
どうして死んじまったんだ、燃兄(もえにい)・・・

でも、燃兄の遺志、おれが引き継ぐよ。

そう、この・・・

燻 煙太郎(いぶしけむたろう)が!
世の中に存在する無数の食材たち。
焼いたり、煮たり、揚げたりと、その調理方法はすでに出尽くされているようにも思える。
しかし、本当にそうだろうか。
それぞれの食材が持つポテンシャルを、それらの調理法は最大まで引き出すことができているだろうか。
否!
人々はもうひとつ、大切な調理方法を忘れている。
そう、それが……
画像引用:Cai Tjeenk Willink(http://free-images.gatag.net/tag/eruption)
「燻し」である。
煙という自然の脅威を使って食材を加熱しながらチップの香りを付け、口と鼻の狂宴を催す調理法。それが「燻し」だ。
目に付くグルメを片っぱしから食してきた我が人生。

しかし、食の道、未だ極まらず!
これは、男・燻煙太郎が食の可能性を追求するため、まだ世の中に知られていない、燻して美味い食材を探し出す物語である。


燃兄、見ててくれよな!
ということではじまりました。こんにちは、燻煙太郎(いぶしけむたろう)です。
前回までこの企画を担当していた炙燃太郎(あぶりもえたろう)ですが、大人の事情で死にました。
今回からは燃太郎の弟弟子、煙太郎が燻製の魅力をご紹介していきます。柔道着が予想以上に高かったので(9,000円)とことん使い倒すために続々と新しいキャラクターを生み出しているわけではないです。本当だよ?
ではさっそく燻していこうと思うのですが、事前に僕が燻しに使用する、とっておきの道具をご紹介しておきましょう。

もうおわかりですね。

誰でも簡単に燻製ができるヤツです。
これ、全国のホームセンターやAmazonで売っている3,000円くらいの燻製キットです。燻製というと準備が面倒なイメージがありましたが、これだと携帯コンロと火を使える場所があれば、誰にでも燻製ができます。

中には燻製に必要な一式がはじめから準備されていて、

組み立てもカンタン(煙太郎はちゃんと日本語読めます)。

その名も「いぶし処」。
まさにこの世は大燻製時代。この燻製キットで、さまざまな食材を燻してまいります。

消火用水の用意を忘れずに!
※煙太郎は特殊な訓練を積んでおり、火の番を怠らず、屋外では水分補給と日除けを心掛け、リアルとソーシャルの炎上および熱中症にも常に気を配っています。読者の方も夏場のロケは特に注意してください。
ここで今回燻していく食材をちょっとだけお見せします。

いぶチラ。
もうこんなの、美味しいに決まってますよね? ここでみなさんに認識をあらためていただきたいのですが、ここからは柔道着を着た男性が様々な食材を燻製にして美味しいものをみなさんにご紹介するお時間です。
※今回は40分間燻します。食材や好みによって燻す時間は調整してみましょう。
はんぺん

手はじめにはんぺんから燻していきましょう。僕ははんぺんが好きでも嫌いでもありませんが、よくよく考えてみたら僕が好きかどうかって白いごはんにあうかあわないかだと今気付きました。
さて、こちらのはんぺんを燻したものがコチラ。

チーズだな?
見た目がなんとなくチーズっぽくなりましたが、このような変化も燻製ならでは。さっそく実食してみましょう。
と、その前に。

燻製ですので、しっかり香りも確かめます。
さくらのチップを使用したのですが、その香りがしっかりとはんぺんに付いています。うん、本当にさくらの匂い。

ということで、パクッ。

うん、うまい。
燻すことによって、よりはんぺんがふかふかになると言いますか。しっとりが抜け、ふかふかがそこにいるんです。そしてそのふかふかがさくらの香りを連れて来たというか。
家に帰ったら、ルームメイトの女の子がかわいいお友達を連れてきていて「この子、親友のさくらちゃん」みたいな。しばらくすると彼女たちの部屋から「さっきの彼、かっこ良くない?」なんて声が聞こえる、みたいな。ルームシェアしたことないんですけれども。
おつまみにぴったりだと思います。これはおそらく、日本酒かな。


関係ないけど胸元が「やらないか」みたいですよね。
イカ

イカです。わりと大きなスルメイカを大胆にも用意しました。
炎天下のなか、腐るのが先か燻されるのが先かの地味な勝負の結果がこれだ!!

すげえ、燻された。
意外にもしっかり火が通っておりまして、これでお腹を壊す心配はしなくてよさそうです。ただし、かなり汁が出たので、チップに汁が落ちないよう配慮が必要かもしれません。

やらなイカ。

わりと肉厚なので匂いはちょっと付かないかも、と思っていたのですが……。

そんなことない!
海産物にはオークのチップを使用してみました。魚などがいい色に仕上がるらしいです。オークにはクセがあまりないのですが、奥深い香りがします。

かぶりつきましょう。

ふおおおおおおおおおお!!!
肝がいい! 肝がすごくいい! ほろ苦い肝のスープにちょい苦な煙の香りがあいまって、オトナな気分のところに肉厚なイカの旨みがドーン! イカの足はサクサク、身はプリプリ。
この気持ちどうしたらいいの、何にぶつければいいの。白いごはんには合わないのでこれも日本酒案件でしょう。こうして少年はオトナへと変わっていくのですね。

アボカド
さて、序盤で最高得点を叩き出してしまったのですが、イカを燻したらうまいに決まっているだろうという心の声も聞こえます。
新しいうまさを開拓せねば燻煙太郎の名がすたる、と思って用意したのがコチラ。

牛の睾丸ではない。
僕、けっこうアボカドが好きなんです。だって醤油とか垂らせば白いごはんに合うじゃないですか。マグロアボカド丼なんていくらでもかっこめるじゃないですか。ああお腹が空いてきた。
白いごはんじゃ~~~!白いごはんを持て~~~い!!!

燻し上がりはこう。
まあ実はアボカドの結果にはあまり心配していなくてですね。だってチーズの燻製ってあるじゃないですか。アボカドも似たようなもんでしょうと思ってですね。

アッ……
ただ匂いはあんまりよくなかったんですよ。青臭さが引き立ってしまった。でも、まあ、期待のほうが大きくて。だってアボカドですから。陸のマグロって言われているじゃないですか。僕がいま考えたんですけど。

ここからは表情のみでお楽しみください。




アー
アー
アー
よくない。この苦いネチョネチョした燻されたやつ、よくない。あんなに美味しいアボカドを台無しにしてしまったことに怒りすら覚えます。駆逐してやる! 駆逐してやる!!!
野菜ってみずみずしさが命みたいなところがあるじゃないですか。そこからみずみずしさを奪うのが燻製じゃないですか。ハテ、これは最初から無理な勝負であったのではあるまいか。

ポテトチップス

箸休めに用意しました、ポテトチップス。そんなに煽ることもないので燻製後はコチラ。

うん、変わらないよね
もう完成されきっているポテチを燻したところで。僕もそう思っていました。

匂いはいいな(チップはさくらを使用しました)。

ほう。

なるほど。
何がなるほどだよこのぽっちゃり柔道着、と思われた方に詳しく説明すると、別に美味しくなったわけではないんです。でも、香りはすごくいいんです。というより、香りそのもの。
クラッカーに何か乗せて食べることがありますよね。クリームチーズとか、パテとか。あれの煙バージョンといいますか。要するに煙が引き立ち、煙のテイスティングができるんです。
これ、いろんなチップを使用した煙で食べ比べて、好みの香りを見つけるのにちょうどいいかも!

パイナップル

最後はパイナップルです。でも、実はこれには理由がありまして。先にバナナを試したんですが、それがめちゃくちゃ美味しかったんです。
燻すことによって不思議とウィスキーみたいな風味になりまして、食感はよりねっとり、甘みが深い上質なバーのお通しみたいで、こいつぁいい燻しメシだと思ったら、すでにありました。ネットにその情報。たくさん。
ということでバナナを超える、燻してうまいフルーツを見つけるべくいろいろと試行錯誤を繰り返した次第です。

南国の陽気なあいつ(イメージ)。

屋台風に割り箸を刺して、

匂いはとても良好です。ちょっと酸っぱい香りはさくらのチップと相性がよく、スモーキィーさくらパインフラペチーノという新商品だと言われても疑いはしないでしょう。われながらなんだか売れそうなネーミングです。
スターバックスさん、一緒にやらないか。


これはすごい、本当にスモーキィーさくらパインなんたらです。バナナのときよりも軽やかな味わいで、でもウィスキーのような上質な香りは健在。
表面はサクサクとしており、噛むほどにスモークされた果汁が口の中に広がります。こんなのバーで出された日には甘酸っぱくほろ苦い夜になることは間違いありません。
これこそが燻し飯だ!

まとめ
世界を変えたいなら、まず自分が燻しなさい。- 燻煙太郎(1986~)
今回ご紹介した燻し飯の数々、いかがでしたでしょうか。個人的には、イカとパイナップルがおすすめです。
燻すという調理方法には蓋を開けてみないとわからないワクワクがあり、仲間とすればひとつのコミニュケーションにもなると思います。みなさんもこれからの季節、BBQなどの際に、燻製にチャレンジしてみてください。

故・炙燃太郎に捧ぐ。
※撮影に使用した食材はスタッフと燻煙太郎がすべて美味しく頂きました。
※燻製を作る際は必ず換気をし、火の元に注意し調理してください
※本記事は2015年7月の情報です。



