「広島のお好み焼きを食べたことある人って、実はけっこう少なくない?」
ってな疑問があるんですけど、どうでしょう?
「進学・就職で東京(および地方大都市)に出るまで食べたことがなかった」という声、よく聞くんです。私(東北出身)も同様で、大人になるまで食べる機会ってありませんでした。
SNSなどで調査してみたところ、「人生で1~2度しか食べたことがない」という人、割と多いんです。
そしてその数回の経験で「まあ、こんなものかー」と思い、再トライしない人も少なくないよう……。
ああ、もったいない!
実にもったいないっ!
食いしん坊のあなたなら、ぜひ知ってほしい。
そして今回ご紹介するお店は、日本酒を愛するあなたにも、知ってほしい!!
「日本酒をやり、つまみを楽しみ、シメに広島のお好み焼きを楽しむ」
そんなお店が、東京・五反田にあるのです。
山手線に乗って行ける「小さな広島」
お店はJR山手線・五反田駅東口を出て徒歩2分ちょっと。
「ほじゃひ ~本格お好み焼きと広島地酒の店~」はこの集合ビルの8階にありますよ。
8階は「ほじゃひ」さんのみ、ドアを開けると大きな鉄板が目に飛び込んできます。
そしてそれを囲むイスにもご注目!
アップにすると……
なんと、広島市民球場で使われていたもの!
「いつかお店を開くときのために」購入されていたのだとか。
席に着くだけでもう広島愛がジンジンと低周波のように伝わってきます。
さっそくご主人に登場願いましょう!
広島生まれ広島育ちのご主人、疋田多賀志(ひきだたかし)さん。
まずはお店を始めようと思われたきっかけから、教えてください!
昔からお好み焼きは好きで、部活の帰りによく食べていました。鉄板でお好み焼きをつくりあげるその技術が凄いなあ……と憧れたり。大学進学で東京に来たんですが、当時は自分の好みの味に出合えませんでした。だったらもう自分でやってみようと思って、ホットプレートを買ってつくり始めたんですよ。でもそれだとやっぱり限界がある。「鉄板で焼いてみたい!」という気持ちが強くなって、卒業してから地元のお店で3年ほど働いたんです。
修業を終えて疋田さんは再び上京、2014年10月にこのお店をオープン。
鉄板の上で繰り広げられる美味しくて優しい野菜料理の数々
こちらのお店、重要なポイントは「野菜メインのおつまみ×日本酒」、これです!
まずはともかく、疋田さんのおつまみの数々をご覧ください。
▲旬野菜の彩りマリネ 420円
「初めての方ならまずこちらをすすめます」という定番の一品。 すりおろし玉ねぎ×リンゴ酢×オリーブオイルのドレッシングはなんとも優しい味わいで、前菜にぴったり。多種類の野菜をこの値段で食べられるの、うれしいなあ。
▲長芋のソテー 甘辛醤油ソース 480円
食感はシャクシャク、皮はカリッと焼かれて、歯ざわりがなんとも楽しい一品。 サーフィンが趣味の疋田さん、よく訪れる湘南や横浜で野菜類を仕入れることも多いそう。「食材に関しては広島県産も当然使用しますが、その時のよりよいものを使用しています」とのことでした。
▲和風コンニャクと観音ネギ 480円
コンニャクはあらかじめ醤油で長時間煮込まれており、仕上げにきざみショウガとともに鉄板で蒸しあげられます。これがなんともいい酒のアテ! 広島の伝統野菜・観音ネギがたっぷりとのせられていますよ。このネギ、クセが強くなく香りが清々しい。
さて疋田さん、つまみを野菜メインにすえたのはどうしてなんですか?
以前にヴィーガン(乳製品など含め動物性食品を使用しない)カフェで働いたことがあるんですが、そこで野菜料理の面白さ、奥深さを知りました。量を食べても、内臓に負担がかかりにくく、食べ疲れない。自分がお客さんに提供したいのは、そういう料理なんです。
「かなり食べて飲んだけど、次の日体が楽だった」なんて感想を持つお客さんも多いよう。週2で通っている常連さんから「野菜を食べる量が格段に増えたからか、健康診断の結果が良くなったよ」なんて言われたこともあるんだそう。
メインは野菜料理ながら、肉料理だってもちろんあります。こちらは横浜産「はまポーク」を使用したウィンナー(780円)。そのほかジャークチキンや豚トロ焼きなどのメニューも用意されています。
ゆたかな広島地酒の世界にようこそ!
広島修行中に日本酒にハマり、地元の蔵をいろいろとまわり歩いた疋田さん。
「そうするうち、日本酒の醸造の面白さ、手づくりの酒の良さに惹かれていきました」
現在もその交流は綿々と続いて、東京出張にきた蔵元さんが集会所として「ほじゃひ」を利用することもあるのだとか。
日本酒でお試しサイズがあるの、嬉しいなあ。
こちらは個人的に大好きな「天寶一」(てんぽういち)。広島の酒とひと口に言っても、香りも味わいも本当に様々ですね。
日本酒を試してみたいけど、「どう頼んだらいいかわからない」という場合はまずは疋田さんに相談してみましょう。「注文したおつまみに合わせて、1種類ずつお試しサイズをください」なんてオーダーもいいのでは?
鉄板越しにナミナミついでくれますよ。
目の前の鉄板で次々と調理されるつまみ、その熱、その音を感じつつ、日本酒をやる。
これが実に楽しい!
手際よく焼かれるそのリズミカルなさまを眺めつつ、飲む。
「飲める蕎麦屋」で酒をやる楽しさとどこか共通する感じ。あれをもっとラテンにしたような?「蕎麦まえ」(蕎麦にいくまえに楽しむつまみのこと)ならぬ「お好み焼きまえ」が充実のお店、それが「ほじゃひ」なんです。
とくとご覧あれ! 実況「広島のお好み焼きができるまで」
さてさて、そろそろお好み焼きも注文しましょうかね。
ではここで疋田さんの「肉玉そば」ができるまでを一気にご覧ください。
まずは生地(薄力粉と水、少量の塩と油のみ)を円形にのばします。これは「薄ければ薄いほどよい」が疋田流。焼き上がったところで、おかかをパラリ。
その上にこんもりとキャベツがのせられます。
ここで疋田流哲学を。
「広島のお好み焼きは、粉ものではない。
主役はキャベツなのである!!」
薄焼きの生地も、麺も具材も、キャベツを味わうためにあるというのが疋田さんの考え。だからソースも薄づきにして、マヨネーズは使わない。あくまでメインはキャベツの味わいと食感なのです!
キャベツの上には昆布粉(無添加のもの)、天かす、細めのもやし、豚バラスライス、そしてラードがのせられます。そしてこれをっ!
ひっくり返す!!
次に水で蒸し焼きにします。早業のテクニックとジュワーッという音と煙、なんとも食のスペクタクル! キャベツの蒸し方も大きく分けて二通りあるそうで、「低温でじっくり」と「高温で短時間」があり、疋田さんは後者のタイプ。野菜の水分を瞬間的に封じ込めます。
次は、となりに麺がスタンバイ。しかるのちに……
麺の上にオン!!
※その瞬間を撮れなかったわたしを許してください……早すぎるんだもの……
さらに卵1個が焼かれます。ちょっと黄身を裂いて軽く焼き上げ、これをどうするか?
またまたオン!!!
この時点でいったい何層構造になっているのでしょう……この「多層感が織りなす味わい」もまた、広島お好み焼きの醍醐味じゃないでしょうか?
ご覧ください……このきれいな仕上がり。マエストロ、BRAVO!
ここにソースと観音ネギがたっぷりほどこされて、
完成でーーす!!
これは疋田さんおすすめ、肉玉そば(780円)+観音ネギトッピング(200円)。
さあ、あとは食べるだけ。アツアツのうちにいただきましょう。
ヘラで食べるのも広島のお好み焼きの特徴ですね。
え、慣れてないから食べづらいって?
そんなあなたにアドバイス。
この持ち方が大事なんです(写真上)。親指でグッと力を込めて切り分けてください。「鉄板に傷をつけてしまうかも」とためらわれる方もいますが、大丈夫。そんな簡単に鉄板は傷つきません。あと、イメージは「ステーキを切り分けるときの感じ」です。みなさんがステーキをひと口大に切るときの大きさに、切り分けてみてください。
こんなふうに、ヘラの端っこにのせるのがベター。フーフーするのも忘れずに。多重構造はなっかなか冷めませんよ! ちなみにこれ、「コテ」じゃなくて「ヘラ」なのでご注意を(※よく間違われるのだそう)。
「飛行機や新幹線を使わずとも、広島に帰れるような場所をつくりたい」
そんな思いからできたお店は、いまや広島お好み焼きのおいしさと、広島地酒を発信する場所として、東京で定着しつつあります。
食べて飲んで、お好み焼きでシメる。
この面白さ、知ってほしいなあ!
<おまけフォト>
▲店員のつぐさん
お店情報
ほじゃひ ~本格お好み焼きと広島地酒の店~
住所:東京都品川区東五反田1‐12‐9イルヴィアーレ五反田ビル8F
電話番号:03‐3445‐8223
営業時間:月~土曜17:30~23:30(LO)、 日曜14:00~20:00
定休日:不定休 ※なるべく事前に電話で予約を