーキはシロップではなく、杏仁で食すのがスタンダードになるのでは!? と思わせるほどの最高のマッチアップだ。

 

この進化っぷりは、ワケの分からんゼリー状の食べ物で、杏仁豆腐を作った敵を打ち負かしたミスター味っ子が気の毒になるレベルの美味しさだ。

 

これはイヤでも、エクレアへの期待が高まる…。

 

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すでに底のシューから杏仁が漏れ出てきた「杏仁plusエクレア」。

意外に脆いんだな。

 

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ん……コイツは……! 完全なる失敗ッ!

 

シューの味と杏仁の味がまるで合わないという一点に尽きる。あと食べにくさもワーストである。ひと噛みごとに大事な杏仁がボロボロ零れ落ちるそのさまは、ただ心が痛む。バンドの解散みたいなもので、「お互いがそれぞれの道を歩んでいく」方がいいような気がする。杏仁とシュー生地は、互いのために一緒にいない方がいい。

 

ふう……。気を取り直して、単独のスペックを引き出す第2実験。

実は、冷凍庫に入れておいた杏仁を取り出してみる。

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凍らせた杏仁豆腐こと「ザ・杏仁アイス」。

 

こういうアイスが世に出たこともあるのだろうが、杏仁を凍らせるだけでも作れるお手軽さでしかも美味しいではないか。杏仁の水分がシャーベット上の触感を実現していて、この夏場にぜひ試してほしい味わいだった。

 

さらに、杏仁豆腐メタモルフォーゼ計画の最終実験を準備しておく。

この日は、一日の杏仁摂取量を超過してしまって(食べ過ぎて気持ちが悪いので)、翌日食べる用に作る……。

 

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麻婆豆腐をレトルトで作る。

 

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狙うは、「麻婆“杏仁”豆腐」。

本家「豆腐」の寝首を掻く、まさに革命前夜。凍らした杏仁を麻婆のソースになじませる。

 

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……これは期待高まるクリーミーな色! フルーティーな香り!

「おら、ワクワクずっぞ!」という野沢雅子先生の声がリフレインする。

若干、不安がないわけではないけれど、杏仁豆腐と心中してもいいというほどに気分が高揚していく。

 

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そして、翌日。

左が眠れる獅子、「麻婆“杏仁”豆腐」

右は比較のために通常の豆腐で作った、旧世代の麻婆豆腐

 

「麻婆“杏仁”豆腐」は、昨日作ったソースの上に、どら焼きの際の教訓を活かし、麻婆を多少冷ましてから、プッチンプリン方式に杏仁を乗せてみた。量が違うのは、前者は杏仁とのミックスを考えて、水の量を少なくしたためで、どちらも三人前。これは杞憂だった。

 

ちなみに、このハート形のガラス椀は僕の愛情表現です。

 

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では、いただきまーっす。パクリ……。

 

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……………。

……ん、何コレ……?

なんとかしてホメたいが、食べ物としての臨界点を超えて「味のメルトダウン状態」というか、甘さと辛さの綱渡り状態というか……。綱切れちゃってない?

 

特に、ひき肉が杏仁豆腐を殺しにかかってる……。

 

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もはや、杏仁でも麻婆でもない、カオスな甘辛ソースに脳みそがショートしたような表情で、呆然。

 

この島になってる杏仁部分だけを食べると絶妙なバランスで未知の味だなあ!

新手のデミグラスソースというか、パンとかにペーストとして塗ったら成立するかも!

写真を撮ってくれたS氏に次々とうわ言をまくし立てていた……。

 

これは明らかな革命失敗。もう通常の麻婆さん(敬称)のポピュラーさとは比べるべくもない。

しかし、もちろん最後まで食べきった、三人前のキメラを……。

美味しかろうが、そうでなかろうが、僕は杏仁豆腐がいつだって大好きだからだ。

 

麻婆さんと杏仁の間には、こんな声が聞こえてくる。
(麻婆“杏仁”豆腐)「マーちゃん、俺たち終わっちゃったのかな」

(麻婆さん)「バカヤロー、まだ始まっちゃいねえよ」

 

P.S

麻婆さんには再び冷蔵庫で眠ってもらって、この日の夕食にしました。

 

書いた人:川内史広

川内史広

編集者。神奈川県出身。引きこもり体質。好きな食べ物はいつも杏仁豆腐とバウムクーヘンとカツ丼。好きな女優はいつだって森下愛子。日本映画が好き。泳ぐのも好き。あとは色々変わる。夜中に自転車に乗りながら歌を歌う人が嫌いです。

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